異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
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第三話:狭霧山の主。
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翌朝、炭治郎を起こしに行くと、彼は妹の鼻先に顔を寄せて覗き込んでいた。
ここへ運んで来て以来、禰豆子は目を覚まさなかった。一応体は拭いてやっているが身動いすらしない。
「炭治郎、傷の具合どうよ」
挨拶ついでに小声で尋ねる。そうされるまで気づかなかったのか、飛び跳ねるようにして反応した少年は慌てて居住まいをただす。
そして、体のあちこちを触れて確かめながら、今度は別の意味で目を丸くした。筋肉痛がほとんど引いているのだろう。未熟とはいえ、呼吸法は効果を発揮したらしい。
「少し違和感があるくらいで、全く辛くない! 呼吸も、苦しくない!」
「オヤジが戻るまでに駆け回れるようになったら、俺がちょっと鍛えてやるよ。今日も教えた呼吸に専念しな──あ、お日様の下でやれ。体も起きる」
痛みが和らいでいるという実感もあり気力が良くなったのか、炭治郎は朝餉の前のお供え作りを率先して済ませ、朝ごはんをしっかり執り、庭先に腰を下ろして日光浴を始める。
昨日はわんわんと弱音を吐いたり泣きわめいたりしていたのに。健気な少年だな、とラシードは苦笑した。
本当は禰豆子のことで頭が一杯なのに、自分のすべきことときちんと天秤にかけて、一生懸命だ。
問題を先送りにしている事への焦燥感と、無力のままである自分自身という現実。
炭治郎はまっすぐに、無力のままである自分の問題に焦点を絞ることで心を守っているように見える。
ラシードが先ほど言った、稽古をつけてやる、という条件を果たすためには、回復の呼吸の精度をあげて準備することが一番簡単だ。
焦燥感にばかり囚われてしまうよりは堅実的で無駄がない。それでも、その年齢でその選択を行ってしまうことに関しては、少々不安が残る。
彼の兄弟子がいい例だ。あの人物の場合は炭治郎と状況が違うから実例とは言い難いが。
まあ、彼らが自分で選んで決めていくことに、とやかく言うのは控えるようにしている。
いつかはちゃんと、結果に対する責任を持つと決めているのだから。
「ラシードさん、どこか行くんですか?」
大きめの風呂敷一杯にものを詰め込んで外へ出ると、炭治郎がとててと寄ってくる。
昨日集まった連中より少し遠くに住む住人のもとへ、薬や頼まれものを持って行ってやらねばならない。
数件程度だが、隣の山の中腹まで行くから時間がかかる。
「千夜さんがまた子守頼みに来るはずなんだ。お前は手助けしてやってよ」
一緒に行くと手伝おうとした炭治郎を「邪魔」の一言で退散させた後、しゅんと肩を落とす炭治郎の頭を撫でながら付け加える。
新年を迎えるための準備は大詰めだ。大人総出で準備をすれば予定通りに行くだろうが、子守要員とて大事。
ラシードは前日に配り切れていないお札も預かっていたので、今日中に各家に届けてやらねば彼らは家神の準備を終えることができない。
鱗滝がいたなら彼がその任を担っていたろうが、いないのだから仕方がない。若手であるラシードが動くのは道理。その為、炭治郎は確実に充てにされているはずだ。
どことなく不満そうな顔をしていた炭治郎も、得心いったのか残念そうにしたまま頷いてくれた。
彼自身が万全の状態であれば、大人の手伝いに参加して女手を子守手に回すことができただろうな、と現実的なことを考えているのだろう。
けれど、出来ないのだから考えても仕方がない──そう指摘してやると、少年は唇を尖らせ思い切り不満を訴えてきた。
なんだか、年相応の反応をされて戸惑いと同時に、ちょっぴり嬉しく思ってしまったのはなぜだろう。
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翌朝、炭治郎を起こしに行くと、彼は妹の鼻先に顔を寄せて覗き込んでいた。
ここへ運んで来て以来、禰豆子は目を覚まさなかった。一応体は拭いてやっているが身動いすらしない。
「炭治郎、傷の具合どうよ」
挨拶ついでに小声で尋ねる。そうされるまで気づかなかったのか、飛び跳ねるようにして反応した少年は慌てて居住まいをただす。
そして、体のあちこちを触れて確かめながら、今度は別の意味で目を丸くした。筋肉痛がほとんど引いているのだろう。未熟とはいえ、呼吸法は効果を発揮したらしい。
「少し違和感があるくらいで、全く辛くない! 呼吸も、苦しくない!」
「オヤジが戻るまでに駆け回れるようになったら、俺がちょっと鍛えてやるよ。今日も教えた呼吸に専念しな──あ、お日様の下でやれ。体も起きる」
痛みが和らいでいるという実感もあり気力が良くなったのか、炭治郎は朝餉の前のお供え作りを率先して済ませ、朝ごはんをしっかり執り、庭先に腰を下ろして日光浴を始める。
昨日はわんわんと弱音を吐いたり泣きわめいたりしていたのに。健気な少年だな、とラシードは苦笑した。
本当は禰豆子のことで頭が一杯なのに、自分のすべきことときちんと天秤にかけて、一生懸命だ。
問題を先送りにしている事への焦燥感と、無力のままである自分自身という現実。
炭治郎はまっすぐに、無力のままである自分の問題に焦点を絞ることで心を守っているように見える。
ラシードが先ほど言った、稽古をつけてやる、という条件を果たすためには、回復の呼吸の精度をあげて準備することが一番簡単だ。
焦燥感にばかり囚われてしまうよりは堅実的で無駄がない。それでも、その年齢でその選択を行ってしまうことに関しては、少々不安が残る。
彼の兄弟子がいい例だ。あの人物の場合は炭治郎と状況が違うから実例とは言い難いが。
まあ、彼らが自分で選んで決めていくことに、とやかく言うのは控えるようにしている。
いつかはちゃんと、結果に対する責任を持つと決めているのだから。
「ラシードさん、どこか行くんですか?」
大きめの風呂敷一杯にものを詰め込んで外へ出ると、炭治郎がとててと寄ってくる。
昨日集まった連中より少し遠くに住む住人のもとへ、薬や頼まれものを持って行ってやらねばならない。
数件程度だが、隣の山の中腹まで行くから時間がかかる。
「千夜さんがまた子守頼みに来るはずなんだ。お前は手助けしてやってよ」
一緒に行くと手伝おうとした炭治郎を「邪魔」の一言で退散させた後、しゅんと肩を落とす炭治郎の頭を撫でながら付け加える。
新年を迎えるための準備は大詰めだ。大人総出で準備をすれば予定通りに行くだろうが、子守要員とて大事。
ラシードは前日に配り切れていないお札も預かっていたので、今日中に各家に届けてやらねば彼らは家神の準備を終えることができない。
鱗滝がいたなら彼がその任を担っていたろうが、いないのだから仕方がない。若手であるラシードが動くのは道理。その為、炭治郎は確実に充てにされているはずだ。
どことなく不満そうな顔をしていた炭治郎も、得心いったのか残念そうにしたまま頷いてくれた。
彼自身が万全の状態であれば、大人の手伝いに参加して女手を子守手に回すことができただろうな、と現実的なことを考えているのだろう。
けれど、出来ないのだから考えても仕方がない──そう指摘してやると、少年は唇を尖らせ思い切り不満を訴えてきた。
なんだか、年相応の反応をされて戸惑いと同時に、ちょっぴり嬉しく思ってしまったのはなぜだろう。