短編
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傷口に口付けを
『留三郎、次の修補は?』
「ああ、次は倉庫の備品整理を頼む。」
『分かった。』
「すまんな。名前」
『いいのよ。』
今日は用具委員会の学園内の修補の補助をしている。
用具委員には留三郎の他に、四年の浜守一郎、三年の富松作兵衛、一年の下坂部平太、福富しんべえ、山村喜三太の六人で編成されている。忍術学園の武器、武具、備品を全て管理整備しているため多忙な委員会ゆえ仕事量も多く忙しく、くのたまの参加も例外ではない。用具倉庫に向かおうとすると留三郎に止められる。
「待て名前。倉庫の備品は作兵衛と一緒にやってくれ。」
「分かりました!食満委員長。」
『作兵衛、宜しくね。』
「はい!名前先輩!」
作兵衛と一緒に道具を持って用具倉庫に向かう。
用具倉庫には武器武具が揃っておりひとつずつ点検を行い破損がないか確認する。
『作兵衛。破損してるのはどうしたらいいかな?』
「見せて下さい。うわぁ……これはもう修補できるかどうか……。」
用具委員は備品の修理も行っているが、予算が少ないためまともな修理ができないことがある。また新しい道具を購入することができず、ボロボロになった道具を手入れしたり修補したりするなどしてなんとか賄っている。そんな用具委員の作兵衛の目を持ってしても修補不可能だとは。それからも点検を続けると壊れた物が出てくる。全ての点検終えると壊れた物を一箇所に集め委員長の留三郎に確認してもらう事にする。
「食満委員長、怒りますかね?」
『まぁこれだけ壊れてるのが多かったらね。』
「はぁー……。」
『大丈夫よ。私も居るから。』
「作兵衛、名前。作業は順調か?」
『留三郎。丁度良かった。』
「ひっ!食満委員長。」
突然現れた留三郎の姿に驚嘆し怯える作兵衛。その肩に手を置いて落ち着かせる。
『実はかくかくしかじかで………。』
「そうか………。」
壊れた物を見て溜め息を吐く留三郎。留三郎の後ろから顔を出し様子を伺う。
『修補、限界そう?』
「まだなんとかなりそうだが、あと一回が限界な気がする。文次郎が予算を上げてくれたらな………。」
『……それまで修補頑張ろうか。』
「あぁ……。」
留三郎が一年生、四年生の所に事情を話し戻ってくると作兵衛と三人で、底に穴の空いた桶や刃が洩れた手裏剣などの修補を行う。
ひとつずつ研いだ手裏剣や苦無を所定の場所に並べる。普段から使っている武具達だから修補しているとより愛着が湧いてくる。案外こういう作業好きだな。
「もうこんなに終わったんですか?先輩」
『えっ、あぁ。コツを掴んだら早くて。作兵衛こんな感じで大丈夫?』
「問題ないかと。」
『留三郎は?』
「俺もあと少しで終わる。」
留三郎は一際難しそうな武器を修補している。手に取って確認してみたが修補のやり方が検討つかず留三郎がやると言ったものだ。さすがは留三郎、手先が器用。
『ようやく終わった。』
「物が多くて大変でしたね。名前先輩ありがとうございました。」
「名前、お前のお陰で一日掛かる修補がこんなに早く終わった。ありがとう。」
『喜んでもらえて何より。』
「よし、あとは片付けるぞ。」
「『はーい』」
「これはそこへ。あれはあそこで。」
「はい!……………わっ!」
『えっ!作兵衛!!!』
そう言い修補した武器武具を木箱に入れ手分けして持ち元の場所に戻そうとすると立った拍子に作兵衛がつまずく。そのひずみで複数の手裏剣が床に刺さり、手裏剣の上に顔から倒れ込もうとしている。咄嗟に身体が動き、持っていた木箱を放り投げ自身の身体の上に作兵衛が倒れ込む。
「作兵衛!名前!」
『作兵衛!大丈夫!?』
「あ……あっ……… 名前…先輩……背中……。」
作兵衛の顔には傷一つ付いてなく安心すると自身の背中に痛みが生じる。どうやら忍び装束を突き破き、手裏剣が背中に刺さったみたいだ。留三郎が駆け寄り傷の手当てをする。生暖かい液体が背中を伝うのが分かる。それを見た作兵衛の顔からは血の気が引いている。悪い事になったみたいだ。
『留三郎どう?』
「伊作に診てもらう!作兵衛!後は頼む!」
「っは、はい!」
『ひゃっ!留三郎!歩けるわよ!』
「手裏剣が刺さったんだ!急いで医務室行くぞ!」
留三郎に横抱きにされ医務室に向かう。ちょっと大事すぎないか。留三郎の顔を見ると真剣な表情に喉まで出かかった声を飲み込み黙って揺られる事にした。
医務室に居た伊作にびっくりした顔をされたが同室の顔を見てただならぬ雰囲気を感じ取る。そんな伊作を目の前にゆっくり降ろされ事情を説明し傷口を確認される。
「名前、全くもう君は。」
『いや……身体が咄嗟に。』
「それでも馬鹿だお前は。」
『えーん。そんな怒らないでよ留三郎。』
「あと留三郎、医務室から出て行ってくれる?」
「はっ……すまない!」
怒る留三郎を外に追いやる伊作。伊作と二人になった為上半身の忍び装束を脱ぎ、肩衣を前に当て手当てを行ってもらう。消毒液が傷口に染み顔を歪める。
『痛たっ!伊作優しく!』
「充分優しくしてます。全く君は傷の酷さが分かってない。」
『ちょっと刺さっただけでしょ?』
「もし外で傷作っても同じ事言える?」
『あー………。言えません。』
「でしょ。」
軽んじてる訳ではないがぐうの音も出ない。でも作兵衛には悪い事しちゃったな。あの責任感のある作兵衛だ。今頃考え込んでいるんだろう。
「………作兵衛にはちゃんと説明しとくんだよ。」
『そうよね……心配かけちゃったわ。』
「自分の不注意で他者を巻き込む事もあるんだから。作兵衛にはいい教訓になったと思うよ。」
『それはそうだけど……。』
「特に名前は女の子だから。」
『背中の傷なんかよっぽどの限り見えないわよ。』
「女の子だから余計傷作っちゃ駄目って事!」
『はい。滅相もございません………』
「伊作、そろそろいいか?」
「留三郎。いいよ。」
一通りの処置を終え肩衣を着るとタイミングよく留三郎から声が掛かり部屋の中に入ってくる。その顔は意気消沈しており覇気がない。伊作は新野先生に報告を兼ねて医務室を出る。医務室には留三郎と二人きりになる。
「名前。すまなかった……」
『留三郎謝りすぎ。私がした事だからそんな気にしないで。』
「でもお前その背中の傷……動けるのか?」
『今は痛みがあるから動きずらいけど日が経ったら大丈夫。ほら!』
「馬鹿!今は動かすな!」
『はい。』
動けるか確認する為肩回しを留三郎の目の前ですると腕を掴まれ静止される。自分が思ってるより事態は悪化しているみたいだ。
『留三郎から作兵衛にも伝えといて。私は平気だって。』
「それはそうだが……」
『私が気にするなって言ってるからこの件は終了。いいでしょ?』
そんな留三郎の言葉を制止する。それよりも自身が放り投げた木箱の中身が気になる。詳細を留三郎に確認する。
『留三郎……私が投げた木箱の中身どうでした?』
「あれは無事だ。俺に刺さりそうだったけどな。」
『面目ない。』
「ったく………背中見せてみろ。」
『……うん。』
留三郎に言われ背中を向け上衣を捲り上げる。傷はまだ熱を持っており巻かれた包帯の上より留三郎の指がなぞられる。痛みとは違いゾワゾワする感覚が背中を巡る。
『んっ………ほら思ったより酷くないでしょ。』
「そんなの関係ない。」
『留三郎……あっ!』
傷口の横に柔らかな物が触れそれが留三郎の唇だったと理解した瞬間、カッと頬が熱くなった。それでも口付けは止まらず降り注ぐ。
『っあ!……んっ……留、三郎。』
「綺麗だ……。」
『やぁっ!………恥ずかしいよぉ…っ!』
触れるだけの口付けだというのにびくりと細い肩を跳ねさせ、繰り返される口付けに背中がびくつく。
本来守るべき行動は取るのは俺だったのに咄嗟に作兵衛を守った名前。俺の後輩が招いた事で名前の背中に傷を作り血が流れた時は目の前が真っ暗になった。背中に傷を作ってもそれでも非を咎める事はせず後輩の心配をする名前の姿に愛おしさが胸元を突き上げる。白く透き通ったきめ細かい肌にこの傷は愛おしい。愛おしくて切ない思いに駆られる。
『と、め………もう大丈夫……んっ』
「……あぁ、そうか……。」
留三郎の口付けが背中から首筋まで移動し止まる。名前の顔は羞恥と困惑で赤くなり胸にぐっと堪える物があるが今すぐ押し倒したい欲求を抑えそっと放す。その様子に名前が閉じていた目を開くと留三郎と目が合い、お互い見つめ留三郎の口が開く。
「………頼むから無理するな。」
『んっ………ごめんなさい。』
「分かればいい。先に行くな。」
『はい……』
頭に手を置かれ上衣を整えると留三郎が医務室を出る。留三郎の行動に腰が抜けへたりと座り込んでしまい胸の高鳴りが止まらない。頬に熱が集まり先程の出来事が頭を巡る。
『はあぁ〜〜ドキドキした………。』
抑えられなかった。あんな困惑させた顔をさせたかったのではないのに。しかし忘れられない。手応えも悪くなかった。これをきっかけに俺の事を意識して貰えたら後は引き返せないようゆくゆくは責任を取るという形で漕ぎ着けてやる。そう笑みが止まらない。
_______________________
(名前先輩〜〜〜!ご、ごめんなざい〜!)
(作兵衛、顔から出る物全部出てるじゃない)
(だって!俺のぜいで〜!)
(可愛い後輩ね)
(俺の後輩だからな(少し妬くな))
『留三郎、次の修補は?』
「ああ、次は倉庫の備品整理を頼む。」
『分かった。』
「すまんな。名前」
『いいのよ。』
今日は用具委員会の学園内の修補の補助をしている。
用具委員には留三郎の他に、四年の浜守一郎、三年の富松作兵衛、一年の下坂部平太、福富しんべえ、山村喜三太の六人で編成されている。忍術学園の武器、武具、備品を全て管理整備しているため多忙な委員会ゆえ仕事量も多く忙しく、くのたまの参加も例外ではない。用具倉庫に向かおうとすると留三郎に止められる。
「待て名前。倉庫の備品は作兵衛と一緒にやってくれ。」
「分かりました!食満委員長。」
『作兵衛、宜しくね。』
「はい!名前先輩!」
作兵衛と一緒に道具を持って用具倉庫に向かう。
用具倉庫には武器武具が揃っておりひとつずつ点検を行い破損がないか確認する。
『作兵衛。破損してるのはどうしたらいいかな?』
「見せて下さい。うわぁ……これはもう修補できるかどうか……。」
用具委員は備品の修理も行っているが、予算が少ないためまともな修理ができないことがある。また新しい道具を購入することができず、ボロボロになった道具を手入れしたり修補したりするなどしてなんとか賄っている。そんな用具委員の作兵衛の目を持ってしても修補不可能だとは。それからも点検を続けると壊れた物が出てくる。全ての点検終えると壊れた物を一箇所に集め委員長の留三郎に確認してもらう事にする。
「食満委員長、怒りますかね?」
『まぁこれだけ壊れてるのが多かったらね。』
「はぁー……。」
『大丈夫よ。私も居るから。』
「作兵衛、名前。作業は順調か?」
『留三郎。丁度良かった。』
「ひっ!食満委員長。」
突然現れた留三郎の姿に驚嘆し怯える作兵衛。その肩に手を置いて落ち着かせる。
『実はかくかくしかじかで………。』
「そうか………。」
壊れた物を見て溜め息を吐く留三郎。留三郎の後ろから顔を出し様子を伺う。
『修補、限界そう?』
「まだなんとかなりそうだが、あと一回が限界な気がする。文次郎が予算を上げてくれたらな………。」
『……それまで修補頑張ろうか。』
「あぁ……。」
留三郎が一年生、四年生の所に事情を話し戻ってくると作兵衛と三人で、底に穴の空いた桶や刃が洩れた手裏剣などの修補を行う。
ひとつずつ研いだ手裏剣や苦無を所定の場所に並べる。普段から使っている武具達だから修補しているとより愛着が湧いてくる。案外こういう作業好きだな。
「もうこんなに終わったんですか?先輩」
『えっ、あぁ。コツを掴んだら早くて。作兵衛こんな感じで大丈夫?』
「問題ないかと。」
『留三郎は?』
「俺もあと少しで終わる。」
留三郎は一際難しそうな武器を修補している。手に取って確認してみたが修補のやり方が検討つかず留三郎がやると言ったものだ。さすがは留三郎、手先が器用。
『ようやく終わった。』
「物が多くて大変でしたね。名前先輩ありがとうございました。」
「名前、お前のお陰で一日掛かる修補がこんなに早く終わった。ありがとう。」
『喜んでもらえて何より。』
「よし、あとは片付けるぞ。」
「『はーい』」
「これはそこへ。あれはあそこで。」
「はい!……………わっ!」
『えっ!作兵衛!!!』
そう言い修補した武器武具を木箱に入れ手分けして持ち元の場所に戻そうとすると立った拍子に作兵衛がつまずく。そのひずみで複数の手裏剣が床に刺さり、手裏剣の上に顔から倒れ込もうとしている。咄嗟に身体が動き、持っていた木箱を放り投げ自身の身体の上に作兵衛が倒れ込む。
「作兵衛!名前!」
『作兵衛!大丈夫!?』
「あ……あっ……… 名前…先輩……背中……。」
作兵衛の顔には傷一つ付いてなく安心すると自身の背中に痛みが生じる。どうやら忍び装束を突き破き、手裏剣が背中に刺さったみたいだ。留三郎が駆け寄り傷の手当てをする。生暖かい液体が背中を伝うのが分かる。それを見た作兵衛の顔からは血の気が引いている。悪い事になったみたいだ。
『留三郎どう?』
「伊作に診てもらう!作兵衛!後は頼む!」
「っは、はい!」
『ひゃっ!留三郎!歩けるわよ!』
「手裏剣が刺さったんだ!急いで医務室行くぞ!」
留三郎に横抱きにされ医務室に向かう。ちょっと大事すぎないか。留三郎の顔を見ると真剣な表情に喉まで出かかった声を飲み込み黙って揺られる事にした。
医務室に居た伊作にびっくりした顔をされたが同室の顔を見てただならぬ雰囲気を感じ取る。そんな伊作を目の前にゆっくり降ろされ事情を説明し傷口を確認される。
「名前、全くもう君は。」
『いや……身体が咄嗟に。』
「それでも馬鹿だお前は。」
『えーん。そんな怒らないでよ留三郎。』
「あと留三郎、医務室から出て行ってくれる?」
「はっ……すまない!」
怒る留三郎を外に追いやる伊作。伊作と二人になった為上半身の忍び装束を脱ぎ、肩衣を前に当て手当てを行ってもらう。消毒液が傷口に染み顔を歪める。
『痛たっ!伊作優しく!』
「充分優しくしてます。全く君は傷の酷さが分かってない。」
『ちょっと刺さっただけでしょ?』
「もし外で傷作っても同じ事言える?」
『あー………。言えません。』
「でしょ。」
軽んじてる訳ではないがぐうの音も出ない。でも作兵衛には悪い事しちゃったな。あの責任感のある作兵衛だ。今頃考え込んでいるんだろう。
「………作兵衛にはちゃんと説明しとくんだよ。」
『そうよね……心配かけちゃったわ。』
「自分の不注意で他者を巻き込む事もあるんだから。作兵衛にはいい教訓になったと思うよ。」
『それはそうだけど……。』
「特に名前は女の子だから。」
『背中の傷なんかよっぽどの限り見えないわよ。』
「女の子だから余計傷作っちゃ駄目って事!」
『はい。滅相もございません………』
「伊作、そろそろいいか?」
「留三郎。いいよ。」
一通りの処置を終え肩衣を着るとタイミングよく留三郎から声が掛かり部屋の中に入ってくる。その顔は意気消沈しており覇気がない。伊作は新野先生に報告を兼ねて医務室を出る。医務室には留三郎と二人きりになる。
「名前。すまなかった……」
『留三郎謝りすぎ。私がした事だからそんな気にしないで。』
「でもお前その背中の傷……動けるのか?」
『今は痛みがあるから動きずらいけど日が経ったら大丈夫。ほら!』
「馬鹿!今は動かすな!」
『はい。』
動けるか確認する為肩回しを留三郎の目の前ですると腕を掴まれ静止される。自分が思ってるより事態は悪化しているみたいだ。
『留三郎から作兵衛にも伝えといて。私は平気だって。』
「それはそうだが……」
『私が気にするなって言ってるからこの件は終了。いいでしょ?』
そんな留三郎の言葉を制止する。それよりも自身が放り投げた木箱の中身が気になる。詳細を留三郎に確認する。
『留三郎……私が投げた木箱の中身どうでした?』
「あれは無事だ。俺に刺さりそうだったけどな。」
『面目ない。』
「ったく………背中見せてみろ。」
『……うん。』
留三郎に言われ背中を向け上衣を捲り上げる。傷はまだ熱を持っており巻かれた包帯の上より留三郎の指がなぞられる。痛みとは違いゾワゾワする感覚が背中を巡る。
『んっ………ほら思ったより酷くないでしょ。』
「そんなの関係ない。」
『留三郎……あっ!』
傷口の横に柔らかな物が触れそれが留三郎の唇だったと理解した瞬間、カッと頬が熱くなった。それでも口付けは止まらず降り注ぐ。
『っあ!……んっ……留、三郎。』
「綺麗だ……。」
『やぁっ!………恥ずかしいよぉ…っ!』
触れるだけの口付けだというのにびくりと細い肩を跳ねさせ、繰り返される口付けに背中がびくつく。
本来守るべき行動は取るのは俺だったのに咄嗟に作兵衛を守った名前。俺の後輩が招いた事で名前の背中に傷を作り血が流れた時は目の前が真っ暗になった。背中に傷を作ってもそれでも非を咎める事はせず後輩の心配をする名前の姿に愛おしさが胸元を突き上げる。白く透き通ったきめ細かい肌にこの傷は愛おしい。愛おしくて切ない思いに駆られる。
『と、め………もう大丈夫……んっ』
「……あぁ、そうか……。」
留三郎の口付けが背中から首筋まで移動し止まる。名前の顔は羞恥と困惑で赤くなり胸にぐっと堪える物があるが今すぐ押し倒したい欲求を抑えそっと放す。その様子に名前が閉じていた目を開くと留三郎と目が合い、お互い見つめ留三郎の口が開く。
「………頼むから無理するな。」
『んっ………ごめんなさい。』
「分かればいい。先に行くな。」
『はい……』
頭に手を置かれ上衣を整えると留三郎が医務室を出る。留三郎の行動に腰が抜けへたりと座り込んでしまい胸の高鳴りが止まらない。頬に熱が集まり先程の出来事が頭を巡る。
『はあぁ〜〜ドキドキした………。』
抑えられなかった。あんな困惑させた顔をさせたかったのではないのに。しかし忘れられない。手応えも悪くなかった。これをきっかけに俺の事を意識して貰えたら後は引き返せないようゆくゆくは責任を取るという形で漕ぎ着けてやる。そう笑みが止まらない。
_______________________
(名前先輩〜〜〜!ご、ごめんなざい〜!)
(作兵衛、顔から出る物全部出てるじゃない)
(だって!俺のぜいで〜!)
(可愛い後輩ね)
(俺の後輩だからな(少し妬くな))