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路面を濡らす雨が水しぶきを飛ばしていた。ザアザアと振る雨は傘無しで歩くには流石に無理がある量で、困ったなぁと意味もなく空を見上げる。
天気予報を見ていなかった。朝は快晴だったこともあり、まさか雨が振るなんて思っていなかったのだ。当然傘は持ってきていないし、置き傘もしていない。会社から最寄りの駅までの距離はそう遠くは無いが、びしょ濡れになりながら走っていけるほどの距離では無い。
「おっ、ナイスタイミング」
聞き馴染みのある声に弾かれたように視線を向ける。ニコ、と微笑みを浮かべたその姿に目を疑った。
「え……えっ?」
「よう、お疲れ。すげー雨だなぁ」
びっくりしている私とは反対に彰は随分とのんびりとした様子だ。屋根の下に居る私の元へゆったりと近付いて、傘を傾ける。
「彰、何で」
「ん?おまえが傘持ってって無かったから」
だからってわざわざ、ここまで迎えに来てくれたの?電車に乗って?
「迎え、頼んでなかったよね……?」
思わずそう問い掛ける。私の言葉に、彰は口元を緩く上げたまま穏やかな声で話す。
「頼まれなきゃ、来ちゃいけねーか?」
ハッとして慌てて首を横に振る。違う、そういう訳じゃなくて。
「ちょっと、びっくりしちゃって……でも、その……嬉しい……」
素直に自分の気持ちを伝えると、彰はニッコリと笑顔を浮かべた。あ、かっこいい。きゅん、と高鳴る胸が彼への感情をはっきりと表している。
「帰ろうか」
温かな手のひらが私の手を優しく包む。大きめの傘に一緒に入って、肩と腕を触れ合わせる。そんな温もりが仕事終わりの私の心をじんわりと癒していった。
「……彰、ありがとう。大好きだよ」
言った後に恥ずかしくなって、唇を引き結んで。立ち止まった彰の横顔を見上げる。すごく嬉しそうな表情。
「電車、遅延しててさ、どーすっかなって思ったんだけど、待った甲斐があったなぁこれは」
握り締められた手が揺れる。笑みを絶やさない彰が腕を少し揺らしながら歩いているからだ。時折、ぎゅ、ぎゅ、と指を握り込む彰がご機嫌なのが伝わってくる。
「うん、うん。オレも好きだぜ。傘一本だけ持っておまえのこと迎えに来るぐらいにはな」
柔らかなまなざしが私を捉える。胸が締め付けられるような感覚を今まで何度味わってきただろう。わざわざこの雨の中遅延した電車に乗って、しかも傘を二本持ってくるんじゃなくて一本で。彼の言う通り、私のことが好きじゃないと出来ないことだろう。
愛されてるなぁ。そう思って、幸福感に満たされて。
降りしきる雨の音が響く中、一つの傘に身を寄せる。そこは、雨も人目も気にならない、私達だけの世界だった。
天気予報を見ていなかった。朝は快晴だったこともあり、まさか雨が振るなんて思っていなかったのだ。当然傘は持ってきていないし、置き傘もしていない。会社から最寄りの駅までの距離はそう遠くは無いが、びしょ濡れになりながら走っていけるほどの距離では無い。
「おっ、ナイスタイミング」
聞き馴染みのある声に弾かれたように視線を向ける。ニコ、と微笑みを浮かべたその姿に目を疑った。
「え……えっ?」
「よう、お疲れ。すげー雨だなぁ」
びっくりしている私とは反対に彰は随分とのんびりとした様子だ。屋根の下に居る私の元へゆったりと近付いて、傘を傾ける。
「彰、何で」
「ん?おまえが傘持ってって無かったから」
だからってわざわざ、ここまで迎えに来てくれたの?電車に乗って?
「迎え、頼んでなかったよね……?」
思わずそう問い掛ける。私の言葉に、彰は口元を緩く上げたまま穏やかな声で話す。
「頼まれなきゃ、来ちゃいけねーか?」
ハッとして慌てて首を横に振る。違う、そういう訳じゃなくて。
「ちょっと、びっくりしちゃって……でも、その……嬉しい……」
素直に自分の気持ちを伝えると、彰はニッコリと笑顔を浮かべた。あ、かっこいい。きゅん、と高鳴る胸が彼への感情をはっきりと表している。
「帰ろうか」
温かな手のひらが私の手を優しく包む。大きめの傘に一緒に入って、肩と腕を触れ合わせる。そんな温もりが仕事終わりの私の心をじんわりと癒していった。
「……彰、ありがとう。大好きだよ」
言った後に恥ずかしくなって、唇を引き結んで。立ち止まった彰の横顔を見上げる。すごく嬉しそうな表情。
「電車、遅延しててさ、どーすっかなって思ったんだけど、待った甲斐があったなぁこれは」
握り締められた手が揺れる。笑みを絶やさない彰が腕を少し揺らしながら歩いているからだ。時折、ぎゅ、ぎゅ、と指を握り込む彰がご機嫌なのが伝わってくる。
「うん、うん。オレも好きだぜ。傘一本だけ持っておまえのこと迎えに来るぐらいにはな」
柔らかなまなざしが私を捉える。胸が締め付けられるような感覚を今まで何度味わってきただろう。わざわざこの雨の中遅延した電車に乗って、しかも傘を二本持ってくるんじゃなくて一本で。彼の言う通り、私のことが好きじゃないと出来ないことだろう。
愛されてるなぁ。そう思って、幸福感に満たされて。
降りしきる雨の音が響く中、一つの傘に身を寄せる。そこは、雨も人目も気にならない、私達だけの世界だった。