第3章 炎を絶やすことなかれ。(全22話)
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※風の呼吸に因む理由は更新後書に記載中
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第17話 鬼の考察。
「──老化?」
炭治郎が宇髄によって化粧を施されている傍。
伊之助に着物を着せているラシード改め龍田──風柱が投げやりにつけてくれた──との会話の中で、善逸が首を傾げた。
龍田は修行の最中、善逸たちがノリに乗って調子良く彼女に切り掛かっていく中、稀に鬼化して叩き伏せてくる時があった。
その時、龍田の髪は白くなる。
鬼になると髪の色も変容するものなのか、と軽い感じで尋ねたところで、返ってきたのが“老化”というものだった。
「無惨を起点とする鬼ってのは、あいつの血で変容するだろ。無惨っていう細胞に支配される。それが、鬼殺隊が相手にしている鬼だ」
「なんか医者みたいな説明だな。最近ティアの代わりに“しのぶ”さんの手伝いしてるだけあるわ」
着付けがおかしくないか、伊之助の周りをぐるりと一周した龍田は、よしっと笑った。
次はお前だ、と向き直ってくる龍田の前に立ち上がりながら、善逸はため息をついた。
ちょうど彼らが集中的な鍛錬をラシードにつけて貰うようになる辺りから、ティアは彼女の能力で協力してくれる機会が増えた。
鹿鳴館での鍛錬も任務の間にかなりこなしているし、はじめはあたふたしていた炭治郎も──善逸と伊之助は最終選別前から知っていた──慣れ始めてきたはずだ。
比例するように、ティアが“しのぶ”の手伝いから外れる一方、ラシード改め龍田が代わりに担うことが多くなった。
寿命の関係もあって、柱や炭治郎たちの鍛錬以外での体の酷使を禁じられているのも理由ではあるだろう。
「記憶の化身なんだもんな、医学知識とかあって当たり前か」
「おうともよ、ティアの指導医は俺だぞ!」
「うそでしょ⁈」
けらけらと笑う龍田にからかわれる善逸──でも事実に変わりはない──を他所に、炭治郎の化粧を終えた天元は膝頭を打った。
「んで、無惨の細胞とお前のいう老化ってのは、どういう風に繋がるんだよ」
「わざわざ脱線させた話題を戻すなよ」
「っざけんな気づかなかったわ脱線させんなよ」不満そうにする龍田に舌を出して応戦する天元。しらけた様子の善逸がぼやく。
天元が化粧のために伊之助を抱え込む中、「私は無惨とは違って、もとから記憶の化物っていう前提ありきだからな?」と龍田の話は続く。
「俺は“鬼に変質する過程”を自分なりに仮説構築して、一時的に自己暗示をかけて体質変化させてるわけ。その仮説ってのが細胞の超活性化、つまりは老化に行き着いたわけよ」
お子様三名が腑抜けた様子で惚ける中、「そりゃ派手に面白ぇ仮説だわな」と天元は顎に手をやって。
怪我の再生ももとは細胞の活性化だ。若返りなわけではない──と、仮説を立てたわけだが、実際無惨たちの肉体は違う成り立ちなのかも知れない。
けれど、“神格レベルの存在に至っていない”のならば、理屈で説明できるはずなのだ。
「なんかよくわからんけどさ、ラシード──龍田の角、あれのカラクリは何な訳? 俺たちも貰ってるけどさ」
目が点になっているままの炭治郎と伊之助より早く復活した善逸が、自分の首から下げている首飾り──蝶屋敷の娘たちが組紐で作ってくれた──に括られている角を掲げて見せる。
龍田が人に戻る時に鬼化で出現した角を折るのだが、それを鍛錬した褒美として持たせてくれていた。例えば普段使っている刀が折れた時に、角を構えれば日輪刀となって繋いでくれる優れものだ。
どうかすると使い勝手が良過ぎて、刀鍛冶の里の刀を扱う時に不具合が出るというから、長期間の代用はしないよう注意を受けている。
「あくまで鬼化を解く装置みたいなもんだったんだけどな。あれ、老廃物とか垢だとでも思えばいいんじゃね?」
「言い方‼︎」
ばっちく聞こえるわ! と善逸が怒鳴って、天元が派手に吹き出す。
そのせいで伊之助の化粧がやり直しになったが、まあなんとか3人揃って女装を完了することができた──珍妙な出来上がりだが。
天元の美的センスを疑うわ、とボヤいたところぶん殴られそうになったが、それは華麗に回避する。
「ラシードも潜入するんなら、俺が着物着る必要なくねぇか」
「龍田な! こいつ、ティアを回収する人員なんだと」
伊之助の疑問に善逸が答える。
二日前の音柱と龍田による乱闘騒ぎは、任務中だった3人は知らないだろうが。その後仲直り(?)してティア回収には龍田が動くことになった。
蝶屋敷で嫁たち救出の人員を確保してくるとは聞いていたが、悲鳴が聞こえたかと思ったら、天元が連れ戻ってきたのは炭治郎たち男衆だった。
三人ともガタイがいいのに女装? と龍田は目眩を覚えたが、まあ、出来ないわけではない。それに、危険な仕事であることを考えれば鬼を斬ることの出来る人間の方がいいに決まっている。
「ティアはどこの店にいるんだ?」
「お前たちは自分の仕事に専念する! 強い鬼が潜んでいる上に人探しもしなきゃならないんだ。人に任せられることは任せるのも大事だぞ」
心配そうに尋ねてきた炭治郎の額をデコピンする。あ、指が痛い。忘れてた、こいつ石頭だった。突き指したかも。めっちゃ痛い。
悶絶する龍田に思わず謝る炭治郎のやり取りを見ていたらしい伊之助が善逸の額をデコピンした。善逸が叫ぶ。頭が割れてしまったかも!
──こいつらでホント、大丈夫かな。
ここに来て初めて、天元は先行きに不安を抱くのだった。