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「ただいまぁ……」
あからさまに弱々しい帰宅の挨拶に続けて、小さなため息。後ろ手に鍵を閉めて、パンプスを脱いでいると程なくして同居人の姿が玄関先に現れた。
「おかえり、ナマエさん」
「あきらくん……」
よろよろと目の前の身体に抱きつく。落ち着く。あったかい。ぎゅう、と抱き締めると、同じように抱き締め返してくれて、やさぐれた心が解されていくようだった。
「今日は随分とお疲れだね。忙しかった?」
「も〜ほんとに忙しかった……」
ぐりぐりと頭を押し付けると、あ、と彰くんが声を上げる。どうしたのかと顔を上げると、抱き締めていた身体を離されてしまった。思わず、む、と顔を顰めると、ごめんごめんと苦笑いされる。
「オレ、まだシャワー浴びてねぇから汗臭いかも」
そう? そうかな? と首を傾げ、顔を近付けながら、くんくんと鼻を鳴らす。
「コラ、嗅ぐな」
そう言って私の身体を抑える割に、どこか楽しそうな声色の彰くん。結局、勢い良く抱きついて顔を埋めると、も〜と言いながらも優しく頭を撫でてくれた。
「全然汗臭くないよ」
「なら良いけど……えー、でも、本当か?」
本当だよ、と言いながらもう一度嗅いでみる。汗の匂いはするけれど、臭いと思うことは無い。むしろ、なんと言うか……うん、これ以上はやめておこう。心底惚れ込んでいるが故かもしれないが、彼の匂いはいつだって良い匂いだ。
「ナマエさん、先シャワー浴びる?」
「んー……お湯ためて、一緒に入ろうよ」
そう言って見上げると、彰くんは驚いたような顔をして、でも、すぐに困ったように笑う。
「入りてーのはやまやまだけど、オレ、絶対手出しちゃうから駄目だよ」
「……いいよ? べつに」
明日も仕事とか、疲れてるとか、そんなことはどうでもいいのだ。ただ、一緒に居たくて、片時も離れたくなくて。
「彰くんのことだけ考えてたいの……」
腰に回した腕に力を強く込めて、情けなく歪む表情を見られないように彼の逞しい胸板に押し付ける。ごめんね、彰くんより歳上なのに、こんなに情けなくて、わがままで。ほんとはもっと、上手く取り繕えるはずなんだけど、今日はなんか、駄目みたい。
「……ナマエさん」
優しい声に名前を呼ばれて、引き寄せられるように顔を上げた。ん、と短い声が漏れる。
柔らかい温もりが触れている。決して強引では無くて、優しい熱を分け与えるように、唇が触れ合っている。しっとりと、じっくりと。段々と思考が惚けていって、ただ、目の前の存在に身を預けることしか出来ない。身体の中心がじんわりと熱を持って、腰から砕け落ちてしまいそうだった。
どれだけ経っただろう。ようやっと離れた唇が、灯りに照らされ、艶めいている。ぼうっと、そんな彼の色気に当てられていると、彼は小さく笑って耳元で囁く。
「……どう? オレでいっぱいになった?」
耳を通る低音が心地良い。コクリと頷く私に、良かった、と満足そうに笑って、彼は私の手を引いた。
スーツのジャケットを脱がされて、皺にならないようにハンガーに掛けられる。ソファに座らされて、膝にはブランケットを掛けられて、少し離れた浴室からお湯を溜める音が聞こえてきた。
目の前には湯気の立つマグカップが置かれている。流れるようにそれらを行った彰くんは、私の横に座った後、肩を抱き寄せて、優しく頭を撫でてくれていた。
彰くんは私を甘やかす天才なんだと思う。出会った時からずっと、私の小さな要求も、大きな要求も、正しく汲み取って、必ずと言って良いほど、叶えてくれる。私にとっては本当に、神様みたいな人だった。
「わたし、彰くんが居ないともう駄目かもしれない……」
思わずそう呟くと、彰くんは嬉しそうに笑った。密着する身体が、彰くんの小さな笑い声と共に揺れている。
「そりゃ最高だな。甘やかした甲斐があった」
「私の方が歳上なのに……」
「良いんだよ。ナマエさんはずっとそのままでいて。ずっと、オレに甘やかされて、ずっとオレのそばにいて」
甘ったるい声で告げるには些か重い言葉を、彼はなんて事ないように告げる。明確に縛り付けるようなものでは無いけれど、それはゆるく、ゆるく、私の身体に巻き付いている。それが、案外、心地良い。そう思ってしまっている時点で、やっぱり私はもう、彼から離れられないのだ。
「……なら、ずっと、甘やかしてね」
その大きな身体で、優しい言葉で、温かな手のひらで。ずっと、ずっと、私のことを捕まえていてほしい。
そんな意味を込めて、言葉にはしないで。
でも、きっと、その意味を彰くんが取り違えることはない。当たり前のように理解して、実行して、叶えてくれる。だって、彰くんは神様みたいな人だから。
「うん、ずっと、離さねぇよ」
──ほら、やっぱり。
目尻を垂れさせて笑う彼の言葉は、いつだって私を幸せへと導いてくれるのだ。
*
※背後注意 snd視点
スヤスヤと眠る彼女の頬に残る涙の跡を撫でる。同意の上とは言え、明日も仕事がある彼女に無理を強いてしまったことに、少しの罪悪感を抱く。仕事の疲れも相まってか、すぐに眠ってしまった彼女の身体を清め、その辺に放り投げていた自身のスウェットを着せれば、ブカブカのスウェットは彼女の指先までも覆い隠してしまい、丈の短いワンピース状態になっていた。
かわいい、と小さく呟いて、彼女の隣に身を寄せる。ぐ、と抱き寄せて、ポカポカと熱を持った彼女の身体を腕の中にしっかりと収めた。──あきらくん、と掠れた声で名前を呼ぶ、彼女の熱を帯びた瞳が頭から離れない。与えられる快楽に善がる姿も、シーツに散らばった柔らかな髪も。どうしようもない奴だ、と思ってしまうのは、そんな彼女の姿を思い出すだけで、腹の奥底からふつふつと欲が湧き上がってくるからだ。そんな欲を払拭するように小さく頭を振って、布団を肩まで掛ける。程なくして襲い来る眠気に抗うことはせず、静かに目蓋を閉じた。
──どうか、ナマエさんがオレの元から離れていきませんように。
そう願う感情は、紛れもない執着だった。
あからさまに弱々しい帰宅の挨拶に続けて、小さなため息。後ろ手に鍵を閉めて、パンプスを脱いでいると程なくして同居人の姿が玄関先に現れた。
「おかえり、ナマエさん」
「あきらくん……」
よろよろと目の前の身体に抱きつく。落ち着く。あったかい。ぎゅう、と抱き締めると、同じように抱き締め返してくれて、やさぐれた心が解されていくようだった。
「今日は随分とお疲れだね。忙しかった?」
「も〜ほんとに忙しかった……」
ぐりぐりと頭を押し付けると、あ、と彰くんが声を上げる。どうしたのかと顔を上げると、抱き締めていた身体を離されてしまった。思わず、む、と顔を顰めると、ごめんごめんと苦笑いされる。
「オレ、まだシャワー浴びてねぇから汗臭いかも」
そう? そうかな? と首を傾げ、顔を近付けながら、くんくんと鼻を鳴らす。
「コラ、嗅ぐな」
そう言って私の身体を抑える割に、どこか楽しそうな声色の彰くん。結局、勢い良く抱きついて顔を埋めると、も〜と言いながらも優しく頭を撫でてくれた。
「全然汗臭くないよ」
「なら良いけど……えー、でも、本当か?」
本当だよ、と言いながらもう一度嗅いでみる。汗の匂いはするけれど、臭いと思うことは無い。むしろ、なんと言うか……うん、これ以上はやめておこう。心底惚れ込んでいるが故かもしれないが、彼の匂いはいつだって良い匂いだ。
「ナマエさん、先シャワー浴びる?」
「んー……お湯ためて、一緒に入ろうよ」
そう言って見上げると、彰くんは驚いたような顔をして、でも、すぐに困ったように笑う。
「入りてーのはやまやまだけど、オレ、絶対手出しちゃうから駄目だよ」
「……いいよ? べつに」
明日も仕事とか、疲れてるとか、そんなことはどうでもいいのだ。ただ、一緒に居たくて、片時も離れたくなくて。
「彰くんのことだけ考えてたいの……」
腰に回した腕に力を強く込めて、情けなく歪む表情を見られないように彼の逞しい胸板に押し付ける。ごめんね、彰くんより歳上なのに、こんなに情けなくて、わがままで。ほんとはもっと、上手く取り繕えるはずなんだけど、今日はなんか、駄目みたい。
「……ナマエさん」
優しい声に名前を呼ばれて、引き寄せられるように顔を上げた。ん、と短い声が漏れる。
柔らかい温もりが触れている。決して強引では無くて、優しい熱を分け与えるように、唇が触れ合っている。しっとりと、じっくりと。段々と思考が惚けていって、ただ、目の前の存在に身を預けることしか出来ない。身体の中心がじんわりと熱を持って、腰から砕け落ちてしまいそうだった。
どれだけ経っただろう。ようやっと離れた唇が、灯りに照らされ、艶めいている。ぼうっと、そんな彼の色気に当てられていると、彼は小さく笑って耳元で囁く。
「……どう? オレでいっぱいになった?」
耳を通る低音が心地良い。コクリと頷く私に、良かった、と満足そうに笑って、彼は私の手を引いた。
スーツのジャケットを脱がされて、皺にならないようにハンガーに掛けられる。ソファに座らされて、膝にはブランケットを掛けられて、少し離れた浴室からお湯を溜める音が聞こえてきた。
目の前には湯気の立つマグカップが置かれている。流れるようにそれらを行った彰くんは、私の横に座った後、肩を抱き寄せて、優しく頭を撫でてくれていた。
彰くんは私を甘やかす天才なんだと思う。出会った時からずっと、私の小さな要求も、大きな要求も、正しく汲み取って、必ずと言って良いほど、叶えてくれる。私にとっては本当に、神様みたいな人だった。
「わたし、彰くんが居ないともう駄目かもしれない……」
思わずそう呟くと、彰くんは嬉しそうに笑った。密着する身体が、彰くんの小さな笑い声と共に揺れている。
「そりゃ最高だな。甘やかした甲斐があった」
「私の方が歳上なのに……」
「良いんだよ。ナマエさんはずっとそのままでいて。ずっと、オレに甘やかされて、ずっとオレのそばにいて」
甘ったるい声で告げるには些か重い言葉を、彼はなんて事ないように告げる。明確に縛り付けるようなものでは無いけれど、それはゆるく、ゆるく、私の身体に巻き付いている。それが、案外、心地良い。そう思ってしまっている時点で、やっぱり私はもう、彼から離れられないのだ。
「……なら、ずっと、甘やかしてね」
その大きな身体で、優しい言葉で、温かな手のひらで。ずっと、ずっと、私のことを捕まえていてほしい。
そんな意味を込めて、言葉にはしないで。
でも、きっと、その意味を彰くんが取り違えることはない。当たり前のように理解して、実行して、叶えてくれる。だって、彰くんは神様みたいな人だから。
「うん、ずっと、離さねぇよ」
──ほら、やっぱり。
目尻を垂れさせて笑う彼の言葉は、いつだって私を幸せへと導いてくれるのだ。
*
※背後注意 snd視点
スヤスヤと眠る彼女の頬に残る涙の跡を撫でる。同意の上とは言え、明日も仕事がある彼女に無理を強いてしまったことに、少しの罪悪感を抱く。仕事の疲れも相まってか、すぐに眠ってしまった彼女の身体を清め、その辺に放り投げていた自身のスウェットを着せれば、ブカブカのスウェットは彼女の指先までも覆い隠してしまい、丈の短いワンピース状態になっていた。
かわいい、と小さく呟いて、彼女の隣に身を寄せる。ぐ、と抱き寄せて、ポカポカと熱を持った彼女の身体を腕の中にしっかりと収めた。──あきらくん、と掠れた声で名前を呼ぶ、彼女の熱を帯びた瞳が頭から離れない。与えられる快楽に善がる姿も、シーツに散らばった柔らかな髪も。どうしようもない奴だ、と思ってしまうのは、そんな彼女の姿を思い出すだけで、腹の奥底からふつふつと欲が湧き上がってくるからだ。そんな欲を払拭するように小さく頭を振って、布団を肩まで掛ける。程なくして襲い来る眠気に抗うことはせず、静かに目蓋を閉じた。
──どうか、ナマエさんがオレの元から離れていきませんように。
そう願う感情は、紛れもない執着だった。