異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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第二話:鎮魂の夜。
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「よし、こんなもんだろう!」
木の枝にひっかけたりして破けてしまっていた炭治郎の羽織を完璧に繕ったラシードは、えっへんと胸を張る。
鱗滝も手先が器用だから繕い物は得意だけれど、自分もなかなかだと思う。誇らしい。
そろそろ朝日が昇る頃合いか。
さすがに運動させ過ぎては申し訳がない。
ラシードは道具を片付けてから、土間に降りて鳥居の描かれた紙を拾い上げる。
それを、思い切り振って見せると、目玉の紙をくくりつけられた鼠がどこからともなく土間に転がった。
びっくりしたように右往左往した小動物 が、その動作のせいで目玉の紙を残して逃げていく。
鱗滝邸に忍び込んだがために苦労に遭うなんて、不憫だなあ。
「紙だけ戻ってくるんだろうと思ったけど、あいつ運がいいな」
「おはようございます、もう起きていたんですね」
からからと戸が開いて、炭治郎が目をこすりながら顔を出す。
まだ日が昇ってもいないのに。物音で目を覚ましたのか。
「あー悪い、起こしたな。まだ寝てなよ、朝餉の支度もしてないしさ」
「居候の身ですし、何かしないと」
真面目なやつだな、と思いつつ、ラシードは顔を巡らせる。
全身筋肉痛でろくな動きもまともにできないやつに、出来る事。うーん。
「それじゃあ、今から用意するから。膳を裏手の祠に備えてきてくれよ」
小首を傾げる炭治郎を手招きし、ラシードは外へ出る。
裏手に回ると、隅の方に、炭治郎の背丈ほどの祠があった。
「狭霧山の奥にも祀られてるんだけどさ。ま、遥拝用っていうかな」
「俺の家にもありました! ヒノカミ様!」
元気な声で発されたけれど、炭治郎はすぐに肩を落としてしまった。彼の家のヒノカミ様には、もう誰もお供えものをしていない。生き残っている炭治郎と、禰豆子がここにいるのだから。
他に山に住む者はいないわけではないけれど、ヒノカミ様のことを祀っていたのは、彼らだけなのだろう。
「神様ってのは、常駐しないんだぜ。なんてったって、神様だからな」
仕方ないなあ、とラシードは炭治郎の首根っこをひっつかみ、家に戻る。
そして、お膳を二つ、用意した。年に一度、決まった日に盛大に膳を華美にするから、道具はある。
今でこそ、社という形態が整っているけれど、そもそも神は山そのものだったり、川だったり、海だったり、道端だったりするのだ。
社というのは、あくまで留まれる場所、休める場所、食べる場所でしかない。
もちろん、留まり続ける神もあるけれど、それはまた別の話。
「土砂崩れとか山火事とかでさ、土地を追われる人間なんて普通にいる。どういったわけか、みんな新しい場所でまた、祀るんだ。習慣だからなのかもしれない。二度と怖い目に合わないための脅迫観念なのかもしれない。結局とのところ、人が必要とした時に、神様っていうのは存在感を増す」
目をぱちくりさせる炭治郎に、盛り付けの済んだ膳を二つ進める。一つの膳には神名のようなものが書きつけられているが、もう一つにはない。
「人は自分の都合で神様の有無を物差しするけど、そもそも神様を定義づけてるところで自分なりの神の像を持ってるんだから、神はいないとか豪語してるやつ見ると矛盾してるなって思うもんだけど。炭治郎にとっての神様は定まっているようだし、うちの祠に間借りさせてやればいいんじゃないか。無理にとはいわないけどさ」
「俺なりの、神様……」しばらく膳を見下ろしていた炭治郎が、紙と筆を貸してほしいというので、快く差し出す。
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「よし、こんなもんだろう!」
木の枝にひっかけたりして破けてしまっていた炭治郎の羽織を完璧に繕ったラシードは、えっへんと胸を張る。
鱗滝も手先が器用だから繕い物は得意だけれど、自分もなかなかだと思う。誇らしい。
そろそろ朝日が昇る頃合いか。
さすがに運動させ過ぎては申し訳がない。
ラシードは道具を片付けてから、土間に降りて鳥居の描かれた紙を拾い上げる。
それを、思い切り振って見せると、目玉の紙をくくりつけられた鼠がどこからともなく土間に転がった。
びっくりしたように右往左往した
鱗滝邸に忍び込んだがために苦労に遭うなんて、不憫だなあ。
「紙だけ戻ってくるんだろうと思ったけど、あいつ運がいいな」
「おはようございます、もう起きていたんですね」
からからと戸が開いて、炭治郎が目をこすりながら顔を出す。
まだ日が昇ってもいないのに。物音で目を覚ましたのか。
「あー悪い、起こしたな。まだ寝てなよ、朝餉の支度もしてないしさ」
「居候の身ですし、何かしないと」
真面目なやつだな、と思いつつ、ラシードは顔を巡らせる。
全身筋肉痛でろくな動きもまともにできないやつに、出来る事。うーん。
「それじゃあ、今から用意するから。膳を裏手の祠に備えてきてくれよ」
小首を傾げる炭治郎を手招きし、ラシードは外へ出る。
裏手に回ると、隅の方に、炭治郎の背丈ほどの祠があった。
「狭霧山の奥にも祀られてるんだけどさ。ま、遥拝用っていうかな」
「俺の家にもありました! ヒノカミ様!」
元気な声で発されたけれど、炭治郎はすぐに肩を落としてしまった。彼の家のヒノカミ様には、もう誰もお供えものをしていない。生き残っている炭治郎と、禰豆子がここにいるのだから。
他に山に住む者はいないわけではないけれど、ヒノカミ様のことを祀っていたのは、彼らだけなのだろう。
「神様ってのは、常駐しないんだぜ。なんてったって、神様だからな」
仕方ないなあ、とラシードは炭治郎の首根っこをひっつかみ、家に戻る。
そして、お膳を二つ、用意した。年に一度、決まった日に盛大に膳を華美にするから、道具はある。
今でこそ、社という形態が整っているけれど、そもそも神は山そのものだったり、川だったり、海だったり、道端だったりするのだ。
社というのは、あくまで留まれる場所、休める場所、食べる場所でしかない。
もちろん、留まり続ける神もあるけれど、それはまた別の話。
「土砂崩れとか山火事とかでさ、土地を追われる人間なんて普通にいる。どういったわけか、みんな新しい場所でまた、祀るんだ。習慣だからなのかもしれない。二度と怖い目に合わないための脅迫観念なのかもしれない。結局とのところ、人が必要とした時に、神様っていうのは存在感を増す」
目をぱちくりさせる炭治郎に、盛り付けの済んだ膳を二つ進める。一つの膳には神名のようなものが書きつけられているが、もう一つにはない。
「人は自分の都合で神様の有無を物差しするけど、そもそも神様を定義づけてるところで自分なりの神の像を持ってるんだから、神はいないとか豪語してるやつ見ると矛盾してるなって思うもんだけど。炭治郎にとっての神様は定まっているようだし、うちの祠に間借りさせてやればいいんじゃないか。無理にとはいわないけどさ」
「俺なりの、神様……」しばらく膳を見下ろしていた炭治郎が、紙と筆を貸してほしいというので、快く差し出す。