【クレ海】R-18



氷菓の実!




少女の腿を、液体が伝う。その液の味は「ぶどう」という果実に似せて作られているものだと、つい先程聞いた。なかなか良い味ではないか、クレフは思う。

一方、少女は道徳というものについて考えていた。考えていた、というのは正しくない。虚ろに揺れる瞳は、脳がまともに機能していないことを示していたし、唇から漏れる声や言葉は、もはや意味を成していなかった。

「徳」に順ずるべきなのか、目の前の男に従うべきなのか。それを判断する余地は、今の海には残されていなかった。


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「じゃーん」
景気の良い効果音と共に、海は一つの ボウルをテーブルに置いた。

「それは?」
テーブルをはさんで向かい、ソファに腰掛けたクレフがそう聞いた。器の中身を覗く。中には色とりどりの小さな球体がいくつも入っている。
それはなんだと聞いてはみたものの、半分はわかっている。

海が時折持ってくる見慣れない物体は、大半が異世界の食べ物だ。今回もそうに違いない。しかし、もう半分、つまり味だとか触感だとかは、まるで見当がつかない。

「これは『アイス』っていうの。さっぱりしてて、今日みたいな暑い日に食べるとすごくおいしいのよ」
「ああ、たしかヒカルが好物だと言っていた食べ物か」
「光が好きなのはアイスクリームだから、これとはちょっと違うんだけど。うーん、でも光も好きだと思うわ。ま、とにかく食べましょ。溶けないうちに」
「溶ける?」
「ええ、これは氷菓子みたいなものだから、暑いと溶けちゃうのよ。凍ってるうちがおいしいの」

クレフがまたも不思議そうな目でこちらを見ている。早く食べちゃいたいんだけど、と海は思う。けれど、彼のいぶかしむ瞳を、このまま放っておくわけにもいかない。
しばしの、そして、海ははたと気づく。クレフの視線に「なぜ『そう』しないのだ?」という意味合いが含まれていることに。

「地球独自のものを目の前にすると、魔法を使うって前提が抜けちゃうのよ」
照れくさそうに言いながら、海は両手で器を持ち上げた。目を閉じ、器に触れた手の先に意識を集中する。すると、器全体を薄氷が覆い、シュウと白い冷気が上がった。

「良いな」
見事に氷化された器を見、クレフが頷く。恋人兼、師でもある彼の合格点を得た海は、どこかほっとした様子を見せた。そして、氷の器を再びテーブルへ置くと、今度こそ、恋人の隣に腰かけた。

「さ、食べましょ。これはね、全部地球の果物の味なの。これがぶどうで、桃と、これはりんご!」
海に促されるまま、クレフは氷菓のうち一つを手に取り、口へ運ぶ。それを海がジ、と見つめた。

「……どう?」
「冷たい」
「そりゃそうでしょ」
「悪くはないが、少し頭に響くな。一粒が大きすぎる」
とクレフが言った。

アイスクリーム頭痛かしら。それほど体積はないはずだけれど。食べ慣れていないものだし、子供サイズのお口には少し大きいのかも、と海はぼんやりと思う。

「じゃあ、大きくなったらどう?」
なんとなしに海が言うと、これだけのためにあの姿になるのもなあ、とクレフが零した。
「うーん、じゃあ少しだけ溶かしてから食べるとか?」
海が氷菓を頬張ったまま言った。

「なるほど、それは良い考えだ」
言うと、クレフはおもむろに海の横顔の頬に触れ、こちらを向かせた。そのまま間髪を容れず海の唇を塞ぐ。海の口内から氷菓を一粒舌で器用に絡め取り、自分の口内へと移した。奪った氷菓は、程よい大きさに溶けていて食べやすい。なにより、一つ目に口にしたものよりも格段に甘かった。

「ちょっと!なにするのよ!」
顔を赤くする海に構うことなく、クレフは氷菓を頬張りながら言った。
「これは良い。ウミ、もう一粒だ」

「嫌よ!お皿によけて溶かせば良いでしょう!」
「それでは溶けた分がもったいないではないか。ウミ、早くしろ」
「やだってば、んっ…」
クレフの指によって、氷菓が海の口の中へ押し込められる。海は、もごもごと不満をもらしながらも、手ごろな大きさに溶けた頃合いで、唇を薄く開いた。

ほえたへろ 溶けたけど
赤い唇の隙間から覗く濃紫色の氷菓を見、クレフの喉がこくりと鳴った。今すぐむさぼり付きたい気持ちを抑え、クレフは指をクイと曲げて海を呼ぶ。
「頂くとしよう」
海は、不満げに、そしてためらいがちにクレフに上体を寄せた。寄る辺なく、海の片手がクレフのローブをくいと掴む。唇と唇が、ゆっくりゆっくりと近づいていく。ふいに、ソファの上で手と手が触れ、海の体がぴくりと震えた。それを合図にするかのように、クレフは海の後頭を抑えこむと、顔ごと自分のほうへ引き寄せ海の唇を塞いだ。そして、思うままに氷菓と、海の舌を絡め取った。ときおり漏れる海の声は何よりも甘い。思わず体に熱が走る。まだ昼だというのに、と、自嘲の苦笑いが零れた。

「は…ぁ…も、食べたからいいでしょ…」
氷菓が溶けてもなお、舌をまさぐられることに不満を呈し、海がクレフの肩をぐいと押して距離を取った。しかし、彼はそんな程度で引くような男でない。
「まだ味が残っている。大人しくしていろ」
言うと、クレフは再び海の唇を塞いだ。
「やっ、ん……っ」

少年の姿のクレフと唇を合わせたことは多くはない。大抵なら、夜、それも二人きりで寝室に過ごす際に行うような甘く深い口づけを、真昼の私室、しかも少年姿の彼に施され、容赦のない背徳感が海を攻め立てた。

(舌…ちっちゃい…なにこれ…)

未知の感覚は、一種の恐怖ですらあった。これ以上続けては、自分がどうにかなってしまうのではないか、そんな思いが海の中をめぐる。堪らず、海はクレフの胸元へ額をこすりつけた。

「ね、お願い。キスするなら、大きくなって」
「もう既に」
言いながらクレフは海の手を取り、自らの下腹部へと導いた。
「違っ、ばかっ…!最低!」
力任せに押しのけようとする海の両腕を、クレフが掴む。
そのまま、海が大人しくなるのをしばし待つと、クレフは赤く染まった彼女の頬を両手で包み、コツンと額を合わせた。瞬間、二人はまばゆい光に包まれる。二人ともがそっと目を開けば、そこはいつもの寝室、寝台の上だ。クレフは、氷の器をベッドサイドへ置き、一粒を手に取ると、「さて」と微笑み、海の口内へと押し込んだ。

「クレフ、も、口つめた…やだ」
「お前も舌を動かせば、じきに温かくなる」

今度は、氷菓を絡め取ることはせず、ただ海の舌をむさぼった。氷菓が邪魔にすら感じる。本末転倒とはまさにこのことだな、とクレフは塞いだ唇の隙間で小さく笑った。
「やだ…っ、なに、笑って…」
「いや、良いから舌をもう少しこちらへ」

再び唇を合わせ、口内に残る甘い液を分け合う。互いの唾液が混ざり合い、海の口の端から静かに伝った。海の息がはあはあと乱れる。クレフは海の体をそっと横たわらせ、そして、首筋にちゅうと唇を寄せた。

「やっ、クレフ…こんな、昼から…だめっ」
構わず、クレフは海の下腹部へと指を滑らせる。スカートの裾から手を潜り込ませ、下着をなぞれば、それはもう明らかだった。

「やめようか?」
「、ぁ…も…いじわる…」

クレフの指先を濡らすぬるりとした感触は、海にもまた、体への悦びを与えていた。海の甘い吐息をさらに誘うように、下着の隙間から細い指が潜り込む。夜に触れられる時よりも数段細い指が、海の中心をつ、となぞった。羞恥心と背徳感にさいなまれ、海は嘆願するように切なく声を発した。

「やっ、ね、え、その格好じゃ、嫌…っ」
「不服か? この姿の私には、愛されたくないと?」
「そんな、こと言って…な、い!…、道徳の、問題だってば…!」
「知ったことか」

クレフは楽しそうに言いながら、潤った指を舐め取った。海の味がする、と囁けば、海は羞恥のあまり自分の顔を両手で覆い、いやいやとかぶりをふった。
顔を塞いだのは好都合だ。その隙に下着をするりと剥がし、そして、氷の器へと手を伸ばした。そして、

「…ひゃぅ…!!」
海の口から悲鳴があがる。

「冷たっ、?何っ?うそっ…中…ぁ…!」

海はこれ以上ないほどに顔を赤くし、目を見開いた。
クレフの顔が、下腹部へと降りてくる。

「やっやだやだ!嘘っ!?やめっ…、」

嘆願むなしく、じゅるりと淫猥な音が響く。クレフは、海の花弁からしたたる甘い液を吸い上げ、次々とあふれ出る氷菓の溶液を舌で舐め取った。

「ひ…っ?ん…やっ!あ、っ…」
「ちょうどよく溶けている。これは最高の甘味だな」
「ちょ…っと、信じらん、な…、も、やめて!」
「まだあるから、全て食べてしまおう」

言うと、クレフは再び氷の器へと手を伸ばした。
二つ目の氷菓を押し入れた途端、海の内部からとろりと液体が溢れた。

「ひゃっ、、冷た、も…ぅやだぁ…っ!」
「先程よりも溶けるのが早い。中が熱くなってきたということだろうか」
「だろうか、じゃないわよ! ばかばかっ、もうやめてってば…!」

じたばたと抵抗する太腿を両手で抑え込む。小さな舌が海の花弁を這い回った。クレフの舌が、時折、思い出したように花芽を舐め取るので、そのたび海の口からは甲高い声が上がった。

「も、やら…吸っちゃ、らめ…」
「嫌か?」
クレフは唇を離すと、上体を起こし、そして海の頬に唇を落とした。
「嫌に決まってるでしょう!こんなの、信じられない…!」
「わかった。では吸い上げるのは控えよう」

言いながら、クレフは三つ目の氷菓を手に取り、そして海の内部へと押し込んだ。
「…?あ、…ぅ、?も…しないって、言った、のに…」

クレフは、前言通り、吸い上げることも舐め取ることもせず、ただ海の中からとろりと溢れ出す液体を見つめた。
「こんなに溶けだしてしまった。もったいないな、せっかくの…」
「や、だ…お願い…見ないで…!」
「ウミ、吸い上げられるのが嫌なら自分でかき出してみてはどうだ?」
「は?そんなこ、っ」

言いかけた海の目が、驚愕の色に見開かれる。クレフがニヤと笑いながら、四つ目の氷菓を手にしていたからだ。
「う、そ…でしょ…」
氷菓は、コロリといともたやすく侵入した。
「やああっ!ほんと、むり…やめ、っ」

「ウミ」
クレフは、海の手を取り、液体溢れるそこへと導いた。
ニコニコと仰望の笑みを浮かべながら耳元へ囁く。
「ほら、早く取り出さないと、また全て溶けてしまうぞ?」
抵抗を続ける海の手を、ぐいと強引に、下腹部へと押し当てた。

「むり、そんな…はずかし…」
「ウミ、見たい。早く」
「っ…信じらんな…、最低、変態…!」

目に涙を浮かべ、海はおずおずと人差し指を潜らせた。

「こんなの、っ…絶対、…っ許さないん…、だからっ…」
睨みつける海を意に介さず、クレフは「取れそうか?」と口の端を上げた。
「ふ…、っ取れなっ…ぁ、溶け、ちゃう…」

海の指先から、くちゅ、と濡れた音が響く。初めて見る、海が自身を慰める様に、クレフは愉悦のため息を漏らした。このまま滅茶苦茶に犯してしまいたくもなる。しかしそれ以上に、海の更に乱れた姿を見たいという欲求のほうが上回った。

クレフの手元にはすでに五個目の氷菓が用意されている。もうろうとした海の瞳が、絶望と共に再び見開かれた。
「クレふ…も、ゆるして…」

氷菓は容赦なく侵入する。命令されたでもなしに、海は内部を指でまさぐった。瞳が虚ろに揺れる。正常な判断ができない。ぴちゃりと音を立てながら内部からあふれ出す液体を止めることなど、到底不可能だった。

海にできるのは、目の前で意地悪く微笑む恋人に、救いと許しを求めることだけだ。

「クレ、…たすけ…て、とれな…」
クレフの小さな手を取り、そこへ導く。
「おねがい…」と海が囁けば、クレフとてそれを叶えないほどの非道ではない。海の嘆願通り、短く細い指が海の中を這いまわる。しかし二本の指をもってしても、氷菓を取り出すことは叶わなかった。

「ウミ、お前が奥まで押し込むから取れなくなってしまった」
言いながら、入口付近を執拗に撫でる。クレフにとっては、もはや氷菓のことなどどうでも良くなっていた。そうでなくても、温かな海の内部では、もはやすべて溶けてきってしまっていることだろう。

海の声の甘さを手掛かりに、クレフはより善い所を探るがごとく、二本の指で内壁をまさぐり続ける。
「やっ、そこ…押しちゃ、めっ…なん、か!変……っ」
一層、海の内部がきゅうきゅうと収縮する。いつもならば、もっと奥まで彼の長い指が届いているはずなのに。クレフの、本来の愛撫を知ってしまっている分、海の体はさらなる刺激を求めて震えた。

「はっ、だめ、っ…足りな…、もっと…」
言いかけて、海は口をつぐむ。自分は何を口走っているのか。気づいたときにはもう手遅れだった。クレフの口角が残酷に引きあがる。

「はっ?えっ…?ゆ、び、…?なに? 何…??」
小さな指が、三本、うごめくように海の内部をまさぐった。
「や、だ…何これ……いやっ、…」
バラバラと動く小さな指の感覚に、海は堪らず悲鳴のような喘ぎを漏らした。海の嬌声が掠れかけた頃、ようやくクレフが指を引き抜く。指から垂れたしたたりが、海の脚に零れた。
満足げに自身の指を舐め取るクレフを、海が恨みがましく睨んだ。
「そんな顔をしても、かえって私を煽るだけだぞ?」
クレフが、海の頬を親指でツ、となぞる。そして、横たわる体へ覆いかぶさり、首筋に歯を立てた。
冷えた唇の感触と、下腹部に押し付けられる熱量に、海の息は一層甘いものと変わっていく。

「おねが…い、するなら、格好…を、」
変えて、と言いかけた海の口から「ひ」と悲鳴が漏れる。
ずぷ、と音を立てた挿入の圧迫感に、海の目に再び涙がにじんだ。

「や…嘘…、うそ…やだ…っやめてクレ、フ!」

遠慮のない律動に、海の体はびくびくと跳ね、嬌声がとめどなく漏れた。
花弁からは、溶けた氷菓と愛液が混ざり合って溢れ、じゅぷじゅぷと淫猥な音を立て続ける。

体積も寸法もいつもより足りていない。海の内部はもっともっとと、ねだるように収縮を繰り返す。入口ばかりを浅く擦られ、焦らされるような刺激に、海は普段よりも声を高くした。

「お前は姿を変えろと言うが」

律動の合間、クレフが言った。
「『これ』でも十分に善さそうではないか」
「は、っばか…も、おねが、い…」

「お前が望むのなら、こちらとしてもやぶさかではないが、どうする? お前次第だ。このまま達しても良いのだぞ?」
「クレフの、…いじわる…っ、ねっ、そこ…じゃ、イけない…の…お願い、いつもの、…とこ…」

背にぎゅうと腕を回し涙声で嘆願する海の声に、クレフは全身がゾクリと沸き立つような震えを覚えた。自分を求める淫らな姿がかわいくて仕方がない。このまま、でたらめに律動してしまいたい欲求を抑え、クレフは言った。

「では、どうしてほしいか、このかわいい口から教えてもらおうか」
言いながら、親指で下唇をなぞると、海の目尻からは何粒もの涙が伝った。
「おねが…い…、大人の姿になって…」
「それで?」
はーはーと息を乱し、何かを言おうと口を開いては恥じらい、開いては恥じらい、そしてようやく海は声を発した。
「クレフの…、もっと……おくまで、ほしい…」
海の嘆願を聞くやいなや、クレフは、光悦の笑みを浮かべると、性急に海の唇を塞ぎ、そして舌を絡め取った。

「んっ…くぇふ…おねが…も…やぁ…」

ちゃんと言ったのに! 責めるようにクレフの背を叩く海の手が、ある瞬間からぴたりと動かなくなった。

叩いていた背の、抱き心地が変わる。
大きな舌に、口内のすべてを絡め取られる。

「…?…ぁ? なに…?」

挿入したまま、圧倒的に膨張した熱に、海は悲鳴を上げた。
「ひゃっ!…やだっ、!嘘っ…こんな、の、っ聞いてな、…」
先程までとは全く異なる、狂暴なまでの圧迫感が海を攻め立てる。じゅぷじゅぷと、激しく深い律動が、海の声をさらに乱した。
「待っ…や、急に、…おっきぃ…の、っらめっ、うごいちゃ…!やっ待っ、て、おねがい…!」
「もっとだ待てだと、ずいぶんわがままなことだ」
「やっ、クレフの、せいでしょ…っ、」

クレフは満足げに微笑むと、再び海の唇を塞いだ。
先程まではチロチロとまさぐることしかできなかった海の舌を、今度は思う存分蹂躙することができる。そのことが、クレフに喜びを与えた。海の唇からは、唾液がしとどに溢れ出している。

(舌、大っきぃ…こんなの…、たべられちゃう…っ)

舌を吸われるたびに内壁がわななき、それもまたクレフを喜ばせた。達しそうになるたびに、クレフが律動を止めれば、海が「なんで?」と潤んだ瞳を向けた。

「このまま」
クレフが言った。
「このまま、ウミの中に出したい」

クレフの、切なげな声に、海の内部はより一層きゅうと収縮した。

どんなにひどいことをされても、
この人に求められることが堪らなく嬉しい。
恥も外聞もなく、ただ欲望を打ち付ける姿が愛おしくてたまらない。
海は、そっと微笑み、クレフを見つめた。

「くれふ…中、に…して…」
それは、クレフにとってもギリギリのところだった。奥歯をグと噛み締めゴクリと喉を鳴らす。もうあとわずかで達してしまうことは免れない。それならば、海にも更に快感を与えたい。愛らしい声をもっと聞かせてほしい。もっと自分を求めてほしい。愛と欲が溢れる。クレフは更に腰を進めた。

「好きだ」
そんな言葉が自然と口から零れる。海の嬌声の中にも、クレフへの想いを伝える言葉が混じる。そして、海が、愛する人の名を呼べば、二人が達するまでは間もないことだった。




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「もー、ほんっと信じられない!」
今日何度も放たれた不満の言葉にクレフは眉尻を下げた。
洗ってやろうか?という提案は当然却下されたため、湯舟から一人寂しく、洗い場にいる海の背を眺める。

「女の子は、お腹を冷やしちゃいけないんだから」
「それに関しては全面的に謝罪する」
「それに、もうあのアイス、食べられなくなっちゃったじゃない」
「なぜ? 食べれば良かろ?」
「食べたら今日のこと思い出しちゃうでしょ!あれ結構好きだったのに!」

体を洗い終え、湯舟に戻った海は、ぷんぷんと怒りながらも、それでもクレフの隣へと腰を掛けた。

「どうしたら機嫌を直してくれるだろうか?」
クレフがなんとなしに呟いた言葉に、海の顔がパッと輝く。
「じゃ、一つだけお願い聞いて!」
「内容による」
「だめよ! 私だって今日のこと事前にお願いされてたら絶対に断ったんだから! 許してほしかったらクレフも言うこと聞いて!」
「こわいな、一体なんだ?」

いぶかしむクレフの耳元に唇を寄せ、海が囁いた。

「次する時は、-- ね?」

クレフはパチリと一度瞬きをし、それから海を横目で小さく睨んだ。まあ、自分が今日したことに比べれば大したことはないか。
それにしても、海がそのようなことを言い出すとは。意外と言えば意外だ。いったい誰に似たのやら。いや、そんなのは一人しかいない。

「ウミ……お前、少し私に似てきたな」

海が照れくさそうにはにかんだ。

「約束よ?」






『氷菓の実!』
end





すみませんでした笑。


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