運命編のネタバレ3点
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「──服はそれでいいのか?」
地球からきた来訪者の一人が、代表に声を潜めて話しかけている。とはいっても、自分には聞こえるけど先導する係官には届かない声量だ。
そっと振り返ってみたら、青年の目が笑っていた。確信犯である。
「な、何だっていいよ! いいだろ、このままで?」
不機嫌そうな声は、現在若干18歳で一国の長となっているカガリ・ユラ・アスハだ。彼女は同意を求めるように無言でリオンを見つめてくる。
彼女は動きやすい服装の方を好む傾向があるから、なるべくドレスとかいう外行きの格好が嫌なんだろう。
相変わらずだな──ZAFTの赤い軍服を着たリオンは慌てて片手で口元を覆った。肩を振るわせるくらいは勘弁してもらいたい。
──彼らと知り合いだということは知られていない。
かつて、アーク・エンジェルで騒動を起こし、オーブで保護された後。終戦後の混乱を利用して戦災孤児としてプラントへ上がった。
強化人間の中でも特異体質で薬の常時服用が不要とはいえ、もしも突発的に俊敏な動きをとってしまった時、ナチュラルと片付けるのは難しい。
戦うために育てられ、社会から隔絶されすぎていたから臨機応変な行動なんて出来ないのだ。
だから、いっそコーディネイターに混じっていた方が始めはいいだろうと、ティアに勧められたのだ。プラントで一般常識などを勉強し、見聞を広めて、オーブへ戻ればいいと。
戦災孤児の保護支援を受けていく中で、リオンは様々な職業や教養に触れることができた。家族を失って苦しんでいる周囲とは違い、リオンには明確な目的があったからか、休む時間以外は働けないかと施設の大人たちに掛け合ったり。
操縦は苦手だからパイロット枠ではないけど。この度新造艦に配属されることも決まっている。
ところで、自分は何を目指しているんだろう。
見聞を広めたかったはずなのに軍人になってしまった。ラシードが提案してきた事だから何か意味があったのだとは思うけれど。
割と考えなしに行動して来た事に気づいて戦慄していると、目的地直前で係官が最終確認のために一言断ってリオンたちから離れていく。
待ってました──とばかりに、がしっとカガリに腕を掴まれた。「おい、リオン」黄金色の眼差しは相変わらずまっすぐだ。
「待って、初対面同士の設定だから!」
「わかってるよ! それよりも、だ」
まだ見上げる側のリオンは、見下ろしてくる一国の代表を両手で押し留める。
戦いに明け暮れていた生活から脱却できるよう送り出してくれたのは彼女自身だ。手当たり次第にやりたいことに手をつけて、今ZAFTに在籍してしまっている事を怒っているに違いない。「すごいじゃないか!」
「赤い服はエリートなんだろ?」
乱暴な仕草なのに、相変わらず優しく頭を撫でてくるカガリ。アスランも大きく頷いて。
リオンは二人の反応に驚いた。
プラントにいる知り合いは誰も、地球にリオンの話を知らせることなんて出来なかったはず。
「ラシードがユニウス・セブンの件で動くから──って連絡よこしたのに、それっきりだったからさ」
どうして知っているのか──カガリから返ってきたのは求めていた内容とは違うような。リオンが助けを求めてアスランを見上げる。係官がそろそろ戻ってきそうな予感。
「君を送り出す時点で、アカデミーへ通わせるという話は聞いていてな。自分が動けなくなる可能性を前に、君をこちらへ返してないって事は、まあ、現状維持で問題ないのだろうと」
アスランが簡潔にまとめてくれたおかげで、この後係官には雑談している程度に思われて終わることになる。このままお別れとかだったらきっと連日眠れなかった。
「それにしても、あいつ今何してるんだ? 投獄でもされてるんじゃないだろうな?」
こちらの環境を全く把握できていないとわかるカガリの発言と、心配そうなアスランの様子を見て、リオンは苦笑いした。時間がないから、一言で済ませなければ。
「この後、多分──いや、かなり驚くと思うから覚悟しておいた方が……」
「デュランダル議長のところ? まあ要人警護とか得意分野だろうが。あいつの体質では難しくないか?」
ラシードの実力と共に、唯一絶対の弱点を知っているからオーブの国家元首は怪訝そうな顔。でも、アスランは、諦観したような様子。
「お待たせいたしました。ご案内いたします」
係官の声によって、リオンたちは他人同士へと戻る。黙礼だけで挨拶してお別れした。
カガリが何の為にここまで来たのかはよくわかっていないけれど、多分オーブからの移住民の問題だろうとは思う。
集団でプラントにあがってきたリオン自身、保護施設などで生活しながら、優秀な人材が割と多く含まれている事を認識していた。
子供ながらの視点で──リオンの場合は強化人間として仕事していた実績もあるが─それとなく分かるのだから、地球では少なからず問題があるだろう。
同期生にも、オーブで天涯孤独になった少年がいることだし。お陰様で彼との仲はそんなに良くない。
カガリが頑張っているのを知っているから、オーブをとにかく悪く言う同期生を好きになれなかった。
カガリが消えていった部屋の扉を一瞥したリオンは、奮起するように拳を握って、任務完了の報告をする為にその場を後にした。
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