異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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「雲取山のお社は、どこにあったんだろうなあ」
帰り道、炭治郎は疑問を口にしていた。
ヒノカミ神楽を舞う場所には、なかった。気にしたこともなかったけれど、火の仕事をする竈門家の祀る神様と、雲取山の神様は違うはず。
そこまで考えて、炭治郎はぞっとした。どうしよう、なんとなく一緒のものと思って考えてしまっていた。さっきだってお供え物は一緒だった。今までずっとそうだ。
ごめんなさい、雲取山の神様。忘れていたとかではないんです。ごっちゃにしていただけで……ああ。
「お前の事怒っていたら、守ってなんかくれないよ。神様は贔屓相手には狭量じゃない」
「いや! そんなわけにはいかない、自覚したのだから……ごめん、ラシード、さん。明日から一つお膳を増やしたい!」
「そのくらいいいけど。律儀だなあ」
苦笑するラシードをまじまじと見上げる。
むずむずする。なんだかくすぐったい感じがする。
「あの、俺、絹のお代ちゃんと返すから!」
「いや、別に──」
「俺がラシードに返したいんだ! 甘えてばかりはいられない!」
むずむずが消えた。うん、本当は敬称をつけるべき立場なんだろうけど、うん。
多分、自分はそう呼びたくなっているんだと思う。
少し炭治郎より年上だろう人物。自分よりいろいろ物知りで、多分力だってうんとある。
今朝から、一緒にいてさらに思うのだ。これが憧れというものだろうか。格好いいなあとか、頼りがいがあるなあと思う。甘えても、やっぱりいいんだろうなあ、と思うのだ。
「そう? まあ、炭治郎がそうしたいなら別に構わないけど」
呼び捨てしてしまったけれど、ラシードは気にしていないようだった。
その気持ちよさに、炭治郎は素直に甘えることにした。
初対面で、敬称はいらないと言ってくれたのに、わがままを通して申し訳ない。けれど、それすらもなんだか、くすぐったかった。
「それで、いくらなんだ?」
「百円でいいよ」
売る充てもなかったから価値って程でもないしな、とラシードがけろりとぼやいた。
炭治郎は次の瞬間、罠にかかっていた。
*** ***
昼食を千夜の家で執り終えた後。庭には昼寝をせずに遊び始めた子供たちの楽しそうな声が響いていた。
子供たちがぴょんと跳ねながら、描かれた円の中心を蹴って進む。
片足片足、両足、片足──けんけんぱ、とはっきり発音できる子もいれば、ごにょごにょ似た音を発しながらおぼつかない足取りで跳ねる子もいた。
「けん、けん、ぱっけんぱっ!」
「炭治郎にいちゃんすげー!」
子供たちが長く連ねた楽譜のような丸の羅列を、炭治郎は見事に制覇した。到達するごとに子供たちは円を足していくのだが、それが直線状から曲線を描いて続いたり、円と円の間が離れていたりしていく。
難易度が跳ね上がっていくのを傍目に、繕い物を終えたラシードは立ち上がった。
「はい、出来上がり! これで最後だよな、千夜さん!」
「助かったよ〜しかも仕上がり綺麗だし! うちの婿に欲しいわ!」
猟師の奥方様が年頃の娘の存在をチラつかせてくるようになったのは、炭治郎の体力づくりのために共に山菜をとってはお裾分けに行くようにしてからだ。
時々その娘も煮物を持ってきたりしてくれるから顔見知り。自分たちのことを突然できたお兄さんのように思ってくれている。