第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第9話 三峯詣で。
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洗濯物を干し終え、必要なものを列記する。
それを鎹烏に運んでもらうと、必要なものを隠が用意して所定の場所に置いてくれるようになっていた。
補充を済ませ、荒れていた室内も整えられた。
ここ数日間の奮闘が実り、ティアは達成感に浸る。
既に炎柱はここを離れており、現在は元鳴柱の桑島と、弟子の善逸の二人のみ。育ち盛りの善逸がいるから食事の物量はそんなに気を使わないで済む。
もう少し善逸が慣れてきたら彼自身が身の回りの生活も担うようになるから、ティアはあまり手をかけすぎてはいけない。
必要最低限。と心がけてしまうと、やれることがなくなってしまったという現実に手持ち無沙汰になってしまった。
「──ティアは刀、持ってないんだな」
何かやることはないかと彷徨っていると、休憩中だったらしい善逸が声をかけてきた。
相変わらずぼろぼろだ。けれども、彼の凄いところは相手のことを考えて動けるところ。
彼は辛いことから逃げたいと必死だが、桑島が本気で自分にぶつかってきてくれる事もきちんと受け入れていた。だから逃げたいのだ。結果を出して、喜ばせてあげることができないから。
まだ修行を始めて間もないのに、自分への自己評価は最悪であり、厳しかった。
そんな善逸の手には、二人分の水筒。修行場に戻るときに渡すのだろう。
「私は戦えないので、刀とか武器は持っていないですよ」
「え? ティアは鬼殺隊の人じゃないの?」
善逸にはその辺りのことはまだ説明していなかった。
逆に気になり出したということは、余裕が出てきたということだろう。
肩を並べて歩き出しながら、ティアは自分の立場を説明する。
「私の目的は、鬼殺隊の方と行動していた方が効率が良くて。それで、後方支援のような形で協力させて頂いてます」
「でも、鬼は俺たちを食べようとするし、危険だろ? 怖くないの?」
「そりゃあ怖いですよ! でも、私じゃないと事態の収拾がつかないからやめるわけにはいかなくて」
どういうこと? と首をかしげる善逸に、ティアはどう説明したらわかってもらいやすいか頭をひねる。ちょうどいい具合に自分の領分の仕事が舞い込んでくれればお手軽なのだが。
「私、自分で覚えてないくらい幼い頃に、なんというか……災いの元になるような品をお世話になった方々に渡したらしくて」
不幸の手紙の凶悪版とでもいえばいいだろうか──それの、回収をしなければならないのだ。
この話をすると大抵距離を置かれるのだが、善逸は想像が追いついていないのか興味津々だ。
詳しい話をしたことがあるのは、音柱や炎柱のように共に仕事をした人たちだけ。鱗滝と桑島は原因の場にいたし、二人から産屋敷には話が行っている。
隠がティアに対して距離を置いているのは、現場を見ていた者から聞いているかもしれない。後藤を含め、普通に接してくる者もいるが、受け取り方次第だろう。
ティアはかつて、鬼──と間違われた事実がある。同様に警戒対象にされてもおかしくないから。
「二人とも揃っているな」
いつの間にか桑島が背後におり、鎹烏が鳴いた。
驚いて振り返ったティアだったが、視界に捉えていた善逸が少し前に視線を向けていたので、彼はわかっていたようだ。
「気分転換に三峯を詣でよう。臨機応変な対応をするためにも、色々経験しなければな」
「三峯って狼が出るんだろ。俺とじいちゃんが倒れたらティアが食べられちゃうよ?!」
突然の小旅行を宣言された。
善逸が思い留まらせようと桑島に食い下がるが、老人はまったく気にしていない。
三峯の山には狼を信仰する由緒あるお宮があった。そこへ詣でるためには頂を目指さねばならない。
気分転換などと聞こえのいいことを言うが、実際は修行にもってこいの場所でもあった。
「ティアは戦う力はないが、この国に来てからは私が育てたんだ。山を登る程度でへばったりはせん! ──まあ、そうなったら背負ってやるから無茶はするなよ」
最後の方はきちんと目を見て申し出てくれた。
とはいえ、背格好の問題もあるから気持ちだけ受け取っておこう。
日頃走り回っているから一般的な女子に比べれば体力はあるが、山登りとなると若干不安だ。
「ティア、ちょっといいかな」
出立は明日ということで、本日は準備と体を休めることを命じられる。
携帯食を準備しなければと走り出したティアの後を、善逸が慌てて追ってきた。
彼の背はまだティアより低いから、真っ直ぐに見上げられる。
まさか、一緒にこれから逃げよう、なんて言われたらどうしよう。お尻でも叩いて叱るべきなのか。一緒に頑張ろう、と激励すべきなのか。
「あんまり自分のこと責めるのやめなよ。ティアが嘘ついてないのわかるし、酷いことできないのだって俺知ってるよ」
淀むことなく言い切られて、驚きのあまり返答に窮した。
善逸は時々、的確で、鋭い指摘をすることがある。それは、ティア自身が自覚していることから無自覚なことまで。
反論や文句を言う時も現実的で間違いのないことを喚くから、彼の師匠は困ってしまうのだ。桑島は弟子のこれから先に希望を持っているが、善逸は今ある現実を直視し過ぎてしまうあまり、自分の将来を悲観する。
「まあ……気にしない事なんて無理だろうけどさ。ちゃんとなんとかしようと頑張ってるんだ。俺も少しでも役に立てるように努力するよ。結果は実らなくても、努力することだけはできるもの」
だからさ、と善逸が笑った。「三峯詣で、頑張ろうな!」
思わず、うん、と素直に頷いたティアはハッと赤面したが、善逸は準備のために走って行ってしまった。
こう言う時の男の子は──やっぱり強いなあ、と思うのだ──。