<🔩イーグル部屋>
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―――――
疲労の溶液にどっぷりと漬かる感覚。
宙を駆けるのとはまた違う精神の消耗を、イーグルは感じていた。
無理もない。オートザムを出てセフィーロを通り越す。ここまで来たのとほぼ同じ時間をかけて進んだそのまたずっと奥。
仲が良いとも悪いとも言えない国。それを、前者にしていくための職務。
務めを終えたイーグルは、機内モニターの前方に先程通り過ぎた国を見つけ、安堵の息をついた。
帰国する前に少し立ち寄って休ませてもらおう。自動飛空を解き、目的地を再設定する。
セフィーロ城の虎口前、FTOの爪先が地に触れるや否や、誰が開門するでもなしに城の扉が音を立てて開いた。
「相変わらず不用心ですね」
独り言を言いながら、この国なりの歓迎に頬が緩む。
武装を解き、ヘッドギアごとマントを外してコクピットのシートの上に置く。最低限の軽装、ほとんど体一つでイーグルで城内へ入った。
お茶など頂き小一時間も休めばオートザムへ帰るための力は回復するだろう。光かランティスか、話し相手でもいれば尚いいのだけれど。
シンとした回廊を歩く。いつもより人気 が少ない。数人の侍女がバタバタと駆け「あら、ビジョン様」と慌ただしく声をかけてくるくらいのもので、光やランティスはおろか見知った面々と会うこともなかった。不思議に思いながらしばらく歩いていると、後ろからカラカラと車輪の回るような音が聞こえた。振り返ると背の高い白い物体がこちらに向かってゆっくりと近づいてくる。車輪の音の出所は、銀色の台車だった。
台車に乗った巨大なケーキが「イーグル!」と声をかけてきたので驚いた。
「来てくれたの!?」
カラカラと車輪が早く鳴り、白い物体がどんどん近づいて来る。
嬉しそうに声を弾ませ、巨大なケーキの奥から海が顔をのぞかせた。
「来たの?」でも「来てたの?」でもない。まるで〝海のために〟というニュアンスを含ませた言い方が気になる。
「すごいですね、これ」
挨拶も忘れ、イーグルは言った。自分の背の丈ほどもあるケーキを見上げる。天頂に乗ったプレートには地球 の文字で『HappyBirthdayウミ』と書かれていた。
「材料は何でも揃えてくれるって言うから自分で作っちゃった。お給料を使わずにこんなに大きなケーキが作れるなんて! 誕生日って最高!」
海が満足そうに言う。
見れば、海はいつも以上にめかしこんでいた。エプロンの下、薄黄色のハイネックワンピースは春らしいレースの風合いが彼女によく似合っている。後ろで一つにくくった髪は緩やかに波打ち、普段よりも手が加えられているのがわかった。
一方、イーグル。マントを外した黒色の上下姿。手ぶらであることを恥じ気まずそうに肩をすくめた男を見て、海はニコと笑った。
「時間ある? 今からみんなで食べるの。ご一緒してくれない?」
それがプレゼント替わりっていうことで。海の意図を受け取り、イーグルは頷いた。
台車を押す務めを代わり、海と並んで歩く。
万が一にも揺らしたり倒したりするわけにいかないので慎重に、ゆっくりと。あらためて見上げてみれば今回のケーキも見事な出来だった。一口食べただけで母国との間を何往復も飛空できるエネルギーが得られそうだなと、イーグルは思う。
広間には見慣れた面々が着席し、今か今かと海を待っていた。扉が開き、海の隣に立つイーグルを見て光が「イーグル!」と高い声を上げた。
その声をきっかけに、ケーキと海に注がれていた一同の視線が全てイーグルに移る。
めかしこんだ人たちを前に、この格好と、手ぶらであることがあらためて恥ずかしくなる。
「ウミ、やっぱり僕は――」
言いかけた時、クレフがこちらのほうへ近寄ってきた。クレフは少し身をかがめ「すぐに戻る」と海の耳元に告げると、少しせっかちな仕草でもってイーグルを連れ、回廊へ出た。
自分より低身長の男の早歩きに追いつけない。
「お似合いですよ」と彼の盛装を褒める空気でもなかった。
「少し城で休ませてもらおうとお邪魔したら、たまたま会って」
言い訳じみたことを口にする。
この御仁。仲良くなったつもりではある。が、こと海の絡みとなると少し怒りっぽくなるので困ったものだ。
「ウミのほうから来てと言ったんですよ」とも言いたくなったが余計に機嫌を損ねそうなので言葉を飲んだ。
しばらくクレフの早歩きに引きずられ、ある一室に到着した。
この城にしては少しこじんまりとした扉。開き、イーグルは驚いた。
クレフや広間にいた皆が身に着けたような立派な衣服が、部屋の壁一面にずらりと並んでいる。
「少し整えてやってくれ」
室内の侍女に向けてクレフが声をかけた。
「失礼ながら御髪は?」
侍女に聞かれイーグルは思わず頭髪を抑える。跳ねた癖毛が指の隙間から飛び出した。それを見てクレフがクスと笑った。
「ああ、頼む」そう侍女に答えた後クレフはイーグルのほうを向き直り、穏やかに言った
「いや、なにも今のお前の姿がみすぼらしいと言っているわけではない。妻の祝いの日だ。少し装いを飾ってほしい」
そしてイーグルはあれよという間に鏡台の前に座らせられ、侍女たちに囲まれた。随分な上玉をいじれる。いつの間にか増殖した侍女たちは楽しそうな様子を隠しきれていなかった。
来賓の証である大ぶりのコサージュが胸元で揺れる。
クレフに連れられ、再び早足で広間へ向かいながら「遅くなります」と、オアイテにどうにか一通入れた。
クレフが戻らない限りはさすがに開会できなかったようで、扉を開けると待ちわびた視線が男二人に注がれた。海のほうを見ると、玉座然とした立派な椅子に腰かけていた。
エプロンは外され、薄黄色のドレスが全貌を現している。早足短気男を横目に見てみれば、デレデレとまではいかないもののそれなりに目を細めていた。
宴の途中、贈り物を渡す列に並んだ。イーグルの手元には花束。白い花の混ざった大きなグリーンブーケを手渡すと、海は驚いた顔を見せた。それから隣に腰かけるクレフの顔をちらりと見て、どちらに言うともなく「ありがとう!」と言った。
先程海と回廊で出くわした時、プレゼントは持っていないと白状したようなものだ。この花束はクレフが用意したものだと海にもわかったに違いない。今日は全く男が上がらない。借りが増える一方だ。けれど、愛おしそうに花を抱える海の笑顔と「良し」と神妙に頷くクレフの顔を見れば、それもまあいいかと思えた。
こうなっては小一時間で抜け出すわけにもいかず――実際、祝宴は楽しく、帰りたいという気持ちを忘れかけていたことはオアイテには秘密だ――、すっかり日が暮れた頃、イーグルは帰路についた。
「帰ったらオアイテたちと食べて」と、カットケーキを分けてもらった。
FTO。ダッシュボードの中。白色のケーキボックスが、オートザムの科学技術が成しうる最高速度で厳重に搬送されていく。
ケーキボックスを抱え、髪をぴっちりと整えられたあげく、異国で言うところのタキシードめいた衣装を着た――着せられた――イーグルを見て、オアイテは腹をかかえて笑った。大きな体がソファの上で揺れる。肩を揺らしながらあまりに笑うので、背と腰がソファに沈み、もはや背もたれは頭だけを支え、長い両足はほとんど床に投げ出される格好となった。
「そこまで笑うことないじゃないですか」
そんなに変です? ケーキボックスをしまいながら、イーグルが頬をふくらませる。
「いや」と言って、オアイテはだらしない格好のままイーグルの手を引いた。抱き寄せ、髪を撫でる。
オアイテの体の上にうつぶせたイーグルの髪からは、セフィーロ特有の整髪料の香りが漂った。
「随分色男になって帰ってきたじゃねえか」
イーグルが一通りの事情をやや言い訳じみて話すと、オアイテはおおらかな口調で言った。
「いいよ、遅くなるって連絡は寄越したんだし。それに、俺が言うことでもないがお前はそういうことをもっとしたほうがいい」
「そういうこと?」
「ああ、損得勘定のない人間と騒いだり、髪型を七三に整えてみたり、俺以外が作ったケーキを食ったり。人生の寄り道は最高の贅沢だろ」
ジェオの言葉に、イーグルは一瞬翳りの表情を見せた。
言っていることはわかる。優しくもあり、けれど親が子を突き放すような言い方が気になる。
僕は、あんなに早く帰りたいと思っていたのに。
同じようにオアイテにも、一刻も早く帰ってこいと願っていてほしかった。
宴に浮かれその気持ちを一瞬忘れかけていたことなどは放り投げ、イーグルはそんな手前勝手な感情を抱くようなった自分自身に戸惑った。さすがに引かれてしまうかもしれない。
うかがうように、イーグルはオアイテの顔を見上げた。
「そんで、最後は俺のとこに帰ってきたらいい」
キラリ。そんな音がイーグルの目元で鳴る。
そういうことを平気で言うんですね、あなたは。
イーグルがそれを言葉にすることはなかった。
しばらく熱と味を堪能し、唇が離れる。ふやけた眼差しでオアイテを見ると、オアイテは自分の唇を舐め「さすがウミだな」と言った。
予想もしていなかった友人の名前に、イーグルはきょとんと音がするほど大きな瞬きをした。
こともあろうに、口付けの直後オアイテが口にしたのは、イーグルの舌ごしに味わったケーキの感想だった。
「キスの最中に他の女の子のことを考えるなんてひどいですよ」
「だったら今から 俺の頭をお前でいっぱいにしてみな」
挑発的に笑み、来い来いとイーグルを指で呼ぶ。
今から?
なんだそれは。悔しい。
言葉尻を卑屈に捉え、イーグルは躍起になった。
今までもこれからも。ずっとずっと、ずっとずっとずっと自分でいっぱいでいればいいのに。
手を変え品を変え、オアイテをドロドロにしようと奮闘しているうちに、返り討ちに逢った。
一度火のついたオアイテは厄介だ。わかっていたはずのに。腰が立たない。髪は乱れ、借りた盛装はすっかり皺だらけになった。行為の後、二人して気絶したように眠ってしまったのがよくなかった。
手を尽くし、服の皺はどうにか伸ばせた。が、洗い落としたとはいえ、二人の良からぬ液体が付着した服を返却するのも気が引ける。
後日買取を申し出、クレフの苦笑いを頂戴するお話はまたいつかということで。
―――――
『僕が君のことを考えてない時も君には僕のことを考えていてほしいなんて言ったら流石に引いちゃいますかね』
end
やや劣勢なイーくん書いたの初めてかも👀💚
イーグル・ビジョン流血アンソロ「BLOOD」を是非よろしくお願いします!
さっとん様ご協力ありがとうございました✨
ボツにしたタイトル&サムネ案😇
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疲労の溶液にどっぷりと漬かる感覚。
宙を駆けるのとはまた違う精神の消耗を、イーグルは感じていた。
無理もない。オートザムを出てセフィーロを通り越す。ここまで来たのとほぼ同じ時間をかけて進んだそのまたずっと奥。
仲が良いとも悪いとも言えない国。それを、前者にしていくための職務。
務めを終えたイーグルは、機内モニターの前方に先程通り過ぎた国を見つけ、安堵の息をついた。
帰国する前に少し立ち寄って休ませてもらおう。自動飛空を解き、目的地を再設定する。
セフィーロ城の虎口前、FTOの爪先が地に触れるや否や、誰が開門するでもなしに城の扉が音を立てて開いた。
「相変わらず不用心ですね」
独り言を言いながら、この国なりの歓迎に頬が緩む。
武装を解き、ヘッドギアごとマントを外してコクピットのシートの上に置く。最低限の軽装、ほとんど体一つでイーグルで城内へ入った。
お茶など頂き小一時間も休めばオートザムへ帰るための力は回復するだろう。光かランティスか、話し相手でもいれば尚いいのだけれど。
シンとした回廊を歩く。いつもより
台車に乗った巨大なケーキが「イーグル!」と声をかけてきたので驚いた。
「来てくれたの!?」
カラカラと車輪が早く鳴り、白い物体がどんどん近づいて来る。
嬉しそうに声を弾ませ、巨大なケーキの奥から海が顔をのぞかせた。
「来たの?」でも「来てたの?」でもない。まるで〝海のために〟というニュアンスを含ませた言い方が気になる。
「すごいですね、これ」
挨拶も忘れ、イーグルは言った。自分の背の丈ほどもあるケーキを見上げる。天頂に乗ったプレートには
「材料は何でも揃えてくれるって言うから自分で作っちゃった。お給料を使わずにこんなに大きなケーキが作れるなんて! 誕生日って最高!」
海が満足そうに言う。
見れば、海はいつも以上にめかしこんでいた。エプロンの下、薄黄色のハイネックワンピースは春らしいレースの風合いが彼女によく似合っている。後ろで一つにくくった髪は緩やかに波打ち、普段よりも手が加えられているのがわかった。
一方、イーグル。マントを外した黒色の上下姿。手ぶらであることを恥じ気まずそうに肩をすくめた男を見て、海はニコと笑った。
「時間ある? 今からみんなで食べるの。ご一緒してくれない?」
それがプレゼント替わりっていうことで。海の意図を受け取り、イーグルは頷いた。
台車を押す務めを代わり、海と並んで歩く。
万が一にも揺らしたり倒したりするわけにいかないので慎重に、ゆっくりと。あらためて見上げてみれば今回のケーキも見事な出来だった。一口食べただけで母国との間を何往復も飛空できるエネルギーが得られそうだなと、イーグルは思う。
広間には見慣れた面々が着席し、今か今かと海を待っていた。扉が開き、海の隣に立つイーグルを見て光が「イーグル!」と高い声を上げた。
その声をきっかけに、ケーキと海に注がれていた一同の視線が全てイーグルに移る。
めかしこんだ人たちを前に、この格好と、手ぶらであることがあらためて恥ずかしくなる。
「ウミ、やっぱり僕は――」
言いかけた時、クレフがこちらのほうへ近寄ってきた。クレフは少し身をかがめ「すぐに戻る」と海の耳元に告げると、少しせっかちな仕草でもってイーグルを連れ、回廊へ出た。
自分より低身長の男の早歩きに追いつけない。
「お似合いですよ」と彼の盛装を褒める空気でもなかった。
「少し城で休ませてもらおうとお邪魔したら、たまたま会って」
言い訳じみたことを口にする。
この御仁。仲良くなったつもりではある。が、こと海の絡みとなると少し怒りっぽくなるので困ったものだ。
「ウミのほうから来てと言ったんですよ」とも言いたくなったが余計に機嫌を損ねそうなので言葉を飲んだ。
しばらくクレフの早歩きに引きずられ、ある一室に到着した。
この城にしては少しこじんまりとした扉。開き、イーグルは驚いた。
クレフや広間にいた皆が身に着けたような立派な衣服が、部屋の壁一面にずらりと並んでいる。
「少し整えてやってくれ」
室内の侍女に向けてクレフが声をかけた。
「失礼ながら御髪は?」
侍女に聞かれイーグルは思わず頭髪を抑える。跳ねた癖毛が指の隙間から飛び出した。それを見てクレフがクスと笑った。
「ああ、頼む」そう侍女に答えた後クレフはイーグルのほうを向き直り、穏やかに言った
「いや、なにも今のお前の姿がみすぼらしいと言っているわけではない。妻の祝いの日だ。少し装いを飾ってほしい」
そしてイーグルはあれよという間に鏡台の前に座らせられ、侍女たちに囲まれた。随分な上玉をいじれる。いつの間にか増殖した侍女たちは楽しそうな様子を隠しきれていなかった。
来賓の証である大ぶりのコサージュが胸元で揺れる。
クレフに連れられ、再び早足で広間へ向かいながら「遅くなります」と、オアイテにどうにか一通入れた。
クレフが戻らない限りはさすがに開会できなかったようで、扉を開けると待ちわびた視線が男二人に注がれた。海のほうを見ると、玉座然とした立派な椅子に腰かけていた。
エプロンは外され、薄黄色のドレスが全貌を現している。早足短気男を横目に見てみれば、デレデレとまではいかないもののそれなりに目を細めていた。
宴の途中、贈り物を渡す列に並んだ。イーグルの手元には花束。白い花の混ざった大きなグリーンブーケを手渡すと、海は驚いた顔を見せた。それから隣に腰かけるクレフの顔をちらりと見て、どちらに言うともなく「ありがとう!」と言った。
先程海と回廊で出くわした時、プレゼントは持っていないと白状したようなものだ。この花束はクレフが用意したものだと海にもわかったに違いない。今日は全く男が上がらない。借りが増える一方だ。けれど、愛おしそうに花を抱える海の笑顔と「良し」と神妙に頷くクレフの顔を見れば、それもまあいいかと思えた。
こうなっては小一時間で抜け出すわけにもいかず――実際、祝宴は楽しく、帰りたいという気持ちを忘れかけていたことはオアイテには秘密だ――、すっかり日が暮れた頃、イーグルは帰路についた。
「帰ったらオアイテたちと食べて」と、カットケーキを分けてもらった。
FTO。ダッシュボードの中。白色のケーキボックスが、オートザムの科学技術が成しうる最高速度で厳重に搬送されていく。
ケーキボックスを抱え、髪をぴっちりと整えられたあげく、異国で言うところのタキシードめいた衣装を着た――着せられた――イーグルを見て、オアイテは腹をかかえて笑った。大きな体がソファの上で揺れる。肩を揺らしながらあまりに笑うので、背と腰がソファに沈み、もはや背もたれは頭だけを支え、長い両足はほとんど床に投げ出される格好となった。
「そこまで笑うことないじゃないですか」
そんなに変です? ケーキボックスをしまいながら、イーグルが頬をふくらませる。
「いや」と言って、オアイテはだらしない格好のままイーグルの手を引いた。抱き寄せ、髪を撫でる。
オアイテの体の上にうつぶせたイーグルの髪からは、セフィーロ特有の整髪料の香りが漂った。
「随分色男になって帰ってきたじゃねえか」
イーグルが一通りの事情をやや言い訳じみて話すと、オアイテはおおらかな口調で言った。
「いいよ、遅くなるって連絡は寄越したんだし。それに、俺が言うことでもないがお前はそういうことをもっとしたほうがいい」
「そういうこと?」
「ああ、損得勘定のない人間と騒いだり、髪型を七三に整えてみたり、俺以外が作ったケーキを食ったり。人生の寄り道は最高の贅沢だろ」
ジェオの言葉に、イーグルは一瞬翳りの表情を見せた。
言っていることはわかる。優しくもあり、けれど親が子を突き放すような言い方が気になる。
僕は、あんなに早く帰りたいと思っていたのに。
同じようにオアイテにも、一刻も早く帰ってこいと願っていてほしかった。
宴に浮かれその気持ちを一瞬忘れかけていたことなどは放り投げ、イーグルはそんな手前勝手な感情を抱くようなった自分自身に戸惑った。さすがに引かれてしまうかもしれない。
うかがうように、イーグルはオアイテの顔を見上げた。
「そんで、最後は俺のとこに帰ってきたらいい」
キラリ。そんな音がイーグルの目元で鳴る。
そういうことを平気で言うんですね、あなたは。
イーグルがそれを言葉にすることはなかった。
しばらく熱と味を堪能し、唇が離れる。ふやけた眼差しでオアイテを見ると、オアイテは自分の唇を舐め「さすがウミだな」と言った。
予想もしていなかった友人の名前に、イーグルはきょとんと音がするほど大きな瞬きをした。
こともあろうに、口付けの直後オアイテが口にしたのは、イーグルの舌ごしに味わったケーキの感想だった。
「キスの最中に他の女の子のことを考えるなんてひどいですよ」
「だったら
挑発的に笑み、来い来いとイーグルを指で呼ぶ。
今から?
なんだそれは。悔しい。
言葉尻を卑屈に捉え、イーグルは躍起になった。
今までもこれからも。ずっとずっと、ずっとずっとずっと自分でいっぱいでいればいいのに。
手を変え品を変え、オアイテをドロドロにしようと奮闘しているうちに、返り討ちに逢った。
一度火のついたオアイテは厄介だ。わかっていたはずのに。腰が立たない。髪は乱れ、借りた盛装はすっかり皺だらけになった。行為の後、二人して気絶したように眠ってしまったのがよくなかった。
手を尽くし、服の皺はどうにか伸ばせた。が、洗い落としたとはいえ、二人の良からぬ液体が付着した服を返却するのも気が引ける。
後日買取を申し出、クレフの苦笑いを頂戴するお話はまたいつかということで。
―――――
『僕が君のことを考えてない時も君には僕のことを考えていてほしいなんて言ったら流石に引いちゃいますかね』
end
やや劣勢なイーくん書いたの初めてかも👀💚
イーグル・ビジョン流血アンソロ「BLOOD」を是非よろしくお願いします!
さっとん様ご協力ありがとうございました✨
ボツにしたタイトル&サムネ案😇
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