異国人設定ですが、外見は日本人と大差ないので和名でも問題ないです。
第一章:彼らの育手。
名前返還指定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
亡くなった相手を惜しんで、その生を労ったりする時間を炭治郎は与えられなかった。
唯一、出来ていたろう最愛の妹は鬼となり、明確な意思疎通は難しい。何より道中、そんな心の余裕はなかったはず。
亡くなった相手を送り出す。見知った相手たちと語らい、気持ちの整理をつける時間。
ふと、炭治郎の目からぼろぼろと涙が落ちた。そのまま何か言葉にしたかったようだが、かろうじで意味をなさない音になったくらいで、続かない。
──もう、いないんだと、本当の意味で実感できたのだろう。
「炭治郎が思ったようにさ、竹雄も何か家族の為にしなきゃって思ってお前の事を手伝ってくれてたんだろうな。花子だって、重いものを背負うことはできないけど、呼子くらいは出来るってわかって。もしかすると茂もそうかな、甘えただったのかもしんないけどさ」
疲れたら荷台に乗せてもらうなどは、まあ体力的な問題からは仕方ないけど、それは炭治郎だって父親にやってもらったことがあったはず。
そうやって大きな背中を見て、子供は目指すところを模索するのだ。子供とはそういうものだから。
「末っ子は上の兄弟をよく見ているからな。楽をするにはどうしたらいいかなんて一番弁えてる。何が必要なのかも気付きやすい。お前や禰豆子、竹雄たちがいるから、自分はまだ背伸びしたりする必要性を感じずに、六太は甘えることに徹すことができた。お前の家族は、すごいなあ」
真っ青になって、必死に口を引き結んで泣く炭治郎の幼い手を、両手で握ってやる。
「禰豆子も頑張ってる──あいつのこと、守ってやろうな」
炭治郎が最後に見たのは、いつも笑顔を浮かべていた家族の、無惨な死にざまだ。
彼は守ることができなかった。大切な家族を、救う事もできなかった。
自分だけ安全なところで過ごしてしまったからだと、炭治郎は叫んだ。引き裂かれ、叩きつけられ、潰されて。母と幼い兄弟たちは絶命していた。
炭を作る過程の作業で怪我をすることも多かった。炭治郎は痛みを知っていたはずだ。
だから、曲がるはずのない方向に折れた腕、ぱっくりと割れた皮膚、ひしゃげた躯体。創造の範疇を超えた苦しみの中で家族は死んでいったことを、彼はわかってしまっている。
その場にいなかったこと。共有できなかったこと。炭治郎にとってその罪悪感の方が、救えなかったり、その元凶に対する怒りに勝る苦しみなのだ。
「例えば竹雄がお前の立場だったら、お前はどう思う?」
喚き疲れて蹲った炭治郎に、黙って付き合ってやっていたラシードはそっと声をかける。
炭治郎は家にいて、竹雄が山を下りていたら。
「竹雄の無事を願うんじゃないか。お前は優しいからさ」
自分だけ助かってしまったと思う炭治郎。家族は炭治郎の事を、どう思っていたろうか。
危険な目に遭っている時、そこにいない他人のことなんて考えたり、恨んだりなんて余裕はない。
ましてや、竈門家にはそんなことを考える人間はいない気がした。
這いつくばるようになって呻く少年の背中を、ラシードは泣きつかれて寝落ちするまでさすってやった。
救いなんて彼は求めていない。慰めも必要ない。ただ、弱音を吐いて落ち込むことは時には重要なこと。
炭治郎を禰豆子の隣に寝かせて、泣きはらして腫れてしまっている眼もとに冷やした手拭いを置いてやる。
そして、軽く彼の風変わりな耳飾りに指先で触れた。「ヒノカミ様、か」
──どうか、子供たちに健やかなる成長に一助をこい願う。
======================
【あとがき】
そういえば炭治郎って家族亡くしてから家族の事をだれに話すことが出来たんだろう?
鱗滝さんには話せていたかもしれないけど、多分最初は気を張ってると思うんですよね。
鱗滝さんは鱗滝さんで、進んで慰めに行くようなタイプじゃないし。
お通夜というものは今でもありますが、まあ地域によって手順も違ったりするんですけども、基本的には亡くなった人の思い出話で盛り上がったりして、最後のお別れをする前に心の整理をする時間ですよね。
現実にある事実と実感は少し距離がありますので。
実は家族の描写のシーンで残虐表現削りました。危なかった、私はこのサイトにR18とかそういうのを設けていない。気をつけなきゃあかん!
とりま3動詞(?)で締めました。許して。
さり気なく義勇さんの最終選別直後の話を出しました。
そこの話は特に加筆する必要もないかな、と思っております。
多分そのまま再集録しつついい感じに織り交ぜます。
ところで実弥んが可愛い(ぇ
悲鳴嶼さんと無一郎くんのセット可愛い(ぇ
2020.9/5