白夜編
夢小説設定
この小説の夢小説設定※原作開始時点
誕生日:7月17日(かに座)
性別:女
年齢:16歳
血液型:A型
身長 150cm
好きな物:白薔薇、果物、空を飛ぶこと
出身地:王貴界
等級:一等下級魔法騎士
魔法属性:竜
竜化魔法 ?????
→自身がドラゴンになる。変身魔法とは別物。
魔法を弾く鱗、地上よりも空の方が速く動ける羽毛の翼、鋭い爪や牙が武器。
(title by
不在証明)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
膨大な量の水のマナがアスタの剣で散らばった影響か、朝日が登ったばかりの空にかかる大きな虹を背景に、黒の暴牛たちはめいめい食堂へ向かおうとしていた。
朝イチの騒動のせいですっかりお腹が空いてしまったからだ。
「ノエルちゃん、今日はご飯一緒に食べようね」
「いいわよ。約束、してたし」
ちょっと照れをにじませながら了承してくれたノエルに、デレデレになるソフィア。
寝起きの頭がだんだん回り出したヤミはそれを見て、あーと声を出した。邪魔したのはわざとじゃないが結果的にそうなってしまった。だからって睨むなやめろと琥珀の瞳に思いながら。
「ドラ娘は今から任務だ」
「えっ、なんでですか?!」
ぷかぷかタバコを吸うヤミいわく。
恵外界ちかくのここらへんでしか取れない解毒草が騎士団で大量に必要になったらしく、今朝いきなり本部から通達がきた。
解毒草の用意だけは紫苑の鯱の団員がしてくれたらしいが、バカみたいに大量で重くて、時間内に運べるのが竜姿のソフィアぐらいしかいない、らしい。
「フィンラルさんの空間魔法で運ぶとかは……」
「荷物の体積は魔法使ったお前の倍」
人ひとり分の穴を開けるのもキツいフィンラルは無理ですと青い顔でバツ印を作った。ソフィアはしょんぼりしながらヤミに問う。
「用意された解毒草はどこにありますか……」
「ラヤカ村だそうだ」
「はーい……」
死ぬほど低いテンションのまま行こうとしたソフィアがノエルに謝ろうと振り返ると、くん、と袖を引かれる感覚。
そこには頬を薄く染め、目を逸らし、恥ずかしげに小声で訴えかけるノエルがいた。
「しょうがないから、晩ご飯は一緒に食べてあげてもいいわ」
「……!」
ソフィアはいま、年がら年中ずっと女の人を追いかけるフィンラルの気持ちがちょっとだけ分かった。ちょっとだけ。
恵外界の中でも田舎なほうに位置するラヤカ村は、もともとマグナの出身地ということもあり地図上で知っている場所だったため、竜のソフィアは迷うことなくあっさり着いた。
驚くほど大量の解毒草も紫苑の鯱の団員がひとまとめにしてくれていたため、体にくくりつけてもらうだけで持ち上げることができたし、王貴界に繋がる門前までのフライトも難なくこなせたので、問題とかトラブルとは無縁の任務となった。
とはいえ空の一人旅はとても寂しい。たいていの鳥は竜のソフィアからは逃げ出してしまうため、耳元でうなる風の音以外なんの刺激もない。風を受け飛ぶこと自体は好きなのだが。
なので、騎士団本部に荷物を降ろすころには、ソフィアはへとへとになっていた。特にこれといって何もしていないのに。
どうしようかな。ユリウスさんは仕事中のはずだから会いにいけないし、アジトに帰ろうかな。
そう考えた竜の首元で通信魔道具が鳴った。バネッサが伸縮自在の糸で補強してくれた黒の暴牛ローブの中に入れていたものだ。
相手はヤミ。そっこうで繋げた。
「はいもしもし」
《いや竜のままかよ。あー、ちょっくらアッシー頼む。ソッシ村まで》
「……ソッシ村? ですか?」
たしか恵外界の端っこにあるこれまた辺鄙なところ。今日は恵外界に縁があるなあと首をかしげた強面に、周囲で解毒草の荷物を解体していた騎士団員がひえっと飛び退いた。ちょっと傷ついた。
《イノシシ退治にマグナと新人ぶっ込んどいたら、トラブったみてーでな。帰りの魔力がないんだと》
「えっ」
《回収してから帰ってこい。以上》
ぷつんと切れた通信に、なんかいろいろとんでもない言葉が聞こえた気がするとソフィアは頭をかかえたくなったが、また周囲に怯えられたくはなかったので、ぐっとこらえた。
というか今日は特に任務が入っていなかった気がするのだが。そもそも昨日入団で今日初任務って早くない? わたし1ヶ月待ったよ?
「……まあいっか」
ローブに通信魔道具をしまったあと、きちんと周囲の了承を得た上で、王貴界の門前で大空に飛び立ったソフィアは、まだ周囲に自分の魔法がどう見えるかを理解しきれていなかった。
―――日が傾き、今にも夕闇が迫ろうというころ、ソッシ村の外れにて。
風を受ける丘の上で、朝までは元気にしていた勇敢なる祖父の墓前に花を添えていた少年と、少年に手向けを送っていたアスタとノエルは、ふと差した陰りに気づき、顔を上げた。
そこには物語りの挿絵でしか見たことのない竜がいた。
建物のようにおおきな体にはびっしりと鱗が詰まっている。それら1枚1枚が夕日を受けて螺鈿色に輝き、生き物ではないもっと神秘的な何かに見えるような光景だった。
腹から首にかけても覆われた鱗の終着点は、おとがい。鋭い牙を覗かせながらぐあっと開いた口腔、その赤に身震いしたアスタと呆然と見上げるしかできないノエルを見定め、琥珀の瞳を細めた竜は。
「アスタくーん、ノエルちゃーん! むかえに来たよー!」
能天気な少女の声でしゃべった。
「……へ? ソフィア先輩?」
はじめて名前付きで先輩と呼ばれた竜は、縦に伸びた瞳孔の浮かぶ瞳をキラキラ輝かせて、嬉しそうに何度も何度も頷いた。風圧でよろめきながらアスタはあごを落とした。
「って、なんで竜になってるんですか?!」
「あれ? これがわたしの魔法だよ、言ってなかった?」
「初耳です! てか先輩すげえええ」
「え? そう? えへへ」
キラキラ輝く目から放たれる尊敬の眼差しに、ソフィアは照れ照れと鋭い爪で頬をかいた。
ちなみにアスタに激励を送られていた少年と心配して近くまで来ていた少女は、村の建物よりも背丈のありそうなほど大きな竜を目の当たりにし、哀れ腰を抜かしへたり込んでいた。
そして、やっとの思いで衝撃から帰ってきたノエルもまた、混乱の極地にいた。
長兄ノゼルを筆頭に強大な魔力を持つ王族に囲まれ育ってきたノエルをして、その魔法は異質だとしか思えなかった。
炎などの魔法で形取るのではなく、純粋たる竜になる魔法など知らない。変身魔法ならありえなくもないが、直感にも似た何かがそれは違うと訴える。
縦に伸びた瞳孔、人ひとりを丸呑みにできそうな口に生え揃う牙、びっしりと生え揃う螺鈿色の鱗。
あれは異質なものだと。
「ノエルちゃん? どうしたの?」
けれど、心配そうに覗き込む琥珀の瞳も、さらりと流れた紅茶色のたてがみも、おそるおそる近づくその動きも、緊張するこちらが馬鹿らしくなるほどソフィアそのものだったので。
ぐっとまなじりを釣り上げ、ノエルはせいいっぱいの虚勢をはった。
「なんでもないわ!」
つん! とされたソフィアは、竜の鋭い目をでれっと笑み崩して、そっかーと尻尾をふった。
村の人との話し合いが終わったマグナも合流したので、アスタとノエル、マグナは伏せた竜の背によじ登り、村の少年少女に別れの挨拶をした。
「じゃあな、ぜってー魔法騎士団に来いよ!」
「うん!」
怯えながらも竜のそばまで来て手を振る少年に配慮しながら、ソフィアの白い翼が広げられ、大きく羽ばたく。
後ろ足で地面を蹴り飛ばした反動でいっきに飛び上がった。その背めがけて一羽の小鳥が飛び込んだが、それは誰の目にも映らなかった。
「おいこらソフィア! もっと静かに飛び上がれや落ちるだろーが!」
「えっ、ノエルちゃん大丈夫? 落っこちそう?」
「わ、私は王族よ! これくらい平気なんだから。……でもちょっと高いわね」
「先輩をガン無視とはいい度胸だなええおい!」
「うおおおおたっけえー!! ソフィア先輩、オレこんな高いところはじめてっすよー!!」
「うるっせええええ!」
自分以外だれもいない行きの空の旅とは真逆に、これ以上ないくらい騒々しい背の上にソフィアはにこにこ笑って、元気に羽を動かした。
目に滲むような夕日が一帯を茜色に染めている。お腹もすいたし、夜も近い。
早く帰りたいのに、もっと長くこのやり取りを聞いていたいなあと思いながらも、その独特な屋根を見つけたら、やっぱり嬉しくて仕方なくなってしまった。
「そろそろアジトにつくよー」
「えっ、もうっすか!」
「やっぱはえーな」
黒の暴牛アジト。たくさんの部屋を無理やりツギハギしたような形をした家の前にずどんと降り立ったソフィアは、衝撃でサングラスがちょっとズレてしまったマグナに怒られながら、大きな声をあげた。
「ただいまー!」
よいしょよいしょと竜の背から降りたアスタとノエルもまた、同じようにただいまと言ってくれたので、ソフィアは人の姿に戻ったあと、よしよしと新人ふたりの頭を撫で回してしまった。
片方には大きな声で女の人なのだからとたしなめられ、片方にはふいと赤い顔を背けられてしまったけれど。
先にアジトの扉をくぐったマグナとアスタのあとに続こうとしたソフィアのすそを引っ張ったのは、ノエルの白い指だった。
振り返り首をかしげる。今朝からいろいろあって疲れているんだろうに。
「どうしたの?」
「……これから、お風呂はいろうと思って」
「あっ、お風呂にはいるんだね。晩ご飯は待っておくから先に……」
「そうじゃなくて!」
大声を放ったあと、ごにょごにょもにょもにょと何事かつぶやくだけのノエルに、おろおろするソフィア。
やがて意を決したように桜色のくちびるが震えながら開かれる。
「……いっしょに、入らない?」
まず真っ先に思い浮かんだユリウスの顔に、なぜか心から「ごめんなさい」が出てきそうになったが、がんばってこらえて、ソフィアはうなずいた。
ちがいます。これは浮気ではないんです。と誰にともなく言い訳をしながら。