日常編シリーズ その①
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日常編:嘘つきは、恋人の始まり?
あの、忌まわしき「真実のヘッドフォン Mark II」事件から、数日後。
横浜九十九課には、いまだ、史上最も気まずい空気が漂っていた。
杉浦と未華子は、互いにまともに目を合わせることもできない。
そんな、重苦しい空気を破壊する依頼が舞い込んできた。
「結婚詐欺師を捕まえてほしいんです!」
依頼人の女性が涙ながらに語る。
ターゲットは、近く、高級ホテルでのブライダルフェアに現れる、と。
「……なるほど。これは、潜入調査が必要ですな」
九十九が腕を組み、名探偵のように頷いた。
そして、ニヤリと悪戯っぽく笑いながら言ったのだ。
「ここは、杉浦氏と未華子氏に、婚約したてのラブラブなカップルを演じてもらい、潜入するのが最も効率的でしょう!」
「「…………はああああああ!?」」
杉浦と未華子の、悲鳴のような声が事務所に響き渡った。
横では佐竹が、「それは名案ですねぇ所長」と、肩を震わせながら必死で笑いを堪えている。
[◎ブライダルフェア当日]
横浜の高級ホテルの、最上階。
シャンデリアの光が、きらびやかにフロアを照らす。
周りは、仲睦まじそうなカップルばかり。
「……ねえ、未華子ちゃん」
「……なに」
「……手、繋いだ方が、いい、かな?」
「……そ、そうじゃ、ないと……怪しまれる、かも、ね」
ぎこちなく、繋がれた手と手。
二人とも、顔は真っ赤。
視線は、あらぬ方向を彷徨っている。
杉浦は、普段着ることのない上品なジャケット(佐竹から借りた)を羽織り。
未華子は、趣味ではない清楚なパステルカラーのドレス(佐竹の指示でレンタルした)に身を包んでいる。
そんな二人は、どう見ても、幸せの絶頂にいるお似合いカップルにしか見えない。
……その、挙動不審な態度を除けば。
『……いやー、二人とも、大根役者すぎやしませんかな?』
『……見てるこっちが恥ずかしくなるな』
インカムから聞こえる、九十九と佐竹の容赦ないツッコミに、二人の顔はますます赤くなる。
「……あ、あの、シャンパンでも、取りに行こう、か」
「……う、うん」
ぎこちなく、歩き出す二人。
『ターゲット、3時の方向に移動。今一人だ。未華子、接触しろ』
佐竹の冷静な指示。
未華子は深呼吸を一つすると、今回の“カモ”であろう婚約者の女性と離れ一人になった、ターゲットの胡散臭い男へと歩み寄った。
「まあ、素敵な時計ですね。どちらのブランドでいらっしゃるんですか?」
完璧な猫なで声。
女優顔負けの演技力。
「……ねえ佐竹くん。なんか未華子ちゃんのスイッチ入ってない?」
『……ああ。元新聞記者の血が、騒いでるんだろうな』
ターゲットの男は、美しい未華子に、すっかり、骨抜きにされていた。
その様子を、少し離れた場所から、見つめる杉浦の顔は、嫉妬と焦りで歪んでいた。
『杉浦氏! 気持ちはわかりますが、ポーカーフェイスを維持しなさい! あなたは今、彼女の婚約者ですぞ!』
九十九のもっともなツッコミ。
ターゲットがついに、未華子の肩に馴れ馴れしく手を回した、その瞬間。
杉浦は、もう我慢の限界だった。
彼は、颯爽と二人の間に割って入ると、未華子の肩をぐいと引き寄せ、その腰を強く抱きしめた。
そして、ターゲットの男を、射殺さんばかりの鋭い目で睨みつけた。
「……彼女に、何か用かな…?」
様になったヒーローのような登場。
そして、突然の密着。
未華子の心臓は、もう張り裂けそうだった。
『……おお! やりますな杉浦氏!』
『……いいぞ、やるじゃねえか杉浦』
インカムの向こうで、九十九と佐竹がなぜか大興奮している。
ターゲットの男は、杉浦の本気の殺気に完全に気圧され、すごすごと退散していった。
だが、杉浦はまだ未華子の腰を抱きしめたままだ。
「……あの、杉浦くん」
「……あ、ご、ごめん!」
慌てて、手を離す杉浦。
その夜。
二人の距離は、ほんの少しだけ縮まった……のかもしれない。
そして後日。
九十九の天才的なハッキングと、佐竹の悪魔のような揺さぶりにより、その結婚詐欺師は全財産を失い、社会的に完全に抹殺されたという。
横浜九十九課を、敵に回しては、いけない。
<終>
