SEED freedom in 楔&戦火
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「──ラシードもやってみればいいじゃないの」
アグネスによってなじられているシンを横目に、あのサーベル切れ味悪そう、なんて思っていたいたらムウからの横やり。
びっくりして声が漏れたけど、ハタッと教え子達のキラキラした目と明るい悲鳴にかき消されてしまう。
「そうだった、ラシードこういうの大得意じゃん!」
「MSの操縦は目も当てられない出来だけど、白兵戦においてはラシードなら間違いないわね!」
シンの言うこともルナマリアのいうことも間違いない。いや、ルナマリアの突っ込みはちょっと本当のこと過ぎて心が抉られた。
真顔でムウを睨むも相手は明後日の方向を見て知らん振り。
「ラシード、無理しないでいいんだよ?」
「んー、いや、やるよ」
気遣わしげな様子でキラが助け舟を出してくれるが、ラシードは肩をすくめて首を振った。
「剣の使えない隊長はMSの操縦ならば超人級。逆に俺は操縦はど素人よりも使えないけど、剣の扱いはそれなりに得意だからな」
獲物貸して、とブラックナイツの少年たちに声をかける。彼らは小馬鹿にしたような顔で、去って行こうとしていた体の向きを変えた。
「無理しない方がいいのでは。見てくれよりも体にガタが来ているでしょう」
「お、詳しいのな!」
赤い髪の少年からの嫌味に対し、ラシードはどびっきりの笑顔。揚げ足取りは任せてくれ。案の定ぎくりとした顔をした相手方の中で、先ほどシンを退けた少年が前に出てきて。
「スカンジナビア王族とは我らが女王も縁がありますので。不快な思いをさせてしまったのならば申し訳ありません」
「あー、いいよいいよ。別に徹底して隠してることでもないし」
少年──シュラから促された赤髪の少年が、その獲物を鞘ごと手渡してきたのでラシードは受け取る。サーベルは手首の返しが重要だ。けれど、個人的にはもう少し湾曲している方が殺傷能力が──いかんいかん、と頭を振った。
「パークス教官ってそんなに凄いの?」
「ああ、そっかー。アグネスは秘蔵ファイル見てないもんね」
怪訝そうなアグネスに、ルナマリアが手を打って。ミネルバクルーしか知らない幻の秘蔵映像媒体──全てはハイネの策略──の話題をし始めた。ムウとキラが興味深そうに聞き耳を立て始めるから、ラシードは慌てた。
「まあ軽く運動に付き合ってやってくれよ。お互い怪我は厳禁な」
「勿論です」
対峙する二人で一団から距離を取り、互いに礼をとる。構えて──ヤイバを交えた。白刃と金鳴りの音は涼やかで、刹那の摩擦による火花が散ったようにも見えること数回。
ラシードは小さく口を開けて感心を。シュラは目を丸くして驚嘆を。どちらからともなく、互いを称えるように口元に笑み。
「若いのによく鍛えてんな。いやほんと凄いよ、負けだ負け!」
「このまま続けていたら確実に怪我どころではなかった。先ほどは舐めた口を聞いてしまい申し訳ない」
ほとんど同時に刃を収めて、握手を交わす。
どこか見下したような様子はなりをひそめてはいるものの、シュラの眼差しは自信に満ち溢れていた。
黒服連中が去っていくのを見送る中、シン達はポカンとした様子で固まったままで、ムウは仏頂面。
「なんか凄かった」「やっぱり殺されるって思った」「教官かっこいい…」
赤服一同が頬を染めているのを他所に、キラが小走りで走り寄ってきて。
「負けてあげるなんてどうかしたの? もう少し攻めると思った」
「相手を知れたから大収穫だよ。並々ならぬ努力をしているのは間違いなかったし」
伺うような様子でラシードを見つめていたキラが、困ったような顔で笑う。「気に入っちゃったんだね」
否定はしないが、どちらかと言うと──不憫に思うけれど。
「キラのこと馬鹿にした奴ら相手に、おまえさんがあんな手ぬるい対応するとは思わなかった!」
ムウが面白くなさそうな顔でキラとラシードの肩にのしかかってくる。
おいおい勘弁してくれよ。勝たなきゃ嫌だなんて思えるような若さはもうないのだ。何より、素直でいてくれた方が楽だしな。
「パークス教官、素敵でした! 私にもあとで指南してください!」
「俺も、俺も久しぶりに稽古つけて欲しい!」
アグネスとシンがせがんで来る。
自分はコンパスとは関係ないし、もうザフトでもないのだが。
後でラクスにお伺いを立ててみよう──ラシードはいろいろなことを棚上げし、黒髪に手を伸ばしていい子いい子してやった。
サーベル片手に剣道で勝負とか。その心意気やよし。
アホの子は可愛い。
「ちょっと、何なんだよこねくり回すなよー!」
しばしされるがままになっていたシンが、我に返って吠え出したのだが、「いいなあ、シン」とキラがぼやいたのが聞こえたので、ラシードは満面の笑みで対象人物に体ごと向き直った──。
1/3ページ