第10話
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夜、あまり動くこともなくただ立っているだけがどれほどきついかをニコルが身をもって感じ始めたのは、互いに無言になってしばらくしてからの事だ。
フレイムローズは魔眼蝶を発動してからずっと、こんな苦痛に耐えていたのかと感心を通り越して呆れてしまう。
丸二日立ちっぱなしで、休憩は半日だけで。数時間共に行動しただけでも足の裏から苛立ちに似た、不愉快な鈍い痛みのような感覚が上がってくる。これなら死ぬほどきつい訓練を受けている方がまだましだとニコルは心の底から思った。動かないということがこれほどだとは。
申し訳程度に屈伸運動をしてみても、一瞬だるさが緩和されるだけで意味がない。
「…ニコル」
黙り続けていたフレイムローズに話しかけられたのは、何度目かの屈伸運動をしてみた時だった。何だと顔を向ければ背後から人の気配を感じて、フレイムローズはその気配の主がニコルに用があることを告げていた。
王城上階の露台に姿を見せたのはガウェとパージャだ。
ニコルが罰としてフレイムローズと行動を共にする件はガウェには報告されているはずだ。
昨夜のこともあったので眉根を寄せてガウェを見やり、あることに気付いた。今の時間帯はエルザの護衛時間のはずで、ガウェとパージャがここにいるということは。
「…エルザ様、こんな所にいてはいけません」
二人の背後から顔を見せたエルザに、無意識に王族付きとしての顔が出る。
ガウェを睨み付けるが、エルザが露台に出てニコルの傍に寄ってきた為に必然的に視線はエルザに向かった。
「お戻り下さい。こんな時間まで…昨日もですよ?」
「…ごめんなさい…でも…外の空気に当たりたかったの」
すがるような眼差しで見上げてくるエルザに、結局最後まで強くは出られないのだ。
「…でしたら中庭の方へ。ここは夜風が冷たすぎます」
季節は秋に入っている。王城上階のこの場所では風は塞き止められることなく自由を謳歌して吹き続けているのに。
「…本当はあなたと話したくて」
わずかに震える声は寒さのせいではない。
なぜここまでする。なぜここまで構う。健気な姿を見せられて心が動かないほど冷徹にはなれないのに。
「フレイムローズ殿の手助けは我々が。ニコル殿はエルザ様の護衛を」
「出来ません」
謀ったようなガウェの提案にすぐに拒絶すれば、エルザは目の前でまた泣き出しそうに瞳を潤ませた。
もうやめてくれ。
掻き乱される心がエルザの望むであろう言葉を与えそうになる。昼間の件は嘘だと言ってしまいそうになるから。
妹と同い年の姫。涙ぐむ姿がどうしてもアリアと被るのだ。
「いえ、ニコル…一緒にいてください…」
涙を堪えた声で請われて、無下には出来なかった。
今日は互いに素面だ。昨日のように酒に寄った勢いなどではない。
少し戸惑ったが、ガウェとパージャを残し、エルザの後について皆から離れた。
場所は露台のまま、角を曲がって皆の姿が見えなくなる所でエルザは立ち止まった。くるりと振り返られて、見つめられて、言葉を探す。
「…昼間は驚かせてしまい、申し訳ございませんでした」
ついて出たのは謝罪だった。だが撤回はしない。
エルザもそれに気付いたのか、視線を外して露台の柵に寄りかかる。
正面からならちらほらと城下の灯りが見えただろうが、サイドにまわったこの場所では申し訳程度の灯りしか見えない。後ろは深い森で、夜の世界では闇が大きな口を開けて獲物を待っているかのようだ。
暫く互いに何も話さずにいたが、唐突にエルザがこちらに体を向ける。
「もう秋が来ているみたい…少し寒いですね」
話題をそらしたいのかとも思ったが、薄いドレスから見える肌が寒そうに震えていた。
「何か羽織るものをお持ちしましょう」
さすがにそれには焦ってしまう。まさかそんな大切なことを見落とすとは。
どうすればとわずかに右往左往するニコルのマントを、エルザは細い腕で掴んだ。
「…お願いがあるのですが」
「何でしょうか?」
羽織になるものを探しても露台には何もない。侍女もいないので持ってきてもらうことも不可能だ。エルザの言葉をも聞き流しながら慣れない件に頭を使っていれば、またもマントを弱く引っ張られた。
「…マントを貸してくださいな」
すがるように見上げられる。だがこのマントは姫には不向きだ。
「マントですか?また、何故」
「…クルーガーから聞きましたの。騎士のマントは鉄布なのにとても軽い素材なのだと」
騎士団の纏う衣服は布と鉄を合わせた特殊な素材で出来ており、簡単に鉄布と呼ばれていて、鉄が混ざる分見た目より相当重い。
装備のマントも全て鉄布で出来ているが、唯一軽い分類だろうが。
「まあ我々には軽いですが…」
マントを装備から外してエルザの肩にそっとかけてやり、手を離した瞬間に。
「きゃ!?」
想像した通りの反応に思わず吹き出した。
「…もう、ニコルったら」
「すみません…つい」
軽い笑いが止まらない。
鉄布は装備として万能だ。中でもマントは炎に焼かれない素材も混ぜられているので鉄の分量が減り軽くはなっているが、普通の布を想像していれば重みに驚くだろう。
「軽い鉄布と聞いておりましたのに…クルーガーは嘘つきですわ!」
「嘘ではありませんよ。通常の鉄布よりとても軽いですからね」
「ではニコルが今来ている衣服は?」
「装備を外したとしても、普通の布の数倍は重いですよ」
装備の合間から覗く服を引っ張るエルザに簡単に説明すれば、感心するようなため息をつかれた。
「まあ…大変ですのね」
「他国に比べたら動きやすいし楽ですよ」
近い距離に気付いてわずかに距離を離したが、鉄布に興味を持ったエルザは気付かなかった様子だ。
「エル・フェアリア独自の鉄加工技術は他国には真似出来ませんからね。鉄布は着るだけで装備になるのですから。エル・フェアリアの装備は心許ないとよく言われますが、最強の防御力を誇ります。これを着られるだけで自慢ですよ」
三年前に出場した剣武大会でも、仲良くなった他国の戦士達につつかれたものだ。だが見た目から完全防備の甲冑が使用されている国の騎士には感動された。
全身を拘束されたかのような甲冑はやはり動きにくい様子で、エル・フェアリアの動きやすい装備に技術提供まで請われたのだ。
「でも腰の鎖がひらりとして可愛らしいですわ」
「…はい。私もそこだけはどうしても馴染めないんです」
ただ一つ難を上げるとするなら、腰の装備から下につけられた鎖だろう。
股関節の柔軟な動作を邪魔しないように鎖を使用したのだろうが、遠目には短いスカートだし、正直なところこの鎖に防御の意味などないはずだ。なぜこれを取り入れたのかはクルーガーにもわからないのだから、ある意味で七不思議の一つにでも数えられるだろう。
そしてそれを話題に上げるならと、ニコルがどうしても馴染めない貴族達の嗜好にまで話が及ぶ。
「貴族は男でも肌を露出しないよう布を多量に使ってレースも好むようですが、私にはどうしても女々しく見えてしまいます」
金があるという顕示なのだろうが、ニコルの頭にはフリルやレースは女性のものという印象が拭えない。だというのに貴族の男達はこぞって取り入れるのだ。
さすがに女性のように多量には使用しないが。
「そういえば、似たようなことをガウェも昔仰ってましたわ」
「ああ、ガウェ殿の普段着は唯一安心して見られますね」
その中でガウェの普段着はまともに思えた。
ガウェの普段着は高価な布をふんだんに使ってはいるが、レースやらの装飾はあまり見当たらない。
本人いわくシンプル指向らしいが、シンプルではなかった。
「いつかニコルの普段着の姿も見せてくださいね」
無邪気に笑うエルザの笑顔が胸に刺さったのは、片手で足りる数しか持っていない自分の衣服を思い出したからだ。
「いや…私の持っている服はエルザ様に見せられるような代物ではありませんので」
ガウェとフレイムローズに貸した時も散々ボロだと馬鹿にされた二着は、ニコルには大切なものだがさすがに王家の姫には見せられない。
見せても「…まあ」で終わりそうではあるが。
「だめですか?」
「…私が恥ずかしいので」
「そうですか…残念です」
しゅんと項垂れて、まるでニコルの方が意地悪をしてしまった気分になる。
「申し訳ございません」
「…少しも駄目?」
「…諦めるつもり無いですね」
思わず漏れた謝罪の言葉を逆手にさらにねだる姿に、ようやく計算だと気付いて。
やれやれとため息を漏らせば。
「ふふ、ばれてしまいましたわ」
「わ、エルザ様!?」
ニコルが手に持っていたマントを奪って、エルザは精一杯の力で広げてくるまった。
「暖かいですわ」
「無理なさらないでください。重いでしょう」
頭からすっぽりと被ったマントに頬をすり寄せながら、エルザは取り返そうと腕を伸ばしたニコルから数歩逃れる。
「大丈夫ですわ~。…ふふ、ニコルの香りがしますね--」
そして、発言の後に唐突に固まって。わずかな灯りしかない夜の中でもすぐにわかるほど赤面する。
「エルザ様?」
「な、何でもありませんわ!!」
奪った時と同じように強引にマントを返されて、はあ、と曖昧な返事しかできなかった。
エルザは火照った自分の頬を両手で押さえて恥ずかしそうに俯いて。エルザの身長で俯かれるとニコルからはもうエルザの頭の天辺しか見えない。
その姿が幼い頃に離れたきり会えていない妹と被って、自分で自覚するよりも先に手が動いてしまった。
「ニコル!?」
「あ、すみません…」
頭を撫でられたエルザが驚いて見上げてくるが、なぜかそれでも手を離せなかった。
「妹を思い出してしまい、つい…」
ニコルが年齢をごまかして地方兵士になったのは12歳の頃で、村から離れた地区の兵士になってから今まで一度も村には帰らなかった。
最後に妹を見たのは妹が6歳の時で、欠かさずに手紙のやり取りはしても、妹の姿は霞のように朧気にしか覚えていない。
「歳も同じですし、成長したらエルザ様くらいなのかと…」
給金を配達し続けてくれていた青年からは妹の成長について美人になった、背が高い、優しいなど色々と聞かされるが、想像だけでは限界がある。
そんなこともあり、エルザの存在はやはり妹とだぶらせてしまうのだ。
「…何年も会えていませんからね。エルザ様と過ごした時間の方が長くなりましたよ」
「そう…」
「まさか治癒魔術が貴重なものだったとは」
知らなかった事実が重大すぎて途方に暮れそうになる。
万が一の事が起こり妹を連れて王城を出たら、追われる身になるのだろうか。露台でただ立っているだけの時間に、そこまで考えていた。
「私も会ってみたいです。ニコルの妹さんに」
「…はい。是非」
「でも妹さんだと思って頭を撫でるのは…駄目です!」
「あ…すみません…」
謝罪と共に離そうとしたニコルの手を、エルザは自分の頭に押さえつけるように止める。
「撫でるのが駄目なのではなくて…」
「…え?」
「…頭を撫でられるのは…好きです」
頬を少しだけ朱に染めて、ちらりと覗うように見上げられて。呟かれた好きという言葉に、そういう意味では無いとしても意識させられてしまった。
愛しい姫君。
許されない立場が辛い。
「人目がない時は、また撫でてくださいませ。お兄様に撫でていただくのとは少し違う気持ち良さです」
お兄様、コウェルズ王子。
ニコルに妹がいるように、エルザにも兄がいる。
そしてニコルの妹が婚約者に裏切られたように、エルザもかつて婚約を破棄された。
エルザの場合は国の未来が絡んだので仕方無い事だったが。
どうして似たような境遇でありながら、王族と貧民に分けられるのか。
「…では、遠慮なく」
「きゃあ、ふふ」
愛しく感じるのに、辛くもなる。その思いを隠すように、ニコルは許された手を動かしてエルザの髪を無遠慮に撫でた。
妹にはよくしていた。兄貴ぶって、嫌がられるくらいガシガシと。
「ニコルったら、もう!」
無邪気に笑うエルザは阻止するように両手を使ってニコルの手を止める。
掴まった手は、そのままエルザの頬にまで移動させられた。少し冷えてしまっているエルザの頬に、ニコルの手の体温が移っていく。
潤んだ瞳が、何かを訴えかけるようで。
「エルザ様…あ、の…」
「もう少しだけ…こうしていてください…」
吐息と共に色を伴う声で囁かれて、体にゾクリと欲が走った。
性の経験など無いはずの姫が、どうしてここまで煽るような仕草を見せられるのか。
初めて経験した時から今まで、性欲の処理に不都合があった試しはない。
兵士時代は女性の方からニコルに寄ってきたし、騎士となった今でも城下に降りれば妓楼でわざわざ金を払って遊女に相手をしてもらうまでもなく、適当な女に声をかければ簡単に事足りた。それら全てで女達の色気に当てられたことなど無いのに、恋慕う相手というだけで乳臭かろうが劣情をそそられるのか。
やがてエルザが自分の頬に拘束していたニコルの手を離し、改めて小さな両手で握りしめてくる。
この表情は…
何か大切なことを知りたい、聞きたい時によく見せる真剣な眼差しで見上げられて、エルザが深夜にニコルに会いに来た理由がやはり昼間の発言にあると察した。
なんてわかりやすい。言われるより先に勘づいたから、改めて自分の中の決意を固めて。ニコルが守る存在は、アリアなのだと。
「…昼間の…本気ですか?」
「…申し訳ございません」
思った通りの問いかけに、静かに謝罪を返す。
「謝らないで…」
とたんに涙が浮かぶエルザの瞳を、まっすぐに見つめ返した。だが次にエルザに告げられた言葉は想定していたものとは異なる。
「夕食の後にお兄様と話しましたの。あなたの妹さんから治癒魔術を習ってはどうかと」
「…それは」
思いがけない内容に、ただ目を見開いた。妹が、アリアがエルザに治癒魔術を教える?
「昨夜言いましたでしょう?私は治癒魔術師となる道を選びますの。本当は会得するまでイリュエノッドで訓練するつもりでしたが…妹さんが師となってくださるなら…」
それはアリアを終始エルザの側に付かせるという事なのだろうか。もしそうなら、いくら平民を罵りたくても姫を前に口は閉ざされる。
姫に万が一の事が無いように毒を盛ることも出来なくなるはずだ。一瞬のうちにそこまで考えて、すぐに細部までは不可能であると気付いて。
「そうすれば、あなたも姫付きを外れる必要はありませんわ」
すがるようなエルザの言葉に、静かに目をそらした。懇願するような顔でニコルを見ようが、意志は変わらない。
「…ニコル」
「御心遣い感謝します。ですが私は、妹を一人にさせたくないのです」
「…ですから、妹さんも私の側で…」
「エルザ様の姫付きであるということは、何があったとしても、妹を最優先で守れないということなのです」
もし妹とエルザのどちらかしか救えない立場に陥った時、アリアを救いたくても、エルザの姫付きのままいれば守るべきはエルザとなる。
ニコルが守りたいのは、アリアなのに、だ。
「…私は」
「……嫌…もう嫌です…」
ニコルの手を握っていたエルザの両手が離れて、そのまま拒絶するように耳をふさがれる。
駄々っ子のような仕草で、涙を一滴こぼして。
「…エルザ様」
「聞きたくありません…」
アリアを選ぶニコルの決意を否定する。
そんなエルザの姿を初めて見た。
諍いを嫌う性格で、自己犠牲すら見せることもあるほど他人の意思を尊重するエルザが、ニコルの意思を拒絶するなど。
なぜここまで。困惑する頭に、理解しがたい言葉が入り込んだ。
「ーー好きです」
自分の耳から手を離したエルザが、今度は両手を胸の前で握り合わせて見上げてくる。
言葉の意味が理解できずに、頭の中が白く染まった。
先ほど頭を撫でられるのが好きだと告げたばかりの唇で、全く異なる意味の同じ言葉を。
「あなたが…」
震える声で、決心したように。
ガウェは昨夜ニコルに何と言った?
“エルザ様がお前を愛しているとしたら”
有り得ない。有ってはならない思いだろうが。
「あなたが好きです」
鼻を詰まらせながら、涙声で。
切迫したかのように、恋という感情をぶつけられる。
“お前が望むなら、エルザ様は共に”
ガウェはそうも言った。
“ねえ、ニコルが望むなら”
そしてフレイムローズまでも。
それはニコルの焦がれる思いを口にした訳ではなくて、わかりやすいほどに秘め事の出来ないエルザの思いを代弁していたのだと気付く。
「そばにいてください…」
そうだ。いつだってエルザはわかりやすい性格だった。
気付かなかった訳ではないはずだ。エルザの行動が、エルザの言葉が、今までどれほどニコルに向けられていたか。気付けないはずがなかったのに。
有り得ないと決め付けたニコルの心が、エルザの思いに気付かせなかった。
熱を帯びた眼差しで見つめられて、互いに思い合っていた事実に世界が眩む。
ああ…なんて。
なんて残酷な世界なんだろう。
「--…出来ません」
言い放つ声に感情は乗せなかった。
たとえ互いに思い合っていたのだとしても、やはり有り得ないのだ。
呆然と見上げるエルザの姿を、もう視界には入れなかった。
「その思いが本心だと言うのなら…尚更エルザ様の傍にはいられません」
いられるわけがない。
たとえ妹の件が無かったとしても、やはりニコルは今と同じ言葉をエルザに聞かせただろう。
大国の姫が、貧しい平民となど。
「…聞いているんだろう、フレイムローズ。ガウェとパージャをここに呼んでくれ。エルザ様を寝室へ帰すんだ」
世界の終末が来たかのような表情を浮かべるエルザを放って、肩に寄り添う魔眼蝶に話しかける。
そして手袋を、エルザの騎士である証の緋色の石のついた手袋を外した。
「…ニコル…」
「お返しします。…今までありがとうございました」
動かないエルザの胸元の手を掴んで、強引に手袋を返す。
緋色の宝玉がついた手袋は、ニコルの誇りだった。
背後からガウェとパージャの走り寄る気配を感じて、ニコルはエルザを放置し、現在の自分に与えられた任務に戻るために歩き出した。
ニコルが背中を向けた瞬間に、エルザは腰を抜かして。
泣きじゃくる様子は、背中を向けていてもわかった。
ニコルにわずかに視線を向けてから、パージャがエルザに駆け寄る。ガウェは途中で立ち止まっており、通り過ぎるニコルに怒りを含んだ声で問いかけてきた。
「そんなに妹が大事か」
これほど簡単な問いかけがあるだろうか。
「当たり前だろう」
それ以外に答えなどあるはずがない。
「……家族など」
「家族に恵まれなかったお前と…一緒にすんな」
忌々しげに吐き捨てるガウェを見もせずに、ニコルは全ての感情を殺しながらその場を離れた。
第10話 終