臆病少女と仲間たち



「着いたっ、シンオウだ!」


『ワーイ、ヤッホー!!』

「ここはまだ山じゃないよマグちゃん…」

『…(ドゴッ』

「こら、たろさんも小手調べみたいにいきなり近くの岩破壊したりしないの!!」


##NAME1##たちは数年前に旅に出て、ついに目的地のシンオウまでたどり着いたのだった。


道中でマグナはレアコイルに進化し、メタろうは既にメタグロスにまで進化した。


最初マグナがレアコイルになった時は、「マグナが分裂した!」とびっくりしたが、聞いてみれば
「ゼンブ、マグナダヨー!」という。


ひとまずテンガン山に行って、マグナがジバコイルに進化したら、各地を歩き回って、あの時のストライクを探そうという予定だった。


ちなみに此処はナギサシティだ。

港を出て街の中を歩く。

街中に大きな歩道橋みたいなものが張り巡らされていて、灯台もあって。

近代的な街並みをキョロキョロ見上げながら歩く。

「わぁー…すごい…」

『##NAME2##!チョットマチノナカミテイコウヨ!』

「うんっ、そうだね!せっかく来たんだもんね」

マグナは嬉しそうに頷くと、先頭になって飛んでいく。

それを追い掛けて橋を登り、歩いていくと…ふと大きな建物に目がいった。


「あれ、ジムかな?」

『……(グイグイ』

「わっ、たろさん!?もしかしてバトルしたいの?」

『…(コクリ』

困ったなぁ、##NAME1##は苦笑いした。

どうもメタろうはこう見えてバトルが好きなようで、ジムを見かけると行く先々で入ろうと催促してくる。

「たろさん、それより今はテンガン山に…わーっ!」

『…♪(グイグイ』

メタろうに引っ張られて##NAME1##はやむなくジムに入っていった…。




* * *



「そして夜になったっていう…」


『ナカナカアッサリカテタネー』

『♪(コクリ』

メタろうはバトルが出来て嬉しそうだ。

電気タイプのジムだったので、メタろうが地震を覚えていたから割とすんなり勝てた。


今はポケモンセンターに泊まって、休んでいるところだ。

「…とりあえず、頑張ったねたろさん?」

『…(ギュウ』

頭を撫でると、メタろうは嬉しそうにくっついてきた。

この調子で磨いちゃうかな、##NAME1##はそう思って布やスポンジなどの鋼磨きセットを取り出す。

ブラッシングの代わりに##NAME1##が編み出した毛繕い的なお手入れであった。

『アッ、ズルーイ!マグナモヤッテー!』

「うんうん、マグちゃんも次に磨くよ」

なかなか好評だ。
気持ちいいのかどうかは良く分からないけど。


こんな感じの旅が続くのかなぁ。

##NAME1##はふと手を止めてそう思って、それはそれで楽しいかもと考えてクスクス笑った。

『ドウシタノ、##NAME2##?』

「ううん、何でもないよ」

『? ヘンナノー。』

「…(ムギュ」

油断していたら、磨かれ終えて眠くなったらしいメタろうが、いつの間にか擬人化して寄りかかってきた。

人の姿になったたろさんは群青色の肩までの髪にそれと同じような色の服で、185cm近くある。

がっしりしていて男らしく、しかもそれでいて綺麗なので、赤い瞳で見つめられるとなかなか心臓に悪い…のだが。


「…(ギュウウウウウ」

「た、たろさん!そんなに力一杯寄りかかられたら私倒れるって!!」

性格はいたって子供っぽく、力加減を知らないので大変だ。


「アー!!ズルイヨ、タロサン!マグナモ##NAME2##ニクッツキターイ!!」

マグナまで擬人化して、横から寄りかかってきた。

やっぱり最初は驚いたのだが、マグナは一つ目である。

いや、それは本当は布に書いてあるだけなのか、それとも顔の上半分を覆っている布に穴が空いていて、そこから見える本当の目なのかは分からない。

けど非常によくキョロキョロと動くので、たぶん本当に一つ目だ。
そうじゃないと説明がつかない。

マグナには不思議がいっぱいだ。

ひとまず、人の姿になったマグナはグレーの肩までのくせっ毛で赤い瞳。

無駄にフレンドリーで自由すぎる性格だけど、服装は何故かスーツである。


背はメタろうと比べると小さく見えるけど、175はあると思う。

両方からぎゅうぎゅうと押されるので##NAME1##が耐えきれなくなって抜け出すと、支えをなくしたメタろうとマグナの頭がゴツッとぶつかった。


「アイタッ!!ナンダヨゥ、タロサンノバカーー!!」

「…(イラッ」

「わーっ、私が悪かったから…ほら、ケンカしないの!」

慌てて割り込んだが、止められそうになく…。


いつものように、賑やかに夜は更けていくのだった─────。




✱✱✱









『ドウ?ドウ?マグナカッコイイ!?』

「おお!カッコイイ!
(っていうか可愛い)」

『…(ジ-ッ』


あれから数日。
無事テンガン山にたどり着いてレベル上げをしていたら、マグナがジバコイルに進化した。

頭の上の黄色いアンテナみたいなのが気になったので触ってみる。

『キャー!ソコハウィークポイントダヨー!』

「うぃ…ウィークポイント…!?」

何でそんなとこ弱点なんだろうと思いながら触っていると、普段ならもっと騒ぐ筈のマグナがしーーんとおとなしくなった。

なるほど、こういうことか。


パッとアンテナから手を離すと、マグナは速攻でまた喋り始めた。

『##NAME2##、##NAME2##!ツギハドコニムカウノ?』

##NAME1##はしばらく考え込んだ。

ナギサシティからここまで、トバリシティとズイタウンを経由してきた。

※やはりメタろうの催促によってトバリジムも制覇した。


ズイタウンは昔住んでいた町で、ストライクと出会った場所にも行ってみた。


1日中歩き回ってみたけれど、探しても呼んでも彼はいなかった。



「(…何処に行っちゃったんだろう…)」

『ドウシタノー?』

マグナが顔を覗き込んでくる。
##NAME1##が泣きそうな顔をしているのを見て、マグナはギョッとして人の姿になった。

「モウ、##NAME2##ハスグナクンダカラ…ネェ、ホントニドウシタノ?」

マグナが指で優しく涙を拭ってくれるので、##NAME1##は何だか余計に泣きたくなった。

「もしかして、無理なのかなぁって…やっぱり、今さら会いたいなんて、勝手なのかなぁ…って、思ったの…」

「モシカシテ、トモダチノコト?」

「…うん…」

マグナとメタろうは顔を見合せた。

メタろうも擬人化して、近づいてくる。
ぽんぽん、と頭を撫でられた。

顔を上げると、いつも無表情なメタろうが、心配するなというように微笑んでいた。


「ダイジョーブダヨ!キットソノトモダチダッテ、##NAME2##ヲサガシテルンダヨ!!」

「そ、そうかな…?」

「ウン、ソウダヨ!ミンナデサガセバ、ゼッタイアエルヨ!」


マグナの笑顔につられて笑ってから、ふと気がつく。

「あ、擬人化してもアンテナ生えてるんだ…」

「ア、ホントダ!」

「……(アホ毛…)」

「アー!タロサン、イマシツレイナコトカンガエタデショ!ナンカビビットキタヨ!ジュシンシタヨー!」


##NAME1##は不安になったことも忘れて、こらえきれずにクスクス笑った。



本当に、いい仲間たちを持ったなあ。



この子たちと一緒にいれば、どんな困難でも乗り越えられる。
そんな気がするから──────。









†††††††††††



「ハッサム、今日はあんたのレベル上げするから」

『…あぁ』

『マスター、私にしませんか?…彼、最近調子悪いみたいですから』

サーナイトが微笑んで提案する。

それから、ちらっと気の毒そうな目でハッサムを見た。

『バトルにも、あまり集中できてないみたいですし…』

お前のせいだろう、
ハッサムは心の中で呟いた。

いつも突拍子もない事で騒いでこの流れを断ち切るエアームドがいなくなってから、メンバー内の仲は悪化する一方だった。


「だったら尚更よ」

雷は立ち上がり、キッとこちらを睨んだ。

「体調が悪いんだったら休ませる。だけど、そうじゃないんじゃ、早く克服してもらわないと困るから」


彼女は立ち上がり、強そうなトレーナーを探してスタスタ歩きだす。

俯いてその後についていくと、通りすぎる際にサーナイトが囁いた。

『すみませんね…力になれなくて』

『……白々しい』

『あら、何を怒っているんですか?私は貴方を気にかけているんですよ…フフ…』


貴方がいつ、ここからいなくなるのかを…ね。


口にはされなかったけれど、続きがありありと聞こえてくる。


ハッサムは何も答えずに、また俯いて歩いていった。








†††






テンガン山を出てすぐ東のヨスガシティで数日間滞在した##NAME1##たちは、街を出て南に向かった。

しばらく進むと着くノモセシティ周辺は自然の豊かな場所らしいので、もしかしてそこにいるかもしれないと考えたからだ。

「意外とトレーナーさん多いね…」

『マグナガンバル!』

『…♪』

「うん、バトル挑まれたらお願いね」


あ、でもマグナとメタろう連れて歩いてたら目立って余計にバトル挑まれちゃうかな。

そう思い、ボールに戻ってもらおうとした時…




「…あんたがトレーナー?」



「は、はいっ!?」


後ろから声をかけられ、驚いて振り向く。

声をかけたのは、##NAME1##よりいくつか年上らしい女の人だった。

彼女はマグナとメタろうを眺め、それから再び##NAME1##を訝しげに見つめる。

…たまに、第一印象と手持ちポケモンにギャップありすぎるって言われるんだよね…。

まあ、確かにマグちゃんとたろさんは強そうで、私はどっからどう見ても弱そうだけど…。

でも、そんな2匹が私は大好き。

「はいっ、私がトレーナーです!」

「……ふぅん、じゃあ」


女の人は片手を腰にあてて口の端を吊り上げて笑った。


「バトル、しない?」

いかにも実力と自信を兼ね備えた笑み、っていう感じだった。

##NAME1##は圧倒されて何だか身震いする。

「…何よ、出来ないの?」

「い、い、いいえ。やりますっ!」

##NAME1##がビビりながらも返事をすると、マグナが前に進み出た。

『マグナガンバルノ!』

積極的なマグナに、##NAME1##はいくぶん励まされた。

ちらっとこちらを振り返ったマグナの頭を撫でる。

「うん、じゃあ最初はマグちゃんね!」

『ハーイ!』


マグナが嬉しそうに返事をしている内に、相手の女の人の最初のポケモンも進み出た。


え、えっと、あのポケモンは確か…ハッサム、だっけ?

確か、鋼と虫タイプで…あれっ、何の進化系だっけ…?


「始めるわよ」

「…え!あ、はいっ」

弱点を突ける技がない。

たぶん相手側にもないだろうから、長期戦になりそうだ。

しかし、マグナはあまり防御が高い方ではない。

焦らず、手堅く技を選ぶことにした。


「マグちゃん!『電磁波』!」

『リョーカイッ!』

素早さではこちらが勝っていたようで、ハッサムが攻撃を仕掛ける前にマグナの電磁波が当たった。

冷静この上なかったハッサムの表情がわずかに崩れる。



##NAME1##はどうも、何か忘れているような気がして気になっていた。

このハッサムを見ていると、何か引っ掛かる。

何か思い出さなきゃならないような……でも、今はバトルに集中しなきゃ。



電磁波が当たったのを見て相手のトレーナーは小さく舌打ちをしたが、余裕をなくさなかった。

「ハッサム、瓦割り!」


『エッ!』

「か、瓦割り…!?」


予想外の技に、マグナと##NAME1##が同時に焦った声を上げた。

弱点の格闘タイプの技を当てられたら、たぶんすぐに倒されてしまう。


しかし、避けるには遅すぎた。

ハッサムは既に鋏を振り上げ、技を繰り出す態勢に入っている。


##NAME1##はさっきの電磁波が効くことをひたすら願った。

『ワーッ!』


マグナはもうダメだと思って目を瞑ったが、次の瞬間に衝撃が襲ってくることは無かった。

目を開けると、ハッサムが鋏を振り上げた体制のまま、身体が痺れて身動きがとれなくなっている。


『…ッ…!』

『アッ、チャンス!』

「マグナっ、10万ボルト!!」

『ワカッタ!』

指示通りにマグナが繰り出した10万ボルトが成功する。

『ぐぁ…っ!』

その瞬間は思わず目を瞑ってしまった。相変わらず、こういう場面だけは慣れられない。


「(こ、これで倒せればいいなぁ…)」

##NAME1##はそう思ったが、ハッサムは倒れることはなかった。

『…クッ…』

ダメージは受けたが、それほどボロボロという訳でも無さそうだ。

「(えっ、い、意外と特防高い…!?)」

「ハッサム!もう一度瓦割り!」

狼狽えている間に、間髪入れず相手が指示を出す。

相手は慌てもしなければ、声を乱れさせもしない。


正直、ああいうタイプは苦手だ。自分だけが余計にてんてこ舞いしてしまう。


「まっ、マグちゃん!10万ボルトー!!」

『ワカッ…、ワー!マニアワナイヨー!!』

マグナは今度こそダメだと思いながら10万ボルトを放った。

このタイミングだと完全に無理だ。
ハッサムは10万ボルトを避けてから攻撃してくるだろう。


##NAME1##が目を覆ってしまいたい気分で、それでも目が離せずにいると、一瞬、ハッサムと目が合った。

その瞬間、ハッサムが目を見開いて、一瞬だけ動きが止まる。




えっ…?


##NAME1##が目を瞬かせている内にハッサムは10万ボルトを避け損ね、直撃をくらった。

『ぅあ…ッ!!』


「ハッサム!何やってるの!?」

相手のトレーナーが声を荒げた。

その声でハッと我に帰ったハッサムが、体勢を立て直して瓦割りを繰り出した。

もしかして勝ったかも、とちょっと油断していたマグナは避けられず、たまらず地面にへたり込む。


「マグちゃんっ!!」

『モウダメー…ゴメンネ、##NAME2##…』

「ううんっ、マグちゃんはよくやってくれたよ!ゆっくり休んでて…!」



##NAME1##はいったんマグナをボールに戻し、メタろうに交代した。


相手側に向き直って、##NAME1##はびっくりした。

「ポ、ポケモン、交代しないんですか…?」

ハッサムはまだギリギリ体力が残っていたようで、ゼェゼェと苦しい息をつきながらも、こちらを向いてその場に立っている。


でも、あまりにも弱っているから、当然自分がマグナと話している間に交代したはずだと思っていた。


「力が残っている限り、最後まで戦わせる。私は私なりに自分のポケモンに敬意を払ってるつもりよ」

「で、でも…すごく辛そう…」

確かにそれも、信頼の形なのかもしれない。でも、##NAME1##には平然と見ていられなかった。

「他人のポケモンまで心配するくらいなら、あんたもうバトルするのやめたら?」

##NAME1##は言葉に詰まった。

何度も、自分はバトルに向いてないな、と思ったことがある。

でも、それは旅をするトレーナーとして避けて通れない道で…。

…ああ、もういい。


私、この人とは合わない!!


キッと睨むと、女の人は面白そうに笑った。

「…へぇ、いい表情〈カオ〉できるじゃない」

「…続き、しましょう!」


とは言ったものの、どんな技を出したらいいやら。

ええと、たぶんどの技でも倒せるだろうから…

「たろさん!雷パンチ!」

「ハッサム、バレットパンチ!」


ほぼ同時に指示を出した。

あっ、向こうは先制技だ!
最後まで戦わせるっていうのは、こういう意味だったんだ…。

雷パンチを出そうと接近したメタろうに、ハッサムが目に見えないような素早い攻撃を仕掛ける。

メタろうは驚いたが、一瞬だけ遅れて自分も攻撃を繰り出した。

メタろうが砂ぼこりを上げてズザッと後ろに着地し、ハッサムは飛ばされて地面に倒れる。


「(今の、凄かった…バレットパンチってあんな威力高い技だったっけ…?)」

あのメタろうが勢いに押されて飛ばされるなんて、相当な威力だ。


ふと顔を上げると、またハッサムと目が合った。

地面に倒れたまま、薄目を開けて、何か確かめるように、或いは何か訴えかけるように##NAME1##を見ている。

しばらくすると、ハッサムは一度深く息をついて、何処か切なそうに目を伏せた。

それっきり、その目からは感情が消え失せて、もうこちらを見ようとはしなくなった─────。


何だろう。
何でこんな、何か早く思い出さなきゃいけないようなそんな気持ちになるんだろう。

ああ、でも今はじっくり考えている時間がない……



***


相手はハッサムをボールに戻すのは後にして、ポケモンを交代させる。


次に出て来たポケモンを見て、##NAME1##とメタろうは冷や汗をかいた。


「…ヘルガー、火炎放射」


避けられる筈もなく、2対2のバトルは結局、##NAME1##の負けに終わった…。








大して多くない賞金を渡すと、彼女は「別にいらないけど」と言った。

どうせ貰うんだったら、もっと金持ちそうな人から遠慮なく貰うんだそうだ。


決まりだから受け取って、と言うと、黙って受け取ってくれた。


「私は##NAME1##っていいます。あなたは?」

「……雷」


そんなの聞いてどうするの、そう言いたげな面倒臭そうな顔をしていた。
あからさまな性格だなあ。

そうして、彼女は自分のポケモンをボールに戻し、サーナイトだけを連れて去って行こうとした。

傍らのサーナイトが何やら雷に言う。すると、彼女は足を止めて振り返った。


「…ねぇ、あんたあのハッサムと面識あるの?」

「えっ?…無い…と思います…」

「…そう。それだけ…じゃあ、私は行くから」


何だろう。
傍らのサーナイトが、笑った気がした。



##NAME1##はしばらく呆然として、それからハッと気がついた。

「マグちゃんとたろさんの回復しなきゃ!」




****



「ごめんねー、負けちゃって…」

『アヤマラナイデヨゥ。デモ、ナンカ アノヒト ヤナカンジガシター!』

『…(コクリ』

元気のかけら等を使って回復し終えると、マグナはまた元気に話し出した。

「うん…あの人はね、たぶん…実力主義なんだよ…メリトクラシーなんだよ…」

※メリトクラシー=実力主義

悪い人な訳じゃない。

考え方がちょっと自分とは違うだけなんだけど、経験上、ああいうタイプとは絶対に合わない。

というか、ついていけないという事は学校などで身を以て体験済みだ。




そこはもう「合わない」で割り切るとして、考えるのを止めた。


そしてふと、バトルが始まる前に気に掛かっていたことを思い出した。

「…ねぇ、ハッサムって…何かの進化系だったっけ?」

マグナとメタろうは顔を見合せた。

皆、しばらく考え込む。



数分経った頃、結局、##NAME1##が思い出した。



「そうだ!!
ストライクだよ…………………えっ!?じゃ、じゃあ、もしかして…!?
えっ、まさか…そんな!」


余りにも、「ストライク」「野生」という印象が強すぎてそればかり探していた。

探している内に更にそのイメージが濃くなって、他の可能性を考えられなかった。

だ、だって…確か、進化するには…交換するんだよ?

つまり、少なくとも2人のトレーナーの手持ちになってたってことで…

人間嫌いだったはずなのに、有り得るのかな?

で、でも、さっきのハッサムが「彼」なら…私を見て、私に何が言いたかったのかも、全部説明つくし…


だ、だとしたら私、最低じゃない!
面識無いなんて言っちゃったじゃない!

昔から優しくて繊細だった「彼」がそんなの聞いたら、きっとすっごく傷ついて…!!




##NAME1##は、マグナが「チカクノマチノポケモンセンターニイッタンジャナイ?」
と言ってくれるまでしばらく、ひたすら混乱していた──────。







††††††††


バトル中はいつも、相手のトレーナーなど見ようともしていなかった。


ジバコイルに指示を出す声に、何だか聞き覚えがあるような気がした。

ふとした瞬間にその姿が目に入った時、愕然とした。



ずっとずっと、心の何処かで求めていた、心の底ではいつも想っていた存在が、そこに居た。

電撃をくらっても、雷の怒った声で現実に引き戻されるまで、目が離せなかった。


言い表せない驚きがある一方で、気づいてもらえていない事が哀しかった。

長い間会わないせいで、俺は##NAME1##という存在に夢を見過ぎていたのかもしれない。

俺を見つけたらすぐに駆けてきて、温かい腕で包んでくれるような気がしていた。

泣いて喜んでくれると思っていた。そんな想像でもしないと、やっていられなかった。

俺が何年も雷のもとにいてあの空気に耐え続けている間、##NAME1##の事を考えるのが唯一の心の支えだったのかもしれない。

俺にとっては、##NAME1##の存在が安らぎの象徴だった。



##NAME1##が倒されたジバコイルに駆け寄って話しかけるのを見て、あぁ、確かにあの##NAME1##だ、と思った。

自分が怪我した訳でもないのに涙目になって、心の底から心配して。



雷が俺を交代させないのは、当然の事だと思っていた。

だから##NAME1##が俺の事まで心配して雷に話しかけた時は驚かされた。



昔、俺がうっかり鎌を岩にぶつけただけで泣きそうな顔をして心配していたのを思い出した。

あぁ…これが##NAME1##だ。

おどおどして、他人の心配ばかりで。すぐに泣いて。


余計に恋しくなってくる。

##NAME1##なら、どんな弱音を吐いても受けとめてくれる。
もう、自らを偽らないでいられる。



##NAME1##は俺を、辛そうだ、と言った。



##NAME1##、俺が辛いのはバトルでダメージを受けたせいだけじゃ無いんだ。



お前が、もう俺のことなんて忘れてしまっているんじゃないかと、それがたまらなく怖いんだ。


交代で、メタグロスが前に進み出てくる。

##NAME1##のことを信じきっている、それがありありと分かる。

##NAME1##もメタグロスを心から大事に思っている、それがよく分かる。



だからこそ、なおさら怖い。


##NAME1##のそばには、もう俺の居場所なんて無いんだろうか。

サーナイトにとって俺がそうだったように、また##NAME1##のそばに行けたとしても、そこでは俺はもう邪魔者でしかないんだろうか。


最後にメタグロスに一撃だけバレットパンチをくらわせ、倒される。

凄い威力だ。


これだけ育てられているのは、##NAME1##がもう一人前のトレーナーだという証拠。


もう、ポケモンを怖がって、何故か俺だけ平気で、野生ポケモンが遊びたがって近づいてくる度に俺に隠れていた、あの頃の##NAME1##とは違う。


…俺はもう、必要として貰えないんだろうか…?



倒れたまま、じっと##NAME1##を見つめた。

##NAME1##は、目を瞬かせている。俺が誰だか、気づく様子は無い。


深く息をついて、目を伏せた。


駄目だ。もう、見ていられない。



俺はずっと##NAME1##を想っていた。

けれど、##NAME1##も俺を想ってくれているなんて、単なる自惚れに過ぎなかったんだ。


そんな##NAME1##の姿を見ているだけで、張り裂けそうに胸が痛い。

これ以上見ていたら…俺は…泣いてしまうかもしれない。
あまりの痛みに、いつものように感情を押し殺して、耐えていられる自信が無い…。







††††††††


ポケモンセンターでの回復を終えると、雷がいきなり2択を突き付けてきた。


「ボックスに入れられるのと逃がされるの、どっちがいい」

そろそろ、来るような気がしていた。
けれど、こんな時だからこそ思っていた以上にショックは大きかった。

「何度言っても改善出来ないような奴、要らない。メンバーから外れてもらうから」


俺が何も言えないでいると、雷は苛々した声でさらに言う。

「聞こえてるの?」


「……逃がして欲しい」

雷は滅多に手持ちメンバーを変えない。

ボックスに入れられたとして、手持ちに復帰できる望みはまず無いだろう。


「…そう言うと思った。じゃあ、もう何処にでも行っていいから」

ポケモンセンターの外に出ると、雷は何の感情も無い声で言い放った。






……これで俺は、2人目の主からも捨てられた訳だ。



雷の傍らにいたサーナイトが笑顔で近づいてくる。

ああ、もうやめてくれ。

お前が俺を嫌いなのは分かっている。

俺が立ち直れないように、もう雷に近づくことの出来ないように傷を抉ろうとしているのは、もう分かっているんだ。


雷はサーナイトに向かって、何やってるんだと言いたげな視線を向け、先にポケモンセンターに入っていった。

別れの挨拶でもしに行ったんだと思ったんだろう。


『もうお別れですね…貴方がいないと寂しくなりますよ』

『……』

心にも無いことを。
本当に寂しいなら、その笑顔をしまってもらいたい。

『さっき戦った女の子が、貴方が捜していた子だったんですね?』

『…っ!』

『お気の毒に…あの後、雷に聞いて貰ったのですが…彼女、貴方のことを全然覚えていないみたいですね』

ハッサムは、ギリッと歯を食い縛った。

『……だったら、何なんだ』

『辛いでしょう。哀しいでしょう?貴方は本当に、可哀想な人ですね』

言葉とは裏腹に、その声は愉しそうだった。

『大丈夫ですよ……きっと、貴方が泣きつけばあの子は哀れに思って仲間にしてくれます。
優しい子ですね、あの子は。…反吐が出るくらいに』

ハッサムは初めて怒りを露にしてサーナイトを睨みつけた。

『お前に##NAME1##の何が分かる!お前は俺を苦しめたいだけだろう!?』

サーナイトの顔から微笑みが消えた。

『…だったら、何なんです?』

ぞっとするような、冷たい表情だった。
サーナイトはきっと、雷以外のものは全て、心の底ではいつもこんな冷たい眼差しで見ているのだろう。


『さようなら。貴方が不幸せになっていくのを見るのは、とても愉快でしたよ』

笑顔でそう吐き捨てて、サーナイトは雷の後を追ってポケモンセンターに入っていった。








ヨスガシティの街中から出て、トレーナーの沢山いる道路からも離れて、森の中に入る。


人の声の全く届かない場所まで来ると、ハッサムは闇雲に動かしていた足を止めた。





悲しいのか悔しいのか、自分でもよく分からなかった。

頭の中が混乱していて、泣くことも出来ない。



認めたくない。

1人目の主には裏切られて、2人目には捨てられて、最後の望みだった##NAME1##には忘れられていたなんて。

自分がこれほど他者に依存するタイプだったなんて、思いもしなかった。

誰かに存在を認めて貰うことでしか、自分の存在価値を見出だせない。


現に、誰にも必要とされなくなった今、もうどう生きていったらいいのか分からなくなっていた。


いっそ、いなくなった方がマシだとさえ思った。

こんな、どうしようもない寂しさと苦しさに耐えながら生き長らえるより、遥かに楽な道だ。

漠然とそう考えた時、ふいにガサガサッと音が聞こえた。


「マグちゃん…本当にこっちで合ってる…?」

『アレ、オカシイナー。タシカニ、コッチニ ヒッパラレルノニー 』


ついさっき聞いた声にハッとして振り返ると、ちょうど茂みを抜けてきたジバコイルと##NAME1##が驚いた表情のまま固まっていた──────。








†††††††







********


慌ててヨスガシティに戻ろうとしたら、バトルを見ていた周辺のトレーナーさん達から続けざまにバトルを挑まれた。

断り切れずにバトルをしたら、すっかり時間が経ってしまって。


焦ってヨスガに行こうとしたら、マグナが

『コッチカライケバ、モットチカイヨ!』

と先頭になって進み出した。


街には金属がいっぱいあるから、磁力で引かれる方に行けば着けるそうだ。

近道!

そう思ってついていくと、何やら森の中に入っていった。

ガサガサと草をかき分けている内に、どんどん深くなっていって…


「マグナ、本当にこっちで合ってるの…?」

『アレ、オカシイナー。タシカニ、コッチニ ヒッパラレルノニー』


そんな会話をして、痺れをきらしたメタろうがマグナにちょっかいを出しかけた時、視界が開けた。


そこで、思いがけない事態が発生する。



『…っ!?』


「わっ、あ、あの…二度めまして…!?」

さっきのハッサムがいて、ガサッという音に驚いてこちらを振り返った。


向こうも驚いて目を見開いていたけど、それ以上に驚いた##NAME1##はうっかり妙な挨拶を口走ってしまった。


そして、メタろうから『違うだろ』というように脇腹をどつかれる。

い、痛いよたろさん!

で、でも、そうだよね。
間違えた。
二度目なんかじゃない。


「ごめん!!二度目なんかじゃないよね。ずっと昔に、何回も…」

そう言うと、ハッサムは余計に驚いていた。

『俺を…覚えていてくれたのか…?』


「うんっ!ずっとずっと、会いたかった!本当、何であの時、一緒に来てって言えなかったんだろうって…ずっと…」

嬉しくて泣きそうになって、抱きつきそうになって、ふと思い出して踏みとどまった。

「ごめん…今は、雷さんがトレーナー…なんだよね」

もう昔の知り合いでしかない自分が出しゃばったって、迷惑なだけかもしれない

そう思って一歩下がった##NAME1##だったが、返ってきたのは思いもよらない一言だった。

『いや…ついさっき、雷は俺の主人じゃなくなった』

「えっ…?」

顔を上げると、彼は諦めたように軽く微笑んでいた。

『…いいんだ、俺が悪かったんだから。いつかこうなるのは分かってた。それに、雷とはもともと合わなかった。要らないと言われても仕方な………##NAME1##…?』


わざと平気なように振る舞ったのに、いつの間にか##NAME1##の方がぎゅっと口を結んで、ポロポロと涙を零していた。

戸惑って近づいていくと、ぎゅうっと腕を掴まれる。

「…嘘」

『どうした、##NAME1##…俺は、平気だから…』

「嘘。要らないなんて言われて平気な筈ない。初対面の人に言われたって悲しいと思う。私だったら絶対泣く」

『##NAME1##…?』

「何か隠してるでしょ。声が震えてるし、腕も震えて……ぐすっ」

そこまで言うと、##NAME1##は声を上げてぐすぐす泣き出した。

『アッ、##NAME2##ガナイテル!』

ビクッとした。
サーナイトの件のせいで他のポケモンの言動に疑心暗鬼になっているハッサムは、自分が責め立てられるのではないかと思った。

…のだが。

『マグナモナイチャウ!!ウワーーーン!アイタッ!』

『…(グスッ』

『ナンダヨゥ、タロサンモナイテルジャン!オタガイサマダローー!』


まさかのつられ泣き状態。

ハッサムは何だか脱力した。

『な…んで…俺は平気だって、さっき…!』

「嘘。じゃあ、なんで泣いてるの…?」

##NAME1##がぐすぐす手で目をこすりながら言った。

言われるまで気づかなかった。知らない内に、自分も涙を零していたことに。

慌てて止めようとしたけれど、自分が泣いていることに気づいてしまったら、もう止められなかった。


必死にこらえようとしていると、急に##NAME1##に抱き締められた。

ハッサムの方が背が高いので腰のあたりに手を回して、ぎゅうっと力いっぱい抱きついてくる。

背を屈めて、抱き締め返して、離さないでいたいという衝動に駆られた。

思いっきり、甘えてしまいたかった。

…けれど


『…駄目…だ、離してくれ…そんな風にされたら…歯止めが効かなくなる…っ』

今、自分から抱き締め返したら、それこそ涙が止まらなくなる。

##NAME1##のせいでは無いことまで、辛かったこと全て吐き出してしまう。


まだ、心の何処かに臆病な自分がいた。

まだ隠していた方がいい。
##NAME1##だって、長い間会わないだけでこんな弱り果ててしまった俺を見たら、幻滅するかもしれな……

『今更遅い』※メタろうです。

『モウ!ナンダヨゥ!クッツイチャイナヨー!!』

ドンッ!

『う、わ……ッ!?;』


まさか##NAME1##の手持ち2匹から背中をどつかれるとは思わなかった。


中途半端に抵抗したせいで前方に膝から崩れ落ちる形になり、意図せずして、後ろに転けて座った##NAME1##に覆いかぶさるように身体を預けていた。

間近に##NAME1##の顔がある。
##NAME1##はしばらく驚いていたけれど、やがてふにゃっと笑ってから、ハッサムの肩に顔を押し当てて、背中に手を回した。

ぽん、ぽん、とあやすように優しく叩かれる。

優しい温もりが、##NAME1##の体温が伝わってくる。


こらえられなかった。

堤防が決壊したように、今まで押さえ込んで押し殺してきた感情が溢れだして、自分でも訳が分からなくなった。


『…な、んで…っ』

「ん?」

『何で、すぐに気づいてくれなかったんだ!?俺は、お前に忘れられたとばかり…!』

これだけは言わないでおこうと思っていたのに、自分の意思に関係なく零れてしまう。

「ごめんね、本当にごめんね…進化してるなんて思ってなかったの。まだ野生でいて、ストライクだってばっかり思ってた…」

『…進化…?…そ、うか……確かに、分からないな…』

拍子抜けした。
自分のことに精一杯で、自分があの頃と全く違う姿になっているのを失念していた。

##NAME1##は、自分がトレーナーの手持ちになっていることも、知らなかったのだ。

よく考えれば、むしろ今、彼女が気づいていることの方が奇跡だった。


『じゃあ…何で、俺だって分かった…?』

##NAME1##にだって、ジムバッチを集めるとかチャンピオンを目指すとか、当然他の目的があるだろう。

そんな、俺ばかり気に掛けていられるはずが無…

『サガシテタンダヨー!』

『…え?』

『##NAME2##トマグナタチガタビヲハジメタキッカケ!!
ムカシワカレタ、トモダチヲサガスタメ、ダッタモンネ!』


昔別れた友達…?

それでもまだ分からずにいると、メタグロスから軽くどつかれた。

『…まさか…俺を探して、旅を…?』

『(コクリ)』

##NAME1##の方に向き直ると、より一層強く抱き締められた。

「会えて良かった…ねぇ、」








「今度こそ言うよ…。
私たちと一緒に来て?」


ハッサムは何度も頷いた。返事をしようと思ったけど、それより嗚咽が先に出て何も喋れなくなった。

『う…っ、ひ、っく…うぅっ…あ…』


##NAME1##の肩に顔をうずめて、ただひたすら泣いた。

それだけでは耐えられなくなって、泣きながら全て話した。

寂しくてわざと捕まったこと、信じかけたのに裏切られたと思ったこと、ずっと強がって感情を押し殺してきたこと、邪魔者だと見なされたこと、辛くて寂しくて苦しくて、いっそ死んだ方がマシだと思ったこと、全て。



拒まれないように、逃げられないように、もう離れないように、力の限りに##NAME1##を抱き締めて捕まえていた。

力の加減など出来なかったから息が苦しかったに違いないのに、##NAME1##は安心させるようにずっと背中をさすってくれていた。


全部受け止めて、包みこんでくれて、一緒に泣いてくれた。


そうして、気がついたら俺はそのまま疲れ果て、安心しきって意識を手放していた────────。










気がついたら、朝になっていた。

しかもそれだけでなく、いつの間にか##NAME1##の膝を枕にして寝ていた。

飛び起きて辺りを見回せば、小さなライト(電池式だと思われる)が近くに置いてあって、すぐ隣にはジバコイルとメタグロスが寝ていた。

##NAME1##が目を覚まして、眠そうにあくびをしてからニコッと笑った。

「おはよう。よく眠れた?」

『お、俺はまさかあのまま寝ていたのか…?それで、皆で野宿を…?』

「うん。あ、心配しないで!夏だから風邪ひかないし、夕食はマグナにおつかいしてもらって、パン食べたから」

ハッサムは今さらながらかなり恥ずかしくなった。

人前で泣いたのなんて初めてな上に、泣き疲れて眠ってしまうなんて…。

『…その辺に適当に寝かせておいてくれて構わなかったのに…』

いや、起こしてくれても良かったかもしれない。

『でも、起きた時に1人だったら不安になっちゃうかなと思って。それに、すごく疲れてたみたいだったから…』

確かに、目を覚まして##NAME1##がいなくて動揺する自分がありありと思い浮かぶ。


ハッサムが何も言えずにとりあえず座り直していると…


「あ、そうだ!昨日は名前を考えたの」

『名前…?俺の?』

「うん!」

『それを、一晩中?』

「うん!ポケッチの辞書機能とかも使ってね」


※実際のゲーム中ではそんな機能ありません。


「『狭霧<サギリ>』っていうの!どうかな…?」


『狭霧、か……ありがとう。名前、考えてくれて…』

名前も嬉しいけれど、それ以上に自分のことでそんなに時間をかけて悩んでくれたことが嬉しくて。


しかし、それに続く言葉は彼の考えを遥かに越えていた。

「じゃあ、愛称は『さぎりん』でいいかな?」

『さっ、さぎりん…?
俺が…!?』

「…ダメ、かな?やっぱり馴れ馴れしい…?」

今にも泣きそうだ。

ハッサム…いや、狭霧は慌てて首を横に振った。

『いっ、いや、ダメじゃない!…むしろ、馴れ馴れしいのは嬉しいかもしれない…』

遠慮されるよりは格段にそちらの方がいい。

そう思って言うと、##NAME1##は嬉しそうに笑った。

「うんっ、ありがとう!よろしくね、さぎりん!!」

『よ、よろしく…』


この呼び方に慣れるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。

手と鋏で握手をしていると、他の2匹も目を覚ました。

「改めて紹介するね!こっちがマグナ。私はマグちゃんって呼んでるの」

『ヨロシク!ネェネェ、サギリンッテヨンデイーイ?』

狭霧は再びぎこちなく頷く羽目になった。


「こっちは、メタろう!私はたろさんって呼んでるんだ」

どうコメントしたものかと考えている内に、珍しくメタろうが呟いた。

『さぎりん(笑)』

『なっ…ひ、人のこと言えないだろう!?』



「どうしたの?たろさん、さぎりん…」


『『何でもない』』



昔は知らなかった##NAME1##の新たな一面を発見した朝のことだった。










-Fin.-
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