第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第6話 新しい仲間。
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「宇随さんが居なくてよかったな! ティア!」
「ええ、そうでしょうね!」
話題に上った人物がここに居たらいじり倒されるのは目に見えている。
杏寿郎の場合、可笑しくて笑っているというよりは、労いの笑顔が眩しすぎるだけだ。
わかってはいるのだけど恥ずかしいものは恥ずかしい。
「簡単に概要は隠から聞いたのだが、お二人から直接伺いたい!」
「私が引き受けよう。ティアは少し休むといい」
自分よりも鱗滝の方が疲れているはずだ。すぐさま遠慮しようとしたのだが、杏寿郎も「そうだ、休むといい!」なんて言いながら、二人して藤の密林に入っていってしまった。
行き場のない手をそのままに、視線を感じて様子を伺っていたはずの隠たちを振り返り──全員、息ぴったりに持ち場に戻っていく。
ティアは六年前、先日別れたばかりのラシードと共に日本にやってきた異国人だ。
それ以前にもこの国には訪れていて、その際に鱗滝たちと出会っていた。
彼女自身の体質の関係で、鬼殺隊の敵と見なされたことがきっかけだったのだが、実際ティアは拐われて盗まれて売り飛ばされて来ており、おまけに幼かった。
もちろん言葉も通じないため、状況理解はほとんど追いついておらず、押し込められた場所で何不自由なく毎日過ごしていた。
そこへ、刃物を持った男たちが見知った連中ともみ合いながら雪崩れ込んできた時は、大変びっくりしたものだ。
いつも傍についていた男に抱えられて逃げ出した先で鬼に襲われるし、刀を突きつけられるし、本当に散々な目にあった。
何かがおかしいと気づいた鱗滝が、ティアを監禁していた連中から話を聞き出しており、桑島に首を刎ねられかけたところへ助けに入ってくれた。
それから言葉を学んで、自分が小さい宗教の象徴対象にされそうになっていたと聞いたのだ。
そう言われても当時はよくわからなかったが。
やがて産屋敷のツテで外交ルートからティアの生家に連絡がつき、帰郷していたのだがどうにも落ち着くことができず、疲弊した家族の同意もすぐに得られたので日本に戻ってくることができた。
それからすぐに産屋敷に接触して、今に至る。
鬼殺隊の長である産屋敷の食客という肩書きは、なかなか心を許してくれる隊員は少ない。というよりもいろんなところを回っている為、顔見知りの方がほぼいない。
隠の後藤の場合は人柄だろうが、柱なんて杏寿郎と天元としか顔を合わせたことがない。
義勇は柱になる前からの知り合いだ。また、桑島のところで生活することが多いから、そこの弟子たちとは仲も良い。
ぽつん、と取り残されたあと、観光客たちの世話をやっているうちに話を改めて把握し終えた杏寿郎が食事を、鱗滝が換えの包帯を持って戻ってきてくれた。
三人でせっせと──隠たちは食事の準備や見回りで忙しい──仕事を終えて、香を焚いてから部屋を出る。
気づけば夜明けも目前で、ティアはどっと疲れを感じた。
「ここには病人はいないからな。本領発揮できずくすぶっている」
「そうであることが普通はいいのですけど、確かに力が出ません……」
これでも休み休み過ごしているし、鬼に襲われた人を助けた際に補給もできた。けれども、やっぱりティアの体質が不調を招く。
「ティアの任務のことなのだが、監視要員に桑島様の弟子たちが派遣されてくることになった!」
見た目には元気そうには見えても、本調子ではないことは杏寿郎にもわかっていたのだろう。彼の鎹烏が飛び交っていたのには気づいていたのだが、手を尽くしてくれていたようだ。
「獪岳くん達ですか。彼ならば適任かもしれないですね!」
「代わりに君には戻って欲しいそうだ。なんでも、新しい弟子を取ったのだが手がかかるそうでな!」
お礼を言えば、気持ちのいい笑顔で答えてくれた青年の言葉が続く。
新しい弟子──ティアはきょとん、となって首を傾げた。
「暫く弟子は取らずに見廻りに出ると仰っていたのに」
「その見廻りの際に、桑島の目にかかった子がいたのだろうな」
そう言う鱗滝も、新しい弟子を取ったという。
義勇からの手紙を読んでいたティアは、鱗滝の複雑な胸中を知るから曖昧な表情しかできない。
けれども、杏寿郎は違った。
「そうなのですか! 後輩が二人も! 実に朗報! 同じ隊士として合間見える時を楽しみにしております!」
真っ直ぐな目の炎柱に、鱗滝は少しの間を置いて一つ頷き、少し仮眠を取った。
そして、ティアに送っていけないことを詫びで狭霧山へ戻っていく。どうやら、少しばかり残っていた迷いは吹っ切れたようだ。
「杏寿郎はすごいなぁ」
む?と不思議そうにしている青年を見上げながら、肩を竦める。
鱗滝の弟子たちが最終選別を突破できることは殆どない。それを知らないはずはない。
それどころか、命を落とすものの方が多い。彼自身も通ってきた場所。
それでも、鱗滝の弟子といつか共に仕事ができる──そう疑う様子もなかった。事前に情報を得ていたわけでもないのに。
社交辞令だとかではなく、彼は心の底から言い切っていた。共に戦う仲間ができたことを嬉しく思っていた。
それがただ、凄いなぁと思ったのだ。
「私はただ、己が信じたいと思うことに真っ直ぐなだけだ! 勿論、彼らは最終選別を突破できず、また任務の際に命を落とし、私は会えずじまいであるかもしれない!」
なんだ、そんなことか!という当たり前の顔で、杏寿郎は空を見上げる。「だが、彼らは今、生きているだろう!」
屈託のない笑顔に、ティアは途端に気恥ずかしくなって大きく頷きながら俯いた。
そう疑いもなしに思えてしまう杏寿郎の考え。それを一蹴する者だっている中、やっぱり一途な希望を見据える力強さは仲間にも定評がある。
「明日、桑島様の弟子たちが来たらここを出る! 荷物をまとめておくようにな!」
そして──面倒見がすごくいい。
慌てて返事をすると、さてもう少し我らも寝よう!と甘やかされる。
当代炎柱・煉獄杏寿郎。
彼もまた、ティアの体質を知る数少ない鬼殺隊の1人である──。