始まった日常
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「あ、太刀川さん。」
食事も終わり一息ついていたところに、国近が声を上げる。詩音が振り返るとそこには、見覚えのある男が立っていて。
「国近?と、お前は...」
「えー、もしかして忘れちゃったの?」
「いや。如月だろ?」
『あ、はい。えっと、太刀川、さん?』
詩音がぺこりとお辞儀する。それを気にとめていないかのように、太刀川は国近に向かって話し出す。
「珍しいな、こんな時間に。」
「今から作戦室で徹ゲーするから、腹ごしらえだよー。」
「またか。」
「太刀川さんもこんな時間までまたランク戦でしょ?」
「まーな。」
二人の会話に居心地の悪さを感じた詩音は、食べ終わったトレーを持ち、立ち上がる。しかし、それを止めたのは意外にも太刀川で。
「お前、オペレーターになったんだろ?」
『は、はい。なんで知って、』
「さっき風間隊の3人と話したんだ。ぶっちゃけお前の名前もそこで思い出したんだけどな。」
やっぱり忘れてたんだー、と国近に揶揄されながら太刀川は言葉を続ける。
「そんでなんかあったから国近とここで飯食ってたんだろ?」
「おや、太刀川さんにしては珍しく鋭い意見。」
『...なんかあった、というか、その。』
「まあ、私が先に声掛けたんだけどねー?」
困ったように国近を見つめる詩音に、助け舟が出されるが、それをふうん、と適当に受け止めた太刀川。
「別に俺がどうこう言う話じゃないと思うが、国近も、三上含め風間隊のやつらも頼れば答えてくれると思うぞ。」
『...?』
「まあ、あれだ。風間隊にたまには自分から顔出しに行けってことだ。今日は夜のシフトらしいから、少なくとも三上は今作戦室にいるはずだぞ。」
『は、はい。...ありがとうございます?』
よく分かっていないという顔でお礼を言う詩音に国近が吹き出す。話し終えたはずの太刀川もなぜか自分が言ったことがよく分からないという顔をしていて、その光景は見れば見るほど謎だ。
「太刀川さん、なんであんなこと言ったの?」
「俺自身、あんなまともな言葉が出たことに驚いてる。」
「えっ。」
「ただ、風間隊の3人があいつのこと気にしてたんだ。風間さんが“お前はあれから如月に会ったか”って。」
「へー。」
「俺が如月思い出せずにいたら、菊地原が珍しく自分から説明し始めてな。オペレーターになったってことと最近顔見せない的なことも含めてそんとき聞いた。」
「詩音ちゃん、意外と愛されてるね。」
「それは知らんが、まあさすがの俺も同情はする。風間隊の3人もそんな感じだろ。近界民に身内が殺されたやつはボーダーで珍しくないが、大規模侵攻もボーダーができた頃も知らないやつは少なくとも三門市にはまず居ない。理由がなんだろうと、まあ、生きにくいだろうな。」
「そもそも、5年も日本にいなかったんだもんね。しかも普通じゃない生活してたわけだし。」
「まあ、風間さん達には多少懐いてるみたいだし、何とかなるだろ。」
「私ももっと仲良くなれるように頑張ろー。」
国近に改めてお礼を言って食堂を立ち去った詩音は2人がそんな会話をしているとは知らず、太刀川に言われた通り風間隊の作戦室に向かうことにした。別れ際、国近がくれたアドバイス通り、風間隊4人分の飲み物を買ってから。
(どうしよ...。)
言われるがままに風間隊の作戦室まで来てしまったは良いが、手は飲み物で塞がれ、そもそも詩音はここまで来たことはあっても部屋の開け方を知っている訳でもない。そして約束をしている訳では無いので、任務中だと分かっている部屋に声をかけてもいいものかと、詩音は扉の前で立ち尽くしてしまった。
「どうしたの、詩音ちゃん?」
『み、三上さん!』
やっぱり帰ろう、そう思い詩音が踵を返そうとしたその時、彼女の目の前の扉が開き、三上が姿を現す。その頭にはインカムをつけており、彼女が仕事中であることがわかる。
『あ、あの!これ!!』
「飲み物?」
『夜の任務だって聞いて、その、差し入れ?ってやつです。良かったらみなさんで!』
「詩音ちゃん、待って!」
突然の三上の登場に気が動転した詩音は手に持った飲み物のボトルを三上に押し付けるように渡し、急いでその場から立ち去ろうとする。そんな彼女を三上は慌てて引き止めると、良かったら入ってと、少しだけ強引に詩音を作戦室の中へと招き入れた。
そこに置いて、と三上がソファの前のテーブルを示したので詩音はようやくその手を空けることができた。しかし、それで帰れると思っていた矢先、デスクがある部屋へと招き入れられ予想外のことにただただ緊張と焦りを増すばかり。
「すみません、三上戻りました。モニター上、特に変化は見られませんが、そちらは?」
[こちらも特に問題は無い。...如月はそこにいるか。]
『!?は、はい!』
スピーカーから聞こえてきた風間の声がまさか自分を呼ぶとは思わず、ひっくり返った声で返事をする。その様子に三上と歌川がひっそりと笑う。
[何しに来たの。]
『あ、あの。夜の防衛任務だって聞いて、飲み物でも持っていったらって言われて、それで...。』
[言われたからきたんだ?]
『それは、その。』
菊地原の問いにしどろもどろになりながら答える詩音だったが重ねられた質問にはさらに言葉を詰まらせて。
[言われたって、もしかして太刀川さん?]
黙ってしまった詩音に助け船を出したのは歌川で。彼女はそこでようやく夕食を国近に誘われたこと、その後太刀川にあったことなどを説明する。
『てつげーが、私にはなにか、わからなかったんですけど...。』
[ったく、こっちは仕事してるってのに。]
詩音がこぼした言葉に悪態をつくのは菊地原で。国近のことを知っている他の面々もため息をついたり苦笑いをしたり。しかし、詩音に徹ゲーを説明する者は誰もおらず、彼女は少し不安そうな顔をしながら首を傾げるばかり。
[それで、太刀川はなんと言っていた。]
『風間隊の皆さんは私が聞いたら答えてくれると。あと、たまには自分から顔を出せ、とも言ってました。』
[全く、いらんことを。]
今度は風間が悪態をつく、だがその声は意図的に小さく絞られていて、その言葉が耳に届いたのは人よりも耳のいい菊地原だけだった。
ーーーーーー
ちょっとキリが悪いですが。
書きたいシーンにたどり着かない...。