異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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「何やってんだか」
彼は意に介した様子もなく、お堂の中から亡骸を一つ、そっと抱え上げる。無駄口を叩いてないで手伝え、との仰せだ。諦観のため息をついてから、食い散らかされた骸を運び出すのを手伝った。
臓腑から食べる鬼もいるが、それに比べれば遺体の形が綺麗なのは救いだろう。
「もう一人を運んでくる。整えておけ」
「ったく、人使い荒いな。このオヤジは」
久々の会話がこれか。得意分野だけど。
変わらない相手の態度を前に、仕方ないなあと破顔しつつ、刀に手をかける。
技を繰り出してしまった方が手っ取り早いからだ。本当は穴掘りの為の技でもないのだけど、時間短縮には威力のある技を上手に使うのだって大事なこと。
テキパキと運び終えていた二人を埋葬し、用意しておいた穴に鱗滝が最後の一人を横たえる。
こんもりと土を高く盛っておけば、墓と察する者は多い。血肉が土へ還る程度の期間であれば、荒らされることはないはずだ。
二人で並んで手を合わせる頃には、朝日の気配。
──それと、鬼が消える断末魔と、少年からの驚愕の匂い。
「トドメを刺さなかったのは育てる為か」
「義勇が推してきた子だ」
手を合わせたまま尋ねると、短い返答が。
あの気難しい人物が推薦とは。ただただ驚きでしかない。
「鬼殺の戦士としての望みは薄いが、あの子には力が必要だ。できる限りはしてやろうと思っている」
「──ふうん?」
身を守る為の力を授けると言っても、鱗滝のそれを授けるというのはまた、結構な宝の持ち腐れになるような。
まあ、柱にもなれない自分がいうことではないか。
そうこうしているうちに、弟子仲間に推された少年が寄ってきた。彼は先ほど迄いなかった人間の姿に目を丸くしたが、鱗滝に話しかけられてそれに応じている。
「
「妹が人を喰った時、お前はどうする」
思わず、驚きの声を漏らしてしまったが、鱗滝の問いかけに掻き消された。続けられた会話は、今現在の状況を理解するに足るもの。
奇妙な組み合わせだとは思っていた。だいたいは鬼というのは一度くらいは人を食ってしまうものだ。
けれど、少女にはその匂いがない。被害者たちの血の濃い匂いでよくわからなかったが、今は嗅ぎ分けることができる。
妹が人を喰った時──妹を殺し、お前は腹を切って死ぬ。
幼い少年の必死の覚悟はまだちっぽけな視野のまま。それを取りこぼさず、石から刀を鍛えるよう容赦なく老人が叩き上げる。
それは鱗滝の考え方を押し付けるものではなく、強く細く、心からの願いだった。
「荷物はそれだけなのか」
お堂の中──太陽の光が届かない場所でごそごそやっている小さな後ろ姿に語りかける。
着の身着のまま、簡単な旅支度だけで飛び出してきたような炭治郎とその妹。籠の中からこちらを伺う女の子のそれは、間違いなく鬼だった。
意識が定まらないようだが、判別程度の思考はあるようだ。
家族である炭治郎に対しての信頼がなせるのか、その存在こそが彼女を踏みとどまらせているようにも感じられる。
自分の影で少しでも陽の光を遮ってやれるように立ち位置を定めつつ、何とも言えない気持ちになりながら、苦笑い。
「大荷物だったら手伝おうと思ったけど、必要なさそうだな」
「ありがとうございます!」
荷物の少なさに圧倒されている少年に対し、元気な声で炭治郎は改めて名を名乗った。
先程は鱗滝との対面で気を張っていたからだろう。挨拶が遅れた事を詫びられる。
あの場合は仕方がなかったし、対応に関しての順序は正しい。自分なんて一言も声を発していないかったのだから。
「ご丁寧にどうも。俺はラシード。この国に来てまだ六年しか経っていない異国人だけど、よろしくな〜」
「そうなんですか? 異国の方と会うのは初めてだったので、思い至りませんでした!」
見た目から、異国人っぽいところなんてほとんど無いから仕方ないのだが。