かぐや姫と導く者達

懐かしい人達との再会







 何もない空間。しかし、かぐやが足を踏み出すと、周りが色付き形を成す。なんだか懐かしい景色に、かぐやはキョロキョロと辺りを見回す。

「ここ…覚えてる。私が小さい頃、見た所だわ……」

 両親を亡くしたあの頃…家族で行った海での思い出を夢見た事を思い出した。朝からはしゃぐ自分達を連れて、いつもは車だがこの時は珍しく電車だった。それがまた楽しくて嬉しかった。
 古びた駅舎があり、無人改札の向こうは真っ暗でなにも見えない。が、

「え?奥の方で何か動いた気が…」

 黒いペンキで塗り潰したような暗闇にヒラヒラと何かが動いている。しかも、

「こっちに…来る」


 その気配はかぐやに向かって来るようなのだ。思わず強張る体をなんとか動かし後ずさる。

すると、気配は次第に形となり、闇の中から現れた。

「#名前#…」
「カアアア!」

 その姿を見るなり、かぐやは驚きの声を上げた。

「黒呼……闇爾……」

 紫をベースにした、和洋合わさったような服を身に纏い、深い藍色の髪に鮮やかな紅い瞳をした女性、黒呼。黒呼の肩に乗り、高らかに鳴く大きな漆黒の烏、闇爾。かぐやはふと、この世界に行く前にミィに言われた事を思い出した。

『一人では心細いでしょ?中に一人と一匹待機させてるから。大丈夫、頼りになる子達だから』

 まさか、彼女の事だったとは。確かに久しぶりの再会はうれしい。しかしその半面、なぜ死神である黒呼が自分の命の為に付き添うのだろうか。彼女を疑いたくはない。でも……と、悶々としているかぐやに、黒呼は苦笑しながら近づく。

「かぐや、会いたかった。私、貴女に謝りたかったの」
「え?」

 かぐやが黒呼の顔を見上げると、黒呼は悲しそうに目を伏せた。

「私、貴女を守れなかった。だから今、こんな事になったの」
「……」
「赦してなんて言わない。でも、今度こそ護りたいの。だから……」
「黒呼……」
「私も、私たちも連れていって」





それは迷いの無い、
真っ直ぐな気持ち



続く……
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