第5章 未来の対価。
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第4話 簡単だよ。
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※名前変換機能に追加がありますので、
お手数ですがまだの方は設定お願いします。
──ティアだってそうだ。
ティアの前の人生の記憶はないけれど、恐らくはティアだったのだ。記憶の化け物と違って、自分の場合は化け物の願い事を叶えてあげる化け物だけど。
だから、世代交代する条件は、相手の化け物の“あるお願い”を叶えた時。
「他の柱と合流できているならば良いだろうが、最悪無惨のところに留め置かれていた場合は厄介だ」
「あの子、死ぬのすごく怖がっていたじゃない。一人にさせておくのは可哀そうだわ」
あきれた様子でありながらも、小芭内も龍田のことを心配している。
蜜璃の手を両手で握りながら、ティアはわかった、と頷いた。
「龍田のところに行くのなら、皆さんに合流するより簡単です。だから、心配しないで?」
元気づけようと思ったのに、逆に蜜璃に泣かれてしまった。
直ぐそばの襖からなだれ込んできた鬼を恋柱と蛇柱が片付けるのを見届けた後、ティアは龍田のところに飛んだ。
──つもりなのだが、鱗滝と向き合う形の場所に戻ってきてしまっていた。
「どうした! 怪我をしたのか、鬼に囲まれたのか」
鬼の返り血を見て慌てた様子で寄ってくる鱗滝に説明しつつ、失敗した! とほてり始めた頬を抑える。
おかしいな、化け物の場所に飛ぶのなんて失敗したことなかったのに。
龍田のところに行こうとしたのに、なんで産屋敷邸に戻って──。
はっとなって、ティアは隣の部屋に続く襖に手をかけた。
耀哉の意向で見送られていた埋葬。
早鐘を打つ胸に片手を当てながら、開け放つ。
そこには、“産屋敷こや”の遺体が横たえられていた。
若い娘の姿のまま、眠っているだけのような。
焼こうとしても、傷つかなかった。鬼の性質のせいだと龍田もいっていたけれど。
陽の光を浴びせても、変わらなかった。
これはもう、土葬しかない。
それをみて、先代産屋敷当主が、きっと見届けたいんだと思うよ、とこぼしていたけれど。
「これは、どうしたことか」
鱗滝も、緊張した様子で言葉を失う。
“こや”の首が、胴とくっついていた。
何よりも、髪の色が紅樺だ。うっすらと開かれている眼の色も、向日葵のような色に見える。
ラシードでも、右京でもなかった。顔立ちは一緒に見えるけど、少し違うようにも見えてしまう。
「あー……失敗しちゃったか。あんなところで呼吸使ったらそりゃあ、やられるよね……」
「龍田、ですよね?」
消沈した様子で反省を述べる少女に、恐る恐る声をかける。
胡乱げな眼差しを寄こして、「まだ死んでないよ」と答えながら、起き上がった。
「ティアが連れてきてくれたの? 迷惑かけてごめん。実弥にも謝らないと」
死ななくていいって言ってくれたのに悪いことしたなあ、とぼやきながら立ち上がった龍田。
やっぱり、ラシードと顔つきが違う。というより、外見だけ別人になっている。
ティアと鱗滝は顔を見合わせた。“血記術”を解除したからこうなったのか。
以前の記憶は引き継いでいるようだけど──。
「どうしたんだ、忘れ物か。なんか気配が増えたなと思ったら……」
そこへ、音もなく天元がひょこっと顔を出し、背の高い彼は鱗滝とティアの頭を飛び越して現状が見えてしまったらしい。
ははあ、と両手を打って笑い声をあげた。
「こりゃまた派手に展開が迷子だな! どうした龍田、ついにいつもの外見とはおさらばかよ!」
「外見?」いわれている意味が分からないのか、龍田は眉を寄せて首を傾げている。
この後、天元から渡された手鏡で自分の姿かたちを確認した龍田少女は、素っ頓狂な声を上げて卒倒してしまった。
「なあなあ、無一郎。お前、なんで俺と龍田の見分けついたわけ?」
悲鳴嶼の背中を共に追う最年少の少年にラシードは声をかける。
刀鍛冶の里で、既に気づいていたそぶりを見せてはいたが、先ほども開口一番でラシードと呼んできたから。
尋ねられた無一郎は、不思議そうな顔をしながら一つ頷いて。
「簡単だよ、龍田は蝶屋敷にいようなか弱い女の子だけど、君は化け物じゃない」
「基準がわからん。そしてなんか、扱いの落差!」
不満を訴えると、先導していた悲鳴嶼が小さく笑って。
「強いてあげるとすれば“存在感”だろうな。龍田は背伸びをしていたが、君は違う」
「ってことは、あんたも結構前から俺がちょろちょろしてるの気づいてた?」
とはいっても、龍田が自我を芽生えさせる頃までは一緒だったのだけど。
頃合いとしては、妓夫太郎と梅を撃破した直後か。
ちょうどその頃が、“本当に生まれるはずだった時期”だったから──。
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ティアの前の人生の記憶はないけれど、恐らくはティアだったのだ。記憶の化け物と違って、自分の場合は化け物の願い事を叶えてあげる化け物だけど。
だから、世代交代する条件は、相手の化け物の“あるお願い”を叶えた時。
「他の柱と合流できているならば良いだろうが、最悪無惨のところに留め置かれていた場合は厄介だ」
「あの子、死ぬのすごく怖がっていたじゃない。一人にさせておくのは可哀そうだわ」
あきれた様子でありながらも、小芭内も龍田のことを心配している。
蜜璃の手を両手で握りながら、ティアはわかった、と頷いた。
「龍田のところに行くのなら、皆さんに合流するより簡単です。だから、心配しないで?」
元気づけようと思ったのに、逆に蜜璃に泣かれてしまった。
直ぐそばの襖からなだれ込んできた鬼を恋柱と蛇柱が片付けるのを見届けた後、ティアは龍田のところに飛んだ。
──つもりなのだが、鱗滝と向き合う形の場所に戻ってきてしまっていた。
「どうした! 怪我をしたのか、鬼に囲まれたのか」
鬼の返り血を見て慌てた様子で寄ってくる鱗滝に説明しつつ、失敗した! とほてり始めた頬を抑える。
おかしいな、化け物の場所に飛ぶのなんて失敗したことなかったのに。
龍田のところに行こうとしたのに、なんで産屋敷邸に戻って──。
はっとなって、ティアは隣の部屋に続く襖に手をかけた。
耀哉の意向で見送られていた埋葬。
早鐘を打つ胸に片手を当てながら、開け放つ。
そこには、“産屋敷こや”の遺体が横たえられていた。
若い娘の姿のまま、眠っているだけのような。
焼こうとしても、傷つかなかった。鬼の性質のせいだと龍田もいっていたけれど。
陽の光を浴びせても、変わらなかった。
これはもう、土葬しかない。
それをみて、先代産屋敷当主が、きっと見届けたいんだと思うよ、とこぼしていたけれど。
「これは、どうしたことか」
鱗滝も、緊張した様子で言葉を失う。
“こや”の首が、胴とくっついていた。
何よりも、髪の色が紅樺だ。うっすらと開かれている眼の色も、向日葵のような色に見える。
ラシードでも、右京でもなかった。顔立ちは一緒に見えるけど、少し違うようにも見えてしまう。
「あー……失敗しちゃったか。あんなところで呼吸使ったらそりゃあ、やられるよね……」
「龍田、ですよね?」
消沈した様子で反省を述べる少女に、恐る恐る声をかける。
胡乱げな眼差しを寄こして、「まだ死んでないよ」と答えながら、起き上がった。
「ティアが連れてきてくれたの? 迷惑かけてごめん。実弥にも謝らないと」
死ななくていいって言ってくれたのに悪いことしたなあ、とぼやきながら立ち上がった龍田。
やっぱり、ラシードと顔つきが違う。というより、外見だけ別人になっている。
ティアと鱗滝は顔を見合わせた。“血記術”を解除したからこうなったのか。
以前の記憶は引き継いでいるようだけど──。
「どうしたんだ、忘れ物か。なんか気配が増えたなと思ったら……」
そこへ、音もなく天元がひょこっと顔を出し、背の高い彼は鱗滝とティアの頭を飛び越して現状が見えてしまったらしい。
ははあ、と両手を打って笑い声をあげた。
「こりゃまた派手に展開が迷子だな! どうした龍田、ついにいつもの外見とはおさらばかよ!」
「外見?」いわれている意味が分からないのか、龍田は眉を寄せて首を傾げている。
この後、天元から渡された手鏡で自分の姿かたちを確認した龍田少女は、素っ頓狂な声を上げて卒倒してしまった。
「なあなあ、無一郎。お前、なんで俺と龍田の見分けついたわけ?」
悲鳴嶼の背中を共に追う最年少の少年にラシードは声をかける。
刀鍛冶の里で、既に気づいていたそぶりを見せてはいたが、先ほども開口一番でラシードと呼んできたから。
尋ねられた無一郎は、不思議そうな顔をしながら一つ頷いて。
「簡単だよ、龍田は蝶屋敷にいようなか弱い女の子だけど、君は化け物じゃない」
「基準がわからん。そしてなんか、扱いの落差!」
不満を訴えると、先導していた悲鳴嶼が小さく笑って。
「強いてあげるとすれば“存在感”だろうな。龍田は背伸びをしていたが、君は違う」
「ってことは、あんたも結構前から俺がちょろちょろしてるの気づいてた?」
とはいっても、龍田が自我を芽生えさせる頃までは一緒だったのだけど。
頃合いとしては、妓夫太郎と梅を撃破した直後か。
ちょうどその頃が、“本当に生まれるはずだった時期”だったから──。