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黄泉灯狐のお礼画面

スキ!ありがとうございます。

おまけ「カインの小話」

「貴方は次期法王となるのですから、わたくしと一緒に明日の対策会議に出席するのですよ」

朝の祈りの時間に、突然シスターシスから告げられカインは目を丸くする。
それもそのはずだ、ここ教会【聖薔薇教会】は数あるギルドの中でも1、2を争うほど大きいギルドだ。

「ちょ…ちょっと待ってくださいシスターシス!法王って…僕はまだ所属したばかりですし、今まで少し違う宗派で…」

宗派が違う、その項を伝えようとしたカインの口をシスは人差し指で軽く押さえる。

「宗派、宗教等はなくなりました。【教会】はわたくし達、聖薔薇教会だけ。名残はありますが全て形だけですとお教えしたでしょう?」

クスリと笑いながら小さい子に諭すように語る。確かに数十年前、ノイザーと呼ばれている化けものが現れてから【宗教】というものは崩壊していった。
何故崩壊したかは詳しくは分からないが、キリスト系の者達は宗派関係なく集まり【聖薔薇教会】を作った…と聞いている。
ギルドマスターはその複合した中でも偉い!とイメージのある【法王】と呼ばれているらしい。

「そっそれはわかってますよ!で…でもなんで僕なんかが…」

そう、それはわかっている。何より疑問なのはカイン自体は現法王に会ったことがないし、実践経験、ギルドに貢献した覚えもないのだ。

「それは簡単です」

未だに慌てるカインを見、またシスはクスリと笑う。

「貴方の契約精霊の能力と若さが決め手…ですのよ」

「…能力と若さですか…そんな簡単に決めていいんですか?」

そんな事で…と言いたげに溜め息をつくカインを尻目にシスはスッと真面目な顔になる。
そして確りとカインの目を見、先程よりも小さな声で告げる。

「そんな事…ではありませんの、教会は約10年居もしない法王に従ってきましたの。他の者達も薄々気付き初めてる…ですから強い力をもった者、そして凝り固まった考えを無くす為、若い者が指導者にならねばなりません」

またカインは目を丸くする。「法王が居ない」それは…

「どういう事?という顔をしてますね、前法王は高齢でした。契約精霊も貴方に似た力をもち、人望もありましたの、ですが…」

カインの気持ちを読み取ったのか、前法王の事を説明するシスだったがそこで止まる。何かを堪えている様な様子に心配し「シスター?」と声を掛けるが片手で制される。

「すみません…大丈夫です…前法王は亡くなりました。高齢だった為、力を使う際に相当な負担がかかっていたようです。亡くなってからは貴方の知っている通り、指示は手紙で渡される。上層部はあたかも法王がまだ生きているかの様に振る舞っていますの」

言い切るとシスター服に着けている小さい鞄から1通の手紙を取り出す。恐らく指示の手紙だ、それを開封し中の書面をカインに見せる。
そこにはカインの名と法王にすべきという短い文が書かれていた。

「シスターシス…これ」

その手紙は少し変わっていた、現在渡される手紙はみな印刷文字、恐らくは法王が居ないから別の者がPCを使い作っているのだろう。
しかし、この手紙は違った。

「色々言ってきましたが、1番の理由はこれですの。前法王直筆の指令書」

「法王が僕を…?でもその時はまだ今より子供ですし、教会にも所属してませんよ!?」

カインが所属したのは1年前、それまでは祖母と一緒に森の奥に住んでいたのだ、法王に会えるはずがない。

「前法王は貴方のお祖父様でした。」

さらりとシスが答える。

「貴方の契約精霊も前法王の契約精霊の子孫…同じ能力なのです。貴方は前法王の生まれ変わりのようなもの、ですから法王にならねばなりません」

強く言い聞かせる様にシスが告げる。聞きたいことが多すぎて言葉にできない、でも前法王は、シスは、教会はカインを必要としていることは理解できた。

「…わかりました、まだ色々混乱してますが、明日の会議確り参加します!」

シスはその言葉を聞き安心したようにふわっと笑う。

「では早速準備をしましょう!あぁそうそう、貴方の好きな円真の石田光姫様も来られるそうよ」

「え!本当ですか!?し…失礼のないようにしないと!」

さっきの深刻そうな話はなかったかのようにカインは準備を始める。これは本編より少し前のお話。



「にいさま…あの子はカインはきっと…」

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