合流
一方、当のスズは商店街をぶらついていた。
追跡側を抜けたものの、未だどちらにもつかず中立状態のため、追跡側に目をつけられてはいない。
しかし、逃走側に付いたクロに合流するということは仲間と見なされるということ。だから自由に行動できる今ならば、双方の状況を把握しやすい。クロに合流する前に情報収集は済ましておきたいのだ。
「とはいえ、まだあまり動きはない、か。激しくなるのは後半かな……」
今までは大体8月中頃には殆んど終わっていた。裏切りや仲間割れなどで、逃走側が自滅したためだ。
「でも、今回は中々見所がありそうだってクロが言ってたしな………キノ…か。どんな子だろ」
実は、クロからのメールで粗方の状況は分かっていた。そしてその内容には必ず『キノ』という名前があったのだ。文面から察するにキノは女の子で逃走側のリーダーであると言うこと、一見、無口で無愛想だが話してみると優しいとか。クロがかなり気に入っている事が分かり、驚きは勿論あるが嬉しさもあった。
「ったく、祭の最中に何ナンパしてんだか。でも、クロがそこまでのめり込むのは初めてだからなぁ」
あのクロが、必死に口説いている姿を想像し、笑いを噛み殺していると、向かいの道路に見覚えある姿を見つけ、近くの電柱に体を隠す。
背中までの緩いウェーブの髪を揺らし、ノースリーブのワンピースに高いヒールのサンダルを履いた女性。
「アヤ……」
スズはそう呟くと眉をひそめた。以前、クロから聞いたことがあった。
********
『スズ………』
『ん?』
『最近な、告白?されたんだよ』
『へー、ってなんで疑問系なんだよ。で?受けたのか?』
『いや………断った』
『ありゃりゃ。可哀想に………』
『だって、もうじき祭だぞ。年に一度だし、今年で参加できるのは最後だしさ。構ってやれないと思うし』
『お前、祭になると周りが疎かになるからなぁ。妥当な判断じゃないか?』
『ああ、アヤには悪いけどな』
『だな…………って、アヤ?アヤって言ったか?』
『?ああ』
『あああ………マジでか』
『なんなんだよ、スズ?ハッキリ言ってくれよ』
『アヤってのはな、ミスキャンパスに選ばれた奴だぜ』
『ふーん、で?』
『ふーんて………反応薄いな、おい……そいつに惚れてる男は腐るほどいるんだが、中にはたちの悪いやつもいるんだよ』
『そうか………』
『目ぇ付けられるぞ?』
『は?なんで?』
『だからっ!!アイドルの告白を蹴ったからだよ!!』
『………でもさ、もし受けたとしても結果は同じだろう?』
『確かにな』
『だろ?』
そんな会話をした数日後、なぜかスズはアヤに呼び出された。
『貴方がスズ?』
『あぁ、そうだけど』
『ねぇ、クロを説得してくれないかしら?』
『説得?なんの?』
『私と付き合うように、よ』
『は?』
『は?じゃないわよ。私はねクロが大好きなの。だから自分のものにしたい』
『…………フラれたんじゃないのかよ?』
『ち、違うわよ!照れてるだけよ!!私をフルなんてあり得ないわ!!』
『(すげぇポジティブシンキングだな………)ふーん』
『私はミスキャンパスなの。分かる?私がフラれるなんてあっちゃいけないことなの』
『(うわ………自惚れてんなぁ。てか、おめでたい奴だな)なんでフラれたかわかんねぇの?』
『はあ?知らないわよ。何も言われなかったもの』
『そっか………理由すら言わないなんてなぁ。そうとう嫌だったんだな』
『ちょっと!どういう意味よ!?』
『(クロ、確かにお前の嫌いなタイプだな(笑))………近々、祭があるだろう?』
『祭?………あぁ、毎年やってる鬼ごっこ?』
『それに専念したいんじゃねぇの?毎年楽しみにしてるからなぁ、あいつ』
『……………』
『クロは恋愛に興味ないしな。かなり頑張らないと落ちないぜ?』
『……………』
『ま、せいぜい頑張りな。(絶対無理だけど)』
『………なるほどね。分かったわ……じゃあね』
『………変な女…………』
*******
「確かその後、サイと付き合ったんだっけ。追跡側に居たよな。今はどうか知らねーけど」
アヤはあの後、なぜかサイと付き合った。理由は分からないが、クロがヤキモチを焼くとでも思ったのだろう。ミスキャンパスだか知らないが、性格があれではサイも大変だろう。しかし、アヤが積極的に祭に参加していると言うことは、何か良からぬ事を考えている可能性が高い。
アヤが行動に出る前に、なんとかクロ達と合流しなくては。
「さて、急ぎますか」
スズは、んーっと伸びをすると地下街に向かい歩き始めた。
追跡側を抜けたものの、未だどちらにもつかず中立状態のため、追跡側に目をつけられてはいない。
しかし、逃走側に付いたクロに合流するということは仲間と見なされるということ。だから自由に行動できる今ならば、双方の状況を把握しやすい。クロに合流する前に情報収集は済ましておきたいのだ。
「とはいえ、まだあまり動きはない、か。激しくなるのは後半かな……」
今までは大体8月中頃には殆んど終わっていた。裏切りや仲間割れなどで、逃走側が自滅したためだ。
「でも、今回は中々見所がありそうだってクロが言ってたしな………キノ…か。どんな子だろ」
実は、クロからのメールで粗方の状況は分かっていた。そしてその内容には必ず『キノ』という名前があったのだ。文面から察するにキノは女の子で逃走側のリーダーであると言うこと、一見、無口で無愛想だが話してみると優しいとか。クロがかなり気に入っている事が分かり、驚きは勿論あるが嬉しさもあった。
「ったく、祭の最中に何ナンパしてんだか。でも、クロがそこまでのめり込むのは初めてだからなぁ」
あのクロが、必死に口説いている姿を想像し、笑いを噛み殺していると、向かいの道路に見覚えある姿を見つけ、近くの電柱に体を隠す。
背中までの緩いウェーブの髪を揺らし、ノースリーブのワンピースに高いヒールのサンダルを履いた女性。
「アヤ……」
スズはそう呟くと眉をひそめた。以前、クロから聞いたことがあった。
********
『スズ………』
『ん?』
『最近な、告白?されたんだよ』
『へー、ってなんで疑問系なんだよ。で?受けたのか?』
『いや………断った』
『ありゃりゃ。可哀想に………』
『だって、もうじき祭だぞ。年に一度だし、今年で参加できるのは最後だしさ。構ってやれないと思うし』
『お前、祭になると周りが疎かになるからなぁ。妥当な判断じゃないか?』
『ああ、アヤには悪いけどな』
『だな…………って、アヤ?アヤって言ったか?』
『?ああ』
『あああ………マジでか』
『なんなんだよ、スズ?ハッキリ言ってくれよ』
『アヤってのはな、ミスキャンパスに選ばれた奴だぜ』
『ふーん、で?』
『ふーんて………反応薄いな、おい……そいつに惚れてる男は腐るほどいるんだが、中にはたちの悪いやつもいるんだよ』
『そうか………』
『目ぇ付けられるぞ?』
『は?なんで?』
『だからっ!!アイドルの告白を蹴ったからだよ!!』
『………でもさ、もし受けたとしても結果は同じだろう?』
『確かにな』
『だろ?』
そんな会話をした数日後、なぜかスズはアヤに呼び出された。
『貴方がスズ?』
『あぁ、そうだけど』
『ねぇ、クロを説得してくれないかしら?』
『説得?なんの?』
『私と付き合うように、よ』
『は?』
『は?じゃないわよ。私はねクロが大好きなの。だから自分のものにしたい』
『…………フラれたんじゃないのかよ?』
『ち、違うわよ!照れてるだけよ!!私をフルなんてあり得ないわ!!』
『(すげぇポジティブシンキングだな………)ふーん』
『私はミスキャンパスなの。分かる?私がフラれるなんてあっちゃいけないことなの』
『(うわ………自惚れてんなぁ。てか、おめでたい奴だな)なんでフラれたかわかんねぇの?』
『はあ?知らないわよ。何も言われなかったもの』
『そっか………理由すら言わないなんてなぁ。そうとう嫌だったんだな』
『ちょっと!どういう意味よ!?』
『(クロ、確かにお前の嫌いなタイプだな(笑))………近々、祭があるだろう?』
『祭?………あぁ、毎年やってる鬼ごっこ?』
『それに専念したいんじゃねぇの?毎年楽しみにしてるからなぁ、あいつ』
『……………』
『クロは恋愛に興味ないしな。かなり頑張らないと落ちないぜ?』
『……………』
『ま、せいぜい頑張りな。(絶対無理だけど)』
『………なるほどね。分かったわ……じゃあね』
『………変な女…………』
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「確かその後、サイと付き合ったんだっけ。追跡側に居たよな。今はどうか知らねーけど」
アヤはあの後、なぜかサイと付き合った。理由は分からないが、クロがヤキモチを焼くとでも思ったのだろう。ミスキャンパスだか知らないが、性格があれではサイも大変だろう。しかし、アヤが積極的に祭に参加していると言うことは、何か良からぬ事を考えている可能性が高い。
アヤが行動に出る前に、なんとかクロ達と合流しなくては。
「さて、急ぎますか」
スズは、んーっと伸びをすると地下街に向かい歩き始めた。
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