第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第7話 放逐の時は突然に。
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子供たちがぴょんと跳ねながら、描かれた円の中心を蹴って進む。
片足片足、両足、片足──けんけんぱ、とはっきり発音できる子もいれば、ごにょごにょ似た音を発しながらおぼつかない足取りで跳ねる子もいた。
「けん、けん、ぱっけんぱっ!」
「炭治郎にいちゃんすげー!」
子供たちが長く連ねた楽譜のような丸の羅列を、炭治郎は見事に制覇した。到達するごとに子供たちは円を足していくのだが、それが直線状から曲線を描いて続いたり、円と円の間が離れていたりしていく。
難易度が跳ね上がっていくのを傍目に、繕い物を終えたラシードは立ち上がった。
「はい、出来上がり! これで最後だよな、千夜さん!」
「助かったよ〜しかも仕上がり綺麗だし! うちの婿に欲しいわ!」
猟師の奥方様が年頃の娘の存在をチラつかせてくるようになったのは、炭治郎の体力づくりのために共に山菜をとってはお裾分けに行くようにしてからだ。
時々その娘も煮物を持ってきたりしてくれるから顔見知り。自分たちのことを突然できたお兄さんのように思ってくれている。
「俺も炭治郎もそのうちここから出てくんだぞ。俺なんか日本から出てくかもなんだからなー」
毎度の返事に、つれないねぇ、と奥方は笑い飛ばすのだ。これは最後には泣き落としにかかられそう。
「ほら、お子ちゃまども! そろそろ帰り支度しろよ!」
「今日もにいちゃんたち、送ってってくれるのー?」
「だっこしてー」
おんぶーだっこーと強請るお子様達は、山の麓の集落に住んでいる。
炭治郎は小さい子供の面倒見が良かった。たまたま山菜配りに歩いていた際にぐずっていたのをあやしてから、気づけばこんなに大所帯に。
けれども、実際はこの状況に大変助けられてもいた。
眠り続けている禰豆子が気になってぼーっとするくらいならば、守れなかった家族を連想させるとはいえ、前向きにさせておいた方が良い。
「はいはい、近いやつから順番にな! 炭治郎、しゃがめ」
「よろしく、ラシード!」
おんぶ紐で一人を背中に括りつけ、荷車に子供たちを乗せ、炭治郎がそれを引いて歩き出した。順番に送り届けて行くのだが、帰り道には持たされる土産を積んで帰ってくる不思議。
「ラシードにいちゃん、なんで送りも迎えも炭治郎にいちゃん、お喋りしちゃいけないの?」
荷車をにいている最中、炭治郎には呼吸に専念させていた。苦痛を和らげたり、傷を早く癒すような効果のある呼吸。じっとしている時はそれに集中出来るが、何かをしながら行う事も今後必要になる。
本当はお喋りしながらも出来るようにすべきだが、いきなり難易度を上げたところで意味はない。
「炭治郎はな、“山の神様”に会いに来てるんだよ」
そう言ってやると、子供たちの中の年長組は納得した顔をする。
鱗滝が鬼を狩る術を持っていることを知っているのかもしれないし、知らないが“自分達の家長が絶対の信頼を向けている相手”の下に時々少年たちが集い、稽古をつけてもらっているのを知っているのだろう。
「山の神様に会いに来てる──って、まるでお参りだね」
「あながち間違ってないだろ。行くのが昼夜逆転するけどさ」
帰り道、荷車を引くラシードの隣を歩きながら、炭治郎はお手玉をひょいひょい操りながら歩く。時々お手玉を追加で放り込んだり邪魔をしながらだ。
「まだ走ったりしたらダメなのか? 歩く歩幅も早さも、言われた通りにしているけど」
まだ夕陽には早い時間帯。鱗滝の家に着く頃には空は真っ赤になるのだが。
ラシードはうーん、と一つ唸って。
「それじゃあ、炭治郎。走って帰って米研いどいて」
あっさり言い放ったからか、炭治郎は一瞬きょとん、となったがどこか嬉しそうだった。喜びの笑顔で走っていく後ろ姿を見送る。
本人は気づいているのかはわからないが、初対面の頃より早くなっているのを確認して、安堵の息をついた。
荷車を壊さない程度の速度で走りながら、炭治郎の後を追う。
そろそろ鱗滝に戻ってもらいたいところだが、そうでないならば夜の山を走らせる段階に入っても良さそうだ。体力づくりは始めさせても問題ないだろう。
「ご苦労だった、右京。もういいぞ」
ちょうど帰ってきた鱗滝が、そう言って荷物を渡してきた。
そして、ぴしゃん、と閉められてしまう。
鮮やかな締め出しだった──。
片手に縄を持ち、ぼろぼろになった少年を引きずる老人を前に、ティアはぽかんと立ちすくむ。
元鳴柱である桑島慈悟郎は、顔に大きな傷痕を持ち、片足を義足にしていながらも立ち居振る舞いがしっかりしている。
木の棒でしかない義足を元々あったかのようにして扱えるのはすごい事だと、目にする度に思った。
「ご無沙汰しておりました、桑島様! ティアがお世話になります!」
「いやいや、してもらう側だからな。礼を言うのはこちらだ──して、どうだ、柱になってからの調子は」
ハキハキと応じる杏寿郎と──彼は柱になってからまだ日が浅いらしい──桑島が近況を交わし合う中、ティアとぼろぼろの少年は軽く会釈しあっていた。
手当てした方がいいんじゃないかな、と思う前者。
手当てされたいんだけどな、と思う後者。
でも、この場の中心人物二人が意に介していないから口を挟めない。