第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第4話 それぞれの休息。
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夜明け前に戻ってきた炭治郎は、開け放った扉に寄りかかるようにして眠ってしまった。
それを鱗滝が抱えてくる間に、用意しておいた道具を並べて手当てしやすいように並べる。
「あんな罠だらけの中、戦い方も知らないお子様がこの程度の怪我で済むもんなのかよ」
空気の薄い山頂から、戻って来させるだけでも良さそうなもの。
特に、大正に元号の変わった時分。一昔前に比べれば暮らしは豊かになり、人の生活も変わった。
鱗滝の幼い頃と、今の炭治郎の頃とでは体の作りも違うはず。
「恐らく、この子も日頃、山の中で暮らしていたんだろう。罠を仕掛けたり、仕組みを理解していたからこそだろうな」
「……いつから初心者相手にそこまでやるようになったんだ、オヤジ」
育手として弟子を育む条件が常軌を逸している。義勇は確か街の出身だったはず。どうやって乗り切ったんだ。
考えてみると、鱗滝の弟子は彼以外ラシードは会ったことがない。
「義勇とは、時々飯一緒に食ったりしてるぞ。あいつが単独任務の時は手伝ったりしてんだけどさ──そうだ! あいつな、新技編み出してやんの。スッゲーよな〜」
「新しい型を?」
今も鬼滅の戦士として活躍している弟子の話を、鱗滝は興味深そうに聞いている。
他にも、元鳴柱が推している弟子の話をしてやると、楽しそうに肩を揺らした。
和気藹々と談笑しながらも治療の手は止めず、やがて炭治郎を起こす。
このまま寝かせてやってもいいが、身体中のあらゆる力を振り絞って下山してきた幼い体には、回復を補う為の栄養──活力がない。
背後から抱え上げて支えてやると、鱗滝が冷ました食い物を炭治郎の口元に運ぶ。そうやって介助した上で食事を終えた炭治郎に、今日一日の休息を申し渡した鱗滝は、自分の布団を引っ張り出して横になってしまった。
少し休んでから、山の中の罠を再び仕掛けに行くのだろう。
「すみません、何から何まで世話になりっぱなしで」
「このくらいなんでもないんだけどな。俺にとっては、お前たちへの感謝の礼みたいなもんだし」
厠に連れて行って、再びおぶったところで炭治郎が首をかしげる。
育手の手を離れた弟子たちが受ける最終選別。鬼を倒し続けるということは、鬼に殺される可能性も付きまとうのだ。だからこそ、その選別で命を落としても仕方がなかった。
結果──鱗滝左近次の弟子で、鬼滅の戦士として活躍しているのは現在ただ一人。
我が子同然に育て上げていた男の無念は、どれ程だろう。
「炭治郎はさ、オヤジのことどう思ってる?厳しくておっかない?」
「確かに厳しいけど……鱗滝さんからは、優しい匂いがします」
少し考え込むようにしながらの返答に、思わずにんまりしてしまう。
そうだろう、そうだろう!俺のオヤジは優しいんだ。優しいから厳しくて、かっこいいんだ。
「ラシードさん、鱗滝さんのこと大好きなんですね!」
「俺だけじゃない──ここから逃げ出さなかったやつ、全員がそう思ってるはずだ。だからお前は、オヤジの試練を乗り越えて、最終選別切り抜けて、鬼殺の戦士になれ」
炭治郎が死んだら、オヤジはどうなるかな。恐らく炭治郎には、これまでの弟子たち以上の試練を与えるに違いない。だから結果によっては、最終選別に向かえる弟子は現れないかもしれない。
これはお礼の前払いだ。
炭治郎のサポートは全力でする。禰豆子のことも、炭治郎がいない間は面倒を見る。
だから、これ以上鱗滝左近次を追い詰めないでほしい。どうか生き残ってほしい。
「俺は禰豆子を元に戻したいんです。その為に鬼滅の戦士にならなければならないのならば、やります!」
自分の言葉で決意をあらわにする炭治郎に、思わず泣きそうになった。
ラシードの思いまで引っくるめて、背負おうとしている。でも、それは彼自身のため、家族のため。
「あ、それとな。ラシードさんとか辞めてくれ。呼び捨てでいいから」
「いえ、それは出来ませんよラシードさん」
他愛ない会話をしながら家に戻り、炭治郎を寝かしつけてから、ラシードは山に入った。
鱗滝が補修するはずの罠の数を、少しでも減らしてやろうと思ったのだ。
ただ直しても面白みがないので、馴染みの猟師たち──罠の仕掛けは彼らの貢献が大きい──と工夫したりとせっせと作業を進めていたら、鱗滝がやって来るまでに半分程度終えてしまっていた。
その為、そのまま全ての罠を直す羽目になってしまったのだが、別段やらねばならない仕事もないので引き受ける。
太陽が真上に来る頃、ちょっとした旅装姿の鱗滝が改めて姿を見せて。
「藤襲山へ行ってくる。戻るまで、二人のことは任せたぞ」
「あの怪我じゃすぐに修行ってわけにもいかないし、これ逃したらティアにいつ会えるかわかんないもんなぁ」
快く引き受けると、鱗滝はそのまま消えてしまった。
久々の遠出だろうし、もしかすると桑島──元鳴柱の老人──のもとへも顔を出して来るかもしれない。
「ラシードさん、お帰りなさい。狩りをしていたんですか」
「貰ったー。しっかり食べて早く傷なおさないとな!」
麓へ降りると、炭治郎が手持ち無沙汰にしていた。呼吸をすると傷が痛むという。
なので、痛みを殺す呼吸の仕方を教えた。それは傷の治りを早くさせる効果も見込めるものだ。変な癖も付かないし、技の呼吸法を習得する際にも応用が効く。
かといって、すぐに習得できるものでもない。
その日も介助してやりながら生活し、休ませた。
呼吸法を変えるというのは簡単ではなく、本気でやったら疲れが来る。
日が沈む頃には炭治郎は懇々と眠りについてしまい──日がまた登るまで目覚めなかった。