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大好きな声、温もり、匂い。ふわふわとした意識の中でそれだけははっきりと感じ取る。
「あきらくん……?」
なんだっけ。なにしてたんだっけ。
それすらよく分からない、けどこの温もりはきっと大好きな彼のものだった。
「うん。そう。あきらくんだよ」
優しく頭を撫でられる感覚。それがたまらなく嬉しくて、大好きな人がそばに居ることが夢みたいで、ふにゃふにゃと表情が緩む。
「あきらくんだぁ」
いつもみたいにその体に抱きつくと、彼は笑いながら受け止めてくれて「ご機嫌だね、ナマエちゃん」と柔らかい声で呟く。
「楽しかった?」
「ん……? うん! あきらくんが居るからたのしいよ」
そう言いながら厚みのあるたくましい体に擦り寄る。クスクスと聞こえてくる笑い声につられるように体を揺らすと安心感からかだんだんとまぶたが重くなっていく。ポカポカと体はあたたかい。さっきまでの記憶が曖昧で、でもあきらくんが居るからそれでいいかぁと揺蕩う意識の中でゆらゆらと揺れる。
「ねむい?」
「うん……」
「じゃあ、早く帰らないとな」
おおきくていつもわたしに優しく触れるあきらくんの手。いつだってわたしを包み込んでくれる手。ポンポンと一定のリズムで背中を撫でられて、彼の匂いに安心しながら目を閉じる。
夢の中でもあきらくんにあいたいな。ずっとずっとあきらくんと一緒にいたい。
あきらくんがなにかを言った気がする。なにを言っていたのか少しだけ気になったけど、あきらくんの心地いいぬくもりに包まれていたわたしはあっという間にねむりに落ちていった。
*
「──で、ナマエに酒飲ませたの誰?」
先程まで恋人に甘く接していたとは思えないほどの声色だった。ナマエが完全に寝入ったのを見計らったように投げかけられた仙道の質問。その場に居た者とは誰一人目を合わさず、ナマエを見つめる目は優しいのに、彼の喉から発せられる声は背筋が震えるほどに冷たい。
「飲めないって本人が言ってたはずなんだけど」
何でこうなってんの?と厳しく詰る仙道に誰も返答が出来ずに顔を青ざめさせている。同じゼミのメンバーでの飲み会は大学生ならよくある光景で、ナマエにとっては珍しいこと。ナマエがどうしても行きたいと言ったから渋々許可を出したものの、こんなことになるならと仙道は深くため息を吐く。
「男二人に女子三人。男女分かれて座れば良いのに何でナマエの隣に男が座ってんのかね……お前? ナマエに酒飲ませたの」
ナマエの隣に座る男子学生はぎくりと肩を震わせる。いや、えっと、あの……と煮え切らない返事をする当人を「あぁ、良いよ別に」と仙道は冷めきった声で遮った。
「お前の話に興味なんて無いし」
下心無い奴がわざわざ隣に座って酒飲ませるわけがねーもんな。と抑揚の無いトーンで続け、軽々とナマエを抱きかかえて立ち上がる。
「まぁ、面白がってお膳立てしようとしてた奴らも一緒だけど」
手慣れた動作でナマエを抱え直し、テーブルの上に明らかに多いお札を数枚置く。手切れ金とでも言うようだった。
「どーも。ナマエがお世話になりました」
仙道が最後に一瞬だけ向けた視線。ゾッと身震いをするほどの視線に、その場には静寂だけが残った。
「やっぱ家から出さねぇ方がいいかな……」
腕の中で無防備にスヤスヤと眠る恋人を見ながら呟く。迎えに行くのが少しでも遅かったら彼女は仙道の預かり知らぬところで名前も知らない男に触れられていた。その後どうなっていたかなど想像したくもないが、その可能性があったと考えるととてもでは無いが良い気分ではない。
寝息をたてながら擦り寄ってくる彼女が愛おしくて仕方ないのに、ドロドロと渦巻く感情は決して綺麗なものではなかった。
オレの、オレだけの。他の誰にも触れさせたくない。
でも仙道はナマエのことが大好きだからそんなこと出来やしないのだ。
恋人には一ミリたりとも暗く、濁った部分は見せずに、優しく触れ、丁寧に抱え、大事に大事に抱き締める。
それが、仙道の愛だった。
「あきらくん……?」
なんだっけ。なにしてたんだっけ。
それすらよく分からない、けどこの温もりはきっと大好きな彼のものだった。
「うん。そう。あきらくんだよ」
優しく頭を撫でられる感覚。それがたまらなく嬉しくて、大好きな人がそばに居ることが夢みたいで、ふにゃふにゃと表情が緩む。
「あきらくんだぁ」
いつもみたいにその体に抱きつくと、彼は笑いながら受け止めてくれて「ご機嫌だね、ナマエちゃん」と柔らかい声で呟く。
「楽しかった?」
「ん……? うん! あきらくんが居るからたのしいよ」
そう言いながら厚みのあるたくましい体に擦り寄る。クスクスと聞こえてくる笑い声につられるように体を揺らすと安心感からかだんだんとまぶたが重くなっていく。ポカポカと体はあたたかい。さっきまでの記憶が曖昧で、でもあきらくんが居るからそれでいいかぁと揺蕩う意識の中でゆらゆらと揺れる。
「ねむい?」
「うん……」
「じゃあ、早く帰らないとな」
おおきくていつもわたしに優しく触れるあきらくんの手。いつだってわたしを包み込んでくれる手。ポンポンと一定のリズムで背中を撫でられて、彼の匂いに安心しながら目を閉じる。
夢の中でもあきらくんにあいたいな。ずっとずっとあきらくんと一緒にいたい。
あきらくんがなにかを言った気がする。なにを言っていたのか少しだけ気になったけど、あきらくんの心地いいぬくもりに包まれていたわたしはあっという間にねむりに落ちていった。
*
「──で、ナマエに酒飲ませたの誰?」
先程まで恋人に甘く接していたとは思えないほどの声色だった。ナマエが完全に寝入ったのを見計らったように投げかけられた仙道の質問。その場に居た者とは誰一人目を合わさず、ナマエを見つめる目は優しいのに、彼の喉から発せられる声は背筋が震えるほどに冷たい。
「飲めないって本人が言ってたはずなんだけど」
何でこうなってんの?と厳しく詰る仙道に誰も返答が出来ずに顔を青ざめさせている。同じゼミのメンバーでの飲み会は大学生ならよくある光景で、ナマエにとっては珍しいこと。ナマエがどうしても行きたいと言ったから渋々許可を出したものの、こんなことになるならと仙道は深くため息を吐く。
「男二人に女子三人。男女分かれて座れば良いのに何でナマエの隣に男が座ってんのかね……お前? ナマエに酒飲ませたの」
ナマエの隣に座る男子学生はぎくりと肩を震わせる。いや、えっと、あの……と煮え切らない返事をする当人を「あぁ、良いよ別に」と仙道は冷めきった声で遮った。
「お前の話に興味なんて無いし」
下心無い奴がわざわざ隣に座って酒飲ませるわけがねーもんな。と抑揚の無いトーンで続け、軽々とナマエを抱きかかえて立ち上がる。
「まぁ、面白がってお膳立てしようとしてた奴らも一緒だけど」
手慣れた動作でナマエを抱え直し、テーブルの上に明らかに多いお札を数枚置く。手切れ金とでも言うようだった。
「どーも。ナマエがお世話になりました」
仙道が最後に一瞬だけ向けた視線。ゾッと身震いをするほどの視線に、その場には静寂だけが残った。
「やっぱ家から出さねぇ方がいいかな……」
腕の中で無防備にスヤスヤと眠る恋人を見ながら呟く。迎えに行くのが少しでも遅かったら彼女は仙道の預かり知らぬところで名前も知らない男に触れられていた。その後どうなっていたかなど想像したくもないが、その可能性があったと考えるととてもでは無いが良い気分ではない。
寝息をたてながら擦り寄ってくる彼女が愛おしくて仕方ないのに、ドロドロと渦巻く感情は決して綺麗なものではなかった。
オレの、オレだけの。他の誰にも触れさせたくない。
でも仙道はナマエのことが大好きだからそんなこと出来やしないのだ。
恋人には一ミリたりとも暗く、濁った部分は見せずに、優しく触れ、丁寧に抱え、大事に大事に抱き締める。
それが、仙道の愛だった。