日常編シリーズ その①
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日常編:オムライスは恋の味?~最強メシ決定戦~
それは、晴れたある日の、穏やかな昼下がりだった。
「―――限界ですぞ!」
突如、九十九がデスクから立ち上がり、高らかに叫んだ。
「連日のコンビニ飯とカップ麺! 我々の食生活は、あまりに貧しい! このままでは、最高のパフォーマンスが発揮できませんぞ!」
もっともな意見に、杉浦と佐竹もぐうの音も出ない。
見れば、事務所のゴミ箱は、確かに、ジャンクフードの空き容器で溢れかえっていた。
「……というわけで!」
九十九が、バッと、どこからか新品のエプロンを取り出した。
「開催します! 横浜九十九課・第一回・最強メシ決定戦!」
そして、なぜか、事務所のキッチンで男たちのプライドを懸けた料理対決が始まった。
お題は、洋食の王道「オムライス」。
審査員は、もちろん未華子だ。
「さあ、始め!」
九十九の高らかな号令と共に、三人の男たちが一斉に動き出す。
【エントリーNo.1:杉浦 文也】
彼はまず、玉ねぎをおそるおそるみじん切りにし始めた。
その手つきは、お世辞にも上手いとは言えない。
時折、目に染みるのか、涙ぐみながら必死で包丁を動かしている。
だが、その不器用な手つきの中には、どこか温かい家庭の匂いがした。
未華子の脳裏に、彼が以前作ってくれた、少しだけ焦げた、でも、最高に美味しかったチャーハンの記憶が蘇る。
【エントリーNo.2:佐竹 幸人】
彼の動きには、一切の無駄がなかった。
みじん切りにされた、完璧なサイズの玉ねぎと鶏肉。
寸分の狂いもなく計量された調味料。
美しすぎる手際に、未華子は思わず見とれてしまう。
こいつは、料理ですら完璧にこなしてしまうのか。
【エントリーNo.3:九十九 誠一】
「ふっふっふ。時代は、もはや人力ではありませんぞ!」
彼が取り出したのは、最新鋭の全自動調理マシンだった。
「材料を入れるだけで、黄金比率の完璧なチキンライスが完成するのです!」
得意げに、スイッチを入れる九十九。
だが次の瞬間。
マシンから、バチッ! という嫌な音と黒い煙が立ち上った。
「あああああ! 我が愛機がぁぁぁ!」
―――開始わずか5分で、所長、脱落。
そして、運命の試食タイム。
未華子の前には、二つの対照的なオムライスが並べられた。
一つは、杉浦が作った、少しだけ形が歪なオムライス。
ケチャップで書かれた文字はぐにゃぐにゃで、正直、何が書いてあるのかわからない。
もう一つは、佐竹が作った、まるで高級レストランで出てくるような完璧なフォルムのオムライス。
デミグラスソースが、美しくかけられている。
「……じゃあ、まずは杉浦くんのから」
スプーンで一口。
「……ん!」
驚いた。
見た目は不格好なのに、味は驚くほど優しかった。
少しだけ甘いケチャップライス。
ふわふわの卵。
それはまさしく、お母さんが作ってくれたような懐かしい味がした。
「……どう?」
心配そうに、こちらを覗き込む杉浦。
その子犬のような目に、未華子の心臓が、きゅう、と鳴る。
次に、佐竹のオムライス。
これも一口。
「……美味しい……!」
完璧だった。
味も食感も香りも、全てが計算され尽くされている。
文句のつけようがないプロの味。
「……お口に、合いましたか?」
自信に満ちた、佐竹の甘い微笑み。
ああ、もう、どうしよう。
甲乙つけがたい。
悩みに悩んだ未華子は、ついに顔を上げた。
「……勝者は…………」
「―――二人とも、優勝!」
そのずるい判定に、杉浦と佐竹は顔を見合わせ、そして思わず吹き出した。
「さて! 優勝したお二人には約束通り!」
九十九が、ニヤニヤしながら言った。
「未華子氏から『あーん』して、食べさせてもらえる権利を贈呈しますぞ!」
「よしっ! じゃあ二人とも座って! はい、あ~~~ん?」
その日の横浜九十九課には、顔を真っ赤にして固まる二人の男と、それを見てお腹を抱えて大笑いする所長と、一人の悪戯好きな女神がいたという。
<終>
