第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第18話 柱合会議への招待。
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産屋敷は彼のことを静観しているのか、ラシードが気取られないようにしているのかは定かではないが、鱗滝や桑島の様子からすると他言無用のままでいた方が良さそうだ。
「これから、あなたはどうするんですか?」
「無惨に会いに行こうかなーと思ってるよ」
まるで、久しく会っていない友人を訪ねるかのように言ってのける。
死んでは別のところで生まれ、以前からの記憶を引き継いでいる少年は──もちろん、鬼にだって食われた経験がある。
その大元にだって、面識があるわけだ。
彼が鱗滝たちにその場所を告げない理由。それは恐らく、彼が元凶をよく知っているからなのかも知れない。
「ま、殺されに行くようなものだからさ。そんなすぐの話じゃあないけど」
「鱗滝さんからあなたを奪ったのは私のようなものですから、文句などいう立場にありませんけど、少しは自重してくださいよね」
自分の命を軽視しすぎる相手に未練がましい感じで訴えると、困ったような顔で見送ってくれる。
下手をすると、ラシードに次に会う時まで数年程度かかってしまうかもしれない。というより、ラシードという名前ではなくなっているかも。
この度、九人の柱が立って顔ぶれも変わらずに数ヶ月が過ぎたという事から、普段は半年に一度の会議へティアにも立ち会って欲しいという依頼だった。
遠回しに、鬼以外の問題からなるべく守ってやって欲しいと“みんなへの仲介を所望された”のだ。
獣を警戒する手間を省ければ、鬼にのみ専念すればいいから。
本当は引き受けるべきではないのだろうが、人が脅かされれば思念体であるものたちには堪ったものではない。ティアが言わなくてもやってくれている存在はある。
「そういえば、蜜璃ちゃんと温泉行く約束まだだったなぁ。その話ができたらいいなぁ」
これからさらに忙しくなる既知の友との再会に胸を躍らせながら、ティアは優しい日差しを見上げた。
──ところで、大きな手に目隠しをされる。それも、片手で。
びっくりして悲鳴をあげてしまったが、そうしてくるのはいつもの事なのでだんだん怒りが湧いてくる。
「耳まで真っ赤だぞ、ティア! お前の反応は派手だからなぁ、本当毎度毎度嬉しいねぇ」
「ふつうに出てきてくださいよ! 変な人かと思うじゃないですか、むしろ前同じことされて、その時は本当に変な人だったんですからね!」
引き剥がそうとしても張り付いて動かない手。非力なのが悔しい。むむむむむと力を込めてもビクともしない。
元忍で音柱である宇随天元は、そりゃあいけねぇ、と笑いをこらえていて。
「なんだ、乳くらい揉まれたか? ははっ、そりゃあ悪いことをした!」
「…………ほっぺ舐められたのですぐ逃げました」
嫌なことを思い出してティアがしゅんとなるのと同時くらいに、背後から素直な謝罪が降ってくる。まあ、無防備な自分が悪かったのだ。天元のせいではない。
どうしてこんなところにいるのかと尋ねると、ちょうど任務の帰りで、ティアがこの近くにいると聞いたから寄ったらしい。
見上げれば烏が二羽並んで飛んでいた。鱗滝が気を回して、仲間に知らせるよう促したのだろう。
「それで少しは休めたのかよ。随分と忙しくしてるみたいで捕まられねえって、炎柱がぼやいてたが」
「お陰様で。ところで天元、杏寿郎や蜜璃ちゃん、無一郎くんの近況ってわかります?」
先の一年半で、ティアは炎柱の元継子と、産屋敷邸で面倒を見ていた現在は霞柱して活躍している少年と縁を持っていた。
霞柱は記憶障害があるから、もしかするとティアのことを忘れてしまっているかもしれないが。
天元は四人の知っている限りの近況を教えてくれた。
相変わらず、炎柱の継子は逃げていくものが後を絶たないこと。
恋柱となっている蜜璃が、ティアに会いたがっていたこと。そこへたまたま通りかかった無一郎が、ティアが本部にいるのか、とずいっと話題に乗っかってきてびっくりしたこと。
覚えててくれたんだ! と感動したティアは、照れて満足してしまった。どこか危なげな少年が、ほんの少しでも心を開いてくれているならば、自分も少しは役立てていたということだろう。
「お前の頭ん中はお天道様で羨ましいなぁ」
「お祭りの天元には言われたくありません」
顔を合わせばこうやって容赦なく虐めてくるのだから堪らない。
まあ、他人との距離感がいまいちわからなかったティアにしてみれば、彼の派手であからさまなスキンシップに救われたこともあるのだが。
ほお、と低く吐き出た天元が、彼女の腰に手を回してひょいと担ぎ上げた。さわさわと臀部を撫でられて産毛が総毛立つ。
「嫁に行き遅れたら仕方ねぇから貰ってやるからよぉ! 遠慮なくたっくさん、失敗してこい!」
「天元は遠慮というものを覚えるのがいいと思いますけども!」
慌てて飛びのいて──逃がしてくれた──背中に言い返すと、相手は豪快に笑って歩き出してしまう。
悔しさと恥ずかしさで真っ赤になりながらも、ティアはその後を追った。
音柱はまるでティアのことを妹のように可愛がってくれるから、あまり気を使う必要はなくて。
わがままだって言いやすいから好きだった。もちろん意地悪されるのは悔しいのだが。
藤襲山の方を少しだけ振り返る。
炭治郎が無事であることは皆んなが知らせてくれた。あの子たちも安心したようで、山も穏やかだったし。
ほんの少し出発を遅らせることができれば良かったのだろうが。
「おーい、俺と宿場で同衾目当てならば構わねえが、本当に急がねぇとお前の苦手な鬼が出るぞー」
足を止めていたティアは、それを聞いて飛び上がり、青年に飛びつくように駆け出すのだった──。