第3回
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「あの…初めまして…」
ガウェ「…ああ」
シェイリー「…短編小説“幻紅葉”から来ました、シェイリーです」
ガウェ「…宜しく頼む」
シェイリー「…だ、第3回ということでね!ガウェ君は何か大暴露したいこととかあるのかな?」
ガウェ「…」
シェイリー「…えっと…馴れ馴れしかったかな…ごめんなさい」
ガウェ「…いや、気を使わせてるみたいだな。悪かった。エルザ様からなるべく話すように言われている。何でも聞いてくれ」
シェイリー「…あれ、何だか思ってたより…」
ガウェ「何だ?」
シェイリー「な、何でもないわよ!」
ガウェ「…気を使わなくていい。シェイリー嬢の方が歳上だろう?」
シェイリー「う…と、歳のお話は勘弁してくれるかな?」
ガウェ「何故だ?」
シェイリー「話したくない人もいるからよ?」
ガウェ「…わかった。すまない」
シェイリー「ごめんなさいね?」
ガウェ「いや。…」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「えっと、何をしゃべろっか?」
ガウェ「…ああ。前回“いにしえほし”の男が質問を紙に書いてくれたらしい。それを使おうか」
シェイリー「オズ君ね」
ガウェ「名前まではわからない」
シェイリー「あれ、小説読んでないの?」
ガウェ「読む必要があったのか?」
シェイリー「…ま、まあ、人それぞれかな?」
ガウェ「壁に貼っているらしいが…これだな」
シェイリー「何て書いてるの?」
ガウェ「…趣味は?」
シェイリー「普通の質問ね…書く必要あったのかな?私は医術学科の教師をしてるから、医療書をよく読むけど」
ガウェ「…“幻紅葉”は医術学科の話なのか?」
シェイリー「学校の話ではあるけど、医術だけじゃないわ。他には魔術学科や武術学科、芸術学科もあるわよ。細かく分けたら20はあるかな?」
ガウェ「学校の話か…」
シェイリー「“エル・フェアリア”には学校は無かったのよね?」
ガウェ「一応ある。だが貴族は基本的に教師を家に迎えていたな。平民の場合は知らないが」
シェイリー「学園生活とか憧れたりした?」
ガウェ「…」
シェイリー「?」
ガウェ「興味を持たなかったからな。わからない」
シェイリー「そっか。あぁでも騎士の皆さんって兵舎暮らしだから、ある意味で寮生活に似てるのかも」
ガウェ「…」
シェイリー「同じ部屋の子達でバカ騒ぎなんてしょっちゅうよ。何回怒りに行ったか」
ガウェ「…」
シェイリー「ガウェ君も騒いだりしたのかな?」
ガウェ「…いや」
シェイリー「…しなさそうだよね、君は」
ガウェ「“幻紅葉”は学生が寮で騒ぐ話なのか?」
シェイリー「うーーーん…何て言えばいいんだろうね?…えっとね、魔術学科の学生が宇宙人を召喚しようとして、チキュウっていう星から女の子を呼び出しちゃうお話なんだけど…」
ガウェ「チキュウ?」
シェイリー「そうよ。ちなみに私達“幻紅葉”の世界の星はスェルディー・スェイドって呼ばれていてね、ロッカ28惑星の1つなんだけど、“エル・フェアリア”は星の名前は無いのかな?」
ガウェ「…星?」
シェイリー「ええ」
ガウェ「…星は夜空に浮かぶものだろう?」
シェイリー「…ええっと」
ガウェ「そちらの世界観の設定はわからない…」
シェイリー「…うん。そうだよね。ごめんなさいね」
ガウェ「…いや」
シェイリー「じゃあ、ガウェ君の趣味は何かな?」
ガウェ「…趣味」
シェイリー「あ、あれかな?リーン姫様のドレスを集めたりとか?」
ガウェ「あれは私とリーン様の将来の為に必要な事だ。趣味の範囲で済ませないでくれ」
シェイリー「…ご、ごめんなさいね」
ガウェ「…趣味になるかはわからないが、変わった形の武器を調べることは好きだな」
シェイリー「武器?」
ガウェ「ああ。“エル・フェアリア”の騎士達は魔具を操らなければならないからな。単調な長剣や短剣だけではつまらない」
シェイリー「魔具かぁ。確か、魔力を固めて形にするのよね」
ガウェ「そうだ」
シェイリー「私達の世界には無い力だわ」
ガウェ「そちらには何があるんだ?」
シェイリー「魔具に近い学科はやっぱり魔術学科になるかな?詠唱を唱えて、魔法を操るのよ」
ガウェ「…詠唱…」
シェイリー「ええ。でも私は詳しくないから。キールド先生がいてくれたら説明できたんだけどね」
ガウェ「…キールド?」
シェイリー「魔術学科の教諭よ」
ガウェ「…そういえば」
シェイリー「なに?」
ガウェ「…クレア様から質問を預かっているんだが」
シェイリー「えっと…お姫様よね?何かしら?」
ガウェ「『2人はどういう関係なのか』と」
シェイリー「…えっと私とキールド先生って事よね?」
ガウェ「ああ。キールドという名前を聞いて思い出した」
シェイリー「ただの教諭仲間よ?学科は違うけど」
ガウェ「クレア様は『あの2人には絶対に何かある』と」
シェイリー「…いやぁねえ!何もないわよ!」
ガウェ「…ここは大暴露の場だと聞いたが?」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「あんまり話したくないかなぁ?」
ガウェ「なら年齢を公開してもらう」
シェイリー「ちょっと、何で2択みたいになってるの」
ガウェ「秘密秘密では大暴露の意味が無い。私はリーン様を探さねばならない重要な時間を割いてここにいるんだ。とっとと話してもらおう」
シェイリー「わかったわよ!じゃあ年齢言うから!」
ガウェ「そちらはつまらないだろうからキールドという人物との仲を教えてもらおう」
シェイリー「ちょっと!」
ガウェ「年齢なんて興味があるものか。クレア様の命令だ。とっとと話せ」
シェイリー「…さいあく…」
ガウェ「早く」
シェイリー「わかったわよ!結婚してたの!で、離婚したの!これでいいかしら!?」
ガウェ「…」
シェイリー「もー…」
ガウェ「“幻紅葉”は別れの話なのか?」
シェイリー「違うわよ!ある意味違ってないけど恋愛要素皆無だからね!!2%くらいしか無いから!!」
ガウェ「…その2%がお前達か?」
シェイリー「…どうかしら?モミジちゃんは違うでしょうけど、ノイエは恋愛に興味を持っててもいい年頃だし」
ガウェ「お前達はなぜ別れたんだ?」
シェイリー「…そこ聞いちゃうんだ?」
ガウェ「クレア様に報告しなければならないからな」
シェイリー「うーん…」
ガウェ「相手の男が原因なのか?」
シェイリー「…あのね、ガウェ君。踏み込んでほしくない領域って人にはあるものよ?あなたにもあるでしょう?」
ガウェ「…」
シェイリー「もし、どうしても知られたくない過去を無理矢理バラされたりしたらどうかな?」
ガウェ「…すまない」
シェイリー「…わかってくれたならいいのよ。まあ、どっちが悪かったかって言われたら私が悪かったの。女として、妻としての事情よ。それだけで勘弁してね」
ガウェ「…ああ」
シェイリー「じゃあ次の質問に行きましょう!何か面白い質問無いの?」
ガウェ「面白い…これはどうだろうか」
シェイリー「なになに?」
ガウェ「『好きな体位』」
シェイリー「…」
ガウェ「…『好きな』」
シェイリー「聞こえてるから。2回も言わなくていいから」
ガウェ「面白い質問だ」
シェイリー「セクハラで訴えるわよ」
ガウェ「何故だ?私なら話せる」
シェイリー「え!?」
ガウェ「リーン様が愛おしく見えるならばどの体位も素晴らしいものだ。つまりどの体位も私は好きだ」
シェイリー「…ガウェ君。あなた、リーン様に手を出したことあるの?」
ガウェ「幼いリーン様にそのような非道を行えるか。だが今のリーン様は成人を迎え15歳。ようやく結ばれる時が来たのだ…あぁ、待ちわびた時がようやく…」
シェイリー「この子もしかして危ない子?…ガウェ君、リーン様って婚約者がいたんじゃなかったかな?ラムタル国の王様が」
ガウェ「リーン様が愛していらっしゃるのは私だけだ。国が勝手に決めた婚約者など私の相手ではない」
シェイリー「…あれぇ…ガウェ君ってもしかして痛い子?」
ガウェ「リーン様は毎日私に『大好きですよ』と言ってくれました。この意味が貴女に理解でるか?リーン様は私に救いを求めていらしたのだ。勝手に決めたよくわからない相手と結婚させられるなど、悲劇にもほどがある…リーン様は愛する者と結ばれる事を望んでいらっしゃるのだ」
シェイリー「えーっと…その『大好き』って、ガウェ君だけに言ってたの?他の騎士さんとかには言ってなかった?」
ガウェ「言っていらしたさ。だが私にはわかっていた。私にだけ愛を語るなど他の者達が嫉妬してしまうから、リーン様は仕方無く他の者達にもまんべんなく慈愛を口にしていたのだ。つまり社交辞令。リーン様は心の優しい姫でしたから。だが耳にすればすぐにわかるニュアンスの違い。リーン様は私にだけは薔薇色の頬をさらに染めていらしたのだ」
シェイリー「…小さな子ってすぐに熱出したり顔真っ赤にするんだけど…」
ガウェ「あぁ…リーン様…早くファントムの手から救い出して差し上げねば…」
シェイリー「…“エル・フェアリア”にいるイニスって子と今のガウェ君を揃えたら面白そうね」
ガウェ「…」
シェイリー「あら落ち着いた?」
ガウェ「お前は先ほど、女として、妻としての事情で夫と別れたと言っていたな。何があったか聞かせてもらおうか」
シェイリー「はあ?」
ガウェ「リーン様はいずれ私の妻となる。だが私が男である以上、女や妻の立場は理解しがたい場合もあるだろう。リーン様のお考えを理解できないなどあってはならないのだ。さあ、何があったのか話してもらおう」
シェイリー「え、待ってよ、私さっき話したくないって言ったわよね?」
ガウェ「お前の事情など知らん」
シェイリー「あーあー君って小説の中でもそういう性格だったわよねー!!とにかく嫌よ!!」
ガウェ「…」
シェイリー「こればっかりは話さないから!」
ガウェ「…何が何でも話してもらおう。私とリーン様の為に」
シェイリー「そういう男の身勝手な所って、女に嫌われる一番の要素よね!」
ガウェ「…」
シェイリー「自分勝手な子は好きな子に嫌われるよー?いいのかなー?」
ガウェ「ふ…何を言い出すかと思えば。リーン様は私の全てを愛していらっしゃるのだ。何も問題はない」
シェイリー「…駄目だこの子…自分勝手ってレベルじゃないわ」
ガウェ「さあ、話してもらおうか」
シェイリー「う…それって魔具よね?剣で脅すなんて最低ね」
ガウェ「死にたくなければとっとと話してもらおう。私は遊んでいる暇は無いのだ」
シェイリー「とんだ貧乏クジだわ…」
ガウェ「さあ」
シェイリー「わかったわよ!話すから魔具を消して!」
ガウェ「…」
シェイリー「…でも聞いたって、何の解決にもならないと思うわよ?」
ガウェ「…」
シェイリー「もう…」
ガウェ「…」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「…私の身体の問題なの」
ガウェ「…身体?」
シェイリー「赤ちゃん!…私、子供が出来ない身体なのよ」
ガウェ「--…」
シェイリー「キールドは気にしないって言ってくれたけど…私は欲しかった」
ガウェ「…出来ないなら仕方無いだろう」
シェイリー「それ。もし産めない女の人を前にしても絶対に言っちゃ駄目よ」
ガウェ「…?」
シェイリー「頭で理解してても心は理解できないものよ。好きな人の子供を産みたい気持ちは女の特権だもの、わからないでしょうけど」
ガウェ「…だが」
シェイリー「仕方無いで済ませられない女もいるのよ。現に私がそうだったわ。キールドは支えてくれたわよ。でもそれすら申し訳なかった。優しさに耐えられなくなったのよ」
ガウェ「…」
シェイリー「ねえ、どうでもいい女だからってこれ以上まだ何か聞くつもり?私がここで泣いたって君には何も伝わらないんだろうけどね、少しだけだろうが関わりを持った相手にひとかけら程度の思い遣りの気持ちも持てないようじゃ、君の将来決まったようなものよ」
ガウェ「…」
シェイリー「私が君の嫌がる事をしたなら思い遣りなんて持てなくて当然だけど、そうじゃないわよね?」
ガウェ「…悪かった」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「…もう終わりにしましょうか。第4回の出演者を選んで帰りましょう」
ガウェ「…ああ」
シェイリー「カードは…えっと、これね」
ガウェ「…」
シェイリー「…選んだ?」
ガウェ「…ああ」
シェイリー「じゃあ引くわよ」
ガウェ「…」
シェイリー「…」
ガウェ「…“エル・フェアリア”からはフレイムローズだ」
シェイリー「魔眼の男の子ね。こっちは“雪の消える朝に”から粉雪ちゃんよ。悲恋のお話の子ね」
ガウェ「…」
シェイリー「粉雪ちゃんは大人しい感じの子だったから、次はほのぼのとしそうね」
ガウェ「…」
シェイリー「…第3回は変な雰囲気になりましたが、ここで終わらせてもらいます。つまらない話を聞かせてしまい申し訳ございませんでした。短編小説から“幻紅葉”のシェイリーと、長編小説から“エル・フェアリア”のガウェがお送りいたしました。次回も宜しくお願いいたします」
ガウェ「…」
シェイリー「それじゃあ、ガウェ君も。さようなら」
ガウェ「…あ、ああ」
ガウェ「シェイリー嬢」
シェイリー「…何?」
ガウェ「…」
シェイリー「多忙なんでしょ?早く帰りなさい」
ガウェ「…俺は」
シェイリー「…」
ガウェ「…俺は、いずれ“エル・フェアリア”の最上位貴族ヴェルドゥーラとして黄都を治める立場にある」
シェイリー「…小説を読んだから知ってるわよ」
ガウェ「…だから」
シェイリー「…」
ガウェ「…他者を…自分の領土に住む者達を思いやる気持ちがなければ良き領主にはなれないと、以前言われたことがあるんだ」
シェイリー「…そう」
ガウェ「俺は…良き領主になりたいと思っている」
シェイリー「…」
ガウェ「…だから、今回は…本当にすまなかった。人の上に立たねばならない者として愚かだったと反省している。…もし次が許されるなら、今回の反省を生かしたい…んだが」
シェイリー「…」
ガウェ「…」
シェイリー「…ふふ。思ってたより真面目な人なのね」
ガウェ「…」
シェイリー「今の気持ちを忘れないでいてね」
ガウェ「ああ」
シェイリー「…じゃあ、早く帰りなさい。リーン様を探さないといけないんでしょ?」
ガウェ「…ああ」
シェイリー「じゃあね。私も帰るわ」
ガウェ「…」
シェイリー「…また会いましょうね」
ガウェ「…ありがとう」