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「見取り稽古でいいじゃん」



打ち込み台などの用意は、炭治郎にも手伝って貰って終えた義勇。
けれども、実際自分が何を教えるべきなのか、迷っていた。

錆兎と真菰にも相談するが、他の柱たちと同じものしか思い浮かばず。
いよいよ鱗滝に助言を求めるか──というところで助け舟を出したのは通りすがりの記憶のお化けだった。

「冨岡さんが見取り稽古ですか。皆目検討もつかないですね」
「“しのぶ”はな、義勇をいじるのやめて差し上げろ」

炭治郎の様子を見に来た“しのぶ”と、付き添っていたカナヲ。
残念ながら久しぶりに禰豆子と過ごせと義勇が追い出してしまったので行き違いだ。

「俺の弟弟子は凄いんだぞ、見せてやるよ。カナヲ、ちょっと久々に鍛錬しようぜ」

突然の鍛錬のお誘いにもかかわらず、カナヲははいと返事をして刀を構える。“しのぶ”は目を丸くした。自分に許可を求めることもなく行動する妹の姿に、すこし寂しそうな顔。

「影が南中を刺すまで技の打ち合いな。義勇はカナヲが危ない時に助太刀に入ってくれ」
「見取り稽古ではないのか」

義勇と“しのぶ”が顔を見合わせる。カナヲも不思議そうだ。
けれども、記憶のお化け──時柱は刀を納刀したままで、姿勢を低くする。「見取り稽古だよ」



「殺す気で行くから、本気でかかるように」



霹靂一閃で首を狙われたカナヲが、間一髪でそれを避けた。刀で受け止めたことで片手が弾け柄から浮いてしまう。それを見逃さずすぐ様、時柱と渾名される人物は体を捻って八重霞を放った。

バランスを崩しながらもカナヲは御影梅で、その合間を縫うように義勇が流流舞いで防いだ。そして、カナヲの腹部を抱えて距離を取る。

“しのぶ”から、感嘆の声が漏れた。

「冨岡さんが加勢に入らなかったら、カナヲは腕と足を失っていましたね。それにしても、二人ともよく連携させて見えましたが」
「わ、私も、驚きました」

目をパチクリさせる二人に、時柱はかっかっかっ、と笑った。

「ほら見たことか! 見取り稽古に最適だろ。明らかに隊士には必須で少しでも身につけておくべきだ。他の呼吸との連携はな!」
「それにしたって、他の呼吸の型を把握していなければ難しいのでは」
「知っている」

“しのぶ”の懸念に対し、義勇は感情の読めない顔でぽつり。
知っている、とは花の呼吸のことだろうか。“しのぶ”は姉を知っているからもちろん把握しているが──はた、と彼女は記憶のお化けを振り返る。

雷の呼吸と霞の呼吸を今し方使って見せた相手。
そうだ、この人物は──全ての呼吸の技を使える。それに、柱の中で一番付き合いが長いのは、冨岡義勇だ。



「さあ、カナヲの首が飛ばないように気張っていこうな!」
「ちょっと待ちなさい! まさか本気じゃないでしょうね!」



まるで遠足に行くぞー、という軽い勢いで刀を振り上げる時柱に、“しのぶ”は思わず素で止めに入るのだった。



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柱稽古【水編】2020.04.26
※現在3種類公開中

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