第12話


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 自室のベッドの上にちょこんと座って、前に置いた一冊の本を真剣に眺めて。
 兄のコウェルズがエルザの為だけに島国イリュエノッドの治癒魔術師達に請うて作らせた、世界でたった一冊だけの、エルザだけの貴重なもの。
 エルザにとって大切な宝物になったそれを手に取り、しっかりと胸に抱いて瞑想にふける。
 エルザが治癒魔術を会得しようと決意したのは、五年前にリーンが亡くなった時だ。
 リーンがどのような姿でこの世を去ったのかはわからない。だが家族でさえ、その姿は見せてはもらえなかった。
 新緑宮で巻き起こったとされる、新緑宮の結界とリーンの魔力がぶつかり合った悲劇の事故。
 虹の一色が欠けて、泣き濡れた毎日。
 治癒魔術師がいればリーンは助かったのではないかと切実に思った。だがエル・フェアリアの治癒魔術師達は数十年前に忽然と姿を消したまま帰らない。
 ならば自分が治癒魔術師になると決めたのだ。
 婚約者もおらず、自由のきく姫はエルザ以外にいない。
 二度と同じ不幸が起きないように。
 二度と家族を悲しい事故で亡くさないように。
 愛するものを救えるように。
 愛しい人を守れるように。
 ゆっくりと目を開けて、兄の言葉を思い返す。
『イリュエノッドの治癒魔術師達がエルザの訓練の為に書き記してくれたものだよ』
 兄がエルザの為に頭を下げて願ったものだ。
『独学では学べない細部に至るまで書き記してくれた。わからないところは、じきに訪れる我が国の治癒魔術師に訊ねればいい』
 我が国の治癒魔術師。ニコルの妹がその力を持つ。
 エルザがイリュエノッドに向かわなくても、この本とニコルの妹が力を貸してくれるなら、エルザはエル・フェアリアで訓練が出来る。
--ニコル…
 会うのが怖い。
 嫌われてなどいないと兄は言ってくれた。その言葉を信じたい。
 でも怖い。拒絶された悲しみがまだ胸に深く傷を残している。--でも。
 こんな所で拗ねて伏せていたら、大国エル・フェアリア王家の名が廃る。
 胸に本を抱いたまま、エルザはベッドを飛び出した。
 急いで靴を履いて、決心が揺るがないうちに、彼の元へ。
 部屋の扉を開ければ、二人の護衛と魔術師達が驚いたようにエルザを見つめてくる。
 数日前にニコルの“エルザの護衛をやめる”という発言を聞いて泣き逃げた時に護衛にいたクラークとセシルと魔術師達だ。
 どれほど心配をかけただろう。
 申し訳なくて、でも謝罪などよりよっぽど安心してもらえる方法を知っていたから、エルザはあえて謝らなかった。
 騎士達が欲しいものはそれではないことくらいわかっている。
「エルザ様?どこへ」
「ニコルの所ですわ!ついてきてくださいませ!!」
 驚いているクラークに、満面の笑顔を見せて。
 私はもう大丈夫です。ごめんなさい、と。謝罪に代わる笑顔を。
「…行きましょうか」
 呆けるクラークの肩を叩いて、セシルも笑い返してくれた。
 まだ状況を理解できていないらしい魔術師達にはぺこりと頭を下げて、先頭を切るように走る。
 慌てた護衛達が追いかけるてくるのを背中に感じながら、エルザは急いだ。
 この気持ちを抱いているうちに。
 この思いがまた崩れてしまわないうちに。
 走って、走って。
 彼の元へ。

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 王城上階の露台で、いつものように監視に徹底する。休憩後すぐなので、フレイムローズも今は好調そうだ。先ほど震え始めた時はどうなるかと思ったが。
 ニコルもようやく慣れてきた所で、魔術師達と万が一や哨戒について細かく話し合うまでになっていた。
 万が一ファントムが現れた場合には騎士達に義務付けられた魔眼蝶達が一斉に警笛を鳴らせることになっているが、百万が一フレイムローズが狙われた場合はどうするのか。
 毛先程度の可能性であれ考える時間があるなら考えておいて損はない。
 いざという時に動けるかどうかは、それまでの経験と知識がものを言うのだから。
 経験が無いなら、資料を読んで考えられるだけ考えろ。そこに損など存在しない。知識はいつだって、自分が想像していた形とは別の姿でも役に立つものだ。
「ニコルって頭固いよね」
 一通りの意見を出しあって、互いに思考をめぐらせて。頭の回転の速い魔術師達に舌を巻いていた時に、フレイムローズがおもむろに呟いた。
 急に何だと思うが、真面目くさって話している会話に入れないのが面白くないのか、単純に嫌みか。
 いずれにせよエルザとの件から拗ねられていたので、話しかけられたのが少し新鮮に思えた。
 王族達に絶対の忠誠を誓うフレイムローズは、ニコルの決断を否定しなかったが、エルザを泣かせたことも受け入れられない様子だったから。
「…よく言われるな」
「不器用も言われるでしょ」
 適当に返せば、光の早さで短所を上げてくる。
 嫌みかとも思ったが、声色には何か含みはあるが、嫌らしさはない。
「…よくわかってるじゃないか」
「あと鈍感だよね」
 さらに短所を。
 いったい何だと首をかしげるが。
「…今に始まったことじゃないな」
 取り合えずは付き合ってやろうかとまた言葉を返して。
「じゃあびっくりすればいいんだ」
「…は?」
 本気で何なのかわからなくなった瞬間に、突然背後から馴染んだ気配に包まれた。
「わ!!」
「うお!?」
 気配を消すことに長けたエルザに真後ろから驚かされて、ニコルは本気で心臓が口から飛び出すかと思った。フレイムローズの含みはエルザの気配を隠す手助けだったのかとようやく気付く。
「うふふ」
「…エルザ様…」
「お久しぶりですわ!」
 たった二日前の事なのに、久しいとは。
 しかしニコルも同じ気持ちではあった。長く姿を見ていないような感覚。
 それは護衛の任を離れたが故か。
 ニコルの方は気まずくてならないのに、エルザはいつも通りの笑顔だ。
 まるで以前の告白など無かったかのような様子に、拍子抜けしてしまいそうになる。
「…お元気そうで何よりです」
「空元気ですの」
 だがやはり無かったことにしている訳ではないらしい。
 爽やかに空元気だと告げられても信憑性は無いが、エルザの目元は腫れた名残りを確かに残している。この愛くるしい姫を泣かせたのだと、胸を締め付けられる思いだ。
「…冗談ですわ」
 冗談なものか。
 傷付いたくせに。
 泣きじゃくったくせに。
 それでも、選んだのはニコルだ。
 アリアを守る。
 そしてエルザの思いには答えられないと。
 露台への敷居の内側でクラークとセシルが魔術師達と待機して、エルザに気を使っているのかこちらに来る様子を見せない。ただ見守るような様子が少し気恥ずかしい。
「クラークとセシルがいるので、小声で話しますね」
「…はあ」
 分厚い本を片手で胸に持ったままぐいぐいとニコルの腕を引いて、少しフレイムローズ達からも離れて。
 内緒話の為に見上げてくるエルザが、何かを待っているように真剣な表情でいる。
「……耳を貸してくださいな!!」
「あ、すみません…」
 ようやくエルザが求めていることに気付いて少しかがめば、耳元にエルザの甘い吐息がかかった。
「私、諦めませんわ」
 決意と共に。
 それは、ニコルをという事か。
 かがんだ姿勢を正して、エルザを見下ろす。何度言われても、こればかりは。
「だって、私はエル・フェアリアの姫であることをやめますもの」
「エルザ様…」
 声は強い意志を灯している。だが胸に抱いた本に回されたエルザの手は少し震えていた。思いを告げるにも勇気が必要なら、一度拒絶されてなお訪れるのにどれほどの勇気を必要とするのだろうか。
 その恋心は、誰かに思いを寄せても真剣に愛し合いたいと思わなかったニコルにはわからない。
「当面の目標は治癒魔術師になるべく修行を積む事ですが…ニコルに好きな方がいる訳ではないのでしょう?」
「……」
 押し黙るニコルに、とたんにエルザは泣きそうに眉尻を下げて。
「…いらっしゃるのですか?」
「……いえ…」
 性処理用の女を口説く為の嘘なら何も思わないのに、なぜ想い人に本心を隠す嘘だとこうまで心を掻き乱されるのか。
 大切にしたかった姫だ。妹の件がなければ、変わらず側にいただろう姫。
「なら諦めません」
 その姫がニコルを恋慕い、ニコルからの愛を求めて。
「早く立派な治癒魔術師になって、あなたの妹さんと肩を並べてこの国を守っていきます」
 胸に抱く分厚い本が大切なものだとひと目でわかるほど、守るように胸に抱いて。
「なので…それまで…待っていてくださいませんか?」
 他に愛しい人を作らずに、と。
 頬を赤らめて、なんて殺し文句を使うのだ。
「…エルザ様」
「わ、私はあなたに告白する前から姫であることをやめると伝えていますもの…」
 今にも泣き出しそうになりながら、それでもエルザは懸命だった。
「あなたが妹さんを大切に思う気持ちは痛いほどにわかります。ですからあなたの邪魔はしません」
「邪魔など…」
「だから…好きでいさせてください…」
 見つめてくる瞳にニコルの気持ちが落ち着かなくなる。今この場で、まさか恋愛感情のやり取りが繰り広げられているなどフレイムローズ以外で誰が理解しているというのか。小声で話し合うにしても、聞かれていたらどうするつもりなのだ。
「…なぜ私なんですか」
「そんなの…私に聞かないでくださいませ」
 逃れるように訊ねても、好きになってしまったものは仕方がないのだ。ニコルだって同じなのだから。
「あなたが王位継承権を返上しようが、あなたはエル・フェアリアの王族なのです。王族が平民と共になるなど誰も許しません」
「…まるで罪であるかのように言われますのね。愛しい方と結ばれる事が罪だとは思えませんわ。それに、王族と平民が結ばれる事を罰する法律もありませんもの」
「…何を言われようが、私はあなたを一人の女性としては愛せません」
 お願いだから、これ以上エルザを傷付けてしまう言葉を吐かせないでほしい。
 エルザがどこまでニコルを思おうが彼女は王家の人間で、ニコルは貧しい平民なのだから。なのに、どこまでも。
「……今はそれでも構いません。…私、好いていただけるよう努力しますもの。…もっといっぱい計算して、ニコルが断りきれない状況を作ってから告白しないとって、お兄様も教えてくださいました!」
 なんてことを助言しているのだ王子は。
「…他国も許しませんよ。まだ求婚されている他国王家の方もいらっしゃるでしょう」
「ご安心くださいませ。先ほど、姫をやめますと皆様に伝達鳥を飛ばしましたわ」
「何やってんですか!」
 叱責をぶつけても、エルザの眼差しは反らされない。
「あなたに、私はあなた一筋だとわかってもらう為です。相手方には治癒魔術師を目指すとお知らせしております」
 肩の力が抜けそうになって、小さなため息がひとつ漏れた。
「…私は…」
 何と言えばいい?
 何と言えば諦めてもらえる?
「好きなんです…好きであることをやめられません。…そこまで拒まれるなら…もう愛してほしいとは言いませんから…せめて…あなたを好きでいることは許してください…」
「…エルザ様…」
「…っ」
 とうとう泣き出したエルザの頬を伝う涙を無意識に拭いとる。
 もうニコルの手には、エルザの護衛である証は無い。
 エルザの護衛をやめたいと告げた時に泣かせて、エルザの護衛の証である手袋を返した時に泣かせて、今も。
 何度も泣かせてしまった。
 これからも、エルザがニコルに思いを告げる度に泣かせてしまうのだろうか。
--泣くなよ…
 頼むから。
 泣かせたいわけじゃない。
 泣かせずに済むなら、いっそエルザの思いを受け入れた方が楽になるのではないかと思ってしまう。

--どうして泣いてるの?

 ふと、頭の中で幼い声が響いた。
 幼い頃の自分の声だ。
 泣いている誰かに言葉をかけた際の。
 いったい、誰に?
「…ニコル」
「…エルザ様は…ずるいですよ」
 頭に響いた声を打ち消して、エルザの心の直向きさに苦笑いを浮かべて。
「そこまで言われて、他の女性を愛せるとでも思っているのですか?」
 もしこれからニコルが自分に似合いの娘を見つけたとしても、エルザの愛が呪縛になって、その娘に想いを告げられなくなる。
「…ずるいです」
「ずるくても構いませんわ。…好きなんです。ここで諦めてしまっては、エル・フェアリアの歴代陛下達に顔向け出来ません!」
 謎の発言に、思わず吹き出してしまう。何だそれは。
「わ、私は真剣ですのよ!」
「申し訳ございませ…まさか、歴代の国王陛下達に…そんな…」
 駄目だ。なぜかツボにはまった。
 どうせコウェルズの入れ知恵だろうが、この単純な姫になんてことを教えているのだ。
 笑いが収まらないニコルに、エルザがどんどん頬を膨らませていく。
「真剣ですのに!」
 まだ瞳に涙を浮かべながら怒る姿に、愛しさが込み上げる。
 卑怯で単純なお姫様。恋慕っていたのは自分も同じだ。
「…約束します」
 泣かせて、怒らせて。
 感情がコロコロと変わる、可愛いお姫様へ。
「他の女性にうつつを抜かすことはありません。エルザ様が私を思ってくださる限り、私はあなたに囚われましょう」
 片膝をついて、エルザの手を取って。
 白くほっそりとした手の甲に、額を預ける。
 ずるい言葉のお返しに、せめて自分もずるくなる。
「…それでは私が悪い魔女のようですわ…」
「違いますか?」
「もう!」
 唇は尖らせているが、満更でもなさそうで。
 立ち上がったニコルに、エルザは半歩ほどだけ近付いてきた。
「…本当に…約束してくださいますか?」
 頬を赤らめて、俯きながらマントを引っ張ってくる。反則的な可愛さだが、自覚しているのだろうか。
「…はい。エルザ様以外の娘は愛しません。…ですが」
「わかっています…言わないで…」
 エルザも愛せないと、そこまでは言わせてはくれなかった。
「私も諦めませんもの…。必ずニコルに愛していただけるように…今の私に出来ることを精一杯やらせていただきますわ」
 嬉しそうに、だがどこか胸を痛めているように。
 頑固なニコルがいけないのか。
 強情なエルザがいけないのか。
 きっと人を愛するということは、どうしようもないことなのだ。
「…どうか無理をなさらず、修行に励んでください」
「はい!」
 破顔するエルザが、そのままの笑顔で走り去っていく。
 護衛達もその後に続いて、最後にクラークとセシルがニコルめがけて冗談半分に殴るような仕草を見せてきて。
 やがて姿の見えなくなったエルザ達に少し寂しげな笑みを浮かべながら、ニコルはフレイムローズ達の元へと戻った。
「…聞いてたろ」
「うん」
 フレイムローズが悪びれた様子も見せずに頷いて、こちらを見ることもなくニヤニヤと笑う。
「言質、とったから」
「…は?」
 なんのことだと訊ねる前に新たな訪問者が訪れて、フレイムローズの言葉の意味がうやむやのうちに脳内から消えてしまった。
「やっほー!仕事してるー?」
「お仕事御苦労様です!」
 クレアとコレーが、大きな盆を持ってやって来たのだ。
 クレアは手慣れた様子だが、まだ幼いコレーに大きな盆は少し危なっかしく、後ろで彼女の護衛達がそわそわと慌てている。
「クレア様、コレー様?うわあぁ、どうしたんですか?」
 二人の姫の来訪に、一番喜んでいるのはフレイムローズだ。
「ずっと監視を続けてくれてるフレイムローズと皆の為にね、お菓子を焼いたの!!」
「お菓子!!」
 盆をフレイムローズの前に持ってくるコレーの元に、監視の魔術師達も寄ってきて、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。
「…お上手ですね」
「クレアお姉さまの手ほどきですわ!!」
 ニコルも同じように近くに向かい、その出来に感嘆する。
 形は綺麗なものと歪なものの二種類あるが、どっちがどっちを作ったのかは一目瞭然だ。
 取り合えず形の上出来不出来を両方手にとってみれば、どちらも焼き加減はベストだった。
 しげしげと眺めるニコルに、クレアが近付いてぼそりと耳打ちをしてくる。
「お菓子全般作れるんだから。もう筋肉姫なんて呼ばせないわよ。陰で言ってるの知ってるんだからね?」
「…そんな」
 ニコル単体に告げてくる辺り笑えないのだが。
「た、食べたい!食べさせて!!」
「沢山あるから、いっぱい食べてくださいね。皆さんもどうぞ」
 コレーの言葉を合図にワッと魔術師達もお菓子を手にしていく。
 フレイムローズには、騎士に抱き上げられたコレーが手ずから食べさせてやっていた。
「美味しいですか?」
「とっても!!魔力が回復してく感じです!!」
 今ここでこの世が終わってもいいと思っていそうなほど顔面を笑顔の形に溶けさせたフレイムローズが嬉しそうに話すのを聞いて、ニコルも形の整った方を少しかじり、あることに気付く。
「…薬草を少し混ぜたのですね」
「あらら…苦かった?うまく誤魔化せたつもりだったけど」
「いえ、配合のバランスも良くとても美味しいですよ。昔から薬草に親しんでいたものですから、気付きやすい体質なんです」
 薬草というより毒なのだが、それは口にはせずに残りをひと口で食べて。「そうなんだ」と感心したクレアに、頭を下げた。
「ありがとうございます。連日の激務で少しピリついた空気が走る時もあったので、皆落ち着きます」
 長く同じ場所に留まって長時間の任務を遂行すれば、日光風雨に晒される為に気持ちは荒みもする。その緊張の緩和材という意味でも、この差し入れはとても有りがたかった。
「…よかった。コレーにも言ってあげて。コレーがいなかったら、お菓子を作ろうなんて思わなかったから」
「勿論です」
 コレーが作っただろう形の歪な方も食べてみれば、味は変わらずほのかに甘くて食べやすい。
 侍女達も顔負けだろうクレアとコレーの手作りのお菓子を、はたしてどれだけの人数と奪い合いになることやら。
「たくさんあるけど全部は食べちゃ駄目ですよ!今休んでるみんなにも残しておいてくださいね!!」
 コレーの注意をちゃんと聞いているのか、フレイムローズも魔術師達もへらへらと笑うだけだ。
 残しておきはするだろうが、確実に食べる量は今いる者達の方が多くなることは目に見えていた。
 後に引かない優しい甘さが緊張を解きほぐしてくれる。
 二人の姫の心遣いに感謝しながら、ニコルもお菓子をもう一枚手に取った。

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