わがままDays




今日は休日。


##NAME1##が課題を終え、窓から入る爽やかな風を感じながら、とっておいたお菓子を広げて手を伸ばした時、事件は起こった。


『スキ有りッ!!』


いきなり窓から飛び込んできた黄色と白のふわふわした物体が、床をズサーッとスライディングして素早くお菓子を1つかっさらっていったのである。


「ちょっと、何いきなり!?」


『ふっふ~ん。
これが最後のひとつというワケでもなし、別にいいじゃないか』


床に座り込んで機嫌よくお菓子をポリポリかじりながら、なんとも調子の良いことを言う。


「お菓子は別にいいよ。

私が言いたいのは、心臓に悪いからいきなり窓から飛び込んでこないでっていうこと!」


『えー、そんなの##NAME1##が慣れれば済む話じゃないか』


「………もう!!」


最近、前にも増して無遠慮になってきたチルットの横っ面を人差し指でつっついてみる。


チルットが、つっつかれた方に頬張っていたお菓子を反対側の頬っぺたに移動させたので、ぷくっとそっちが膨れた。


かわいい。


そのままつっついていると、チルットはちょっとムッとした表情をしたあとに頭をぐいぐい指に押しつけてきた。

『違うだろ!
撫でるならこっちだ!!』


「怒るのはそこなの!?」


若干呆れながらも言われるままに頭を撫でると、チルットはお菓子をもぐもぐしながら、幸せそうにうっとりと目を閉じておとなしく撫でられている。


……かわいい。



「………」


『なっ!?なんだ、何をする!
こら、頭を押すな!!』


嘴で指先をつっつかれて、仕方なく手をひっこめる。


「だってあんまり可愛いから何だか悔しくなったの」


『はぁ!?何でそこで悔しがるんだ!
ボクが可愛いのも美しいのもかっこいいのも全て当たり前なんだ、もともと##NAME1##がボクに敵うわけはない!
だから悔しがることはなーんにも無いぞ、はーっはっはー!!』


「………」


『あいたたたたっ。
だーかーらぁ、押すなってばぁ!!』


「そういうこと言うようなやつが可愛いもんだから何か悔しいの!!」


チルットは舞い上がって##NAME1##の手から逃れると、ぷんすか怒って捨て台詞と共に窓から出ていった。


『何だよもう、ボクには全然理解できないぞ!!
近いうちに絶対仕返ししてやる!覚えてろよー!』


しっかりお菓子をもうひとつくわえてから飛んでいったチルットを見送り、自分もお菓子を食べ終えると、少し部屋の中を片付けてから、散歩をしようと支度を整えた。


外へ出ていったん屈み、靴紐を結び直していると背中に とすん、と何かが落ちてきた感覚が。


「?」


大した衝撃ではないが微妙によろけ、何事かと首をひねって自分の背中を見ると、さっき出ていったはずのチルットが得意気にのっかっていた。


『どうだぁ?
ビックリしただろうっ!!』


最高にドヤっている。
きっと自分では大きな衝撃を与えたつもりなのだろう。


だが急降下しようにも、そのふわふわの翼が勝手に勢いを削いで、実にふわっとした着地の仕方になっていたのだ。


それにしても「近いうちに」とは確かに言っていたが、いくら何でも近すぎではないのか。


もしかして、窓から飛び出してすぐに玄関に回り込み、##NAME1##が出てくるのを今か今かと待ち構えていたのだろうか。



色々と言っておきたいことはあったが、##NAME1##の手は何とはなしにひょいと伸びて、背中からチルットを持ち上げて両手で包み、手のひらの上で

『なんだ?
驚きすぎて言葉も出ないか?はっはっは、これは悪いことをしたな!』


と、まだドヤっているチルットを、そのままぎゅーっと胸に抱いた。


『むぐっ!!
…へ?あ?
なななな何だ、どうしたんだ!?』


羽をバタバタさせて慌てふためくが、しばらくしてチルットはおとなしくなり、つぶらな2つの目が様子をうかがうようにじっと##NAME1##を見つめる。


ぴょこぴょこ動いている冠羽をつっつき、##NAME1##は再びむくれた。


「チルットが可愛いのが悪い」


『は?

…ああ、いや、だからボクが可愛いのは当然だと言っているだろう!!

だけど、そう言われるのは悪い気分じゃない。
もっーと言ってくれて構わないぞ!!』


嬉しそうに翼をパタパタさせながら言うチルットの嘴を、無言で指でつつく。


チルットは驚いて目をぱちくりさせ、それから少々むくれて飛び立ち、##NAME1##の肩に移動した。


『ボクは知ってるぞ。

そういうのを「つんでれ」って言うんだ!

全く、ボクが可愛くてたまらないということを素直に認めればいいものをっ!!』



それが洒落にならなくなってきてるから悔しいのよ、と思いながら、##NAME1##はチルットを肩にのせて散歩を始めたのだった。








憎たらしいとこがまた可愛いから、ただひたすらに悔しいの





(それにしても最近、窓を開けても外に出かけてもすぐに現れるなぁ…)
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