異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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第四話:食欲の気配。
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──虫に刺されて、患部が痒くなる。
掻いてはいけないとわかっていながら、気付いたら引っ掻いてしまっている。鬼にとっては人を食うことを我慢するというのは、そういうことだった。
少しでも気を抜いたら、人を食っている。
それくらい、自然で衝動的で、うっかり噛んでしまった、と言い訳できるほど。
だから、眠りに逃げた禰豆子のその忍耐力は称賛に値するものだ。炭治郎が思っている以上に。
*** ***
「──ああ、右京さん」
明け方。
ラシードが昔馴染みの元を訪ねると、目当ての老人は悲痛な様子で駆け寄ってきた。
両肩をひっつかまれる。続けられた話の渦中の子供たちとは、既に会っていた。
この山に住む一家が、鬼に襲われた。
自分の家に一人を泊めた後。冬ごもりにしては早く、姿を見せることがなくなった一家の様子を見に老人は山を登ったという。
家は戸締りされていて、人気がない。そこに住んでいたのは、母親と、片手から溢れる程度の子供たちだけ。こんな時期に遠出をするような状況にはないはずだった。
「無事だったはずの子供の姿が見えないんだ、墓の数からすると、もう一人生きているはずなのに!」
「炭治郎と禰豆子なら、鱗滝が見てる」
生き残った子供が、家族の無残な姿を目にして、絶望のまま自害したのではないかと気が気でなかったのだろう。
老人──竈門一家が鬼に襲われた日、炭治郎を引き留めて一晩泊めた三郎は、ラシードの言葉にその場で膝をついてしまった。
子供たちが無事だと知って安心したのだろう。
「他に知っているのは?」
「炭十郎が死ぬ前に仕留めた人食い熊の仕業だと思われている。気付いているやつは、いるかもしれねえが」
竈門炭十郎は、炭治郎の父親の名前だろう。
炭治郎が泣いた日、その名前だけは聞かなかったから。
ラシードは三郎の肩を支えて家に入り、竈門家の異変に気付いてから不摂生な生活をしていたろう老人の家を綺麗にし、その日一日かけて当分しのげる程度の食事の準備をした。
三郎は安心してしまった一方で、精神的な疲れから昏々と眠り続けていたが、陽が落ちる頃には目を覚ましてくれる。
「あの子たちを、鬼狩りになさるのか」
「そうと決めるのは本人の意思だ。誰のせいでもないだろ」
三郎は、炭治郎に鬼狩りの存在について話したことでもあるのだろうか。ラシードは湯呑を差し出しながら、自分も一口飲む。
目の前で項垂れる人物のことは、昔助けたことがある。彼の家族は鬼に殺された。彼の親族の一人は、確か鱗滝の元を訪れて刀を握っていたはずだ。
「どうしてあの子たちだったんだ……」
深い慟哭。三郎に茶を飲ませ、眠らせたラシードは家をきちんと戸締りし、また山を登る。
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──虫に刺されて、患部が痒くなる。
掻いてはいけないとわかっていながら、気付いたら引っ掻いてしまっている。鬼にとっては人を食うことを我慢するというのは、そういうことだった。
少しでも気を抜いたら、人を食っている。
それくらい、自然で衝動的で、うっかり噛んでしまった、と言い訳できるほど。
だから、眠りに逃げた禰豆子のその忍耐力は称賛に値するものだ。炭治郎が思っている以上に。
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「──ああ、右京さん」
明け方。
ラシードが昔馴染みの元を訪ねると、目当ての老人は悲痛な様子で駆け寄ってきた。
両肩をひっつかまれる。続けられた話の渦中の子供たちとは、既に会っていた。
この山に住む一家が、鬼に襲われた。
自分の家に一人を泊めた後。冬ごもりにしては早く、姿を見せることがなくなった一家の様子を見に老人は山を登ったという。
家は戸締りされていて、人気がない。そこに住んでいたのは、母親と、片手から溢れる程度の子供たちだけ。こんな時期に遠出をするような状況にはないはずだった。
「無事だったはずの子供の姿が見えないんだ、墓の数からすると、もう一人生きているはずなのに!」
「炭治郎と禰豆子なら、鱗滝が見てる」
生き残った子供が、家族の無残な姿を目にして、絶望のまま自害したのではないかと気が気でなかったのだろう。
老人──竈門一家が鬼に襲われた日、炭治郎を引き留めて一晩泊めた三郎は、ラシードの言葉にその場で膝をついてしまった。
子供たちが無事だと知って安心したのだろう。
「他に知っているのは?」
「炭十郎が死ぬ前に仕留めた人食い熊の仕業だと思われている。気付いているやつは、いるかもしれねえが」
竈門炭十郎は、炭治郎の父親の名前だろう。
炭治郎が泣いた日、その名前だけは聞かなかったから。
ラシードは三郎の肩を支えて家に入り、竈門家の異変に気付いてから不摂生な生活をしていたろう老人の家を綺麗にし、その日一日かけて当分しのげる程度の食事の準備をした。
三郎は安心してしまった一方で、精神的な疲れから昏々と眠り続けていたが、陽が落ちる頃には目を覚ましてくれる。
「あの子たちを、鬼狩りになさるのか」
「そうと決めるのは本人の意思だ。誰のせいでもないだろ」
三郎は、炭治郎に鬼狩りの存在について話したことでもあるのだろうか。ラシードは湯呑を差し出しながら、自分も一口飲む。
目の前で項垂れる人物のことは、昔助けたことがある。彼の家族は鬼に殺された。彼の親族の一人は、確か鱗滝の元を訪れて刀を握っていたはずだ。
「どうしてあの子たちだったんだ……」
深い慟哭。三郎に茶を飲ませ、眠らせたラシードは家をきちんと戸締りし、また山を登る。