第2章 逃れもののオニ。(全19話)
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第19話 花の呼吸対風の呼吸
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「あー、面倒なパターンか」
禰豆子を追ってきたのは、女だった。炭治郎と同い年くらいか。
しかも全集中・常中を会得している。
これは、誰かの継子かな。確か前に柱の館を見物に行った時に見かけたことがある──蝶の耳飾りを。
「その子は鬼。鬼を斬るのが私たちの役目」
「その通り。ネズは鬼だ──けど、斬るのはダーメ!」
融通が利かない──それが鬼殺隊では普通だが──相手に対し、ラシードは少し考えて、刀を抜いた。
この娘、なんか違うな。今後のためにちょっと悪いところを直してやろう。多少体への負担は否めないけど。
「俺はこれから風の呼吸で技を出すぞ。お前の目的は禰豆子を斬ることだから勿論それを優先にしていいが、大怪我しないように気をつけること──悪いが容赦はしない」
少女の表情から笑みが消えた。彼女はすぐ様身を低くして、その場から飛び退き上段からのラシードの技を避ける。
避けられるのがわかったから呼吸の技を納め、着地と同時に技を仕掛けた。
「弍ノ型、爪々・科戸風!」
「陸ノ型、渦桃!」
ラシードの打ち下ろしの連撃に対し、少女の方は宙に飛び上がりながら体を捻っての斬撃。捻りの仕方で斬撃までの対空時間を稼いで、技を放ち終えたラシードに斬りかかる。
にやり、とラシードは笑みを浮かべた。「肆ノ型、昇上砂塵嵐!」
下半身を沈めて捲き上げるような連撃を繰り出せば、相手の技と相殺して弾き飛ばす。上手く姿勢を立て直した少女は、ムッとしたようにこちらを見据えてきた。
「手を、抜いてますか」
「こう見えて絶不調なんだよ。大目に見てくれよ」
力量差を見極められるならば上々。けれど相手は引く様子はない。
ご老体としてみると少しでも休みたい。
「あー、最初の避け方は間違っちゃいないが、柱級の使い手だともっと早く、距離を取るか技で相殺させないと逃げらんないぞ」
何度も言いますが、見た目は十代でも中身は老いぼれなんで。
ほんとくたびれてるんで。さっきの技だってほとんど威力も勢いもないからな。
あ、いかん。全部口から駄々漏れてた。
ラシードが口を塞ぐ頃には、相手は不思議そうにしながらも刀を納めていた。
「ほかに、悪いところありますか」
「先にいいところな。体の捻り方や、自分の体型や体重の把握、使い方は絶妙だと思う」
これから女として体系も変わるからその都度微調整が必要だろうが、お前なら大丈夫だと思うよ。褒めてやると、どこかホッとしたように肩を下ろす様子。
ラシードは刀をしまって、禰豆子を肩車しながら悪いところに戻る。
「渦桃や紅花衣は如何に体のブレを無くすかが何より重要だ。音柱が忍だろ。お前のお師匠にでも話しつけてもらって鍛錬方法を聞いてみな──っと、来た来た!」
バサバサと、カラスが舞い降りてきて──戦いの終わりを告げる。
竈門炭治郎及び鬼の禰豆子を拘束し、本部へ連れ帰ること。
本部からの伝令なのだから、一先ず禰豆子の抹殺行動はないだろう。
念の為ついて行くけど。
「鬼を庇った貴方には、付いてきてもらいたいのですが」
「行くよー、勿論行きますよ。元より、こうなった時はそうするつもりだったからさ」
少女──カナヲに案内され、倒れている炭治郎の元に辿り着き、禰豆子を箱の中に仕舞う。
隠によって運ばれる炭治郎の後をついて行くと、途中で義勇と、見覚えのある羽織の女性と会った。
師範──と離れて行くカナヲに付いていく過程で義勇とハイタッチして無事を労えば、どこか元気のない様子の弟弟子に何事かと尋ねてみる。
「ラシード、俺は嫌われてるのか」
「やだ、俺がいつ義勇のこと嫌いって言ったよ⁈」
そんなデマに乗せられてんじゃねえよ、とラシードが右ストレートを決める。ほっぺをムギュッとさせながら──本気なわけない──義勇は微妙な顔でラシードを見下ろしてきて。
あ、察してくれたみたいだ。
ふっと笑ってやると、むうっと顔を逸らしてさっさと歩き出して行ってしまった。
「はじめまして。うちの継子がお世話になったようで」
ずいっと視界に割って入ってきた美少女。鼻先がくっつく位の距離で凄まれながら、ラシードはうん、とうなずく。
「こちらこそ、うちの弟子と弟弟子たちがお世話になったようで」
「あら。どう言うことでしょうか」
指折りながら、相手はつま先立ちを辞めて首をかしげる。
竈門炭治郎と、我妻善逸のことは彼女も把握しているらしい。だが、それだと数が合わない。弟子と弟弟子ならば合うが、後者は複数形だ。
言い間違い? と問うてくる少女に、いやいや、と首を振って。
「炭治郎と善逸は弟弟子なの。弟子はもう一人の方」
「そうでしたか。でも、私はその子とは会っておりませんので」
真っ直ぐに射抜いてくるカナヲの師──柱の女性。
見覚えあるなぁ、と思いながらも、ラシードは口を閉じた。主導権は完全に鬼殺隊本部にある。ラシードは義勇と共に隊律違反として断罪される──が、そもそもラシードは隊員ではない。
──あれ、この場合どうなるんだ?
「義勇、義勇ちょっと待ってよ〜俺も一緒に怒られるから!」
「お前なんか嫌いだ」
「寝言は帰って寝てから言えよガキが。撤回しろ、ほんと泣くぞ。本気にしちゃうぞ!」
途端に不安になって、ラシードが弟弟子を大声で呼ぶと、どこか怒ったような口調で返事が。
兄弟子に向かって酷い仕打ち。プンスカしながら義勇を追いかけると、後ろから驚いたような匂いが香ってくる。
「まあ、珍しい。冨岡さんがあんなにはっきりツンを発揮してるわ」
聞こえてきた微かな呟きに、ラシードはどんよりした気分になる。
──義勇、お前、どんな評価されてるんだよ……。
弟弟子のどの要素がそうさせるのか。
ラシードは密かに頭を抱えた──。
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「あー、面倒なパターンか」
禰豆子を追ってきたのは、女だった。炭治郎と同い年くらいか。
しかも全集中・常中を会得している。
これは、誰かの継子かな。確か前に柱の館を見物に行った時に見かけたことがある──蝶の耳飾りを。
「その子は鬼。鬼を斬るのが私たちの役目」
「その通り。ネズは鬼だ──けど、斬るのはダーメ!」
融通が利かない──それが鬼殺隊では普通だが──相手に対し、ラシードは少し考えて、刀を抜いた。
この娘、なんか違うな。今後のためにちょっと悪いところを直してやろう。多少体への負担は否めないけど。
「俺はこれから風の呼吸で技を出すぞ。お前の目的は禰豆子を斬ることだから勿論それを優先にしていいが、大怪我しないように気をつけること──悪いが容赦はしない」
少女の表情から笑みが消えた。彼女はすぐ様身を低くして、その場から飛び退き上段からのラシードの技を避ける。
避けられるのがわかったから呼吸の技を納め、着地と同時に技を仕掛けた。
「弍ノ型、爪々・科戸風!」
「陸ノ型、渦桃!」
ラシードの打ち下ろしの連撃に対し、少女の方は宙に飛び上がりながら体を捻っての斬撃。捻りの仕方で斬撃までの対空時間を稼いで、技を放ち終えたラシードに斬りかかる。
にやり、とラシードは笑みを浮かべた。「肆ノ型、昇上砂塵嵐!」
下半身を沈めて捲き上げるような連撃を繰り出せば、相手の技と相殺して弾き飛ばす。上手く姿勢を立て直した少女は、ムッとしたようにこちらを見据えてきた。
「手を、抜いてますか」
「こう見えて絶不調なんだよ。大目に見てくれよ」
力量差を見極められるならば上々。けれど相手は引く様子はない。
ご老体としてみると少しでも休みたい。
「あー、最初の避け方は間違っちゃいないが、柱級の使い手だともっと早く、距離を取るか技で相殺させないと逃げらんないぞ」
何度も言いますが、見た目は十代でも中身は老いぼれなんで。
ほんとくたびれてるんで。さっきの技だってほとんど威力も勢いもないからな。
あ、いかん。全部口から駄々漏れてた。
ラシードが口を塞ぐ頃には、相手は不思議そうにしながらも刀を納めていた。
「ほかに、悪いところありますか」
「先にいいところな。体の捻り方や、自分の体型や体重の把握、使い方は絶妙だと思う」
これから女として体系も変わるからその都度微調整が必要だろうが、お前なら大丈夫だと思うよ。褒めてやると、どこかホッとしたように肩を下ろす様子。
ラシードは刀をしまって、禰豆子を肩車しながら悪いところに戻る。
「渦桃や紅花衣は如何に体のブレを無くすかが何より重要だ。音柱が忍だろ。お前のお師匠にでも話しつけてもらって鍛錬方法を聞いてみな──っと、来た来た!」
バサバサと、カラスが舞い降りてきて──戦いの終わりを告げる。
竈門炭治郎及び鬼の禰豆子を拘束し、本部へ連れ帰ること。
本部からの伝令なのだから、一先ず禰豆子の抹殺行動はないだろう。
念の為ついて行くけど。
「鬼を庇った貴方には、付いてきてもらいたいのですが」
「行くよー、勿論行きますよ。元より、こうなった時はそうするつもりだったからさ」
少女──カナヲに案内され、倒れている炭治郎の元に辿り着き、禰豆子を箱の中に仕舞う。
隠によって運ばれる炭治郎の後をついて行くと、途中で義勇と、見覚えのある羽織の女性と会った。
師範──と離れて行くカナヲに付いていく過程で義勇とハイタッチして無事を労えば、どこか元気のない様子の弟弟子に何事かと尋ねてみる。
「ラシード、俺は嫌われてるのか」
「やだ、俺がいつ義勇のこと嫌いって言ったよ⁈」
そんなデマに乗せられてんじゃねえよ、とラシードが右ストレートを決める。ほっぺをムギュッとさせながら──本気なわけない──義勇は微妙な顔でラシードを見下ろしてきて。
あ、察してくれたみたいだ。
ふっと笑ってやると、むうっと顔を逸らしてさっさと歩き出して行ってしまった。
「はじめまして。うちの継子がお世話になったようで」
ずいっと視界に割って入ってきた美少女。鼻先がくっつく位の距離で凄まれながら、ラシードはうん、とうなずく。
「こちらこそ、うちの弟子と弟弟子たちがお世話になったようで」
「あら。どう言うことでしょうか」
指折りながら、相手はつま先立ちを辞めて首をかしげる。
竈門炭治郎と、我妻善逸のことは彼女も把握しているらしい。だが、それだと数が合わない。弟子と弟弟子ならば合うが、後者は複数形だ。
言い間違い? と問うてくる少女に、いやいや、と首を振って。
「炭治郎と善逸は弟弟子なの。弟子はもう一人の方」
「そうでしたか。でも、私はその子とは会っておりませんので」
真っ直ぐに射抜いてくるカナヲの師──柱の女性。
見覚えあるなぁ、と思いながらも、ラシードは口を閉じた。主導権は完全に鬼殺隊本部にある。ラシードは義勇と共に隊律違反として断罪される──が、そもそもラシードは隊員ではない。
──あれ、この場合どうなるんだ?
「義勇、義勇ちょっと待ってよ〜俺も一緒に怒られるから!」
「お前なんか嫌いだ」
「寝言は帰って寝てから言えよガキが。撤回しろ、ほんと泣くぞ。本気にしちゃうぞ!」
途端に不安になって、ラシードが弟弟子を大声で呼ぶと、どこか怒ったような口調で返事が。
兄弟子に向かって酷い仕打ち。プンスカしながら義勇を追いかけると、後ろから驚いたような匂いが香ってくる。
「まあ、珍しい。冨岡さんがあんなにはっきりツンを発揮してるわ」
聞こえてきた微かな呟きに、ラシードはどんよりした気分になる。
──義勇、お前、どんな評価されてるんだよ……。
弟弟子のどの要素がそうさせるのか。
ラシードは密かに頭を抱えた──。