第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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【炭治郎の嫁騒動〜狭霧山視点〜】
※2019.12月に後悔していたお礼頁作品です。
加筆修正(名前変換機能は使えるようにした)などなしに公開することにしました。
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「千代ちゃん、すごく怒ってるね」
苦笑しながら、真菰は岩の上を見上げた。
狐の面を頭に引っ掛けた少年は、どこか同情するような顔だ。
なにも心配することないのに。千代は自身が婚期を逃しまくっていたから、その気持ちを娘たちに味合わせたくないのだろう。
一生懸命になると一直線なところは昔から変わらない。
昔のことを思い出して、真菰はくすくすと笑った。
「錆兎と義勇も、結構言われてたもんねえ」
「俺たちはあの娘が幼かった分、状況に救われてはいたが」
どこか苦手そうにしながら、錆兎が肩を落とした。「義勇がなぁ」
真菰は当時を思い出して、肩を震わせた。笑ってはいけない。
「義勇くんがどうかしたんですか?」
そこで、山菜取りの途中で話に付き合わせていた“わがままを聞いてくれる相手”に目を向けた。
「ティアは千代ちゃんとはあまり絡みない?」
親方たちとは何度も面識あるのですが、と小首を傾げた相手に、真菰は仕方ないかなぁと苦笑いした。
千代は豪快な性格なのに、“異国”に対しては忌避感を本能的に抱いてしまうきらいがあった。
異国人に対してだけではない。異国語を解す相手や、触れようとする好奇心にも反応していた。もちろん大人の対応は取れるのだが、それ以上触らないのだ。
「義勇は押しに弱い上に、言葉が足らない。間を間違える。結果、千代さんに良いように誘導されて勝手に許婚状態になった」
錆兎の説明に、不憫そうな顔をするティアとは対照的に、真菰は声を出して笑い始めた。
ごめんね義勇。面識はないけど本当にごめん。あの時はかなり滑稽だった。
今でこそ、錆兎の訃報という大事件があったこともあり自然消滅しはしたが、鱗滝も困り果てていたのだ。最終選別は行った直後など連日押しかけて来て。
義勇も断ってはいた。
いたけれども、肯定にも取れるような言動だったり、まあなんというか、街の子だったことが災いしたのだろう。嫌なことは嫌だときっぱり言って仕舞えばよかったのに。
「あの状態の千代さんを退けるのはかなり大変だぞ。鱗滝さんは一時退避したようだし、炭治郎の対応力が試されるな」
「ちょっとやだ錆兎っ笑い殺す気なの……」
至って真面目、難敵を前にしているような錆兎に対し、真菰はもう膝をついて悶えていた。もう死んでいるけれどもう一度死にそうだ。
「その、千代さんはどうして怒ってるんですかね」
「お前が原因だと思う」
状況理解が追いついていないティアに、錆兎が岩から降りながら告げた。これを聞いていた真菰は既に撃沈しており、起き上がれない。
「鱗滝さん、炭治郎と同居している状況を見れば、娘の婿を取られると勘違いもするだろう」
「ああ、成る程」
危機的な状況なのに、錆兎は懇切丁寧に言い含める。それを受けた“原因”は少し考えるようにしてから、くるりと踵を返した。
「今日は雨なので炭治郎くんは山に入りません。明日は晴れますよ〜」
ふりふりと手を振って山を降りていく“生者”を、真菰と錆兎はきょとんとなって見送った。
もっと慌てふためいたりするかと思ったのだが。なんだか手慣れているような気がする。
「修羅場に慣れてるって想像できないんだけどねぇ」
「ティアの力のせいじゃないのか。為政者からしてみれば手元に置いておきたくなる能力だろうからな」
成る程ねぇ、と真菰はその場に立ち上がった。
彼女のおかげで自分たちは炭治郎に関わることができる。真菰は錆兎が生きている頃に関わることがあったが、あれも彼女に間接的に助けられていたようなものだ──思えば、縁は深い。
「鱗滝さんも酷いよねえ。疑問にも思わない炭治郎も炭治郎だけどさ」
千代が敷地内に入った。
恐らく“彼女”は狭霧山の主の腹の中を通っているだろうから、すぐ助けに入れるだろうが。
「そう思うのならば、お前が千代さんの枕元に立って助言してやればいいだろう──親友だったなら」
麓に向けて、道場の眼差しを向ける弟弟子に対し、真菰はふっと笑う。
「わたしは未練がましい女じゃないの。千代ちゃんが一番それわかってるんだから、出てったら可哀想じゃない」
きっと千代は、叱られるような気持ちになるだろうから。
そして、ちょっと落ち込むのだ。
錆兎は、何も言わなかった。ただ、優しい空気がする。
今日はこれから雨になる。ならば、自分たちも霧となろう。
もとより、形などないのだから。
「おやすみ錆兎、また明日」
「ああ。おやすみ真菰」
声だけが、暗くなり始めた空に消えていった──。