蒼空の街

何かあった…
こことよく似た場所で

とても、とても
怖い事が………




かぐやと黒呼は闇爾の後を追い歩き始めた。
お互い言葉を交わす事はなく、ただただ歩く。

重い沈黙が続いていく。

かぐやはふと顔を上げ、空を見上げた。

雲一つない青空。

いつもの感覚なら、気持ち良く思えるだろうが、いまのかぐやには不安以外に何もなかった。

昔、同じ景色を見たことがあり、恐ろしい目に遭ったという記憶。このまま進んでしまえば、また同じ目に遭うのでは……?

かぐやは思わず立ち止まった。
そんな彼女の気配を感じ、黒呼も立ち止まり、不思議そうな視線を送る。

「……どうしたの?かぐや」
「………私、なんかこの先に行きたくない…」
「え?」

この先に行くことを拒絶するかぐやに、黒呼は眉をひそめる。当然の反応だ。
行きたくないと言われても、ここには間違いなく、かぐやの魂のカケラがあるのだ。一つでも欠ければ、かぐやは死んでしまう事になる。
黒呼はそれだけは絶対に嫌だった。
しかし、苦しそうな表情で俯く彼女に無理強いをするのも嫌だ。どうしようかと今度は黒呼が俯く。

黙り込み、お互い俯いたまま立ち尽くしていると、背後から車の音がした。

途端に、ハッと顔をあげるかぐやと黒呼。
かぐやの顔は……青ざめていた。

次第に近くなるエンジン音にとてつもない恐怖を感じ、後ずさるがその直後、

―キキーッ…バタンッ―

かぐやの背後を通り過ぎるその瞬間、ドアが開き黒づくめの男が現れ、彼女を車の中に引きずり込んだ。

…あっと言う間の出来事だった。

突然の事に、黒呼もただただ呆然としていたが、車が姿を消すと我に返った。

「か、かぐやっ!!大変、早く早く助けないと…!!闇爾っ!!」
「カアアアア!!」
「あの車を追って!いそいで!」

切羽詰まる黒呼を背に乗せ、闇爾は猛スピードで車を追いかけ飛び去っていった。



《前編》


元凶と不安は
形となり

少女に襲い掛かる…



つづく…
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