水の街

夢とは支離滅裂………
その言葉を今更ながらに実感した。







 黒呼と闇爾との再会に驚きながらも、かぐやはとても心に余裕が出来た。今はこの世界を消し、自分の時間に戻らなければならない。そのためには、月夢鏡のカケラ即ち魂のカケラを手に入れ無ければならない。

(私の時間に戻らなければ……死ぬなんて絶対いや)


黒呼に手を引かれながら、かぐやは決意を固めた。



………―
……―
…―


 目の前一面に広がる青い海。青い空。そして………

「凄い装飾の船……」

 眩しいくらいの照明を散りばめた客船。その船はゆっくりとこちらに向かい近づいていく。
 かぐや達は港にいた。道なりに歩いていたらたどり着いたのだ。空はいつの間にか夜になっていて、星が煌めいていた。
 ついに船は港に停泊した。入口が開き、跳ね板が渡された。かぐやと黒呼はしばらく黙って船を見つめていた。この船に入ったら何が待っているのか。正直怖い。だけど…。
 かぐやの様子を伺っていた黒呼がふいに口を開いた。

「あれに乗ればいいの?」
「え…?うん。多分」
「カアアアア!!」
「「!?」」
「カア?」
「ぷ………」
「ふふ」
「行こう?」
「うん」

元気よく鳴いた闇爾に後押しされるように、かぐや達は船に乗り込んだ。

この先、何が待ち受けているのか…。
今のかぐやには想像すら出来なかった。




[前編]



夢とは
その人の心の鏡……




→つづく
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