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「……このまま、時が止まっちまえば良いのに」
背後から伸びてきた腕と肩に感じる重み。そして、かろうじて聞き取れた消え入りそうな呟きに思わず手を止めた。
どこか様子のおかしい彰に困惑する。肩に頭を擦り付けるようにして、抱き締める腕に力をこめて。苦しいということは無いけれど、決して私を離そうとはしないその腕は少し、震えていた。
「あきら……?」
恐る恐ると呼び掛けると彼は無言のまま、もう一度私を強く抱き締める。小さく息を吐く音。震えの無くなった腕から力が抜ける。
「……わり、変なこと言った」
そう言って、誤魔化すように笑う彰。振り返った先で見た、苦しさを堪えるような表情は今まで一度も見たことがないもので、離れていきそうになる彰の腕を思わず掴む。
ぐるぐると頭の中に色んな言葉が浮かんでは上手く纏まらなくて、ぎゅっと彼の手を握る。そうしないと、彰が居なくなってしまいそうだったからだ。
「……ほんとに、止まっちゃえば良いのにね」
ようやく絞り出した言葉に彰が息を吸ったのが分かる。自分でも何で、そんなことを言ったのか分からなかった。ただ、彰が酷く寂しそうで。まるで迷子の子供のような声を出した彼を安心させたかったのかもしれない。
「あきらが一緒に居てくれたらそれで良いや」
でも、紛れもない本心だった。例え明日世界が滅ぶとしても、彰が居れば何も怖くない。どんなに辛いことがあっても、彰がそばに居てくれるのなら、他はどうだっていいから。
「ナマエ……」
本当は分かってる。時間なんて止めることは出来ないし、何もかもを捨てて二人だけになることも出来ない。ずっと、本当にずっと一緒に居ることだって出来ないのも。
彼から手を離して、身体の向きを変える。その身体の厚みを確かめるように背中に腕を回して、ぎゅう、と力の限り抱き締める。
大丈夫。ここに居るよ。あきらが自分から離れていかない限り、私はあなたのそばに居るから。
「……情けねぇな、オレ」
ごめん、と小さく呟いて彰も同じように腕を回した。さっきよりも強い腕の力と、包み込まれる感覚に静かに目を閉じる。
「なんでかな……幸せなのに……幸せすぎんのかな……すげー、怖いんだ」
初めて聞いた彰の本音。今まで一度たりとも彼が見せることはなかった弱い部分に強く胸が締め付けられた。
「ナマエが居んのに、ナマエが居なくなったらってことばっか、考えちまう」
彰の手が優しく私の頭を撫でる。それがひどく心地良いのに、何でか私は泣きたくて堪らなかった。
あきらが居なくなったら、なんて、考えたくもない。辛くて、寂しくて、私はきっと生きていけないだろう。
「オレ、ほんとにもう、おまえが居ないと駄目なのかもしんねぇ……」
震えた声に顔を上げた。揺らいだ瞳から今にもこぼれ落ちてしまいそうで、思わず手を伸ばす。瞬きをする度に長い睫毛に水滴が付いてしまうんじゃないかと思って、そっとその目元を撫でた。彰が目を細めて、小さく私の名前を呼ぶ。答えるように、私はめいっぱい背伸びをして彰に口付けた。
触れ合った温もりを、私と彼はいつまでも手放せそうになかった。
背後から伸びてきた腕と肩に感じる重み。そして、かろうじて聞き取れた消え入りそうな呟きに思わず手を止めた。
どこか様子のおかしい彰に困惑する。肩に頭を擦り付けるようにして、抱き締める腕に力をこめて。苦しいということは無いけれど、決して私を離そうとはしないその腕は少し、震えていた。
「あきら……?」
恐る恐ると呼び掛けると彼は無言のまま、もう一度私を強く抱き締める。小さく息を吐く音。震えの無くなった腕から力が抜ける。
「……わり、変なこと言った」
そう言って、誤魔化すように笑う彰。振り返った先で見た、苦しさを堪えるような表情は今まで一度も見たことがないもので、離れていきそうになる彰の腕を思わず掴む。
ぐるぐると頭の中に色んな言葉が浮かんでは上手く纏まらなくて、ぎゅっと彼の手を握る。そうしないと、彰が居なくなってしまいそうだったからだ。
「……ほんとに、止まっちゃえば良いのにね」
ようやく絞り出した言葉に彰が息を吸ったのが分かる。自分でも何で、そんなことを言ったのか分からなかった。ただ、彰が酷く寂しそうで。まるで迷子の子供のような声を出した彼を安心させたかったのかもしれない。
「あきらが一緒に居てくれたらそれで良いや」
でも、紛れもない本心だった。例え明日世界が滅ぶとしても、彰が居れば何も怖くない。どんなに辛いことがあっても、彰がそばに居てくれるのなら、他はどうだっていいから。
「ナマエ……」
本当は分かってる。時間なんて止めることは出来ないし、何もかもを捨てて二人だけになることも出来ない。ずっと、本当にずっと一緒に居ることだって出来ないのも。
彼から手を離して、身体の向きを変える。その身体の厚みを確かめるように背中に腕を回して、ぎゅう、と力の限り抱き締める。
大丈夫。ここに居るよ。あきらが自分から離れていかない限り、私はあなたのそばに居るから。
「……情けねぇな、オレ」
ごめん、と小さく呟いて彰も同じように腕を回した。さっきよりも強い腕の力と、包み込まれる感覚に静かに目を閉じる。
「なんでかな……幸せなのに……幸せすぎんのかな……すげー、怖いんだ」
初めて聞いた彰の本音。今まで一度たりとも彼が見せることはなかった弱い部分に強く胸が締め付けられた。
「ナマエが居んのに、ナマエが居なくなったらってことばっか、考えちまう」
彰の手が優しく私の頭を撫でる。それがひどく心地良いのに、何でか私は泣きたくて堪らなかった。
あきらが居なくなったら、なんて、考えたくもない。辛くて、寂しくて、私はきっと生きていけないだろう。
「オレ、ほんとにもう、おまえが居ないと駄目なのかもしんねぇ……」
震えた声に顔を上げた。揺らいだ瞳から今にもこぼれ落ちてしまいそうで、思わず手を伸ばす。瞬きをする度に長い睫毛に水滴が付いてしまうんじゃないかと思って、そっとその目元を撫でた。彰が目を細めて、小さく私の名前を呼ぶ。答えるように、私はめいっぱい背伸びをして彰に口付けた。
触れ合った温もりを、私と彼はいつまでも手放せそうになかった。