合流

……………―
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次の日の早朝、全員がロビーに集まっていた。いつも通り、待ち合わせ場所の確認をしていた。

「さて……あと30分か…他に何もないようなら、これで……」」
「……ちょっといい?」
「ん?なんだ、キノ」
「珍しいわね。キノが話に参加するなんて」

周りの驚きの視線を受け流し、キノは静かに切り出す。

「昨日の……スズだったかしら。彼を探す事を目的に入れてほしいの」
「えぇ?ムリじゃない?逃げるだけで精一杯なのに、周りに気を配るなんてムリだよ」

ハナが驚いたようにキノを見る。

確かにそうだ。
追跡が厳しくなってきた今では、難しいのはわかる。だが、

「でもだからと言って、早い内に合流しないと、後回しにしたらもっと不可能になるわ」
「確かにそうだけど・・・」
「今が最後のチャンスだとしたら・・・?今を逃して、もしかしたらスズがまた追跡側に戻るかもしれないとしたら?それこそ引き入れが難しいわ」
「うーん「いいんじゃない?スズを探しましょ」ユカ!?」

今まで黙って聞いていたユカがキノに賛同したのを見て、ハナが驚きの眼差しを向ける。
祭りに一番シビアなユカが、危険を犯してまでスズを探す事に賛成するなんて。しかも相手は元追跡側で顔も素性だって、クロの親友ということしか知らない。あまりクロの親友を疑いたくはないが、もしかして・・・という場合もあるのだ。
キノの提案にも驚きだが、ユカの心境の変化にも驚いた。

「ありがとう、ユカ」
「ふふ、いいのよ。キノが折角提案したんだしね。それに、リーダーの決定は絶対、でしょ?」
「・・・そうだったわね。皆はそれでいい?」
「うん!キノ姉ちゃんがそう言うなら、俺、従うよ」

「わ、私も」
「俺も構わないぜ」

皆が笑顔で賛成するのをみてキノは微かに頷く。

「なら、それを前提に作戦を立て直しましょう」
「だな。時間がない、急ぐぞ!」
「「「おー!!」」」

キノとクロの言葉に士気を上げる一同。
そして15分後解散した。

「キノ」

出入り口に向かうキノの背後からクロが呼び止めた。何事かと首を傾げながら振り返るキノに、クロは優しく微笑む。

「なに?」
「ありがとな」
「?」
「スズの事、提案してくれてさ」
「・・・あぁ、うん」

気恥ずかしくなったキノは赤くなりうつむく。そんなキノの頭をくしゃりと撫でながら横を通りすぎていく。

「さて!今日も元気に頑張るぞ!キノ!」
「見つかるといいわね」
「おう!!行くぜ!」
「・・・うん」

さらに赤くなるキノの手を取ると、クロは足取り軽く街へ向かっていった。

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