序章

 
 
詳細は省くが転生しました。

 
前世の記憶を持ったまま目が覚めたらなんと高校二年生に若返っていて、驚きのあまり声を上げたら先生に怒られた。
なんと授業中だった。
教室のあっちこっちから笑い声が上がり気恥ずかしくなりながらも周囲を見回して私はここが帝丹高校であると知った。なんと前世でも有名だったあの工藤新一君がいたのだ。
 
おいおいマジかよ神様。
 
新一君と同じクラスであると知った以上は仲良くならない選択肢はないとミーハー根性丸出しで新一君に声を掛けて一方的にフレンドリーになると(会話の中で今日が転校初日であると知った)こちらをチラチラと窺っていた蘭ちゃんと、そんな蘭ちゃんの背中を押した園子ちゃんに声を掛けられてこれはチャンスだと思い、新一君に気があるのかと園子ちゃんに聞かれてあくまでただのファンだよと上手く誤解を解いて仲良くなることに成功!
 
そして私は新一君と蘭ちゃんが幼なじみであり空手部に所属していて且つ主将も務めている蘭ちゃんがこの間あったという空手の都大会で優勝したので明日(なんと今日は土曜日だった)新一君とトロピカルランドへデートに行くんだという情報を園子ちゃんから仕入れ、トロピカルランドって行ったことないんだよねとアピールすればじゃあこの余ったチケットあんたにあげるから蘭と新一君のデートの様子を月曜日に報告しなさいよでも邪魔しちゃダメだからねと園子ちゃんからトロピカルランドの招待券を貰って迎えましたデート当日。
 
え?どうやって一晩過ごしたのかって?
知ってる?マンガ喫茶ってこの時代にはもうあったんだよ。
つまりはそういうことである。
 
比較的値段の安い店で服を購入して着替え制服は最寄り駅のロッカーにぶっ込み、はりきって二人を尾行してトロピカルランドに到着!仲睦まじい様子をコンビニで買った使い捨てカメラでこっそり盗撮しつつ私は私でアトラクションを満喫!
あっお金はどうしたのかって?何故か私の財布がスクールバッグの中に入っててどういう仕組みなのかこの時代のお札になってたから問題なく使えるとわかったのでそこからお支払いしてまーす。
 
さて尾行していると二人は例のミステリーコースターの方へ向かったので私も向かおうと思ったけどぶっちゃけ殺人事件に巻き込まれて狼狽えてるジンとウォッカを前にして笑いを堪えられる自信がなかったのとさすがに首なし死体を望んで見に行く気はなかったので華麗にスルーしてやってきました夕暮れ時。
 
ウォッカの尾行をする新一君が置き去りにした蘭ちゃんに私が連れ戻してあげるよと私も二人を尾行していたという種明かしをしたついでに約束をして使い捨てカメラを蘭ちゃんに預け、新一君の後を追いかけて取引現場を覗き見しつつ盗撮している新一君にデート中に泣いてる女の子を一人にするなんて最低だぞさっさと戻ってあげな私には刑事をやってる兄がいるから大丈夫なんて適当に捲し立てて引き返させ、私が代わりにジンに殴られてAPTX4869を飲まされて一か八かの賭けに勝って幼児化したところまでがプロローグ。
 
ただのOLから高校二年生へ転生しそこから更に若返り6〜7歳児くらいになった私は自力で目を覚まして警備員に見つかる前になんとかトロピカルランドから抜け出し雨の中を夜通しめちゃくちゃ物騒な裏道を歩いてついには力尽きてどっかの公園のすべり台の下で寝落ちた。
きっと新一君は無事に蘭ちゃんのところに戻れたんだと思いたいけど薬を飲まされる前にジンが妙なことを言っていた。
 
 
――『こんなガキ共につけられやがって……』
 
 
そして目が覚めたのが早朝。集まったご老人達のラジオ体操で叩き起こされた。いつの時代も変わらないんだなぁ……元気なことで。
ともあれ人がいなくなるのを待っていたらすっかり日が昇りお腹も空いてきたし服もなんとかしなくちゃならないしで出来るだけ服の汚れを落として頭から流れた血は公園の水道で洗い流し財布の中身を確認すると今日一日くらいはなんとかなりそうだった。
 
となればまずは服!それからご飯を食べて新一君に会いに行こう!家までの道は知らないけど有名人なんだからその辺の人に聞けばわかるでしょ、大丈夫大丈夫!
ついでに新一君が無事かどうかも確認しておこう!
 
 
なーんてのんきに街中を歩いていたら当然のごとく巡回中のお巡りさんに見つかって補導され(そりゃそうだ)ボウヤの名前と通ってる学校と担任の先生の名前を教えなさいと言われたので、誰がボウヤやねん!とツッコミたくなる気持ちを抑えて適当にその辺の看板から思いついた偽名を名乗り帝丹小学校の小林先生の名前を出して(あ、でもこの時はまだ赴任してきてないんだっけ)お巡りさんが無線で他の仲間に連絡を取っている隙を突いて一目散に逃げ出した。
 
やっほーい!小学生の身体って身軽ー!!高校生の身体も軽かったけど小学生ってもっとすばしっこいんだなー!!でも体力なーい!!なんて浮かれていたら脇道から現れた男の人の足に激突して尻もち突いて上を見上げたらなんと実はジンでしたまでが漫画で例えるところの第一話。
もちろん殺した(と思っている)相手のことなんて覚えていないジンは私があの時の女子高生だと気付くはずもなかった。
 
「……」
「……」
 
何故か私のことをじっと見てくるジンをめちゃくちゃデカいなさすが大男ていうかもう銀髪になってるのかなんてくだらないことを考えながら見上げていたらウォッカが後ろから現れた。
ていうかこんな脇道で何してたんだこの人達。
 
「どうしやした兄貴?……なっ、兄貴、このガキ……!」
「!」
 
ウォッカまで私を凝視してきてドキッとする。
まさか私があの女子高生だってもう気付かれた!?
 
「……なんでもねぇよ、ガキがぶつかってきただけだ。おいガキ、あまりウロチョロするんじゃねーよ。目障りだ」
 
と思ったけど杞憂だったみたいだ。
子供相手にも容赦なく怖い顔で睨み付けてくるジンにやばい組織の最高幹部めちゃくちゃ怖いと感激していたら後ろからお巡りさんが私を呼びながら追いかけてきたのでこの二人が立ち去る前に利用してやろうとジンの足にしっかりしがみついた。
 
誰がこんな機会を逃すかっての!
ミーハー根性なめんなァ!
 
「あ~~っ!!パパだ~~!!おかえりなさ~~い!!ボクずぅーーっと待ってたんだよ!!えらいでしょ~~!!」
 
途端にギョッとした顔をするジンとウォッカ。ふははは!私とここで会ったのが運の尽きだったのさ!!その顔を写真に収めたいですありがとうございます!!
ちなみにリスペクトはコナン君です。
 
「ボウヤ、その人が君のお父さんなのかい?」
「そうだよ!カッコイイでしょ~!!」
「このガキ……!何をふざけたことを……!!」
「待てウォッカ……お巡りとは言え[[rb: 警察 > サツ]]の前だ。抑えろ……」
「で、ですが……」
「おい、元気なのはいいが一人で出歩くなと言っておいたはずだぜ?おまけに服まで汚しやがって……これは後で仕置きをする必要がありそうだなァ?」
「えー!?おやつ抜きはヤダ~~!!」
 
声を荒げたウォッカにジンが小声で何かを言いながら抑えたかと思うと予想通り事を荒立てないように茶番に乗っていただけたのでそのまま子供のフリを続行すると、すっかり信じたお巡りさんはだいぶお人好しだと思うけどジンに向かってお子さんから目を離さないように注意してくださいねと言って立ち去ったから思わず吹き出したら思いっきり睨まれたよ殺気がすごいぞパパ!!!!
 
「……フン、とんだ茶番だったな。おいガキ、そろそろその汚ねぇ手を離せ。痛い目に遭いたくなかったらな」
「パパひどーい!ボクさっきちゃんと手ぇ洗ったもん!!」
「オレ達はガキのままごとに付き合っているほど暇じゃねえんだよ。……ウォッカ」
「オラァ!さっさと兄貴から離れろ!!」
「あいてっ!ちぇ~っ、つまんないの」
 
ジンに蹴り飛ばされるかなと思ったらウォッカに襟首を掴まれて引き剥がされてまた尻もちを突いてしまった。もうちょっと遊びたかったんだけどこれ以上やったら本気で痛めつけられそうだしここは素直に引き下がるとしよう。
ところですごく今更なんだけどこんな往来で普通にコードネームで呼んでていいの??
 
「行くぞ」
「ヘイ」
「パパ~!!また会おうね~~!!」
 

 
「……見ましたかい?兄貴……あのガキの目……」
「ああ……」
「まさかあのガキ、あの女と何か関係があるんじゃ……」
「フ……あるはずがねえさ。あれは朝には消える夢の話だ……笑い話にもならねぇよ」
 

 
今度こそ立ち去る二人の背中に大声で呼びかけてみたけど完全にスルーされた。
 
あーあ、ジンとウォッカにまた会えたのは嬉しかったけど走って逃げたせいでますますお腹が空いちゃった。コンビニは見当たらないし先にその辺で大衆食堂でも見つけて入ろうかと思ったけど子供一人で来るのはおかしいと怪しまれてまたお父さんとお母さんはと聞かれるパターンだよねどうしようかなぁ。またジンをパパなんて呼んだらさすがにマズいかな?
 
でもせっかくそこにいるんだからこれでおしまいなんてもったいないよね!それにこの頃のジンとウォッカって比較的あんまりそんなに怖くない方だと思うし!ヤバい人に変わりないけど!!銀髪だったけど!!
まあバレたらバレたでその時だ。新一君に迷惑をかけずに消えるとしよう。
 
というわけで第二の人生をエンジョイすると決めている私はジンとウォッカの後を追いかけることにした。


私がこの世界の名探偵コナンになるのだ!!


END.
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