FGO




 どれだけ大切なものでも失うのは一瞬だ。一度目は何かを持って行く余裕なんてなかった。二度目は最低限しか掴んでいけなかった。それでも思い出は残っている……というのは気休めでしかなくて。やっぱりみんなから貰ったものは、過ごした思い出は、ひとつ残らず持っていきたかったのが本音だ。
 仲間と自分の命、戦闘に必要なデータ。最低限のものがあれば。そう思うしかない。失ったものは戻らないと知っている。割り切りと言えば聞こえはいいけれど、その実ただの諦めだろう。
 手の届くところだけでも守りたいのに。それはワガママだ。過信だ。エゴだ。伸ばした手の先に残ったものは何ひとつ。生きるためには目の前でこぼれ落ちていくものたちを見ているしかない。振り返らずに進むしかない。
 生き抜いた先には何があるんだろう。この記憶を忘れないままでいられるかな。みんなとはいつまでいられるかな。やっぱり自分の手には何も残らないだろうな。

「わたしがいつまでも捨てられないもの?」

 それでも生きたいと願ってしまう意志、かなあ。
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