第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第15話 子供たちのわがまま。
_________________________________
「鬼に変化したといっても、所詮はヒトですから。ただ、禰豆子さんに何が起きているのかわかっても、それ以上のことは出来ないから……」
鬼から人に戻す術を調べていないわけではない。藤襲山に捉える鬼の協力を得られれば何か変わるかもしれないが、彼らは話を聞いてくれないし。
同意も得ないまま、実験台のように治験するのも気がひける。
だから、現状は何も変わらないけれども、死にそうだとかそういう、炭治郎の不安要素の除去くらいは出来るかもしれない。
しばらく考えた後、炭治郎は深く頭を下げて了承してくれた。
初対面なのに、妹に危害を加えられるかもしれないのに。もちろんティアにはそんなことをするつもりはないが。
信じてくれたのは、鱗滝やラシードのおかげなのかもしれない。
次の日、起きたら昼間だった。
起きた途端、ティアは真っ青になる。陽の光が入らないようになった室内はもちろん暗い。暗いけど音でわかる。
大寝坊だ、寝すぎた。そんなに疲れていたはずはないのだが。
起き上がろうとしたのだが、ひどく体がだるい。身を起こすのにものすごく気力を振り絞ったほど。
どうして寝ただけなのにこんなに疲れているのだろうか。上半身だけ起こした状態で、自身の状況を探る。
疲れる原因は、きっと強引にティアに憑いてきたモノがいたからだ。悪いものではなさそうだが、一言くらいかけてほしい。
禰豆子に何が起きているのか調べるどころではない。結構な体力を持っていかれたから、まだ暫くまともに動けない。
「お前、どうしたんだ。顔色が悪い」
なんとか戸を開けて這って出て行くと、物音に気付いた鱗滝が戻ってきて、駆け寄ってくる。
状況を伝える必要があるのだが、喉がからからで声が出ない。
やっと、何が起きているのか伝える頃には、夕暮れ時になっていた。
「仇なすようなモノではないなら良いが、一応警戒はしておく。炭治郎にも伝えねばな」
「一生懸命で真っ直ぐな感じ──それと、あったかい思慕」
亡者の魂に憑かれると、その感情が伝わってくる。
記憶や人となりがわかることもあるが、強力な場合は干渉させてくれない。それは拒否の意味合いの時もあれば、別に重きを置いている場合がある。
これが悪い要素を帯びていたなら、ティアは強硬手段に出るのだが──“みんなも見守っている”ようだから、危険はないのか。
「鱗滝さん、この界隈で怪談の類とかありましたっけ?」
「いや。──まあ、右京のことを除けばな」
あの気まぐれやの闊達な人物も、この状況を見たなら「まあダラけて過ごせってことだろー」の一言で済ませそう。
壁に背もたれながら、夕餉の支度を手伝うことも出来ずにぼんやりとしていると、目が見えた。
いや──見えたのは錯覚だ。見られかけたけど、見られなかった。
怖気が全身を走る。
禰豆子が眠ったままの意味が、漠然とわかる。
匂いで察して、鱗滝が心配そうに覗き込んでくるから、全身を震わせながら恐怖心から逃れるように抱きついた。
おそらく鬼は、探知機のような働きもしていて、情報収集の要でもあるのだ。普通ならば、この場所は既に鬼の中枢に知られていて、下手をしたら襲撃を受けていたかもしれない。
鬼を連れて行くというのはそういうことだったのだ。
藤襲山の鬼たちは、藤の花のおかげでその枠から外れてしまったのだろう。首を切られなかっただけで既に切られたもの同然だから、中枢からは切り捨てられてもいるのかもしれないが。
目の話を聞いた鱗滝は、ティアに口止めをした。炭治郎にはしばらく、このことは黙っておくこと。
ティアが何かに憑かれたことも、伏せておくこと。しばらく彼とは顔を合わせず、部屋から出ないこと。
幸いにして、髪や目の色が変わるのは“ある程度の人々の畏怖を集めた者”に憑かれた場合なので、此度は外見に影響は及ばない。
つまりはティアに加護を齎す力もないので、ティア自身にそのまま負担がかかる状況が続く。
鱗滝が炭治郎が使っていたらしい文机や荷物を部屋から一時的に撤去し、完全にティアと禰豆子のみの部屋になる。
ぐったりと眠る少女の枕元に座り込んで、ぼんやりと彼女を見下ろした。
鱗滝らに会った時──鬼に食われそうになった時の気配を思い出す。禰豆子の気配は、同じだ。
けれど、変化の兆候は感じられる。
加えて、鬼の要素の何かが足りない。ラシードが一時的に取り上げたのか。けれど、それが眠りの原因というわけではない気がする。
眠りは機能を停止すること。鬼も人間もそこは同じ。けれど、鬼は眠るものなのだろうか。彼らは疲労を感じないはず──食べさえすれば。
禰豆子はまだ人間を食べていないから、眠っているのか。人を食べたいという欲求をも封じ込めるほどの眠りを。
──大好きだから。
これは、“どちらの”感情だろう。
禰豆子のものか、憑いたモノのものか。
どちらにしても、綺麗であたたかい。
守らなければ。
刀が折れたとしても。
必ず帰ると約束したのだから。
また悲しませてしまう。
大好きなのだ。
大きな手に撫でられるのが好きだから。
優しさが詰まった鍋を今度は自分が食べさせてあげたいから。
幾人ものいろんなものが綯い交ぜになって押し寄せてくる。
でも全部、優しい気持ちだ。
それが向かう先もわかったから、ティアは色々とやろうとしたことを、しばし放棄することに決めた。
とことん付き合ってあげよう。本当は、そんな関わり方はご法度なのだけど。
自分たちがずるい事をしていると自覚しているから、やって良いことと悪いことの分別は付いているようだし。
途端に睡魔が襲いかかってきて、ティアは禰豆子にくっついて眠った。
掛け布団に手を伸ばす気力は、わかなかった──。