合流
やっと会えたな………
…夜、無事に全員が待ち合わせ場所に合流した。
待ち合わせ場所…町外れにある小さな旅館にキノ達はいた。
まず、温泉で昼間にかいた汗を流し、売店にあった弁当を食べながら報告と作戦会議を始めた。
「じゃあ、俺達からな。地下街はもうやめた方がいいな。周りに追跡者が多すぎる」
「…でも、お昼くらいに急に静かになったの。理由はわからないけど…」
クロとモモはあのあと、地下街を脱出して近くの建物を転々としながら、逃げつづけていた。地下街は中は安全なエリアだが、入口付近や周りは無法地帯。地下街に入る前に捕まる可能性が高い。おそらく、追跡者もそれを見込み、入口付近を張っていた……と考えれば納得がいく。
「それじゃあ、私達ね。駅を避けて高架下の空きテナントに隠れてたけど、あそこも危険ね」
「見つかりはしなかったけど、隠れ続けるのはムリ。結局、走り回る事になるよ。まあ…安全なとこなんてそうそう無いだろうけどさ」
ユカとハナは、空きテナントを抜け出した後、結局休む間もなく逃げ回った。何故なら、隠れられそうな場所にはすべて追跡者がいたせいだった。入口に張っていたり、中で待伏せていたり…など、安全な場所など存在しない。駅前付近はやはり危険という訳だ。
「最後は僕達だね。ビル街に逃げ込んだけど、こっちも追跡者がうじゃうじゃしてたよ」
「タケのおかげでビルの一室に隠れて凌げたけど、やっぱり一つの場所に留まるのは危ないわ」
あのあと、キノとタケもほかのメンバーと同じで、様子を見ながらあちこち逃げ回っていた。しかし、なぜか隠れている場所には、必ず奴らが押しかけてくるため気が抜けない。
皆が黙り込んでいると、ふとタケが口を開いた。
「そういえば、スズ兄ちゃんどうしてるかな…クロ兄ちゃん、知ってる?」
「ん?いや……スズの奴、どこにいるのかな」
「……スズ?知り合い?」
聞き慣れない名前に、キノが二人に疑問を投げる。
「ああ、スズは俺の親友だ。気難しいが頭が切れるし、メカに強いし頼りになる」
「へぇ……もしかして、追跡者だったりして?」
クロの言葉に感嘆の声を上げたハナだったが、ふと心配そうな顔をし、クロに尋ねる。
今は鬼ごっこの最中、たとえ親友だとしても追跡者なら安心はできない。
そんな皆の意図を感じ取ったのか、クロは苦笑しながら否定する。
「いや、今回は中立だ。今年の追跡側の策士とはウマが合わないらしいからな」
「なあんだ!よかった!!」
「……ねぇ、クロ?スズって人………確か『技工師』だって聞いたんだけど、本当?」
「なんだユカ、知ってるのか。ああ、あいつは『技工師』って言ってな、逃走側に付けさせる事ができれば、かなり有利になるはずだ」
「ぎこうし?なにそれ…」
不思議そうな顔をするキノの顔を見たユカが、ちらりとクロに視線を向け説明する。
「『技工師』っていうのは、サーチと呼ばれる特殊なレーダーを使用出来る唯一の存在なの。ここにいる『策士』のクロと『技工師』のスズ…毎年、追跡側を勝利に導いてきた名コンビ……そうよね?クロ」
「ははは……まあ、な。でも今年から無条件で離脱可能だからな。新しい策士が上手くやってるとは思うが、あのスズを扱うのは難しいと思うぜ?」
「なんで?」
「あいつは……とにかく真っ直ぐで頑固でな。俺も手を焼く事が多い。でも、何より仲間を大切にするし、言った事は最後までやり遂げる、しっかり者でもある」
嬉しそうににこやかに、親友を語るクロに、ユカが微笑する。
「随分と買ってるわね。スズって人のこと」
「おう!親友であり、最高の相棒だからな!!」
明るく笑うクロを見たキノ達は、何だか暖かい気持ちになり微笑む。
自分達にもそんな風に思える、皆に自慢出来る親友が出来るだろうか…。
すっかり和んだ一同は、しばらく談笑したあと、今後の事を話し合い、明日に備え早めに眠る事にした。
(スズ……か。どんな人だろう…)
布団に入りキノは考えていた。
『技工師』…『監査』のタケと『策士』のクロ。彼らだけでもかなり助かっていたが、スズも来てくれればメンバーの安心感も高くなるだろう。サーチというものがどういうものなのか…機械に疎いキノには分からないが、クロとユカの話からしてかなり便利なものだということは分かる。
確実に、安全に勝つ(逃げ切る)には、彼、スズと合流するのが得策だ。逃げ切るのも大事だが、少しでも協力してくれる仲間を集うのも、今の自分達には大切なのだ。
(明日、提案してみよう。クロもスズに会いたいだろうし…)
心の中で決意すると、キノはゆっくりと眠りの世界に入って行った。
逃走ゲーム
《合流》
《合流》
…夜、無事に全員が待ち合わせ場所に合流した。
待ち合わせ場所…町外れにある小さな旅館にキノ達はいた。
まず、温泉で昼間にかいた汗を流し、売店にあった弁当を食べながら報告と作戦会議を始めた。
「じゃあ、俺達からな。地下街はもうやめた方がいいな。周りに追跡者が多すぎる」
「…でも、お昼くらいに急に静かになったの。理由はわからないけど…」
クロとモモはあのあと、地下街を脱出して近くの建物を転々としながら、逃げつづけていた。地下街は中は安全なエリアだが、入口付近や周りは無法地帯。地下街に入る前に捕まる可能性が高い。おそらく、追跡者もそれを見込み、入口付近を張っていた……と考えれば納得がいく。
「それじゃあ、私達ね。駅を避けて高架下の空きテナントに隠れてたけど、あそこも危険ね」
「見つかりはしなかったけど、隠れ続けるのはムリ。結局、走り回る事になるよ。まあ…安全なとこなんてそうそう無いだろうけどさ」
ユカとハナは、空きテナントを抜け出した後、結局休む間もなく逃げ回った。何故なら、隠れられそうな場所にはすべて追跡者がいたせいだった。入口に張っていたり、中で待伏せていたり…など、安全な場所など存在しない。駅前付近はやはり危険という訳だ。
「最後は僕達だね。ビル街に逃げ込んだけど、こっちも追跡者がうじゃうじゃしてたよ」
「タケのおかげでビルの一室に隠れて凌げたけど、やっぱり一つの場所に留まるのは危ないわ」
あのあと、キノとタケもほかのメンバーと同じで、様子を見ながらあちこち逃げ回っていた。しかし、なぜか隠れている場所には、必ず奴らが押しかけてくるため気が抜けない。
皆が黙り込んでいると、ふとタケが口を開いた。
「そういえば、スズ兄ちゃんどうしてるかな…クロ兄ちゃん、知ってる?」
「ん?いや……スズの奴、どこにいるのかな」
「……スズ?知り合い?」
聞き慣れない名前に、キノが二人に疑問を投げる。
「ああ、スズは俺の親友だ。気難しいが頭が切れるし、メカに強いし頼りになる」
「へぇ……もしかして、追跡者だったりして?」
クロの言葉に感嘆の声を上げたハナだったが、ふと心配そうな顔をし、クロに尋ねる。
今は鬼ごっこの最中、たとえ親友だとしても追跡者なら安心はできない。
そんな皆の意図を感じ取ったのか、クロは苦笑しながら否定する。
「いや、今回は中立だ。今年の追跡側の策士とはウマが合わないらしいからな」
「なあんだ!よかった!!」
「……ねぇ、クロ?スズって人………確か『技工師』だって聞いたんだけど、本当?」
「なんだユカ、知ってるのか。ああ、あいつは『技工師』って言ってな、逃走側に付けさせる事ができれば、かなり有利になるはずだ」
「ぎこうし?なにそれ…」
不思議そうな顔をするキノの顔を見たユカが、ちらりとクロに視線を向け説明する。
「『技工師』っていうのは、サーチと呼ばれる特殊なレーダーを使用出来る唯一の存在なの。ここにいる『策士』のクロと『技工師』のスズ…毎年、追跡側を勝利に導いてきた名コンビ……そうよね?クロ」
「ははは……まあ、な。でも今年から無条件で離脱可能だからな。新しい策士が上手くやってるとは思うが、あのスズを扱うのは難しいと思うぜ?」
「なんで?」
「あいつは……とにかく真っ直ぐで頑固でな。俺も手を焼く事が多い。でも、何より仲間を大切にするし、言った事は最後までやり遂げる、しっかり者でもある」
嬉しそうににこやかに、親友を語るクロに、ユカが微笑する。
「随分と買ってるわね。スズって人のこと」
「おう!親友であり、最高の相棒だからな!!」
明るく笑うクロを見たキノ達は、何だか暖かい気持ちになり微笑む。
自分達にもそんな風に思える、皆に自慢出来る親友が出来るだろうか…。
すっかり和んだ一同は、しばらく談笑したあと、今後の事を話し合い、明日に備え早めに眠る事にした。
(スズ……か。どんな人だろう…)
布団に入りキノは考えていた。
『技工師』…『監査』のタケと『策士』のクロ。彼らだけでもかなり助かっていたが、スズも来てくれればメンバーの安心感も高くなるだろう。サーチというものがどういうものなのか…機械に疎いキノには分からないが、クロとユカの話からしてかなり便利なものだということは分かる。
確実に、安全に勝つ(逃げ切る)には、彼、スズと合流するのが得策だ。逃げ切るのも大事だが、少しでも協力してくれる仲間を集うのも、今の自分達には大切なのだ。
(明日、提案してみよう。クロもスズに会いたいだろうし…)
心の中で決意すると、キノはゆっくりと眠りの世界に入って行った。