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戦国恋戦譚・起ノ章
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→手を取る
私は上杉さんの手を取った。
「ありがとうございます。」
謙信
「いえ、家臣の非礼を詫びるのは主の務めですから。」
上杉さんの手を取ると、気づけば体の震えも
止まっていて、つくづく不思議な人だと思った。
謙信
「皆、待たせてしまってすまない。
今から彼女が何者なのか。
話をしようと思う。
どうか席についてほしい。」
上杉さんがハッキリした声でそういうと、
広間にいた三人がすぐに座った。
謙信
「燐もどうか座ってください。
立っていては落ち着けるものも落ち着きませんから。」
上杉さんにそう言われ、私も座る。
謙信
「皆を集めたのは他でもない。
彼女についてだ、しかし事前に誤解を招かないために言うならば、彼女を妻として迎えるために連れてきたわけでもなければ、妾にするためでもない。」
甘粕
「そうなの!?」
謙信
「さらに言うと、行く宛がないから家で雇うわけでもない。」
宇佐美
「では一体、彼女は何者なのですか?」
一斉に私に視線が集まるのがわかり、
思わず身を固めてしまう。
謙信
「............。
謎の衣に身を纏い、その乙女、歴史の狭間に
先の世から現れる。
その乙女を手にする者はこの世を支配出来るほどの吉兆を手に入れるであろう。
その乙女、即ち。」
柿崎
「時を駆けし乙女...、時駆けの乙女の伝説だろう?この日ノ本では有名な伝説のひとつだ。」
甘粕「まさか、彼女がその時駆けの乙女だと?」
「時駆けの乙女......?」
柿崎
「馬鹿なことを言うな、所詮伝説であろう。」
宇佐美
「しかし、事実として過去の文献では、大化の頃、平安、鎌倉の成立に現れているのも事実。」
柿崎
「たかがひとつの過去の文献で実在が証明できるか?過去の文献など当てにならん。複数集めた上で、吟味してこその過去の文献。
しかしこの時駆けの乙女に関しては全て同じ古文書にしか書かれていないし、予言の書とされているものは破れられ、我が上杉軍にも一欠片しかないのだぞ。」
甘粕
「かといって、可能性が無だと断言出来ないならば、否定するのも良くないのではないかな。」
柿崎
「しかし・・・。」
謙信
「私はこの子、燐 と話し、彼女の身振りや素振りからこの時を生きるモノではないと思った。
そして、彼女は偽りを述べる人間性を持ち合わせてはいない。」
謙信さんがそう言うと、三人は静かになった。
宇佐美
「人を見る上で確かな目を持っている殿がそう仰るのでしたら、そうなのでしょう。」
甘粕
「宇佐美に同意見かな。文献通り、
見たことも無い着物を着ているし、それに僕達四人を
前にして感じてるのは得体の知れない恐怖と未知の恐怖というところだ。
本当に偽物ならそんな反応はできないだろうし、今の内に僕や宇佐美、それこそ謙信に取り入るのが策としては上等だよ。」
柿崎
「な・・・!
揃いも揃って!それでもし間者だったら
どうするつもりだ!」
謙信
「その時は切ればいい。」
ふと発せられた上杉さんの声に、
私は背中がヒヤッとした。
その言葉で、この人は戦国時代の武将なのだと
改めて思い知らされた。
謙信
「だが、この謙信が選んで、切られることはない。
私が直感的に信頼できると思った相手は、
今まで私を裏切ったことなどないのだから。」
その意思のある強い声に、柿崎さんは黙り込んだ。
柿崎
「......勝手にしろ。」
こうして柿崎さんは折れた。
謙信
「景家がわかってくれたところで、
問題なのは、彼女の立場だ。」
「私の・・・?」
甘粕
「言葉通り、時駆けの乙女の天女として、
ここで保護すれば良いでは?」
宇佐美
「それはまずいですよ、
もし彼女の存在が知れれば、
諸大名が放っておかないでしょう。」
柿崎
「さらにいえば、将軍や帝が興味を示して、
献上しろと言ってくる可能性も無くはない。」
謙信
「やはり、そうなるか・・・。」
「わっ私の存在ってそこまで凄いんですか?」
宇佐美
「えぇ、何せ、ただの天女ではなく、
時駆けの乙女ですから。
先程、殿が読み上げた巻物の写したものは
多く存在しますし、殿の読み上げたモノの
続きもまた存在します。
先の世から現れる・・・、それはつまり貴方が今の世のことを知っていれば、未来を変えれるということです。」
「未来を変える・・・?」
宇佐美
「貴方自身がそう望まなくとも、他の大名は日ノ本を手中に収めるには、貴方は手から喉が出るほどほしいと思いますよ。」
「そっそんな......。」
もし未来を変わったら、私は無事に帰れるのだろうか?
私や私の家族どうなるのだろうか?
顔を下に向けると、上杉さんの声が聞こえた。
謙信
「燐、安心してほしいのは、
私は......いや、我々はその力を借りない。」
「え?」
柿崎
「謙信!」
謙信
「私は戦は望まない。所領も今で満足しているし、助けを乞われれば、助ける。
無理な侵略は何も生まないであろう。」
柿崎
「それはそうだが.....,。」
謙信
「怖いかもしれませんが、約束します。
私は必ず貴方を元の時代へ返します。
貴方のいる正しき場所に。」
「上杉さん......。」
宇佐美
「そうだ、彼女は表向きは。献上品、
そして貴方の世話係というのはどうでしょう?」
謙信
「私の?」
宇佐美
「えぇ、献上品であれば、珍しい格好でも、
国外の人間ということにすれば、多少は
誤魔化しがつくでしょう。」
甘粕
「なるほどね、それはいいんじゃないかい?」
柿崎
「ふん、勝手にすればいい。」
甘粕
「景家、そんな拗ねないでおくれ。」
柿崎
「拗ねてなど......!」
宇佐美
「殿の傍であれば、献上品という理由が納得されやすいですし、いかがでしょう。」
謙信
「彼女を品扱いするのは、いささか心が痛むが.......、君はどうする?」
「私は......、それで大丈夫です。」
宇佐美
「ではそれで行きましょう。
他の家臣達にもそう伝えましょう。」
謙信
「あぁ......、ではこれにて会議を終わりとする。」
甘粕・宇佐美・柿崎
「はっ!」
そう言うと、皆さんは立ち上がり、移動し始める。
柿崎
「小娘、怪しい動きをすれば、即刻切るからな。
覚悟しておけ。」
「はっはい......。」
甘粕
「女子を怖がらすのはよくないですよ。
それじゃあ、燐ちゃん。
これからよろしくね。」
宇佐美
「我々に何か御用があれば、
またお声掛けください。表向きは違えど、
貴方は丁重に扱わねばいけない客人ですから。」
そう言うと、三人は出ていってしまった。
私は上杉さんの手を取った。
「ありがとうございます。」
謙信
「いえ、家臣の非礼を詫びるのは主の務めですから。」
上杉さんの手を取ると、気づけば体の震えも
止まっていて、つくづく不思議な人だと思った。
謙信
「皆、待たせてしまってすまない。
今から彼女が何者なのか。
話をしようと思う。
どうか席についてほしい。」
上杉さんがハッキリした声でそういうと、
広間にいた三人がすぐに座った。
謙信
「燐もどうか座ってください。
立っていては落ち着けるものも落ち着きませんから。」
上杉さんにそう言われ、私も座る。
謙信
「皆を集めたのは他でもない。
彼女についてだ、しかし事前に誤解を招かないために言うならば、彼女を妻として迎えるために連れてきたわけでもなければ、妾にするためでもない。」
甘粕
「そうなの!?」
謙信
「さらに言うと、行く宛がないから家で雇うわけでもない。」
宇佐美
「では一体、彼女は何者なのですか?」
一斉に私に視線が集まるのがわかり、
思わず身を固めてしまう。
謙信
「............。
謎の衣に身を纏い、その乙女、歴史の狭間に
先の世から現れる。
その乙女を手にする者はこの世を支配出来るほどの吉兆を手に入れるであろう。
その乙女、即ち。」
柿崎
「時を駆けし乙女...、時駆けの乙女の伝説だろう?この日ノ本では有名な伝説のひとつだ。」
甘粕「まさか、彼女がその時駆けの乙女だと?」
「時駆けの乙女......?」
柿崎
「馬鹿なことを言うな、所詮伝説であろう。」
宇佐美
「しかし、事実として過去の文献では、大化の頃、平安、鎌倉の成立に現れているのも事実。」
柿崎
「たかがひとつの過去の文献で実在が証明できるか?過去の文献など当てにならん。複数集めた上で、吟味してこその過去の文献。
しかしこの時駆けの乙女に関しては全て同じ古文書にしか書かれていないし、予言の書とされているものは破れられ、我が上杉軍にも一欠片しかないのだぞ。」
甘粕
「かといって、可能性が無だと断言出来ないならば、否定するのも良くないのではないかな。」
柿崎
「しかし・・・。」
謙信
「私はこの子、燐 と話し、彼女の身振りや素振りからこの時を生きるモノではないと思った。
そして、彼女は偽りを述べる人間性を持ち合わせてはいない。」
謙信さんがそう言うと、三人は静かになった。
宇佐美
「人を見る上で確かな目を持っている殿がそう仰るのでしたら、そうなのでしょう。」
甘粕
「宇佐美に同意見かな。文献通り、
見たことも無い着物を着ているし、それに僕達四人を
前にして感じてるのは得体の知れない恐怖と未知の恐怖というところだ。
本当に偽物ならそんな反応はできないだろうし、今の内に僕や宇佐美、それこそ謙信に取り入るのが策としては上等だよ。」
柿崎
「な・・・!
揃いも揃って!それでもし間者だったら
どうするつもりだ!」
謙信
「その時は切ればいい。」
ふと発せられた上杉さんの声に、
私は背中がヒヤッとした。
その言葉で、この人は戦国時代の武将なのだと
改めて思い知らされた。
謙信
「だが、この謙信が選んで、切られることはない。
私が直感的に信頼できると思った相手は、
今まで私を裏切ったことなどないのだから。」
その意思のある強い声に、柿崎さんは黙り込んだ。
柿崎
「......勝手にしろ。」
こうして柿崎さんは折れた。
謙信
「景家がわかってくれたところで、
問題なのは、彼女の立場だ。」
「私の・・・?」
甘粕
「言葉通り、時駆けの乙女の天女として、
ここで保護すれば良いでは?」
宇佐美
「それはまずいですよ、
もし彼女の存在が知れれば、
諸大名が放っておかないでしょう。」
柿崎
「さらにいえば、将軍や帝が興味を示して、
献上しろと言ってくる可能性も無くはない。」
謙信
「やはり、そうなるか・・・。」
「わっ私の存在ってそこまで凄いんですか?」
宇佐美
「えぇ、何せ、ただの天女ではなく、
時駆けの乙女ですから。
先程、殿が読み上げた巻物の写したものは
多く存在しますし、殿の読み上げたモノの
続きもまた存在します。
先の世から現れる・・・、それはつまり貴方が今の世のことを知っていれば、未来を変えれるということです。」
「未来を変える・・・?」
宇佐美
「貴方自身がそう望まなくとも、他の大名は日ノ本を手中に収めるには、貴方は手から喉が出るほどほしいと思いますよ。」
「そっそんな......。」
もし未来を変わったら、私は無事に帰れるのだろうか?
私や私の家族どうなるのだろうか?
顔を下に向けると、上杉さんの声が聞こえた。
謙信
「燐、安心してほしいのは、
私は......いや、我々はその力を借りない。」
「え?」
柿崎
「謙信!」
謙信
「私は戦は望まない。所領も今で満足しているし、助けを乞われれば、助ける。
無理な侵略は何も生まないであろう。」
柿崎
「それはそうだが.....,。」
謙信
「怖いかもしれませんが、約束します。
私は必ず貴方を元の時代へ返します。
貴方のいる正しき場所に。」
「上杉さん......。」
宇佐美
「そうだ、彼女は表向きは。献上品、
そして貴方の世話係というのはどうでしょう?」
謙信
「私の?」
宇佐美
「えぇ、献上品であれば、珍しい格好でも、
国外の人間ということにすれば、多少は
誤魔化しがつくでしょう。」
甘粕
「なるほどね、それはいいんじゃないかい?」
柿崎
「ふん、勝手にすればいい。」
甘粕
「景家、そんな拗ねないでおくれ。」
柿崎
「拗ねてなど......!」
宇佐美
「殿の傍であれば、献上品という理由が納得されやすいですし、いかがでしょう。」
謙信
「彼女を品扱いするのは、いささか心が痛むが.......、君はどうする?」
「私は......、それで大丈夫です。」
宇佐美
「ではそれで行きましょう。
他の家臣達にもそう伝えましょう。」
謙信
「あぁ......、ではこれにて会議を終わりとする。」
甘粕・宇佐美・柿崎
「はっ!」
そう言うと、皆さんは立ち上がり、移動し始める。
柿崎
「小娘、怪しい動きをすれば、即刻切るからな。
覚悟しておけ。」
「はっはい......。」
甘粕
「女子を怖がらすのはよくないですよ。
それじゃあ、燐ちゃん。
これからよろしくね。」
宇佐美
「我々に何か御用があれば、
またお声掛けください。表向きは違えど、
貴方は丁重に扱わねばいけない客人ですから。」
そう言うと、三人は出ていってしまった。