Pure rain
頑張れる
頑張りたい
今度こそ……
Pure rain
雪菜が桜花台学園に来てから一ヶ月が過ぎた。
最初はまともに話をするのは、柚希とユリアだけだったが、いまでは少しずつクラスメイトと談笑出来るようになった。
特に前の席の女子、村上一巳(ひとみ)は休み時間に、話掛けてくれるようになったのだ。今では雪ちゃん、一巳ちゃんと呼び合う仲だ。
「ねぇ雪ちゃん。なんの部活入るか決めた?」
「え?……ううん、まだ。面白そうな部活はあったんだけど、まだ迷ってて…」
「そっか…」
「?一巳ちゃん、どうかした?」
何事か考え込んでいる一巳を不思議そうに見つめる雪菜。すると、向こうから柚希とユリアがやってきた。
「なになに?どうしたの?」
「あ、ユリアと柚。ん~、ちょっとね」
「?どうしたの?」
二人にも問い掛けられ、一巳は一つため息を吐き、話し出した。
「ん…私サッカー部のマネージャーやってるじゃない?」
「「「うん」」」
「実はさ……あんまり大きい声で言いたくないんだけど……」
「「「うん?」」」
一巳は周りを見回し、三人に顔を近づける。
「今回の中間、壊滅的でさ。親にこってりしぼられちゃって……次の期末で平均点以上取るまで部活に出ちゃダメッて…」
「あちゃ~…」
「で、でも今回難しかったし、平均も低かったって先生言ってたし……ってもしかして……」
柚希が一巳の言いたい事を察したのか、驚いた顔を向ける。
一巳はその顔に苦笑いを返し雪菜に向き直る。
「お願いっ!!雪菜!!私の代わりにマネージャーやってくれない?」
「………ええ~っ!?」
「きゅ、急には無理じゃない?雪菜ちゃんだって入りたい部活あるかもだし」
「そ、そうだよ。顧問の先生に相談したほうが…」
目を真ん丸にして驚く雪菜とあわてふためく柚希とユリアに、一巳は泣きそうな顔で訴える。
「もうすぐ試合なのよ!!彼らも練習に専念しないといけないし、雑用なんてやらせられない!!そんな状況なのに、顧問にこんな情けない理由言えないよ~!!お願いっ雪ちゃん、この通り!!商店街で新しくオープンしたアイス屋さんでトリプル奢るから!!」
顔の前で手を合わせ、必死に頼み込む一巳を見て、雪菜は考えた。
一巳を含め柚希、ユリアにはいつも仲良く接してもらっている。
そのおかげで、孤立する事なく楽しく過ごしてこれたのだ。お礼がしたい…それもあるが、必死に代理を頼むほど、彼女にとってサッカー部は大切な存在なのだろう。
(マネージャー……やった事ないけど……私に出来るかな…)
雪菜は決心したように頷くと、一巳の手を優しく握った。
「ゆ、雪ちゃん?」
「一巳ちゃん、私、やるよ。一巳ちゃんの代わりに」
「「雪菜ちゃん!?」」
「雪ちゃ~ん!!ありがとう!!」
唖然とする柚希とユリアをよそに、一巳は半泣きになりながら、雪菜に抱き着いた。
Pure rain
今までは
無理だと決め付けて避けていた
でも今は
大切な友達の為に
やり遂げたい
そう思える
《新しい挑戦》
今までは
無理だと決め付けて避けていた
でも今は
大切な友達の為に
やり遂げたい
そう思える
《新しい挑戦》
つづく
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