第85話
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アリアの護衛の名目でガウェの個人邸宅に訪れていたレイトルは、訃報を届けに来てくれた伝達鳥の茜に茹でた鶏肉を与えながら、その嘴を少しだけ撫でた。
茜は肉を咥えたまま食べることはせず、大人しく撫でられるままにさせてくれる。
国王陛下の訃報が書かれた手紙の内容に、表情は強張ったまま戻せなかった。
「何か淹れてやろうか?」
話しかけてくれるのは、共に談話室にいたビデンスだ。
返事を待たず飲み物の用意をしてくれる後ろ姿に、慌てて「いえ」と言葉を返した。
「お気になさらないでください」
「構わん。落ち着けるブレンドを淹れてやろう。今のお前さんには必要だ」
ビデンスにも訃報は伝えたが、人生を深く味わい生きてきた彼はレイトルほど国王の死に動揺は見せていない。
「アリアもまだ起きてこないだろう。起きてくる前に少しでも落ち着いておけ」
気を使われるほど強張っていたのだろうか。
「……ありがとうございます」
素直に頷いて、促されるままソファーに座る。
ネミダラや他の使用人達も対応の為か静かながら迅速に行動しており、邸宅内は不穏な空気に包まれていた。恐らくそれは、エル・フェアリア国内中で起きていることだろう。空を舞う伝達鳥の数が、少しずつ、異常を知らせるように増え続けていたから。
「じきにニコルも戻るだろうが…お前さんにだけ話しておきたいことがある」
「私にだけ、ですか?」
「ああ。というより、ニコルとアリアを抜いて話しておきたいことだな。護衛部隊内にも伝えておいた方がいいだろう」
レイトルの向かいに座るビデンスは無骨な手からは想像もつかないほど手慣れた様子でお茶の準備を進めて、甘い香りを辺りに漂わせていく。
「…メディウム家、ですか?」
ニコルとアリアを抜いて。それが示すのは治癒魔術師の一族であるメディウム家のことしか思い当たらなかったが、正解の様子だった。
お茶の注がれたカップを渡してくれながら、ビデンスは自分にも同じお茶を用意しながら。
「…お前さん、昨日はアリアに手を出さなかったみたいだな」
「なっ!?」
「真面目な話だ」
問いかけに返せる言葉などあるはずがなかった。なのにビデンスは落ち着いた動作でお茶を飲む始末だ。
冷やかすそぶりはないが、聞いていい話題でもないはずなのに。
「わしがまだ騎士だった頃、メディウム家の人間もまだ城にいた」
驚き固まったままのレイトルを放置して、思い出すようにビデンスは過去を教えてくれる。
「好いた相手が出来れば、何よりも夢中になって四六時中共にいようとしてな。…メディウム家の特性なんだろう」
「…いったい何の話を?」
「…子を欲しがるんだよ。メディウム家の者は。心に決めた相手が出来るとな。…特にメディウムの男は子を宿そうと切実に相手を求めた。多少強引でも」
冗談などではなく、重要な話であると。
それでも突然始まる内容に混乱してただ黙っていると、ビデンスはレイトルの人間性を調べるかのような鋭い目を向けてきた。
「…よくアリアに手を出さずにいられたな」
城にいた頃のメディウム家を知るからこその言葉。
確かに昨夜、アリアは驚くほど積極的に見えた。片時も離れたくないと、切実に甘えてきたのだ。
昔の男の事があったから不安を訴えて泣き、レイトルの愛を心から求めてきた。
昨夜ほど自分の理性を試された時間はないだろう。それほど、甘えてくれるアリアは魅力的で愛らしかった。
「ここはガウェの邸宅ですし…何よりアリアを大切にしたいんです」
アリアを大切に思うからこそ、自分を強く律した。アリアを取り巻く環境は今、あまりにも酷なものだから。
「…本当のところ、早くアリアを自分のものにしたいという思いが強くあります。ですがーー…」
言いかけた言葉を、頭の中で反芻する。
「…あの……」
それは、目の前にいるビデンスに訊ねれば答えがわかるかもしれないものだった。
昨日、王城内でモーティシアから聞かされたメディウム家の不思議な体質を。
「とても古い文献に書かれていたんですが…メディウム家の女性達が子供を宿しにくいというのは本当なのですか?慕う相手でなければ子供は宿せず、慕う相手であれ不安があれば子供は儲けられなかったと記されてあったのですが」
トリッシュの婚約者であるジャスミンが見つけ出してくれた古い文献に記されていた、本当ならば見過ごせない事実。
それが本当なら、アリアを取り巻く環境を変えられるはずだから。
しかしビデンスは少し考えた後、すまない、と声を少しくぐもらせた。
「わしがいた頃はメディウム家の女達も数がいたからな。各々が恋をして、愛を育めていたんだ。アリアのように、無理やり相手を国が決めることなどなかった」
だから、子供を宿しにくいかどうかはわからない、と。
古い文献の信憑性を確信することができず、無言で俯いてしまった。
気持ちを変えたくて淹れてもらった甘い香りのお茶に手を伸ばす。
落ち着く為に用意されたお茶は、甘い香りで落ち着くというよりは、その強すぎる甘さで気分を誤魔化すといった方が合うほどだ。
味は格別だが、昨日アリアが淹れてくれたお茶の方が美味しかったと思ってしまう。
「その文献に何がどこまで記されているかは知らんが、もしそれが本当なら重要だ。とっとと報告した方がいいんじゃないか?」
「もちろん考えました。…ですが不安が不妊に繋がるなら、メディウム家の体質をアリアに知られるのは良くない気がして…」
ただでさえレイトルや他の者たちも、赤子をお腹に宿すという女性特有の神秘性を理解できていないのだ。確証のないものをアリアに話して不安がらせることは避けたかった。
「…確かにな。懐妊は女の領分だ」
ビデンスも力にはなれないと両手を上げてみせた。
「だが、アリアがお前さんを求めることは目に見えている。先ほども言ったが、メディウム家の者たちは愛しい者ができると何よりも夢中になってしまうんだ。そうなれば、いくら城でアリアの夫候補を誤魔化そうとしてもすぐにバレてしまうぞ」
ミシェルをアリアに近づかせない為に、国の目を撹乱する為に。
ガウェや他の虹の領主達がレイトルとアリアの関係を支持してくれるまでの撹乱だったとしても、アリアの目がレイトルしか見ていないと早々にわかれば、簡単に引き離されてしまうだろう。
全てはアリア次第となるのか。もしビデンスの言う通りアリアがレイトルを求めるというなら、本当にすぐバレてしまいかねない。
国が無情であることはレイトルもよく理解している。魔力をほぼ持たないレイトルがアリアの相手となれば、産まれてくる子供の魔力量は極端に減るだろう。それは多くの民を抱えるエル・フェアリアにとって非常に不利益だ。
充分理解している事実。理解しているが、アリアを諦めるなど絶対に出来ない。
カップを持ったまま俯くレイトルに、ビデンスは落ち着いた声を聞かせてくれた。
「…わしはもうひとつ気がかりなことがあってな。そちらが解決すれば、アリアの恋の盲目も多少は誤魔化せるかもしれんぞ」
思わず見上げてしまうほどの、頼もしい声を。
「……何かあるのですか?」
「何かもくそもない。そもそもあって当然のものをお前さん達はわかっていない」
盛大なため息をわざとらしく吐きながら、ビデンスは不敵に笑う。
「保護対象の治癒魔術師とはいえ、城に閉じ込め続けることはできん。今回の休暇のように城下に降りるくらい、わしが城にいた頃のメディウム達もしょっちゅうだった。まずアリアを自由に外に出せる環境を整えろ。これはあって当然の権利だからな」
今回の休暇は特別などではない、当たり前なのだと。
それは確かにそうかも知れないがレイトルは簡単に喜ぶことは出来なかった。
「ですが…国の保護対象にある人物をそう簡単に城から出してもいいのでしょうか?」
「魔眼の持ち主は自由に出入りしとるんだろう?それと変わらん。王族でもないのに」
「…たしかにフレイムローズは好きに出入りしていますが、彼の場合は彼自身に身を守る術があるのですし」
フレイムローズとアリアとではわけが違う。
フレイムローズには簡単に敵を倒せる力が備わっているが、アリアは身を守る魔力を持たないのだから。
「何をそんなもん。お前さん達護衛部隊が何のために存在するというんだ」
アリアをたった一人にするわけではないと、ビデンスは呆れながら腕を組んだ。
「昔のメディウムの者達が城から出る時も最低一人の護衛は付いていた。大戦時代だぞ。今より危険な情勢下に出来ていたもんが、今は出来ないなんて馬鹿な話があるか。仮に今と昔では違うという者がいるなら、どう違うのかみっちり説明させろ。昔の方が大変だったとすぐボロが出るぞ」
「……ですが、今現在、治癒魔術師はアリアしかいないのですよ?」
「それはアリアの責任か?」
レイトルだってアリアを自由にさせてやりたい。だが否定的な感情も拭えないから問うた言葉は、質問で返されてしまった。
「治癒魔術師がこの国にアリアしかいないのは、アリアのせいなのか?」
「……いえ、そんなことは…」
「なら、誰の責任だ?」
さらに問い詰められて、グッと言葉に詰まる。
レイトルの頭では、答えはすぐには浮かばなくて。
「…いいか、メディウム家は生まれつき治癒魔術を扱える人間だが、メディウム家しか治癒魔術師になれないというわけではないんだ。修行を10年も積めば、治癒魔術の基礎は出来る。他国の多くの治癒魔術師がそうだからな。メディウム家が消えてから30年以上経つのに治癒魔術師を新たに用意出来なかったのは、国の怠慢だ。アリアの責任じゃない」
レイトルの為にわかりやすく説明をくれるビデンスは、自分が去ってからの城の怠慢を許せない様子を表情に浮かべた。
「お前さん達護衛部隊が今からするべきことは、上質な魔力を持つ者を選び出し、アリアを師として新たな治癒魔術師を生み出すことだ。ざっと十人ほど見繕ってみろ。十年後には三、四人は治癒魔術師になっているだろう。十五年もあれば十人とも治癒魔術師だ」
本来ならメディウム家がいなくなった後すぐにでもしておかなければならなかった政策だ。
「…国の怠惰を私たちが率先して上書きすることで、アリアに対する過剰な保護の念も消すことができる?」
「それはまた少し違うな。言っただろう、そもそもアリアは自由に王城の外に出ていい人間なんだ。だが…まあ、そうだな。お前さん達が新たな治癒魔術師確保に動けば、国も少しは引け目を感じて強くアリアを城に縛り付けることは無くなるかも知れんな」
そして治癒魔術師が増えれば、アリアに強引に夫を充てがう必要も無くなる。
長い時間かかるだろうが、治癒魔術師が確実に増えるとわかれば、レイトルとアリアは引き裂かれずに済むのだ。
「デルグ王が亡くなった今の混乱を上手く使うといい。新たな治癒魔術師育成の為の人材確保も、アリアの城下での休暇もな。この邸宅を拠点に借りる事にすれば誰も文句は言わんだろう」
厳しい顔に少しだけ悪戯心を浮かべながらビデンスは笑いかけてくる。
ガウェの邸宅だというのに、まるで自分の邸宅であるかのような扱いだ。
ガウェならアリアの為に快く貸してくれるだろうが。
「あ…ですが、ガウェはじきに黄都に戻る身なんです。そうなればこの邸宅も…」
「その頃にはわしの家も直っておるわ」
ふと浮かんだ不安は、ごっそりと根こそぎ摘み取られた。確かにビデンスから感じられる勇ましさは、クルーガー団長によく似ていたから。
それに恐らく実力も、ビデンスはレイトルより数段上だろう。身体を見る限り、老いているとはいえ現役そのものだ。若さだけでは到底勝てないほどの実力者が目の前にいる。
「……どうしてそこまでアリアに良くしてくれるんですか?」
何の悪気もなく浮かんだ質問に、ビデンスは再び過去を思い出すような穏やかな顔つきになった。
「メディウム家の者たちがいた時代を知っているからだ」
その穏やかな表情からは、かつて存在したメディウム家の者達との懐かしい過去がかいま見える様だった。
「あとは単純に、今の国の怠惰をアリアに全て被せている事実が気に入らん」
そして厳しい表情に戻って。
「…そうですね。アリアに何もかもの責任を持たせようとするのはお門違いだ。…アリアは治癒魔術を持って産まれた以外は…普通の女の子なんですよね」
「その通りだ」
持って産まれた力を、アリアは充分国の為に生かしてくれている。だというのにこれ以上を求めるなど烏滸がましいにもほどがある。
「…ありがとうございます。少し目が覚めた気分です」
「老いた者の言葉も、たまには役に立つだろう」
「たまにだなんて、とんでもないですよ」
ふっと肩の力が抜けて、少しぬるんだお茶を飲んで。
鼻に残る強い甘さは、今度はじわりと優しく身体を癒してくれた。
「もしリナトが何かしらゴネてくるようなら、わしの名前を出すといい。今のあいつはわしに借りがある状況だからな」
ふいに魔術師団長の名前を出されて、借りですか?と首を傾げてしまった。
「アリアの護衛をしていたこの邸宅の魔術師を一晩中城に繋いだだろう。護衛の必要性を理解していながら、師団長としてありえん失態だ」
口調のわりに、口元はニヤついている。
「…そういうことですか。なら有り難くビデンス殿の名前を出させていただきます。リナト魔術師団長と面識があるんですね?」
「ああ。昔からあいつはわしを見ると尻尾巻いて逃げおったわ」
「そうなんですか」
想像もつかないが、黄都領主の邸宅にも臆さず我が家のように振る舞い、さらにクルーガー団長より口の立ちそうな様子を見ていると嘘というわけでもなさそうだ。
外は相変わらず伝達鳥達が騒がしく飛び交っているが、レイトルの気分も少し落ち着いたからか、この場所だけは穏やかな空気に満ちていた。
「…あ、ニコルでしょうか」
そこへ邸宅の正面玄関辺りから別の騒がしさが聞こえてきて、馴染んだ気配からニコルの帰還に気付く。
「そういえば、メディウム家の男性達は強引に相手を求めると話していましたよね。もしかしてそれがあったから、ニコルを遊女の元に行かせたのですか?」
「ふ…遊女、か。あまり良い感情は持てないか?」
「あ、いえ…そういうわけでは……」
無意識に口にしてしまったニコルの相手への口調に、慌てて目を逸らしてしまった。
「…まあ、わしらは遊女達の功績を知っておるが、お前さん達は知らん世代だから仕方ないのだろうな」
そんなレイトルを責めずにいてくれながら、ビデンスは再び過去に思いを馳せて。
「…功績ですか?」
「ああ。それが何かは自分で調べてみればいい。大戦の記録史に載せられている。彼女達がいなければ、死者の数は膨れ上がっていただろうからな」
レイトルが知らない大戦の最中に、何があったのか。新たな治癒魔術師を育成する為の文献を探しがてら同時に探せるだろう宿題に、自分が知らない事実の広さを思い知らされた。
「ニコルのことは、お前さんの言った通りだ。メディウム家の男達は結婚する前から恋人を早く孕ませようと本当に厄介だったからな。今はエルザ姫の件でおかしな騒動に発展しているだろう。下手に我慢させて城内で爆発させたくはない」
暴力事件にまで発展している騎士団内の不穏を言われて、自分の代わりに殴られてしまったセクトルを思い申し訳なく感じた。
そこへ、ようやく渦中のニコルが顔を見せにくる。
急いだ様子で談話室に入ってきて、レイトルとビデンスに動揺した目を向けて。
「……あ」
「おはよう、ニコル。アリアは大丈夫だよ」
「……悪い…助かった」
扉の近くで立ち止まるニコルを手招くのはビデンスだった。
「とりあえず座れ。アリアはまだ起きとらん」
城にいた頃に比べれば格段に顔色が良くなっているニコルに安堵しつつ、隣に座ってくるまでを見守って。
「…アリアから話は聞いてるから、後で君の口から教えてくれると嬉しいかな」
何を、とは全て語らないまま。
「…ああ。ちゃんと話す。…全員に」
ニコルも状況を理解している様子で、自分が選んだ女性を仲間全員に伝えると約束してくれて。
「…茜は何かあったのか?」
「え?茜?」
ニコルはふと目線を茜の方に向けるから、どうしたのかと見てみれば、茜はレイトルが先ほど渡した鶏肉を今も嘴で咥えたままじっと座っていた。
「…本当だ。体調でも悪いのかな」
普段は食欲旺盛な暴君だというのに、どうしたというのか。
「……城はどうなってるんだ?」
「さあ。訃報が届いただけで他は何もわからないんだ」
デルグ王の死。
タイミングは最悪のはずだ。
王位を継ぐコウェルズが不在だというのに。
空を飛ぶ伝達鳥の数は減るどころか増えるばかりで、まだ早朝だというのに外の騒がしさは異常だった。
そこへ。
「…おはよーみなさん。…兄さんお帰りなさい」
まだ眠そうな、状況を知らない呑気な声が朗らかに響く。
肩に小鳥を乗せたアリアは、外の異変に気付いている様子で窓の向こうに目を向けながら、レイトル達のそばに寄ってきた。
「アリア、実はーー」
レイトルが状況を説明する為に立ち上がるが、鶏肉を咥えたままの茜が室内だというのに大きく翼を広げる方が早かった。
空色の翼を最大限に発揮して、アリアの肩に留まる小鳥に向かって一直線に飛んでいき。
「きゃ!」
驚くアリアの肩から小鳥は慌てて飛び逃げて、座ったままのニコルの腕の中へと飛び込んだ。茜は当然のように小鳥の後を追ってくる。
「おい、茜やめろ!」
ニコルも小鳥を庇いながら茜を叱るが、どうやら小鳥に好意を抱いているらしい茜は小鳥しか目に映していなかった。
ニコルの腕の中で小さくなる小鳥に何とか振り向いてもらおうとしているのか、ニコルの膝に咥えていた鶏肉を置いて。
「…茜…まさか鶏肉をあげる為に食べなかったのか?」
膝に肉を置かれて固まるニコルをよそに、レイトルは茜の健気な好意に少し同情してしまった。
「あ、茜…この子はお肉は食べないよ…お豆さんとか菜っぱじゃないと…」
小鳥の好物を知るアリアが申し訳なさそうに伝えて、茜がヒェァ、と今まで聞いたこともないショックを受けた声を上げた。
「アリア、座れ。大事な話がある」
鳥達が落ち着いた頃合いを見計らって、ビデンスはアリアにも座るよう告げて。
ニコルが気を遣ってビデンスの隣に座り直し、アリアは照れ臭そうにレイトルのとなりに訪れた。
ニコルが小鳥を抱いたまま、レイトルは茜を押さえつけるように抱きしめて。
静かに伝えられた国を揺るがす現状に、アリアは言葉を無くしていった。
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