甘露



※※※ご注意ください※※※


※台本スタイルです

※BL要素を含みます

以前参加していたボイスサークルに練習用台本として出していたものです


優真『俺の兄貴は…』

静真「ゆーうーくうぅぅん!!」

優真『…ブラコンだ。そしてこれは毎朝の日常会話の、盛大なる一発目』

静真「優君おはよう!今日も素敵な朝だね!え?雨が降ってるって?何言ってるんだい!どんなジットジトな雨だって優君のそばにいられるだけでホラこの通り!キラキラ輝くダイヤモンドダストのようだろう!!」

優真『ちなみに俺はまだ布団の中。朝の共通会話の一言「おはよう」すら話してはいない』

静真「お!きらびやかな朝日!雲間を切って優君を輝かせるなんて何て憎たらしい演出なんだ!!あ、そうか!!太陽もとうとう自分が脇役であることに気付いたんだな!それもそうだ!この世界で華麗に輝く麗しの主役は優君ただ一人なのだから!!」

優真『…演劇部の先生が兄貴を部員に欲しがる理由がよくわかった。…わかった』

優真「わかったからどいてくれ、兄貴…」

静真「おはよう優君!さぁさぁ、お兄ちゃんはとっくの昔に制服に着替えてしまっているよ!早く優君もお着替えしましようね!!」

優真「おはよ…つか何で朝から人の体に馬乗りになってんだよ。重いからどいて」

静真「なぜだい?」

優真「…どけって」

静真「ごめんなさい」

優真「ったく…嫌われたくないなら最初から乗るなよ」

静真「だって、優君ったら何しても起きないんだもん。チューもおさわりもダメだったんだもん」

優真「…今なんつった?」

静真「そんなことより、早く学校に行く支度をしなさい!まったく!さすがに毎日サボリばっかりじゃあいくら優君大好きで毎晩優君をオカズにして自分を慰めてるお兄ちゃんでも許さないよ!今日という今日は一緒に登校してもらうからね!」

優真「っておい!?下ネタ爆弾発言かましてんじゃねぇよっ!!」

優真『自慢じゃないが俺は天下のサボリ魔だ。
現在高校1年。入学式は二ヶ月前に無事終了したので俺は三日に一日のペースで学校をサボっていた。もちろん理由あってのサボリだが、その理由を兄貴は知らない。
そして兄貴は2年で、文武両道・成績優秀・得意科目は家庭科デス☆を地で行き、見た目はカッコイイから女子にも人気ものだ。
ただ難点は、極度のブラコンである事だろう』

静真「いいかい優君!今日もお兄ちゃんは大切で可愛くて狂おしくてたまらない優君の為にお弁当を作ったよ。でもね、ちゃんと学校行かないのなら、そのお弁当、お兄ちゃんは血の涙を流しながら自分で食べちゃうからね!!」

優真「え、何言ってんの何やろうとしてくれてんの!?俺の唯一の楽しみだっつの!!」

静真「だ、だよね、そうだよね!!お兄ちゃんがホントにするわけないじゃーん、ば、ばっかだなぁ!!HAHAHAHAHA!!」

優真「うわ、焦った。あせったー!!つかまぁ考えれば兄貴が俺にそんな仕打ちを実行出来るわけないよな!」

静真「あ、あったり前じゃないかー!!」

優真「…なーんか様子がおかしいな?まぁ兄貴がおかしいのはいつもの事だけど。…まさかマジで俺から食料を奪おうと考えたのかよこのクソ兄貴が!」

静真「うひょ!?」

優真「はあぁ、何でこんな変な兄貴なんだろ…どうせならもっとカッコイイ兄貴がよかったなぁ」

静真「い、いっとくけどね、お兄ちゃんけっこうモテるんだよ!!クラスの女の子とかからも人気あるんだから!!いーのかなー?今みたいな態度ばっかりしてたら、お兄ちゃんいつの間にか他の女の子の物になっちゃうかもなー?あーあ、いーのかなー!?」

優真「やーりぃ、俺の周り超平和になんじゃん。あ、ご飯はちゃんと作れよな?これは家族の義務な」

静真「ううぅぅっ!!…優君最近冷たいよね?高校入学するまではずっと『お兄ちゃんお兄ちゃん!』って僕の後ろをついて来てたのに」

優真「変な脳内変換するな。とにかく今日は休む。頭痛い。誰かさんが煩いせいで」

静真「まったく…何で学校行きたからないかなぁ」

優真「あんたのせいだよ」

静真「ん?何て言ったの?」

優真「もー煩い!マジうざい!!兄貴こそガッコ遅れるぞ!!早く行っちまえ!!」

静真「優君!!お兄ちゃんを心配してくれるなんてやっぱりイイ子なんだね!!」

優真「うぜえぇっ!!」

静真「大丈夫!!お兄ちゃんも今日は学校を休むことにするよ!さぁ優君!どうして学校に行きたくないのかお兄ちゃんに話してごらん!いじめられてるのかい?それとも…まさか好きな子がいたけどフラれたとか!?ゆ…許せないその女…僕ですらまだ思春期すぎた優君から『大好き!』って言われたことないのに!!」

優真「はいはいはいはい、どれでもないどれでもない。いいから学校行けって。…どーせ俺は何やっても兄貴みたいに上手く出来ねーんだから」

静真「…優君?」

優真「ぁ…」

静真「今の、どういう事?」

優真「な、なんでもねぇよ!!いいからもう出てけよ!!」

静真「誰かが僕たちを比べたんだね?」

優真「…」

静真「誰に言われたの?お兄ちゃんに話して。ね?」

優真「…俺の担任。あと、クラス主任とか…多分、学校の先生はみんなそう思ってる」

静真「そっか。つらかったね。優君は繊細な子だから。毎日苦痛だったよね…。……大丈夫!嫌な事なんてお兄ちゃんがぶっ飛ばしてあげるから!!」

優真「兄貴…俺、やっぱり今日学校行く…」

静真「いいんだよ。無理しないで。今日は休みなよ。頑張るのは明日から。明日からは一緒に登校しようね」

優真「…うん。…ごめんな、…兄ちゃん」

静真「ふふ。じゃあ、お兄ちゃんは学校行くことにするから、お弁当、食べてね」

優真「ありがと…行ってらっしゃい」

静真「行ってきまーす!」

(扉を開けて静真出ていく)



静真『何だかんだ言いながら、俺、やっぱ兄ちゃんが大好きなんだよな…そういえばずっと前にも同じことあったっけ。…確か、父さんと母さんがまだ生きてた時…二人とも俺と兄ちゃんを比べたんだよな。それで俺、バカみたいに泣いちまって。あの時も兄ちゃんが慰めてくれたっけ。その後すぐに父さんと母さん、事故で死んじゃって…ダメだなぁ俺。こんな弱かったら、いつか兄ちゃんにも愛想つかされちまうや。がんばろ。兄ちゃんは明日からって行ってくれたけど…今から頑張るんだ!!』

(扉を開ける音)

(間)

(足音)



優真「学校…来れた。……よし!大丈夫!怖くない!!クラスには友達もいるんだ!!兄ちゃんもいるしな!!…あれ、何か」

少年「…優真?優真!!」

優真「久しぶり!!…てか何か騒がしくない?」

少年「大変なんだよ!!先生達が突然倒れ出してっ…訳わかんねぇことになってんだ!!」

優真「…は?」

少年「と、とにかく、先生がみんなっ…警察?救急車か!!早く呼ばないと!!」

(走り去る少年)

優真「お、おい!!…何があったんだよ?」

静真「あれ?優君!どうしたの?学校は明日からで大丈夫って行ったのに」

優真「兄ちゃん!!何これ?何があったんだよ!さっき友達が、先生が倒れたって」

静真「あぁ、そのことなら安心して、ちゃんと誰にも分からないようにしておいたから」

優真「何わけわかんねぇ事言ってんだよ!どうなってんのか説明しろよ!!」

静真「説明って…明日から優君が快適に学校に来れるようにしただけだよ?」

優真「…は?」

静真「先生みんな、ね」

優真「何言って…」

静真「んー?何って、父さんや母さんと同じようにね。あ!優君お弁当忘れてるじゃないか!!優君らしくないなぁ!やっぱり今日はちゃんと休むべきだったんだよ!!仕方ないから、お兄ちゃんのお弁当分けてあげる!!」

優真「…兄ちゃん」

静真「僕は優君がだーい好きだからね!…にしてもみんな騒ぎすぎだね。優君の頭痛が増したらどう責任取るつもりなんだろうねぇ」

優真「……兄…ちゃん?」

静真「大丈夫!安心してね!!…ずっと、守ってあげるからね」

(間)

静真「…くん、ゆーくん」

優真「…ん、兄ちゃん?……あぁ、俺、寝てた?」

静真「うん」

優真「何か、変な夢見た」

静真「どんな?」

優真「…出来の悪い俺の為に、兄ちゃんが頑張ってくれる夢。……なかなか心地良かったよ」

静真「ふーん。…ゆーくんは、ぼくに、ゆーくんのためにがんばってほしい?」

優真「兄ちゃんが?無理だろ、そんなの。出来の悪い兄ちゃんが頑張ったって、結局は俺が助けてやるはめになるのが目に見えてる」

静真「うふふふふふ…そーだよねぇ」

優真「兄ちゃんはもう何もしなくていいんだ。俺の傍にいてくれればいい。怖いものも、酷いものも全部やっつけてやる。兄ちゃんだけの為にな」

静真「うん!ずっと、まもってね」


 
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