異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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「鱗滝さんはね、一途な人なのよ」
昼食の準備にいったん戻ってきた千夜が、冗談めかしく炭治郎に彼女の娘の婿に是非! なんて言ってきた後の事。
満腹になって満足した子供たちがバタバタと部屋の中で昼寝に伏していく中、風邪をひかないよう羽織をかけたりしていた炭治郎は、優しい匂いをさせる千夜を振り返る。
鱗滝は最初から狭霧山にいた人物ではないらしい。千夜が幼い頃には顔見知りではあったようだが。
「私より少し年上の末娘を連れて、一人で育てて。腕っぷしがいいし気概もある人だから、縁談の申し込みは結構あったそうなのよ」
千夜は鱗滝の娘とは歳が近い事もあって、時々鱗滝の家に預けられて遊んでいたという。
そうはいっても、鱗滝の娘は肌が弱いらしくて、あまり日に当たらないようにしてたから家の中で過ごしていたとか。
街の空気も合わないから狭霧山なんて辺鄙なところに居を構えたのだろうともっぱら噂だったらしい。
鱗滝には子供が何人かいて、娘たちは既に嫁ぎ、たった一人の息子は貿易業に携わっている。
あとは孫にあたる世代の青年たちが時々様子を見に訪れるとか。
彼らに鱗滝への縁談の話をすれば、その話詳しく! と食いついてくれるそうなのだが、本人にその気がなさすぎて毎度四苦八苦していたとか。
「鱗滝さんのこと、ご家族の皆さんも心配してるんでしょう」
「さすがにいつまでも一人で元気にっていうわけにはいかないでしょうからねえ。末娘は異国人といつの間にか結婚して、ラシード産んでたみたいだし。あの子が来てからは、鱗滝さんが少し若返ったような気がしてるわ」
末娘にそっくりだから、可愛いんでしょうねえ、元気にしているかなあ右京ちゃん──外出の支度をし始める千夜のぼやきに頷いていた炭治郎は、え、と声をあげた。
“右京”──炭治郎は鱗滝がラシードの事を“右京”と呼んでいるのを何度か聞いた。末の娘の名前で孫を呼ぶか。他の孫がその場にいれば誰の孫のという意味にも取れるが。
どうしてラシードの事を右京と呼ぶのだろう。
「よくわからないのだけど、異国人って発音しづらい名前が多いでしょう? それで、日本名を名乗ったりするらしいよ、屋号やあだ名みたいに。ラシードの場合はお母さんの名前にしてるんじゃない?」
炭治郎は、そういうものなのか、と感心した。
それにしても、まさか鱗滝とラシードが血のつながった者同士だなんて思ってもみなかった。炭治郎は父親似だ。禰豆子は母に似ている。ラシードは母親に似たのだろう。
初対面の時にも、異国人に見られないと公言していたし。
鱗滝の長男が貿易業に携わっているのであれば、特異な体質をもつ末娘が生活しやすい環境にあう相手を見繕ったのかもしれない。
医療は海外のほうが発展しているような話は聞いたことがある。お日様の元を歩けないなんて、ちょっぴり残念だっただろう。
ふと、炭治郎は鱗滝の家に残してきた妹の事が心配になった。
鬼となってしまった禰豆子も、お日様の下を歩けない。彼女の場合は死活問題だ。日に焼かれて死んでしまう。
「それでね、炭治郎君。うちの娘の手料理、どう思う?」
突然、ずいっと千夜が言い寄ってきた。気迫がすごい。
相手の目力に押されながら、炭治郎は気持ちのけぞった状態のまま、はあ、と声を漏らす。
昨日も今日も、昼食は千夜の娘が── ラシードに味付けを指南して貰っていた──作ってくれた。炭治郎は子供たちを宥めながら米炊きだけ何とか加勢していたけれど。
優しい味の煮物は、昨晩千夜たちがおすそ分けしてくれたオカズに負けず劣らずだった。
けれど、どこか切ない匂いもして、ああこの人は誰か意中の相手がいるのだろうな、と察したのだけど。
千夜は自分の娘の婿または嫁入り先のことで、そのあたりを見定められていないらしい。
炭治郎に一生懸命娘の事を売り出してくる。
この場にその話題の人物がいないことが大変救いだ。聞いていたなら彼女はいたたまれない思いで恥ずかしかっただろうから。
「裁縫は私よりも得意だ、絶対損はさせないよ!」
「お前はまた、そんなことを性懲りもなく」
そこへ、嘆息しながら顔を出したのは猟師のまとめ役を担っているという男性だった。千夜の夫で、この家の主人でもある。
「鱗滝さんはね、一途な人なのよ」
昼食の準備にいったん戻ってきた千夜が、冗談めかしく炭治郎に彼女の娘の婿に是非! なんて言ってきた後の事。
満腹になって満足した子供たちがバタバタと部屋の中で昼寝に伏していく中、風邪をひかないよう羽織をかけたりしていた炭治郎は、優しい匂いをさせる千夜を振り返る。
鱗滝は最初から狭霧山にいた人物ではないらしい。千夜が幼い頃には顔見知りではあったようだが。
「私より少し年上の末娘を連れて、一人で育てて。腕っぷしがいいし気概もある人だから、縁談の申し込みは結構あったそうなのよ」
千夜は鱗滝の娘とは歳が近い事もあって、時々鱗滝の家に預けられて遊んでいたという。
そうはいっても、鱗滝の娘は肌が弱いらしくて、あまり日に当たらないようにしてたから家の中で過ごしていたとか。
街の空気も合わないから狭霧山なんて辺鄙なところに居を構えたのだろうともっぱら噂だったらしい。
鱗滝には子供が何人かいて、娘たちは既に嫁ぎ、たった一人の息子は貿易業に携わっている。
あとは孫にあたる世代の青年たちが時々様子を見に訪れるとか。
彼らに鱗滝への縁談の話をすれば、その話詳しく! と食いついてくれるそうなのだが、本人にその気がなさすぎて毎度四苦八苦していたとか。
「鱗滝さんのこと、ご家族の皆さんも心配してるんでしょう」
「さすがにいつまでも一人で元気にっていうわけにはいかないでしょうからねえ。末娘は異国人といつの間にか結婚して、ラシード産んでたみたいだし。あの子が来てからは、鱗滝さんが少し若返ったような気がしてるわ」
末娘にそっくりだから、可愛いんでしょうねえ、元気にしているかなあ右京ちゃん──外出の支度をし始める千夜のぼやきに頷いていた炭治郎は、え、と声をあげた。
“右京”──炭治郎は鱗滝がラシードの事を“右京”と呼んでいるのを何度か聞いた。末の娘の名前で孫を呼ぶか。他の孫がその場にいれば誰の孫のという意味にも取れるが。
どうしてラシードの事を右京と呼ぶのだろう。
「よくわからないのだけど、異国人って発音しづらい名前が多いでしょう? それで、日本名を名乗ったりするらしいよ、屋号やあだ名みたいに。ラシードの場合はお母さんの名前にしてるんじゃない?」
炭治郎は、そういうものなのか、と感心した。
それにしても、まさか鱗滝とラシードが血のつながった者同士だなんて思ってもみなかった。炭治郎は父親似だ。禰豆子は母に似ている。ラシードは母親に似たのだろう。
初対面の時にも、異国人に見られないと公言していたし。
鱗滝の長男が貿易業に携わっているのであれば、特異な体質をもつ末娘が生活しやすい環境にあう相手を見繕ったのかもしれない。
医療は海外のほうが発展しているような話は聞いたことがある。お日様の元を歩けないなんて、ちょっぴり残念だっただろう。
ふと、炭治郎は鱗滝の家に残してきた妹の事が心配になった。
鬼となってしまった禰豆子も、お日様の下を歩けない。彼女の場合は死活問題だ。日に焼かれて死んでしまう。
「それでね、炭治郎君。うちの娘の手料理、どう思う?」
突然、ずいっと千夜が言い寄ってきた。気迫がすごい。
相手の目力に押されながら、炭治郎は気持ちのけぞった状態のまま、はあ、と声を漏らす。
昨日も今日も、昼食は千夜の娘が── ラシードに味付けを指南して貰っていた──作ってくれた。炭治郎は子供たちを宥めながら米炊きだけ何とか加勢していたけれど。
優しい味の煮物は、昨晩千夜たちがおすそ分けしてくれたオカズに負けず劣らずだった。
けれど、どこか切ない匂いもして、ああこの人は誰か意中の相手がいるのだろうな、と察したのだけど。
千夜は自分の娘の婿または嫁入り先のことで、そのあたりを見定められていないらしい。
炭治郎に一生懸命娘の事を売り出してくる。
この場にその話題の人物がいないことが大変救いだ。聞いていたなら彼女はいたたまれない思いで恥ずかしかっただろうから。
「裁縫は私よりも得意だ、絶対損はさせないよ!」
「お前はまた、そんなことを性懲りもなく」
そこへ、嘆息しながら顔を出したのは猟師のまとめ役を担っているという男性だった。千夜の夫で、この家の主人でもある。