第1章 オニの妹。(全18話)
夢小説設定
この章の夢小説設定男女主人公にて展開しますが、
別に男の子でも女の子でも好きにお読みください。
両者ともに来日した異国人です。
炭治郎たちと肩を並べて戦えるスタイルではない、
予定(それはほかのサイト様に任せたいな)
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第1話 訪ね人二人。
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「──ごめんくださーい!」
留守とはわかっているのだが、ティアは無人の屋内に声をかけた。
すでに陽は落ちているのに。
引退して育手となった今でも、手の届く範囲で鬼を狩っている老人が健在である証。
それでも、あんまり無茶をされると不安になってしまうもので。
「事前に知らせておいたのに書き置きもなし。なんかあったかな」
周辺を一回りして帰ってきた同行人を迎えながら、ティアはひとつ唸り声をあげた。
少し離れたところに遠征しているのかもしれない。もし緊急事態ならば、むしろ自分たちに一言残すはずだ。
「食事の支度をします。ラシードは鱗滝さんの居場所わかるんでしょう? お手伝いに行って下さい」
「熊の匂いが近いから、それ狩って来たらな」
相変わらず鼻がいい。
山の中に踏み出しながら手をひらひら振ってくる相手を見送ったティアは、勝手に老人の家に上がり込み、支度に取り掛かった。
いつ帰ってくるか読めないので、日持ちするものを用意しなければ。
ふと、獣臭が外から漂って来たので扉をあけると、熊が事切れていた。
既にラシードの姿はなく、虫の鳴く声しか聞こえない。
「義勇くんからの手紙、きっと嬉しかったろうなぁ」
文机に放置されていた手紙で状況を把握することができたティアは、改めて袖を念入りに捲り上げて、獣に手を伸ばした。
──夜が明けても、誰も帰ってくる様子がなかった。
ティアはティアでやらねばならないことがあるので、仕方なしに少し念入りに掃除などをこなし、包帯や衣服などの補充や補修を済ませ、書き置きを残して戸締りをする。
ラシードとはもともと鉢合わせただけだし、一人で移動を開始しても問題はない。
当面の食事には困らないように下ごしらえや保存食加工はしてあるし、簡単に毛皮も処理した。最終的な使い道は彼らに任せよう。
「藤襲山の任務ってなんだろう。鬼を捕まえてくるとかなら、私には荷が重いんだけど」
話の通じる鬼とか理性的な鬼ならまだしも、涎まみれで迫られたり、会話がそもそも通じない相手は鬼でなくても怖かった。
おぞましさに震えながら、日が昇っている今のうちに移動してしまおうと先を急ぐ。
旧知の友である冨岡義勇が推薦した少年のことは気になったが、まずは鱗滝の試練を乗り越えなければ関わる程の価値はないだろう。
ラシードがどう動くのかは不明だが、鬼にそれほど──下手すると全く──嫌悪感を抱いていない彼ならば、むしろ今の少年にとっては心強いはずだ。
「なんだよティア、お前まだこんなところウロついてたのか」
「後藤さんじゃないですか」
鱗滝の元から二つ目の村をつけようとした時、地蔵の陰に身を隠していたらしい青年がひょこっと顔を出した。とはいっても、隠の被り物で素顔は見えにくいのだが。
考え事をしていたから、声をかけられなかったら彼の存在には気づかなかったろう。
「お前、最終選別の準備手伝いに呼ばれてるはずだろう。急がなくていいいのか」
やっぱり手伝いなんだ──青ざめるティアを見て、「何を想像してるかだいたいわかったわ」と、後藤は遠い目をしたまま腕を組んで。
「藤の花鑑賞で寄ってくる連中が後を絶たないそうでな。お前は監視の補充要員だよ」
鬼の捕獲と補充は別働隊でやると明かされ、ティアはその場にしゃがみ込んだ。良かった。監視くらいならば安心してこなせるお仕事だ。
ここ最近あちこち移動してばかりで落ち着く暇もなかった。もしかすると少し休ませてやろう、と柱連中が思ったのかもしれない。その辺りのことは今度、杏寿郎か天元あたりに聞いてみよう。
気持ちの軽くなったティアは、呆れた眼差しのまま送り出してくれる先輩に手を振り、足取りも軽やかに先を急ぐ。
ティアは鬼殺隊の正式な隊員ではないのだが、色々成り行きで、彼らの隊でいうところの隠──非戦闘部隊で事後処理や支援要員──のような仕事を手伝っていた。
鬼殺隊とティアの目的がたまたま似たようなもので、協力関係にあるのだがいかんせん対処の仕方が違いすぎて、どちらかというと鬼滅隊の方が大掛かり。
協力してもらえることになっている自分の目的は、彼らをサポートすることの合間にこなすしかないような状況なのが少し頭の痛いところ。
どのくらい監視任務に就くことになるのかは不明だが、一般人が鬼の存在を知らずに過ごしていられるのであれば、知らずにいさせてやった方がいい。
実際ティア自身は知らずにいたかったし、怖かったから。
「あーでも、どれくらいぶりだろうな。藤襲山」
鱗滝と一緒に登って以来だったか、他にもあったろうか──記憶の引き出しを漁りながら、ティアは目的地への道を急いだ。